平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ラストエンペラー

2008年07月03日 | 洋画
 大きな時代の流れの中で人は流されて生きていくしかない。
 人は小舟で川の流れに逆らって生きていくことはできない。
 そんなことを感じさせてくれる映画だ。

★愛新覚羅溥儀(ジョン・ローン)は“清朝最後の皇帝"。
 あらゆることが許される皇帝でありながら彼は紫禁城の外に出ることすら出来ない。
 実際の政治は国民政府が行い彼はお飾りでしかない。
 溥儀が自分の意思を見せて、宦官の財宝を横領を追及しようとすると宝物庫に火をつけられる。
 英国人家庭教師レジナルド・ジョンストン(ピーター・オトゥール)の感化を受けて彼は弁髪を切り自転車に乗れる様になるが、許される自由はその位だ。
 望む英国留学も許されない。
 彼は皇帝であって皇帝でない。

 そんな溥儀が日本の甘粕大尉(坂本龍一)に乗せられて満州の地に行くのは無理もない。
 日本の傀儡になるだけだと彼の妻・婉容(ジョアン・チェン)は言うが、「それを逆手にとってやる」と息巻く溥儀。
 しかし大臣の人事で異を唱えると甘粕らは席を立って抗議。
 結局、甘粕らの言うとおりの人事を行うことになる。

★時代の流れは溥儀をさらに押し流していく。
 日本の敗北。
 中国共産党の政権奪取。
 溥儀は罪を問われる。
 自分の意思で何も決められなかったのに、時代の流れの中で満州に行くしかなかったのに罪を問われる不条理。
 生きるために、ほんのちょっとの自由と幸せを求めただけなのに収容所暮らしをさせられる不合理。
 おまけに彼の唯一の拠り所である妻も歴史に翻弄させる苦しみから阿片に手を出しおかしくなってしまった。
 彼は何も持っていない。あるのは自分の人生の空虚と孤独だ。
 絶望もある。歴史の流れの中で多くの人間が彼を裏切っていく。

★ラスト。
 庭師として余生を送る年老いた溥儀には何とも言えぬ情感がある。
 やっと静かに暮らせる穏やかさ。
 一方で空虚と孤独。
 死を待つばかりの枯れ果てた感じ。
 様々な情感が感じられる。

 入場料を払って見た紫禁城の玉座を彼はどの様な気持ちで見たのだろう。
 いろいろ想像させられる余韻のあるラストシーンだ。


コメント
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