大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月31日 頭

2016-07-31 18:40:52 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月31日 頭




 学生時代、居酒屋でバイトしてたときのことだった。
一人でカウンターで飲んでたおじさんが席を立ち、私の方へ来てニコニコしながら話し掛けてきた。
 内容は支離滅裂で、

「 これからは中国の時代だ。
あとのことはよろしく頼むよ。」

みたいことを言ってた。
 私の両手を握りながら、とにかくニコニコ笑顔で上機嫌だった。
いつもなら、

“  手なんか触られたらウザイ!”

って思うけど、とても楽しそうに話してるので、

“ アハハ、酔ってるんだな、この人・・・。”

と、私も笑いながらうんうんと聞いてた。
 それを見かけた店長に仕事を言いつけられたので、その場を離れたけど、その人の席をチラッと見たら、ビールも料理もほとんど手をつけてなかった。
おじさんはその後、すぐに帰っていったらしい。

 次の日の早朝、店長のもとに警察から電話があった。
前日の夜中に、店の近くの交差点で初老の男性が倒れており、病院に運ばれたがすぐに息を引き取った。
 調べてみると、発見されたときよりもっと早い時間に、どこかで頭を打った形跡があった。
財布の中に店のレシートがあったので、

「 来店時に、なにかおかしな様子はなかったか?」

とのことだった。
 つまり、どこかで頭を強打→来店→店を出てすぐ倒れた、ということらしい。
だから言動がおかしくなってたのか。

「 あとのことは、よろしく。」

とか言ってたのも、何か意味があったのか。
 あんなにいい笑顔をしてたおじさんが、すでに死ぬことが決まってたなんて考えられない。
もしあのとき私が、おじさんが頭をケガしてることに気付いてたら、もしかしたら間に合ったかもしれないと、しばらく考え込んでしまった。












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