動き出すユーラシア帝国戦略
昨年11月、米国の国防総省に米軍の軍用コンピューターのウィルス・セキュリティソフトを納入している「3(スリー)コム社」が乗っ取りに合い、問題となった。
買収を仕掛けたのがヘッジファンドのベインキャピタル社であったが、実は、このファンド会社は中国のハイテク企業・華為技術が経営していた。米国議会は外資に国防上の重要企業が乗っ取られる事を問題にし、結局、買収を国防上の問題から否決し、停止命令を出した。
米国議会が「無知」なのか、あるいは沈黙しているだけなのかは不明であるが、このハイテク企業=華為技術は中国軍ハイテク部隊のフロント企業であり、今回の買収劇は、中国軍が米軍のセキュリティソフトを買収し、米国国防総省の情報網を中国軍の「支配下に置こう」とした、明確な軍事攻撃である。
企業買収、とりわけハイテク企業の買収は、軍事行動として行われているケースが多々ある。
米国議会が、この中国軍による軍事攻撃という「買収劇の本質」について沈黙しているのには、理由がある。3コム社へのベインキャピタルの乗っ取りを仲介していた「バイヤー」が、ロスチャイルドの銀行ゴールドマンサックスであったためだ。米国議会が「恐れおののいて本当の事が言えない」理由は、ここにある。
現在の米国財務長官ヘンリー・ポールソンは、このゴールドマンサックスの会長から財務長官に「横すべりし、抜擢された」。
つまり、米国国防総省の情報中枢=軍の指揮権系統を「中国軍に売り渡す」事は、米国政府中枢の「方針」であった。売国である。
長年、世界の金融中枢を支配してきた前米国中央銀行FRB議長アラン・グリンーンスパンが、現在、「ドルを世界通貨として使用する事を止め、中国の元をアジア全体の通貨にするか、元を中心とした新しい通貨体制をアジアに創立すべきである」と主張し、金融面で米国のドルによる世界支配を終わらせ、「覇権を米国から中国へ明け渡そう」としている事態と、ポールソン=ゴールドマンサックスの中国に対する3コム社の売却方針は「見事に一致している」。
ここに「実権として現代世界の運営を行っている者達の世界戦略の変化」が、明確に出ている。
アフガニスタンのタリバン政権を打倒した米国とアフガンの戦争でも、米国とサダム・フセインのイラクとのイラク戦争でも、戦争で破壊されたアフガン、イラク両国の復興事業において、「米国政府中枢の指示を受け」、両国の情報通信網を構築して来たのは、この中国軍=華為技術である。
中国、中央アジア(アフガン)、イラク、そして東ヨーロッパへと向かうユーラシア帝国を形成するには、「この地域の情報通信網は、覇権国家・中国の同一企業の技術によって構築しておかなくてはならない」。
それが米軍と米国政権中枢、より正確には「世界の支配者」の世界戦略である。