格差階級社会をなくそう

平和な人権が尊重される社会を目指し、マスゴミに替わって不正、腐敗した社会を追求したい。

「かんぽの宿疑惑」を生んだ「郵政米営化」の深層

2009-02-10 19:29:46 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

「かんぽの宿疑惑」を生んだ「郵政米営化」の深層
2005年8月2日の参議院郵政民営化に関する特別委員会。


「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株式を100%売却することについての竹中平蔵郵政民営化担当相の答弁


「銀行と保険、この金融の仕事というのは、やっぱりほかの事業とは非常に違った性格を持っているということだと思います。この金融の仕事では、いわゆる信用、信用というのが何よりも一番大事であると。そこにこの、今までこれ、国営の公社で行われていたわけですが、その信用という観点からしますと、国というのはこれはもう絶対的な信用を持っている主体でございます。その国というのがこの銀行に関与すると、関与できると、そういう影響力を持つということになりますと、これはやはり民営化に当たって、通常の一般の他の民間金融機関との間でもどうしても不都合が生じるのではないか。その意味では関与、国の関与をやっぱりきちっと切り離していただくということがどうしても必要で、その点が今回の民営化の大変重要なポイントになっているというふうに考えております。
 だからこそ、この銀行と保険に関しては、これはやっぱり国が持っている、持ち株会社が持っている株をいったん完全に処分していただく、完全に処分していただくことによって、国の信用と関与を断ち切って、それでほかの民間金融機関と、正に民間の金融機関と対等になる、そういう仕組みをしっかりと確立することが民営化に当たってどうしても必要であるというふうに我々は考えたわけでございます。」(11)


「重要な点は、私どもは民営化をしようとしております。民営化をするに当たって、その金融に対してユニバーサルサービスの義務を課すということはいたしません。」(131)


「郵政民営化」で定められている、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」に関する方針は、
①「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株式をすべて売却してしまう。
②「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」には「ユニバーサルサービス」を義務付けない。
の2点である。


これらの制度設計が米国の指示、要望に基づいているとの疑惑が濃厚に存在する。有名な「規制改革対日要望書」の存在が指摘されてきた。


この点について、民主党の櫻井充議員が質問した。


「ここに、日本とアメリカの対日要望書、対米要望書というのがございます。これはアメリカの大使館のホームページ、それから日本の外務省のホームページに掲載されていて、お互いにこういうことを基に話合いをされているようです、要望しているようですが、(略)」(188)


「本年の要望書において米国は日本における民営化の動きに特段の関心を寄せた、これは郵政公社の話ですが、日本郵政公社の民営化は意欲的かつ市場原理に基づくべきだという原則が米国の提言の柱となっていると。つまりは、市場原理に基づけとかそういうことをやれというのは実は米国の提言の柱になっていると。もしかすると、これはアメリカの意向を受けてやってきているのかもしれないと思うところがあるわけです。」(188)


「郵政の民営化に対してですね、相当な提案があります。例えば、競争条件の均等化であるとか、保険と銀行の公正な競争をやれるようにしろとか、それから相互補助の防止というのは一体何かというと、日本郵政公社の保険及び銀行事業と公社の非金融事業間で相互補助が行われないよう十分な方策を取るというふうに言われていて、三位一体でやれるはずがないですよ、アメリカの言うとおりやってくると。」(190)
「これは委員の皆さんに資料で配らしていただいておりますが、「米国政府・団体からの対日要望と郵政民営化関連法案との対応等」というのがございます。そこの中で、例えば「民間企業と同一な競争条件の整備」というところ、米国政府からは民間企業と同様の法律、規制、それから規制監督を適用するというふうに言われております。そうすると、郵政民営化整備法の第二条のところに、「次に掲げる法律は、廃止する。」と、郵便貯金法、郵便為替法、郵便振替法、簡易生命保険法と、こうやって全部意向を受けていると。」(190)


「ここに資料がございますが、例えば郵便保険会社・郵貯銀行の政府保有の株式完全売却という項目がありますけれども、米国政府からは完全売却しろと、そういうふうに書いてあります。それに対して、段階的に処分しろとか、要するにアメリカ政府からいろんな要望を受けると、それに従ってこうやって法律が整備されてきております。
 このことを踏まえてくると、果たしてこの民営化というのは国民の皆さんのための改正なのか、米国の意向を受けた改正なのか分からなくなってくるということでございますが、竹中大臣、いかがでしょう。」(190)


 これに対して竹中大臣は次のように答弁した。


「これは、郵政民営化というのはもう十年二十年言っておられるわけですから、アメリカはどういう意図で言っておられるか私は知りませんが、かつ、これはもう私たち、これはもう国のためにやっております。
 かつ、このまあ一年二年ですね、わき目も振らず一生懸命国内の調整やっておりまして、ここで読み上げる、読み上げていただくまで私は、ちょっと外務省には申し訳ありませんが、アメリカのそういう報告書、見たこともありません。それはそういう、私たちはそういうこととは全く関係なく、国益のために、将来のために民営化を議論しているわけでございます。」(192)


 竹中氏の白々しい答弁に対して櫻井氏が次の質問をした。


「もう一点申し上げておきますが、じゃ大臣、大臣、ここのところは大事なことですが、アメリカと、アメリカの要望書の中で我々の意見を聞けということがあって、十七回ぐらいたしかアメリカの要望を、意見交換をしているはずなんですね、十八回でしょうか。これは十八回やっているはずなんです。
 そうすると、そこの中で、米国の意向を先ほど知らなかったというお話をされますが、そんなことないんじゃないですか。こうやってやり取りをしていること自体、準備室でやり取りしていることの中で、そこのトップである大臣がそんなことを知らないんですか、本当に。」(194)


 竹中氏は次のように答弁した。
「私は、その今読み上げていただいた報告の詳細を別に聞いていないというふうに言っているんです。
 十八回、これ準備室にはいろんな海外の方からいらっしゃいますから事務的に対応しております。私は忙しいですから、私自身が海外の方とお目に掛かってそういう話をしたことはございません。」(194)


櫻井氏がさらに質問した。
「じゃ、竹中大臣、大臣は、例えば外国の要人の方から、大臣がよく民営化一生懸命頑張っていると、それから金融改革ですか、銀行とのとか、そういうことに関して評価されているとか、もうそういうことも一切ないんですか。」
「大臣は、アメリカの方とこういう問題について話し合ったことすらないんですか。そして、そういうような例えば、竹中大臣、よく頑張っていらっしゃいますね、我々と一緒にやっていきましょうとか、そういうような、まあ例えばの話ですけど、そういうようなやり取りなんということはないんですか、本当に。」(195)


竹中氏は再び白々しく次のように答えた。


「郵政の問題につきまして外国の方から直接要望を受けたことは一度もございません。これ、先方から会いたいとかということはこれは当然来ますけれども、私はそういう立場にありませんので、それはお断りをしております。」
「もちろん国際会議等々に出て、日本の経済全体のこと、マクロ経済のこと、そして金融改革のこと、これは小泉改革全体についてお話をします。そういう点に関して評価をいただいておりますし、しっかり頑張ってくれという、こういうことはございます。」
「しかし、これは個別のアイテムについて、保険はこうしてくれ、株はこうしてくれと、そのような要望に関して、外国の方から私が具体的な要望をいただいたこと、そのような場を設けたことは一度もございません。」(196)


 ここで、櫻井充議員は重要な事実を指摘した。


「それでは、ここにアメリカの通商代表、代表の、まあこの間まで、前ですね、ゼーリックさんから竹中大臣にあてた手紙がございます。現在は国務副長官でございます。その方から竹中大臣にあてた手紙の写しがございます。」
「これ、ちょっと確認していただきたいんですけど、委員長、ちょっと議事止めていただいていいですか。」(197)


「ここには、要するにこれはどういう手紙なのかといいますと、これは竹中大臣が郵政担当大臣、経済財政担当大臣に再任されたときのお祝いの手紙でございます。」


「そこの中に、そこの中に、貴殿の業務の成功に対する報償がより多くの仕事を得たということを見て喜ばしく思いますと。その後るる書いてありますが、そこのところから後半の方ですが、保険、銀行業務、速配業務で競争の条件を完全に平等することを生み出し実行することは私たちにとって根本的に重要です。郵便保険それから郵便貯金を民間セクターとイコールフッティングにするためにも、私たちは経済財政諮問会議からの連絡を歓迎しております。そしてまた、現在民間企業に適用されている郵便保険と郵便貯金への税制、セーフティーネット上の義務の義務化、それから郵便保険商品に対する政府保証を廃止することを諮問したことに私たちは勇気付けられました。」


「私は、また、以下の点で丁重に貴殿を後押しいたしますと。二〇〇七年の民営化開始時から、郵便保険と郵便貯金業務に対する保険業法、銀行法の下での同様の規制、義務、監督、完全な競争、競争条件の平等が実現するまで新商品、商品見直しは郵便保険、郵便貯金に認めてはならず、平等が実現された場合にはバランスある形で商品が導入されること。新しい郵便保険と郵便貯金は相互補助により利益を得てはならないこと。民営化過程においていかなる新たな特典も郵便局に対して与えてはならないこと。民営化の過程は常に透明で、関係団体に自分たちの意見を表明する意義ある機会を与え、決定要素となることとする。今日まで私たちの政府がこの問題について行った対話を高く評価するものですし、貴殿が郵政民営化での野心的で市場志向的な目標を実現しようとしていることに密接な協力を続けていくことを楽しみにしております。貴殿がこの新たな挑戦に取り掛かるときに私が助けになるのであれば、遠慮なくおっしゃってください。」


「しかもです、これはタイプで打たれたものですが、ここにです、ここに自筆の文章もございます。自筆の文章です。そこの中で、わざわざここに竹中さんとまで書いてあります、竹中さんと。貴殿は大変すばらしい仕事をされ、数少ない困難な挑戦の中で進歩を実現しました。あなたの新たな責務における達成と幸運をお祝いいたしますと。これは去年の十月四日の時点ですので、貴殿と仕事をすることに楽しみにしておりますという形で手紙も来ております。」


「ですから、今までそういうようなことに対しての要望がなかったということでは僕はないんだろうと、そういうふうに思っています。」


「ですから、ここは本当に大事なことなんですね。まあ今日はテレビが入っていますから委員会は止めませんけれどね。ですが、ですが大事な点は、総理が先ほどアメリカ、アメリカと言うなとおっしゃっていますが、こういう形で送られてきて、事実を私は申し上げているだけでございます。」

  

(数字は国会会議録における発言番号、太字は筆者による)

  


長くなるので解説については回を改めて記述するが、「郵政民営化」プロセスの詳細が米国の要望に沿って決定されたことは間違いないと考える。参議院特別委員会での質疑については、「晴天とら日和」様がこれまでに詳細を紹介してくださっている。


「郵政民営化」のプロセスの骨格が
①「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命」は丸裸にして株式を全株売却する。
②「郵便会社」にはユニバーサルサービスを義務付ける。
③「郵便会社」には郵便事業に必要最低限の資産を付随させる。
④持株会社の「日本郵政」が「郵便会社」と「郵便局会社」両者の株式を保有させる。
⑤残余資産は「郵便局会社」および「日本郵政」に帰属させる。
⑥「日本郵政」株式を全株式の3分の2を上限に市場に売却する。
というものである。


慎重に対応しなければ、巨大な国民資産が「売国ハゲタカ一族」に収奪されてしまう。「かんぽの宿疑惑」を徹底追及して「郵政利権化」、「郵政米営化」の実態を明らかにし、「ストップ!リフォーム(改革)詐欺」を実現しなければならない。

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CMSA日本支部を巡る「かんぽの宿疑惑」人脈の蠢き

2009-02-10 19:07:15 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

CMSA日本支部を巡る「かんぽの宿疑惑」人脈の蠢き
「誠天調書」様、ならびに「ネットゲリラ」様、ならびに「チラシの裏」様、「カナダde日本語」様、「喜八ログ」様、貴重なメッセージをありがとうございました。マスメディアは全力をあげて問題封殺を図ろうとしていますが、「かんぽの宿」疑惑の完全解明を求めて参りたく思います。「リフォーム(改革)詐欺」の悪の構造を白日の下に晒し、国民を救済しなければならないと思っております。志を共有する多くの皆様とともに一歩ずつ進んで参りたく思います。


2月8日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」は、自公VS民共での対論を実施した。共産党は選挙戦術上、民主党との対決姿勢をも示している。討論のなかで民主党を孤立させようとの意図が明白だ。民主、社民、国民新党は「かんぽの宿疑惑」でも共闘体制を強化している。結束力を強める野党を同席させない、驚くべき「偏向テレビ局」だ。


さらに驚くべきことは、「郵政4分社化方針見直し」、「かんぽの宿疑惑」をまったく取り上げなかった。「「郵政利権化」の実態が広く一般国民の知るところになることを絶対に阻止しなければならない。郵政利権の刈り取り時期が目前に迫っている。ここで「郵政民営化見直し」が拡大すれば、巨大な果実を獲得し損なう」との、売国ハゲタカ一族の焦燥の叫びが聞こえてくる。


「ギャラリー酔いどれ」様が「天網恢々疎にしてなんとやらですかね」と記述された。「天網恢々疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」とは「悪事をした報いは逃れることができない」の意味だが、「売国ハゲタカ一族」の悪事が白日の下に晒(さら)される日が近づいている。


2月5日のテレビ朝日報道番組「スーパーJチャンネル」が「かんぽの宿疑惑」を取り上げた。VTRで登場したのが早稲田大学大学院ファイナンス研究科の川口有一郎教授だった。


川口氏は、疑惑の「かんぽの宿一括売却」について、「開示資料を見る限り、入札の過程も価格の決定もそれぞれの過程には疑問を差し挟むようなことは見受けられない」と述べた。あまりに不自然なコメントが人々の注意を呼び起こす。「刑事コロンボ」の犯人は自ら聞かれてもいないコメントを示して墓穴を掘る。


川口氏がどのような背景を持つのかは現段階では不明だが、川口氏のこれまでの仕事に参考になる事例がある。





写真はオリックス不動産投信の第10期(2006年9月1日~2007年2月28日)の資産運用報告サイトに掲載されている写真である。オリックス・アセット・マネジメント株式会社社長の佐藤光男氏とにこやかに写真に納まっている。


川口氏と佐藤氏の対談が掲載されているが、最初の質問に、
「-お二人は、J-REIT誕生の前からのお知り合いなのだそうですね。」
とあり、川口氏が、
「平成12年4月に行われた「不動産金融工学の世界」というフォーラムで講演した際に、ご一緒させていただいたのが最初のご縁です。」
と答えている。


川口氏とオリックスの関係は決して浅くは無いと見られるのだ。


「かんぽの宿疑惑」に関連して登場する人々がつながって登場するのが、「CMSA日本支部」という名の組織である。「CMSA」とは「商業不動産証券協会」を意味する。商業用不動産ではあるが、「サブプライム金融危機」を引き起こした元凶のひとつである「デリバティブ不動産証券化商品関係者の総本山」とも言える。本部は米国にある。川口氏は「不動産金融工学」を専門としており、不動産関連デリバティブの専門家である。


2008年10月16日には第3回CMSA日本支部セミナーが早稲田大学大学院日本橋キャンパスホールで開催され、川口有一郎氏が基調講演を行っている。川口氏は2007年2月に開かれた第3回CMSA日本支部シンポジウムでも講演を行っており、CMSAのセミナーなども頻繁に早稲田大学大学院日本橋キャンパスで開催されている。川口氏はCMSAで活動する中心人物の一人であると見られる。


このCMSA日本支部の組織体制を見ると、オリックス専務執行役の小島一雄氏が理事長を務めていることがわかる。


川口氏はオリックスと極めて強い関係を有していると見ることができるのではないか。川口氏は上記したオリックス不動産投信の営業報告(2007年4月)のなかの対談で、
「J-REITの隆盛はバブルではないかという意見もありますが」との質問に対して、


「現在、東京都心5区のオフィス空室率は3%(平成19年3月発表、三鬼商事による)を切っていますが、これは欧米など諸外国と比べても例をみない低水準。需要に供給が追いついていない状況といえます。バブル崩壊で、日本の不動産は、実力以下に低く評価されてきました。不動産価格が高騰しつつあるといっても、ようやくバブル前の水準に回復したという状態なのです。」
と述べて、REIT市場の堅調を展望している。


 東証REIT指数を見ると、このレポートが出された2007年5月に2636ポイントのピークを記録したのちに暴落に転じ、昨年11月には683ポイントの安値を記録した。指数は現在872ポイント(2009年2月6日現在)の水準にある。2007年5月に投資したとすると、投資元本は3分の1になってしまったことを意味する。


 結果的に見れば「バブルではないかという意見」は正しかったことになる。


 興味深いのは、このCMSA日本支部が主催するシンポジウムやセミナーに、「かんぽの宿疑惑」に登場する重要人物が数多く登場していることだ。






2007年2月8日に開催された第3回CMSA日本支部シンポジウムは経団連会館国際会議場で開催され、川口有一郎氏とともに竹中平蔵氏が基調講演を行っている。写真はCMSA日本支部サイトに掲載されている、竹中氏の基調講演を撮影したものである。


 また、2007年10月9日に早稲田大学大学院日本橋キャンパスで開催された第2回CMSA日本支部セミナーでは、川口有一郎氏が基調講演を行うとともに、株式会社緒方不動産鑑定事務所取締役・不動産鑑定士の奥田かつ枝氏が講演を行っている。


 


奥田氏は一橋大学を卒業して三菱信託銀行に勤務した経歴を有している。すでに「晴天とら日和」様が簡略図入りで説明してくださったように、2月4日付「しんぶん赤旗」が奥田かつ枝氏が所属する緒方不動産鑑定士事務所などが共同設立した「アースアプレイザル社」の社外取締役に就任していることを明らかにしている。問題はオリックスの100%子会社であるオリックス・キャピタルがこの「アースアプレイザル社」の主要株主になっていることである。


 CMSA日本支部理事長の小島一雄氏はオリックスの専務執行役であると同時に、オリックス・キャピタルの代表執行役会長を務めている。


 「しんぶん赤旗」が、日本郵政が一括売却の対象になった「かんぽの宿」70施設と9箇所の社宅施設の簿価を300億円から129億円に圧縮していたことはすでに2月2日付記事「「かんぽの宿」売却先決定の不透明なカラクリ」に記述した。その根拠とされたのが政府の「郵政民営化承継財産評価委員会」による評価額変更である。


 政府の「財産評価委員会」については、「雑談日記(徒然なるままに、。)」様が詳細を調べて下さっている。この委員会の調査部会と事務局が実際の資産評価額決定に関与したと考えられるが、調査部会のメンバーには、
株式会社緒方不動産鑑定事務所取締役 奥田かつ枝 氏
日本公認会計士協会理事 樫谷 隆夫 氏
株式会社産業再生機構代表取締役社長 斉藤 惇 氏
PwCアドバイザリー株式会社取締役パートナー 田作 朋雄 氏

新日本監査法人代表社員 成澤 和己 氏
が指名された。


 詳細については回を改めて記述するが、新日本監査法人は本ブログおよび拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に詳述した「りそな銀疑惑」に直接関わる監査法人である。また、田作朋雄氏は2002年12月に竹中金融相(当時)が発足させた金融庁検査局内の「再建計画検証チーム」のメンバーに選出された人物である。人選は基本的に「竹中人脈」によったと見てよい。


 この調査部会で不動産評価の専門家と呼べるのは奥田氏一人しか入っていない。不動産評価額決定に関しては、奥田氏が重大な決定権を有したのではないかと考えられる。評価委員会の議事録を見ると、事務局提案がほとんど論議なしに了解されている。「かんぽの宿」が「オリックス」に安値で売却される準備が綿密に進められていたとの疑惑を頭ごなしに否定することはできないと思われる。


 テレビ番組では、川口氏とならんでもうひとり、「入札」の正当性を主張する人物が登場した。日本テレビ「NEWSZERO」の偏向報道についてはすでに記述したが、番組MCで元財務省官僚である村尾信尚氏が必死の形相で、「入札は適正なものだった」との日本郵政サイドの公式説明だけを繰り返した。


 この日本郵政サイドの説明を補強したのが、「キョウデン」(6881)会長の橋本浩会長である。橋本氏は「自分も入札に参加して、アドバイザーリースタッフと接触したが、完全にフェアーであるとの感触を持った」と述べた。視聴者はこの手の第三者発言に強く影響される。テレビ局側のねらいはこの点にある。


 しかし、橋本氏の発言を必ずしも額面通りに受け取ることはできない。「キョウデン」はさまざまな分野のM&Aを手がけてきたことがよく知られているが、すべてにおいて成功を収めてきたとは言えない。東洋経済新報社の四季報見通しによると、「キョウデン」の最終利益は2008年3月期から3期連続での赤字が見込まれている。株価を見ると、2004年に1679円の高値を記録したが、2009年2月6日終値は91円である。極めて厳しい状況に置かれていると言える。


 取引銀行としては筆頭に三井住友が記載されているので、三井住友がメインバンクではないかと推察される。有利子負債は2008年9月末時点で176億3100万円である。メインバンクである三井住友出身の西川善文氏が喜ぶコメントを提供した可能性も否定できない。


 テレビ朝日の川口有一郎氏のコメント、日本テレビの橋本浩氏のコメントなど、当事者であるオリックスや日本郵政社長出身銀行と強い利害関係を有する人物に、問題の是非についてのコメントを求めるテレビ局の姿勢には、強い疑念を抱かざるを得ない。


 また、日本郵政で「かんぽの宿」一括売却を担当したのが伊藤和博執行役であることが明らかにされている。伊藤氏は2007年7月に日本郵政に入社したというが、それまで在籍した「ザイマックス」はオリックスが出資する不動産企業である。しかも住所は「赤坂1-1-1」であり、鳥取県岩美町の「かんぽの宿」を日本郵政から1万円の評価額で譲り受けて、半年後に6000万円で転売した幽霊会社「レッドスロープ」の名を連想させる。


 日本郵政はメリルリンチ日本証券をアドバイザーに起用したが、メリルリンチには1億2000万円もの手数料が支払われている。


 拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に森ビルと小泉竹中政権の親密な関係を記述したが、森ビルの森稔社長は私に直接、「小泉政権批判をするな」と発言した人物である。


森ビルが経営するセミナービジネスに「アカデミーヒルズ」がある。竹中平蔵氏は2006年12月にアカデミーヒルズの理事長に就任した。


 このアカデミーヒルズによる「アーク都市塾「都市・不動産分野のマネジメントを学ぶ」講座」の2005年2月22日のカリキュラムが、
メリルリンチ日本証券ファースト・ヴァイスプレジデントの橋本嘉寛氏

株式会社ザイマックス常務取締役の伊藤和博氏
による講義だった(キャッシュのみ残存)。


この時点から、伊藤和博氏はメリルリンチ日本証券の不動産担当アナリストである橋本嘉寛氏と面識があったことになる。


 CMSA日本支部が2月12日に日本都市センタービルで「第5回CMSA日本支部シンポジウム」を開催する。「かんぽの宿疑惑」を追跡するジャーナリズムは、この会合を注視する必要があるだろう。奇しくも同日、アカデミーヒルズは特別シンポジウムを開催する。


「かんぽの宿疑惑」は拡大の一途を辿っている。「郵政民営化」のプロセスのなかで、シナリオが周到に練られて実行に移されてきたとの疑惑がさらに強まりつつある。次第に明らかになる不透明な「かんぽの宿」売却プロセスを見ると、日本郵政がわざわざ高額の手数料を支払ってアドバイザーを雇ったのは特別な理由によるのではないかと思われてくる。「黒い取引」を「グレー」に塗り替えて、その「グレー」を霧のなかに隠してしまう技術を有する業者がアドバイザーに選任された疑いがある。第三者を入れることで、「不正」を隠蔽(いんぺい)しようとしたのではないかとの推論も悪い冗談と笑い飛ばすことができない。


マスメディアが「メディアコントロール」の巨大権力を活用して問題封殺に動いているが、これを許してはならない。「かんぽの宿疑惑=郵政利権化」の巨大な闇を明らかにしなければ日本の未来に光は差し込まない。「天の網」の役割を「草の根」の情報発信と国会での徹底追及が担わなければならない。



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2009年2月 8日 (日) かんぽの宿疑惑・郵政利権化 | 固定リンク

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