日々の恐怖 7月1日 仮住まい(3)
それからはほぼ毎日、朝出るときはちゃん閉まっている扉が、下校する時には少しだけ開いていた。
でも特に何があるでもないし、そこにいるのは泥棒じゃないって分かったので次第に慣れていった。
そんなある日、家で遊ぶことになり、友人らと一緒に家まで帰って来たら、やはりまた扉が少しだけ空いている。
でもどうせ何事もないだろうと、普通に扉の前を通り過ぎようとした。
ところが、その時、急に扉の隙間から太い腕が飛び出してきて、俺の腕をガシリと掴んだ。
そして扉の中に引きずり込もうとぐいぐいと腕を引っ張ってきた。
俺は悲鳴をあげて無茶苦茶に抵抗したけど、引っ掻いたくらいじゃ腕は離れようとはしなかった。
幸い、俺の悲鳴に気付いた友人が、慌てて駆けつけてきてくれた。
友人は通路にころがっていた小さなスコップでその腕をザクッと刺した。
すると、扉の向こうから、
「 えうーっ!」
みたいな悲鳴が聞こえたかと思うと腕がパッと離れた。
その拍子に逃げ出して、急いで家の鍵を開けるとその中に飛び込んだ。
しかし逃げ込んだはいいけど、これではもう外には出られない。
電話するにもどこに電話すればいいかわからない。
悩みに悩んだ俺らは、とりあえずゲームをして気を紛らわせることにした。
今思うと相当のん気だ。
それから時間が経って、だいたい5時を回ったあたりにようやく母さんが帰ってきてくれた。
そして慌てて母さんは事の顛末を聞かせたが、最初はなかなか信じてもらえなかった。
しかし最終的に友人の話もあって信じてもらえ、とりあえず友人らは遅くなったということで母が車で送ることになった。
自分はその時一緒に行かなかったから分からなかったが、後の友人曰く、やはりその時も少しだけ扉は開いていたらしい。
そしてしばらくして父が帰ってきた。
すでに電話で母から聞かされたみたいで、帰って早々、管理人さんと抗議しに行くからとか言って出て行った。
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