日々の恐怖 7月23日 浮遊物(3)
今度はKさんと私の二人だけで戻る。
マネージャーと他のスタッフが嫌がったからだ。
その取り残されたスタッフの名前を呼びながら、また地下最奥へ向かった。
ところが今度は、先ほど感じた空気の変化を感じない。
普通の感じだ。
電灯も懐中電灯の光も、先ほどとは違い明るく感じる。
最奥まで行く手前で、ゆっくりとそのホールスタッフが帰ってきた。
そして、
「 前にいつも新海を打っていた奥さんですよ。」
と私達に言う。
「 何で分かるの?」
と聞くと、
「 姿、見えるんです。」
もう今は消えていないと言う。
聞くと、我々が白いモヤと見えたものは、彼には奥さんの姿まで見えたと言うことです。
その話を聞いたマネージャーが、
「 最近あの奥さん来ていないからな・・・。
亡くなったのかもな。」
ほとんど毎日来ていた常連さんだという。
そう言えばここ2~3週間見ない。
それから1ヶ月くらい経ったころ、早番で開店前入場者の整理をしていると、その奥さんの姿があった。
“ あらっ・・・・?
あなた、死んでたハズ・・・??”
とびっくりしていると、マネージャーが駆けつけてきた。
久しぶりですお待ちしていました、みたいな事をマネージャーが言うと、意外な答えが返ってきた。
その奥さんはこの2ヶ月、重病になって入院していたと言う。
一時期は危篤で、死の一歩手前まで行ったらしい。
そんな時、パチンコ好き(と言うより海好き)を知っていた奥さんの家族が、枕元で海物語の通常変動、走って当たり、さらに確変昇格、サム等の音楽を流し続けた。
奥さんは夢か幻か、死の床で魚群を見たようだ。
そうしたらもう一度パチンコがしたくなって、
“ 死ぬものか!”
と踏ん張った。
そしてその時に、うちの店に入ろうとするが入れない、そんな夢を何度も見た。
そしていつも店に入れなくて、車を止めていた地下駐車場で悔しい思いをしたんだと言う話だった。
それで、その夢の時期が梅雨の時期と一致していた。
マネージャーは、
「 どんだけパチンコ好きなんだよ?!」
と何度も言っていました。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ