日々の恐怖 7月25日 初雪の山(1)
初雪の山は登ってはいけない。
そういう話を仲間内でよく聞いたが、滑りやすくなるからだろうと思いバカにしてた知り合いは、命の危険に晒された。
彼は登山歴3年くらいの経験の少ないアマだったが、勝気な性格で人に頼ったりする事が嫌いだ。
なんでも1人でするタイプだった。
そのときも一人で冬山を登っていたが、初雪が降り始めていた。
積もったのは数センチだったので、彼は当初の計画通り登り続けた。
雪のせいで登山道が分かりづらくなった彼は、慎重に登り始めたが不安になりだした。
道を探しながら歩いていると、足跡があることに気づいた。
彼は喜んで胸をなでおろした。
“ この道で間違いないんだ。”
またいい調子で歩き始めた。
だが、その足跡に気になる点があった、
靴の足跡ではない気がする。
少なくとも登山ブーツではない。
明らかに細すぎるし小さい。
そのまま足跡を頼りに登り始めた。
周りの景色が少し違うなと、3年の経験で感づき始めた。
登山道というより獣道に近く、岩もごろごろして雑林も増えてきて、歩きづらくなってきた。
彼はその足跡の不気味さも気にかかっていたので、引き返すことにした。
かなり辺りも暗くなってきて、彼は焦りはじめた。
急いで自分の足跡を頼りに下山していると、異変に気づいた。
あの細い足跡が増えている.
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ