格差階級社会をなくそう

平和な人権が尊重される社会を目指し、マスゴミに替わって不正、腐敗した社会を追求したい。

外資の標的である日本郵政保有巨大不動産

2009-02-01 22:16:08 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

外資の標的である日本郵政保有巨大不動産
『月刊テーミス』2009年2月号(2月1日発売)が「宮内義彦「かんぽの宿」で集中砲火の真相」と題する記事を掲載した。私も購読している情報誌だが、「小泉・竹中路線の総合規制改革会議の議長だった宮内氏に利権説や入札の不明朗が暴露されて」の副題をつけて問題を指摘している。


記事は、本ブログの1月10日付記事「「オリックス-かんぽの宿」疑惑の徹底検証が不可欠」の記述を引用し、米国が対日年次規制改革要望書で郵政民営化を要求してきた事実を指摘している。


上記記事が指摘している重要な事実を紹介する。『テーミス』誌は日本郵政の内部資料を独自に入手したことを記述している。表題は「JP日本郵政グループにおける不動産事業の現状と展望」で、日本郵政企画部門が作成したドキュメントであるとのことだ。


私は昨年9月27日付記事「「小泉改革」の評価」に次のように記述した。


「三つの「民営化」には、すべて裏があった。「裏」とは、特定の利害関係者に利益、利権をもたらす「民営化」だったということだ。かけがえのない「道路資産」が将来、特定の「資本」の所有物になる。「郵政三事業民営化」では、郵貯、簡保の350兆円の国民資金を収奪しようとする外国勢力、銀行界が存在した。さらに外国資本は郵政会社が保有する「莫大な一等地不動産」に狙いをつけている。「郵政会社」は「莫大な一等地不動産」の再開発事業を今後本格化させる。この動向から目を離せない。」


 三つの民営化とは「日本道路公団」、「住宅金融公庫」、「郵政三事業」である。


『月刊テーミス』誌は内部資料から日本郵政が保有する不動産簿価を紹介している。インターネット上には、日本郵政株式会社CRE部門担当部長斎藤隆司氏が作成したと見られる「JP日本郵政グループにおけるCRE戦略」と題する資料がアップされている。


CREとはCorporate Real Estateの略で企業保有不動産を意味する。


この資料の6ページには日本郵政が保有する不動産資産金額が記載されている。日本郵政グループは土地だけで1兆3010億円の資産を保有している。


郵政三事業は郵政4会社に分社された。「郵便事業」、「郵便局」、「ゆうちょ」、「かんぽ」の4社である。これら4社の株式が「ゆうちょ」、「かんぽ」については全株式が売却される予定になっている。「郵便事業」と「郵便局」の株式は持株会社の「日本郵政」が全株を保有するが、「日本郵政」株式は3分の2が売却される予定になっている。「日本郵政」が上場され、3分の2の株式が売却されてしまうと、さまざまな見直しが困難になる。まずは、「日本郵政」の上場を凍結することが絶対に必要だ。


拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第一章「偽装」26「郵政米営化の実態」に以下のように記述した。


「郵政民営化法案が米国の意向を反映して策定されたのは間違いない。特定郵便局ネットワークは存続が義務化されなかった。民営化後に不要な部分が削(そ)ぎ落とされ、うまみのある部分だけを接収すれば巨大な利益を得ることができる。350兆円の巨大な資金も標的だ。」


「郵政民営化」の実態が「郵政利権化」であったことはすでに述べた。「郵政利権」でクローズアップされてきたのは350兆円の「ゆうちょ」、「かんぽ」資金だが、実は隠された巨大資産が存在した。それが日本郵政保有の巨大不動産である。


『月刊テーミス』誌は日本郵政全体が保有する土地の資産規模を他の業種と比較している。陸運会社では2位の佐川急便が日本郵政の7分の1だという。不動産会社ではトップの三菱地所とほぼ同水準であり、東証第1部上場企業では、JR東海、JR東日本、三菱地所に次いで4番目とのことだ。


竹中平蔵氏は1月19日付産経新聞に掲載した「かんぽの宿は“不良債権”」と題する稚拙な反論で、次のように述べている。


「完全民営化されたかんぽ生命保険には、他の民間企業と同様、保険業法が適用される。当たり前の話だが、民間の保険会社がホテル業を営むことはあり得ないことだ。ホテル業のリスクが、金融の本業に影響を及ぼすことがあってはならない(いわゆるリスク遮断)からである。だからこそ法律は、10年以内の完全民営化を目指すかんぽ生命には、5年以内(2012年9月まで)の廃止または売却を義務付けた。」


ところが、現実には「かんぽの宿」は「かんぽ会社」保有資産ではなく、「日本郵政」保有資産である。そして、当の日本郵政は「不動産事業」を今後の中核事業のひとつに位置付けようとしているのだ。


竹中氏の反論がいかに的外れであるかがよく分かる。日本郵政は不動産事業を中核事業に位置付けるのであり、「かんぽの宿」の一部を不動産として再利用することも検討項目にはなりうるのである。


私は米国が「郵政民営化」を要求してきた背景のひとつに、日本郵政が保有する巨大不動産が存在すると考えてきた。こうした巨大資産に狙いをつけて、巨大な利益を獲得するためには、当該資産を安い価格で入手することが必要になる。


雇用確保などの付帯条件は労働者の生活を守る上で重要だが、こうした付帯条件が、資産売却の売却価格を引き下げるために設定されることには十分な警戒が必要だ。


例えば、雇用維持や特定郵便局ネットワークを維持することを条件に設定すると、郵政株式を市場に売却する際の、当初の価格が低くなることが考えられる。日本郵政の巨大な資産を狙う資本は、低い価格の株式を買い集め、その上で日本郵政の事業を時間をかけて改変し、各種負担を軽減する。雇用負担や郵便局ネットワーク負担が取り除かれれば、株価は当然に上昇するだろう。


株価が上昇したら株式を売却する。これによって利益を獲得することができる。鳥取県の「かんぽの宿」では1万円で払い下げを受けて、半年後に6000万円で転売した。まさに「濡れ手に粟」のあぶく銭だ。


「かんぽの宿」70箇所の一括譲渡では、雇用確保などの付帯条件が付けられている。この付帯条件があるために価格が低くなっていると日本郵政は説明する。しかし、よく聞いてみると転売制限の期間は2年にすぎないとのことだ。2年経過すれば転売できるのではないのか。


「雇用維持」などの付帯条件が不当廉売の「隠れ蓑」にされている可能性が高い。今回問題になっている70箇所の「かんぽの宿」プラス9箇所の首都圏社宅が合計で109億円で売却されるのは、明らかに不当廉売と考えられる。


問題は、
①売却に付帯する諸条件の詳細が分かりにくいこと。保坂展人氏がブログで明らかにされたが、メリルリンチ日本証券が入札情報を提示する際に添付した書面を見ると、譲渡条件が入札情報開示の際に明確に定められていなかった疑いもある。

  
②入札情報が広く日本全体に行き渡っていなかったこと。一部の関係者だけで話を進めようとした、いわゆる「出来レース」の疑いが晴れていない。

  
③売却物件のなかには300億円近くの費用を投入して、現在も十分利用に堪えうる物件が含まれている。社宅だけでも時価が47億円に達すると見られている。個別物件の情報を広く開示すれば、はるかに高い価格で売却することは可能であると考えられる。


鳥取県の「かんぽの宿」は特別養護老人ホームに改修されて施設が生かされている。社会福祉関係の施設に改修して利用することも十分に考えうる。


「晴天とら日和」様が関連情報をまとめて提供してくださっている。


朝日新聞、産経新聞、日経新聞は社説等で総務相批判の論説を掲載したが、その後、中日新聞、北海道新聞が一括譲渡見直しの論説を掲載し、読売新聞も入札経緯の詳細公表を求める論説を掲載した。


 日経新聞、朝日新聞、産経新聞は総務相批判の論説を維持するのか、紙面において明確に考え方を示す責務がある。


 貴重な国民資産を国民の不利益を生まないように取り扱うべきことがすべての基本である。「かんぽの宿疑惑」を徹底的に追及することによって、「郵政民営化」の実態が必ず明らかになると考えられる。今回の一括譲渡決定にかかるすべてのプロセスを明らかにすることが求められている。


 幸い、郵政株式の売却はまだ始まっていない。「かんぽの宿疑惑」を解明することにより、「郵政民営化」を根本から見直すことが不可欠であることが、必ず広く国民に理解されることになると考えられる。

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「かんぽの宿疑惑」に見る「郵政利権化」

2009-02-01 17:03:44 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

「かんぽの宿疑惑」に見る「郵政利権化」の深層
「かんぽの宿疑惑」は小泉竹中政治の基本問題の一端を示す事例であり、この際、徹底的な真相究明が求められる。


小泉竹中政治は、
①「企業の利益=効率」を最優先して、勤労者の生活の安定性を無視する制度変更を強行し、
②「特権官僚の天下り利権」を温存し、
③「民営化」を強行し、国民生活に直結する各種公的サービスを政府や国民の監視外に移設した。

  

「かんぽの宿疑惑」は上記した小泉竹中政治の第三の実績にかかる問題の氷山の一角である。


「かんぽの宿」全国70施設プラス首都圏9箇所の社宅施設が109億円でオリックス不動産に売却されることについて所管大臣である鳩山総務相が疑義を表明したことを契機に、「郵政民営化」に関連する国民資産売却の不透明な実態が明らかになりつつある。


鳩山総務相が不透明な日本郵政資産売却について疑問を提示したことについて、日本経済新聞、朝日新聞は総務相を批判する社説を掲載し、産経新聞は竹中平蔵元総務相の鳩山総務相批判を掲載した。また、日本テレビ系列の幸坊治郎氏なども同様のコメントをテレビ番組で示した。


しかし、本ブログでも記述してきたように、中立公平の視点から見て、鳩山総務相の問題提起は明らかに正当性を有している。


「かんぽの宿」の取得費用は約2400億円に達する。70施設のひとつである「ラフレさいたま」だけでも取得費用は300億円近くに達する。また、首都圏9箇所の社宅施設は土地の時価評価だけで47億円にも達することが明らかにされた。


日本郵政や竹中平蔵氏は、
①オリックスへの一括譲渡が2度にわたる入札結果として決定されたこと、
②政府の「財産評価委員会」による資産評価において「かんぽの宿」70施設の評価が142億円とされ、負債金額49億円を差し引いた純資産金額が93億円とされており、109億円の売却価格は適正である、


と反論している。


しかし、日本郵政の説明によると、入札情報は昨年4月1日に日本郵政HPに掲載され、5月15日に参加表明応募を締め切ったとのことだ。問題は、この告知がどのような形態で、どれだけの期間なされたのかだ。


日本郵政株式100%が政府に保有されており、現段階で日本郵政は完全な国有会社である。したがって日本郵政が売却しようとしている「かんぽの宿」は純然たる国有財産=国民資産である。


その売却にあたっては、国民に不利益を与えぬよう、最大限、高価格で販売されるように最善を尽くす必要がある。HPページに告知して、入札を実施したとしても、情報が広く行き渡り、多数の企業が入札に参加しなければ、適正な価格で売却することはできない。


銀行が保有する担保不動産を売却する場合でも、「競売」の形態を取りながら、実態としては「出来レース」で特定の買い手に資産が売却される事例は多数存在する。このような場合では、特定の顧客に利益を提供する目的で、「出来レース」の資産売却が実行されることが多い。


総務相が「入札の経緯」を精査したいとするのは当然のことだ。貴重な国民資産を売却するのであるから、少なくとも入札情報を広く告知することは不可欠である。日本郵政は巨額の費用を投入してテレビなどでの広告活動を展開している。テレビCMでの入札情報の告知は効果的であると考えられるが、そのような企業努力を注いだのかも検証されなければならない。


一方、日本郵政は政府の財産評価委員会による資産評価金額を売却価格算定の根拠とする説明を示しているが、財産評価委員会は事業の収益性を基準にした資産評価を示しただけではないのか。


売却条件に、利用料金や賃金条件などを含めて現状の事業形態を永遠に維持することを義務付けているのであれば、売却価格の基準に財産評価委員会の資産評価額を利用することも一案であると考えられる。


しかし、売却条件には再譲渡制限の期間が2年しか付されていないとのことだ。2年後には資産が売却される可能性すら存在する。


旧日本郵政公社が2007年3月に売却した鳥取県岩美町の「かんぽの宿」が土地代を含めて東京の不動産開発会社に1万円で売却され、半年後に鳥取市の社会福祉法人に6000万円で売却されたことが明らかにされた。


 1万円で「かんぽの宿」を取得した東京の不動産開発会社はまさに「濡れ手に粟」の暴利を得たことになる。事業運営収支が赤字であることを根拠に、資産評価が「ゼロ」と査定されていたのではないか。査定が「ゼロ」だから、1万円で売却することが正当であると曲解したのではないか。


事業評価をベースにした資産価値評価が1万円だからと言って、売却する際の基準価格が1万円にはならないのである。


6000万円で売却できる資産を1万円で売却したなら、商法会社であれば「特別背任」の疑いさえ発生する。


竹中平蔵氏は産経新聞およびネット上で繰り返し稚拙な反論を提示しているが、その主張の中心は、
①「かんぽの宿」は年間40億円の赤字を生み出す「不良債権」である、
②日本郵政の事業における経営判断は民間に委ねるべきで、政治が介入するのは根本的に誤っている、
というものだ。


しかし、本ブログで記述し、鳩山総務相も発言したように、事業の赤字は料金設定などに大きな原因がある。減価償却費が過大に計上されている可能性もある。


事業収支だけを基準に売却価格が計算されるなら、事業に供されていない社宅の価値は「ゼロ」近辺となってしまう。「経済学」等の基礎知識を保持しているのかが極めて疑わしくなってしまう。


また、「政治が介入することは根本的に誤っている」との竹中氏の主張そのものが「根本的に誤っている」。


「かんぽの宿」は純然たる国有財産であり、その売却が適正に行われるように監視することは所管官庁、所管大臣、国会の責務である。竹中氏は「郵政民営化」関連法が成立したら、国民資産を好き勝手に、不透明で処理して良いとでも考えているのだろうか。


「かんぽの宿」1施設を1万円で売却することが適正であるとするなら、麻生内閣が実施しようとしている「定額給付金」を一人12,000円ではなく、すべての国民に、「かんぽの宿」1施設を提供してはどうか。「かんぽの宿」1施設は常識で考えて1万円以上の価値を有する。


全国紙では中日新聞(東京新聞)が社説で「かんぽの宿譲渡の不透明さ晴らせ」の論評を掲載した。日本郵政の「かんぽの宿」一括譲渡決定過程が不透明であるとの正論を示している。


産経新聞は1月31日「主張」で、「かんぽの宿日本郵政は情報開示せよ」と題する論評を掲載したが、偏向報道姿勢は是正されていない。


産経新聞は以下のように主張する。
「2400億円は長年にわたる取得額の累計である。建物の老朽化や土地の値下がり、年間50億円近くもの赤字を生み出す事業であることを織り込んだ現時点での評価額93億円と比較する議論は乱暴といえる。むしろ2400億円の責任は、採算を度外視して建設費用を投資してきた歴代の郵政公社幹部や、それを許してきた政治家に求められるべきだろう。」


この記事の表現は誤解を招くものである。1月28日に社民党と国民新党が実施した日本郵政に対するヒアリングにおける2400億円に含まれる建設費について、保坂展人氏は次のように記述している。


「ヒアリングでは、譲渡対象施設のかんぽの宿+社宅+ラフレさいたまの取得原価が明らかになった。土地が294億8千万円、建物が2107億4千万円、合計で2402億2千万円だという。ただし、建物は老朽化した施設を建て直した場合には、新たな建物だけの価格だとした。」


つまり、2400億円には老朽化して立て直された古い建物の建設費は含まれていないのである。現存する施設の建設費用だけが計上されているのが2400億円の意味であり、産経新聞の記述は誤りに近い。また、上記産経新聞記事の後半は問題のすり替えである。


産経新聞は、「鳩山氏側も、独自の鑑定結果を早急に提示すべきだろう」と記述して、鳩山氏側の責任を強調するが、現段階では、まず日本郵政が完全な情報開示することが求められるのであり、鳩山氏の責任を追及するのは筋違いだ。


こうしたなかで、適切な論評を掲示したのが北海道新聞である。北海道新聞は1月31日社説で、「かんぽの宿白紙に戻し見直しては」と題する論評を掲載した。同紙は記事のなかで次のように指摘する。


「問いたいのは、国民の目の届くところで事業譲渡が行われているかだ。日本郵政は施設ごとの資産評価額や入札参加企業などを公表していない。これでは譲渡が適正だったか、判断しようがない。

 検討委では譲渡のあり方を論議するが、入札過程の検証までは踏み込まないという。 」

  
「一時凍結ということではなく、売却をいったん白紙に戻してはどうか。経緯や資産価値を洗い直し、国民の理解を得る必要がある。」


 これが正論である。日本郵政は検討委員会を設置して譲渡のあり方を論議すると言うが、入札過程の検証を行わないとしている。


 問題は入札過程の不透明性にある。この不透明性を明らかにすることで、問題の本質が初めて見えてくる。鳥取県および鹿児島県の1万円落札を含むこれまでの資産売却についても、徹底的な検証が求められる。


 日本郵政はマンション用地の販売も進めているが、「利益を生んでいない社宅用地」が不当廉売されていないかも検証の対象になる。


 「郵政民営化」の真相は「郵政利権化」であったとの疑いが日増しに増大している。国会は「かんぽの宿疑惑」を徹底検証しなければならない。また、日経新聞、朝日新聞、産経新聞は「過ちて改むるに憚ること勿れ」である。

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