福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

「真言宗義章」第二十四 四恩報答章

2025-01-24 | 諸経

第二十四 四恩報答章

(仏教徒たるもの四恩(父母・国・衆生・三宝)に報ずべきである。報恩しないと修行は成就しないどころか横死することになる)

佛は顕密諸経の中において広く四恩を報ずべき旨を懇ろに誡めおかせ給へり。父母の恩・国王の恩・衆生の恩・三宝の恩、これを四恩といふ。第一に父母の恩とは慈悲の心、骨髄に徹するが故に我らが為に種々の罪業を造りて種々の苦悲を受け、晨夜寒暑その労を辞せず、我を撫し我を育し給へるものは之れ偏に現在父母の恩なり。大聖釈尊は別して父母恩重経を説きたまひ、御父浄飯大王の崩御の砌、無上大覚の尊位を屈して親ら御棺を舁(か)かせ給えり。この時に人天大衆悉く感動して孝道の大なることを悟れり。父母の恩、大なることここに於いて知るべし。

第二に国王の恩とは、我ら所位の国界は山川大地より一微塵に至るまで一として国王の所属ならざるはなし。之に加えて制度・典章を制して他の侵陵を受けしめず、生命財産これによりて保障せられるものはこれ偏に国王の深重の恩なり。

第三に、衆生の恩とは・・一切衆生は生々世々輪廻する間に相互に父母となり妻子となり兄弟となり親友知識となり繋属の恩縁未だかって絶ゆることあらず。故に経にいはく「一切の男子は是我が父、一切の女人は是我が母なり」(大乘本生心地觀經 「識一切男子皆是父一切女人皆是母如何未報前世恩」)と。

第四に、三宝の恩とは、三宝とは佛・法・僧なり。佛宝とは佛は一切衆生の為に無量劫を経て難行苦行して遂に無上の仏果を証し給ひ、大慈大悲の心、普く法界をおおひ種々の方便を以て種々の妙法を説き、常恒に苦を抜き楽を与え給ふ。法宝の恩とは、大覚の慈父我らが為に積集して遺し給ひし三乗・人天・顕密・権実の法財なり。如説に修行する時は是に依りて各々世出世の果報を感ずることを得べし。僧宝の恩とは、十方三世諸仏所説の法宝を護持して之を法界に流伝し衆生の為に導師となり親友となり、仏法の正慧眼を授くるもの、是を僧宝深重の恩といふ。更に凡聖を論ずべからず、持破を問ふべからず。僧宝の中には現前師僧の恩最も重し。三宝の帰すべき所以を知らし、四恩の報ずべき所以を示し、撫育提撕(ていぜい、師が弟子を奮起させ導くこと)して詳らかに其の正路を教へ給ふがゆえなり。殊に真言行者は現前の師僧、授法の阿闍梨に対しては常に世尊の想ひに住して身命を惜しまず恭敬供養し、苟も師の短を語るべからず。この旨広く真言の経軌の中にあり。三世の如来悉くこの恩を知りてこの恩を報じ以て無上菩提を証し給へり。この恩を知らず、この恩を報ぜざる者は設ひ百劫に勤苦すとも争でか無上菩提を証することを得んや。華厳経に曰はく「汝等まさに恩を知りて恩を報ずべし。其れ衆生あって報恩を知らざる者は多く横死に遭ひ地獄に生ず」(大方廣佛華嚴經・如來隨好光明功徳品第三十五 「諸天子。汝等應當知恩報恩。諸天子。其有衆生。不知報恩。多遭横死。生於地獄。」)高祖大師、御遺戒に曰はく「五濁の澆風(薄情・軽薄)を変じて三学(戒・定・慧)の雅訓を勤め、四恩の広徳を酬ひて三宝の妙道を興せ、これ我願いなり」(これは「承和の遺戒」のこと。以下『承和の遺戒』です。「諸の金剛弟子等に語ぐ。それ頭を剃り衣を染めるの類は、我が大師薄伽梵なり。僧伽と呼ぶ。僧伽といっぱ梵名なり。翻じて一味和合と云ふ。意を等しくして上下諍論なく、長幼次第あり。乳水の別無きが如くして、仏法を護持し、鴻雁の序をあるが如くして、群生を利益す。もしこの義に違うをば魔党と名づく。仏弟子は即ち是れ我が弟子なり。我が弟子は即ち是れ仏弟子なり。魔党は即ち吾が弟子に非ず。吾が弟子は則ち魔の弟子に非ず。我れ及び仏の弟子に非ざるは、いわゆる旃陀羅悪人なり。旃陀羅悪人は則ち仏法国家の大賊なり。大賊は則ち現世には自他の利無く、後生には即ち無間の獄に入らん。無間重罪の人は、諸仏の大慈も覆蔭すること能はあざる所。菩薩の大悲も救護すること能わざる所なり。何に況[いはん]や諸天善神誰人か存念せん。宜しく汝等二三子、熟ら出家の本意を顧み、ただ入道の源由を尋ぬべし。長兄は寛仁を以て衆を調へ、幼弟は恭順を以て道を問へ。賤貴を謂うことを得ず。一鉢単衣にして煩擾を除き、三時に上堂して本尊の三昧を観じ、五相入観して無上悉地を証すべし。五濁の澆風を変じて、三学の雅訓を勤め、四恩の広徳を酬ひて、三宝の妙道を興せ。此れ吾が願なり。自外の訓誡は一ら顕密二教の如し。違越すること莫れ。もし故らに違越せば五大忿怒十六金剛、法に依って検殛せん。善心の長者等、内外の法律に依って治擯せよ。一を以て十を知れ、煩く多言せず。承和元年五月二十八日」)

 

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