福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 7/14巻の3/8

2024-09-06 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 7/14巻の3/8

三、道路作人は地蔵の一子の事

平の京西七條桂川のほとりに住みける男、貧にして更に一粒の糧もなし。親の孝養の志はありけれども何のたくはへもなければ命日には桂の地蔵(京都市西京区桂春日町、桂川の西に地蔵寺の桂地蔵が今でもあり)に参りて唯一心に名号を唱へける。或時雨降りて石を穿ち堂前の道路損じ参詣の人々足を乱し寺の椽(たるき)皆泥にぞ成けり。彼の男痛ましく思ひ道を作り力を励まして沙を荷ひ石を畳、土を運び橋をかけ地蔵参詣の人をば合掌して拝しける。明くれば道を作り暮れば堂に籠りて渡世の事は不通に忘れ居るほどに衣食の二つ絶へ果てければ心ぼそく月日をあかしくらす。但だ一念の志を便として賤しのわらやの内に住居するこそ哀れとも云ふばかりなれ。爰に玄氏の(源氏の)女とてならびなき有徳の女房一人あり常に桂川の地蔵に歩みを運びける。或月の十八日に清水へ参り通夜しける夜半に少し睡る間に一人の御僧の杖をつき玉ひたるが立ち向て言は、吾さりがたき男子を一人持ちたり扶持するに便なし。頼み入る由を涙を流し宣べたまふ。女房慈愍深き者なれば御意やすかれと申しければ、僧悦び玉ふ事かぎりなし。女房、さるにても御僧はいずに御座ぞと問奉りければ、桂川の地蔵堂のほとりに伊賀房と云ふ法師なりと宣へば夢覚めぬ。女房あまりに不思議にをぼへてやがて地蔵堂へ参り尋ねけれども終に見玉はず。力なくそれより下向しける其の夜の夢に彼の僧来り玉ひて昨日人らせ玉へばうれしく我が子も助らむと念じ入りたるに空しき事よとの玉へば、女房されば参りて形の如く尋ね見侍れども甲斐なく皈りまいをせたたるなり。何なりとも印(しるし)をたべと申し上げければそれまでもあらじ御身の上衣をたび玉へ我が子にあたへんと宣ひければ、安き間のことなりとて脱ぎて御僧に送ると思へば夢さめぬ。夜明けて見るに上衣うせてなし。件の男は堂の縁の下にてありしが夢に僧一人来り玉ひて彼の男に立ち向って宣べけるは、汝を人に頼みたれば扶持すべき由をききたり、今は心易く且亦衣を一つ得たり汝に是をあたふるなり。霜露に犯されず壽(いにちなが)くあるべしと男の身に打ちかけ給ふと思へば覚めぬるが夜明けて見れば衣あり、是は定めて参詣の人のをとしたるを風の吹き着てあるらんと尋ぬる人有らば與ふべしと道の傍に掛置て道を作りて居たりける。日暮に及んで彼の女房あやしく覚へけるほどに地蔵堂へ参りける道にて件の衣を見付けたり。傍を見れば年の比五十計りの男蓆を腰にあてつつ道を作りて居たりける。女房此の男に問ければ是は夢中に僧より玉はりたるなり。併しながら此の如く為し置く事は自らの覚悟にをよび侍らず、自然は参詣の中に失ひ玉ふ人あらば奉らんとの御事なりとぞ申しける。女房聞て、其の夢中の僧は汝に向て何と宣ふぞと問ふ。男ありのままに物語しければ女房感涙を流し我如是の瑞夢のありて子細を問ふなり、いざ我が住家に来たり玉へとて連行ぬ。其の夜の夢に先の沙門来たり玉ひて我が子を扶持し玉ふ事のうれしさよ然る上は毎月来たりて此の恩は謝すべし。我は則ち桂川の地蔵なりとて失せたまひぬと思へば夢は覚めけり。されば經の中に今此の三界は皆是我が有なり其の中の衆生は悉く是れ吾子なり、と説き玉へば(妙法蓮華經卷第二譬喩品第三「今此三界 皆是我有 其中衆生 悉是吾子」)彼の男も我も共に兄弟也。況や現に御示しあるをや。まことにありがたしと信心肝に銘じて尼となりいよいよ地蔵信仰の行人にぞなりぬ。凢そ渡りに船をまうけぬは橋をかけなんどする事は地蔵の御誓に叶ふ者なり。佛土は棘などの如きものもなくあらけき石瓦もなし。土は瑠璃を敷き道平らにして坂峯もなし。風雨の災なければつちくれ水を汚すことなし。彼の男、道を作りて橋をかけ心よりして地蔵の悲願門に入り心安く身命を継ぐ御利生にあずかる事のありがたさよ。源遠しといへども其の堂今に存在せり。佛躰現にいまして利益のほど古に異ならず。信ずべし頼るべし。

引証。本願經に云、若し未来世諸の下賤等の人有りて、或は奴、或は婢乃至諸不自由之人宿業を覺知して懺悔せんと要せば志心に地藏菩薩の形像を瞻禮し乃至一七日中菩薩名を念じて萬遍を滿ずべし。如是等人は此報を盡して後千萬生の中、常に尊貴に生れ更に三惡道の苦を経ず(地藏菩薩本願經如來讃歎品第六「若未來世有諸下賤等人或奴或婢。乃至諸不自由之人。覺知宿業要懺悔者。志心瞻禮地藏菩薩形像。乃至一七日中念菩薩名可滿萬遍。如是等人盡此報後。千萬生中常生尊貴。更不經三惡道苦」)。

 

 

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