極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

エネルギーと環境 121

2025年01月29日 | 水素物語

彦根市ひこにゃんイラスト に対する画像結果
彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救ったと
伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の
井伊軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部隊編成のこと)と兜(
かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。


図6 人工光合成の概念図
出典:資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ「CO2を“化学品”に変え
る脱炭素化技術「人工光合成」」(2018年7月5日)

150


触媒(しょくばい)とは、一般に、特定の化学反応の反応速度を速める物
質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう

光触媒(ひかりしょくばい、photocatalyst)は、を照射することに
より触媒作用を示す物質の総称である。また、光触媒作用は光化学反応
一種と定義される。
通常の触媒プロセスでは困難な化学反応を常温で引き
起こしたり、また化学物質自由エネルギーを増加させる反応を起こす場
合がある。天然の光触媒反応として光合成が挙げられるが、人工の化学物
質を指すことが多い。英語で光触媒の作用は photocatalysis と呼ばれる。
大谷文章は『光を照射したときに起こる反応において,光を吸収する物
質が反応前後で変化しない場合』を広義の光触媒反応と定義している

✳️ 最新光触媒特許情報(2025.01.28)

1. 特開2023-108626 】光触媒、及び炭化水素の製造方法 国立大学法人千
葉大学(審査前)
【要約】金属酸化物半導体及び炭素系半導体から選択される少なくとも1
種により構成される担体と、該担体に担持された金属コバルト含有成分と
を含む、光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を還元するための
光触媒で、光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を効率良く還元
でき、一実施形態において二酸化炭素を炭化水素に変換できる光触媒を提
供する。


図1 キセノンアークランプの波長に対する光強度分布
【特許請求の範囲】
【請求項1】  金属酸化物半導体及び炭素系半導体から選択される少なく
とも1種により構成される担体と、前記担体に担持された金属コバルト含
有成分とを含む、光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を還元す
るための光触媒
【請求項2】  前記金属酸化物半導体が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、
酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、オキシ塩化
ビスマス、バナジン酸ビスマス、酸化ガリウム、酸化モリブデン、酸化タ
ングステン、酸化鉄、酸化セリウム、及びタンタル酸カリウムから選択さ
れる少なくとも1種であり、 前記炭素系半導体が、グラフェン、カーボン
ナノチューブ及びグラファイトから選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載の光触媒
【請求項3】  前記担体が、酸化ジルコニウムにより構成される、請求項1
に記載の光触媒
【請求項4】  前記金属コバルト含有成分の担持量が、前記光触媒中、コ
バルト原子換算で1~35重量%である、請求項1に記載の光触媒
【請求項5】  前記金属コバルト含有成分の担持量が、前記光触媒中、コ
バルト原子換算で2~15重量%である、請求項1に記載の光触媒
【請求項6】  前記金属コバルト含有成分が、金、銀、銅、鉄、ニッケル、
モリブデン、亜鉛、インジウム、白金、パラジウム、イリジウム、セレン、
錫及びレニウムから選択される少なくとも1種の金属をさらに含有する、
請求項1に記載の光触媒
【請求項7】  光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を還元して
炭化水素を製造するための、請求項1に記載の光触媒
【請求項8】  水素ガス及び/又は水分含有雰囲気下で、請求項1~7の
いずれか一項に記載の光触媒と、二酸化炭素及び一酸化炭素から選択され
る少なくとも1種とを接触させながら、紫外光及び可視光のいずれか一方
又は双方を含む光を前記光触媒に照射して、炭化水素を生成させる工程を
含む、炭化水素の製造方法。
【請求項9】  前記工程における雰囲気温度が、200℃未満である、請
求項8に記載の炭化水素の製造方法。
【請求項10】  前記炭化水素が、炭素数1~4の飽和炭化水素及び炭素
数2~4の不飽和炭化水素から選択される少なくとも1種を含む、請求項
8に記載の炭化水素の製造方法。
【請求項11】前記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エ
チレン、プロピレン、ブテン及びブタジエンから選択される少なくとも1
種を含む、請求項8に記載の炭化水素の製造方法。

【発明の効果】
  本開示によれば、光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を効率
良く還元でき、一実施形態において二酸化炭素を炭化水素に変換できる
触媒
を提供できる。特に本開示によれば、一実施形態において二酸化炭素
を一分子中に炭素数2以上の炭化水素に変換できる光触媒を提供できる。


図2 還元Co(7.5重量%)-ZrO2(550℃水素還元)触媒を
用いたCO2光還元反応による炭化水素の生成量の時間プロットである。


図3 還元Co(5.0重量%)-ZrO2(550℃水素還元)触媒を
用いたCO光還元反応による炭化水素の生成量の時間プロット



図4 還元Co(7.5重量%)-ZrO2(550℃水素還元)触媒を
用いたCO光還元反応による炭化水素の生成量の時間プロット


図5 CO光還元反応による炭化水素の生成量の時間プロット
             ー 中 略 ー
【0054】  本開示は、例えば以下の[1]~[11]に関する。
  [1]金属酸化物半導体及び炭素系半導体から選択される少なくとも
1種により構成される担体と、該担体に担持された金属コバルト含有成分
とを含む、光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を還元するため
光触媒
  [2]金属酸化物半導体が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、
酸化スズ、酸化ニオブ、チタン酸ストロンチウム、オキシ塩化ビスマス、
バナジン酸ビスマス、酸化ガリウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、
酸化鉄、酸化セリウム、及びタンタル酸カリウムから選択される少なくと
も1種であり、炭素系半導体が、グラフェン、カーボンナノチューブ及び
グラファイトから選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の
光触媒
  [3]担体が、酸化ジルコニウムにより構成される、上記[1]又は[2]
に記載の光触媒
  [4]金属コバルト含有成分の担持量が、光触媒中、コバルト原子換算で
1~35重量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の光触媒
  [5]金属コバルト含有成分の担持量が、光触媒中、コバルト原子換算
で2~15重量%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の光触媒
  [6]金属コバルト含有成分が、金、銀、銅、鉄、ニッケル、モリブデン
、亜鉛、インジウム、白金、パラジウム、イリジウム、セレン、錫及びレニ
ウムから選択される少なくとも1種の金属をさらに含有する、上記[1]~
[5]のいずれかに記載の光触媒
  [7]光照射により二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を還元して炭化水素
を製造するための、上記[1]~[6]のいずれかに記載の光触媒
  [8]水素ガス及び/又は水分含有雰囲気下で、上記[1]~[7]のい
ずれかに記載の光触媒と、二酸化炭素及び一酸化炭素から選択される少な
くとも1種とを接触させながら、紫外光及び可視光のいずれか一方又は双
方を含む光を光触媒に照射して、炭化水素を生成させる工程を含む、炭化
水素の製造方法。
  [9]上記工程における雰囲気温度が、200℃未満である、上記[8]
に記載の炭化水素の製造方法。
  [10]上記炭化水素が、炭素数1~4の飽和炭化水素及び炭素数2~4
の不飽和炭化水素から選択される少なくとも1種を含む、上記[8]又は
[9]に記載の炭化水素の製造方法。
  [11]上記炭化水素が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、
プロピレン、ブテン及びブタジエンから選択される少なくとも1種を含む、
上記[8]~[10]のいずれかに記載の炭化水素の製造方法。
【実施例】【0055】
  以下、本開示の光触媒及び炭化水素の製造方法を実施例に基づきより詳細
に説明する。
【0056】  [調製例]
  担体として0.500gのZrO2粉末(JRC-ZRO-3、触媒学会
参照触媒;平均粒子径12nm、比表面積94.4m2/g)と、0.0633
~0.274gの硝酸コバルト(II)六水和物(純度99.9%超、和光純
薬(株)製)とを、100mLの水(電気伝導率0.055μS/cm未満)
に加えた。
  得られた混合物を超音波(430W、38kHz)により20分間撹拌し、
マグネティックスターラーを用いて900rpmで1時間撹拌した。
0.0658~0.285gの水素化ホウ素ナトリウム(純度95%超、
和光純薬(株)製)を20mLの水に溶かした溶液を上記混合物に加え、
マグネティックスターラーを用いて900rpmで撹拌した。
【0058】  次いで、得られた懸濁液を、ポリテトラフルオロエチレン系
メンブレンフィルター(メルクミリポア社製、オムニポア、JVWP04700;
細孔径0.1μm)を用いてろ過し、得られた固体残渣を250mLの水
を用いて洗浄した。得られた粉末を100℃で一晩乾燥した。得られた粉
末を「Co34-ZrO2」と記載する。Co担持量は2.5~10重量%
であった。得られた粉末は薄緑色を呈していた。

【0059】  [水素ガスを用いた還元処理]
  それぞれ20mgのZrO2又はCo34-ZrO2を、パイレックス(登
録商標)ガラス循環システム(体積206.1mL)に接続された、内容
積46.0mLのU字型石英管に入れ、ロータリーポンプ及び拡散ポンプ
の両方を用いて、10-6Paの真空中で1時間処理した。次いで、20kPa
のH2(純度99.99%超)を系中に導入し、昇温速度15℃/分で450℃、
550℃又は700℃に昇温し、450℃で10分間、又は550℃若し
くは700℃で1時間保持した。このようにして還元処理された触媒サン
プルを、「還元ZrO2」又は「還元Co(X重量%)-ZrO2」(Xは
担持量を示す)と記載する。還元処理された触媒サンプルについてEXAF
Sにより金属コバルト含有成分の平均粒子径を算出したところ、0.96~
2.9nmの範囲に入ると推定された。

【0060】  [CO2及びCOの光還元試験]
  13CO2の光還元試験を、調製例で得られた触媒サンプル20mgを用い
て行った。13CO2の光還元試験では、2.3kPaの13CO2及び21.7
kPaのH2(純度99.99%超)を反応器に導入した。また、2.3
kPaの13CO2及び2.3kPaのH2を反応器に導入した光還元試験も
行った。また、2.3kPaの13CO及び21.7kPaのH2を反応器に
導入した光還元試験も行った。さらに、炭化水素への水素種付加速度を評
価するために、2.3kPaの13CO及び2.3kPaのH2を反応器に導
入した光還元試験も行った。各反応は常温で行った。
【0061】  上記試験において、キセノンアークランプ(SX-UID5
02XAM、ウシオ電機(株)製;500W)を用いて、紫外・可視光を、
Y型石英ファイバーライトガイド((株)オプテル)を介して、上記触媒サ
ンプルを含む石英反応器の上部及び下部から48時間照射した。ファイバ
ーライト出口(Φ=5mm)と触媒サンプルとの距離は20mmであった。
触媒サンプルの中心位置における光の強度は142mW/cm2であった。
キセノンアークランプの波長に対する光強度分布を、紫外・可視光源から
20mmの位置に置かれた分光放射照度計(USR45DA、ウシオ電機(
株)製)を用いて測定した。結果を図1に示す。

【0062】  13CO2及び13COの光還元・変換試験の生成物を、オンラ
イン接続したガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS、JMS-Q1050
GC、日本電子(株)製)を用いて経時追跡した。ここで、分子篩「13
X-S」(長さ3m、内径3mm;ジーエルサイエンス(株)製)の充填
カラムを用いた。ヘリウム(0.40MPa、純度99.9999%超)を
、搬送ガスとして用いた。パイレックス(登録商標)ガラスシステムから
なるサンプリングループ(4.6mL)を、ロータリーポンプ及び拡散ポ
ンプを用いて10-6Paの真空下に維持してから反応ガスをサンプリングし、
その後1.5mの不活性化石英ガラス管(内径250μm)を介してGC-
MSに接続した。石英ガラス管は、分析中の気体の吸着を避けるため、
120℃に維持した。
【0063】
  表1に、13CO2及び13COの光還元・変換反応の結果を示す。
【0064】
000002
【0065】  酸化ジルコニウム上に金属コバルト含有成分が担持された
複合触媒にCO2及びH2雰囲気で紫外・可視光を照射すると、メタンに加
えて、エタン及びプロパンが生成した(実施例4に関する図2参照)。こ
のように、上記複合触媒を用いると、メタンの生成に加えて、C-C結合
形成反応が起きることが見出された。
  還元ZrO2光触媒として用いた場合は、主にCOのみが生成した(比
較例1)。H2で還元処理されていないCo34-ZrO2光触媒として
用いた場合も、主にCOのみが生成した(比較例2)。これに対して、還
元Co-ZrO2を用いた場合は、上述したように、メタン、エタン及びプ
ロパンから選択される少なくとも1種の炭化水素が主に生成した(実施例
1~6)。以上の結果から、高温でのH2還元処理が、酸化ジルコニウム上
にコバルト含有成分が担持された複合触媒を用いたCO2の光還元において
重要であると考えられる。
【0067】
  還元Co(7.5重量%)-ZrO2(550℃)が最も高い触媒活性を
示した(実施例4)。実施例1~6での各生成物の生成比(モル比)は、
多少の変動はあるものの、おおよそ一定となっている。したがって、実施
例1~6の条件では、同じ反応機構を経て反応が進行していると推測される。
  13CO2の代わりに13COを用い、2.3kPaの13CO及び21.7k
PaのH2を反応器に導入した(実施例7に関する図3参照、実施例7~8
)。実施例7~8でも、各生成物の生成比(モル比)が、おおよそ一定と
なっている。物質量比で1326及び1338の生成比が炭化水素全体の
13%程度まで上昇した。1326及び1338の生成比が増加している
ことから、C-C結合形成反応は金属コバルト表面に存在するCHOH種
やCHx種の濃度に依存していると推測される。

  多段階水素付加の過程を遅くさせるため、2.3kPaの13CO及び2.3
kPaのH2を反応器に導入した(実施例9、図4参照)。その結果、
1324の生成が確認された。生成量のプロットは逐次反応のグラフとな
り、2CH2→ C24 → C26の素過程での反応速度定数はそれぞれ
0.51s-1、0.0077s-1と求められた。0~2時間までの生成速
度は5.5μmol・h-1・g-1であり、また、全生成物の25%程度が
1324であった。

  13CO及びH2雰囲気で、光触媒として還元Co(7.5重量%)-Zr
2(550℃)を用いて光還元試験を行った場合(実施例8及び9)、
2圧を21.7kPaから2.3kPaに下げると光触媒反応全体が抑
制され、また、エチレン生成が確認された(図5(A)(1)及び(2))。
エチレンは逐次反応の中間物質であり、さらにエタンに転換された。

  13CO及びH2雰囲気で、光触媒として還元Co(7.5重量%)-Zr
2(700℃)を用いて光還元試験を行った場合、H2圧を21.7kPa
から2.3kPaに下げると(実施例9a)、やはり光触媒反応全体が抑
制され、プロピレンはその生成速度が低速になったものの定常生成した一
方、エチレンは逐次反応的にエタンに転換された(図5(B))。特に
触媒
として還元Co(7.5重量%)-ZrO2(700℃)を用い、13CO
圧が2.3kPa、H2圧が2.3kPaの条件での光還元試験を行った場
合、反応初期3~4時間までは炭素水素生成物の内、エチレンが主生成物
となった。
  光照射に用いた光の波長カットを、各々のファイバーライト出口に設置さ
れたシャープカットフィルターを用いて行った。型番「UV32」及び
「Y52」(厚さがそれぞれ2.5mm;HOYA(株)製)のフィルタ
ーを、それぞれ、波長λ>320nm及びλ>520nmの光を透過させる
ために用いた。光触媒として還元Co(7.5重量%)-ZrO2(550
℃)を用いたCO2の光還元反応を、13CO2(2.3kPa)及びH2
(21.7kPa)の条件で行った。結果を表2に示す。
表2.

000003
  ZrO2のバンドギャップが5.0eV(λ=248nm)程度であるこ
とから、紫外光をカットすることで炭化水素の生成速度が低下するものの、
入射光の波長が320nm超でも520nm超でも活性がある。これはZr
2表面の酸素欠陥サイトに吸着したCO2分子が反応しやすいためである
と考えられる。

2.特開2023-25408 光触媒の製造方法及びこれにより製造される光触媒
 国立大学法人千葉大学
【要約】より広範囲な波長範囲に適用可能であるとともに、簡便な方法で
光触媒を長期間安定的に固定化する光触媒の製造方法及びこれにより製造
される光触媒を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る光触媒の製造方法は、チタン粉末と球
状基材を混合して前記球状基材の表面にチタン膜を形成してチタン膜形成
球状基材とするチタン膜形成工程と、チタン膜形成球状基材を酸素及び窒
素の存在下において焼結する焼結工程を有し、本発明の他の一観点に係る
光触媒はチタン膜形成球状基材を焼結して得られる。
【選択図】図1

【図1】光触媒の基本原理を示す図
【特許請求の範囲】
【請求項1】チタン粉末と球状基材を混合して前記球状基材の表面にチタ
ン膜を形成してチタン膜形成球状基材とするチタン膜形成工程と、前記チ
タン膜形成球状基材を酸素及び窒素の存在下において焼結する焼結工程と、
を有する光触媒製造方法。
【請求項2】前記球状基材は、セラミックスボールである請求項1記載の
光触媒製造方法。
【請求項3】前記焼結工程は、放電プラズマ焼結により行う請求項1記載
光触媒製造方法。
【請求項4】前記焼結工程は、1000℃より高く1300℃以下の温度
で焼結を行う請求項1記載の光触媒製造方法。
【請求項5】前記焼結工程は、前記チタン膜形成球状基材に5MPa以上
40MPa以下の圧力を加えて焼結する請求項1記載の光触媒製造方法。
【請求項6】前記焼結工程の焼結雰囲気において、前記窒素は、前記酸素
の含有量を1とした場合、10以上1000以下の範囲にある請求項1記
載の光触媒製造方法。
【請求項7】チタン膜形成球状基材を焼結して得られる光触媒

000004
【図2】酸化チタン及び窒素ドープ酸化チタンのエネルギーバンド図を
示す図

【図3】放電プラズマ焼結装置の概略を示す図


【図4】実施例において作製した焼結体
(1000℃)の外観を示す写真図


【図5】実施例において作製した焼結体(1100℃、1200℃、
1300℃)の外観を示す写真図

【図6】実施例において作製した焼結体(1100℃、1200℃、
1300℃)の断面写真図



【図8】実施例において作製した焼結体における可視光照
射時間とMB水溶液濃度の関係を示す図である。


【図9】実施例において作製した焼結体における紫外光照
射時間とMB水溶液濃度の関係を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
  以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す
実施形態、実施例の記載にのみ狭く限定されるものではない。
  図1は、光触媒の基本原理を示す図である。太陽光からの紫外線1が酸
化チタン2に照射されると、酸化チタン2に電子(e)3と正孔(h
4が生じる。そして空気中の酸素(O)5と電子3、水(HO)6と
正孔4がそれぞれ反応を起こし、酸化チタン2の表面に、スーパーオキサ
イドイオン(O)7、水酸ラジカル(OH)8という分解力を持つ2
種類の活性酸素が発生する。そして、これらの活性酸素が汚染物質9を分
することにより、防汚、抗菌、殺菌、脱臭、浄化等の様々な効果を発揮す
ることができる。
 ところで図2(a)は、一般的な酸化チタンのバンド図を示す図である。
酸化チタンのバンドギャップは約3.2eVであり、波長が380nm以
下の紫外線が照射されたときにしか電子が導電帯に励起せず、光触媒とし
て機能しない。一方、太陽光に含まれる紫外線はわずか約3%程度に過ぎ
ず、一般的な酸化チタンでは、太陽光の可視光波長成分のエネルギーを有
効に利用することができない。
  これに対し図2(b)は、窒素をドープした酸化チタンのバンド図を示
すものである。本図に記載の酸化チタンは、バンドギャップが小さくなっ
ており、波長が500nm以下の可視光でも電子が導電帯に励起し、光触
として機能することができる。したがって、酸化チタンに窒素をドープ
することで、可視光にも応答する光触媒が製造できる。
 上記を考慮して、本実施形態の光触媒製造方法は、(1)チタン粉末と球
状基材を混合して球状基材の表面にチタン膜を形成してチタン膜形成球状
基材とするチタン膜形成工程と、(2)チタン膜形成球状基材を酸素及び
窒素の存在下において焼結する焼結工程と、を有する。
本実施形態において、チタン粉末とは、言葉のとおりチタンを含む粉末で
ある。チタン粉末の大きさは、後述する焼結工程によって十分に焼結する
ことができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば平均粒径が
1μm以上100μm以下、より好ましくは50μm以下の粉末である。な
おこの粒径の測定方法としては限定されるわけではないが、例えばレーザ
ー回折式粒度分布測定装置を用いることにより測定可能である。
また、本実施形態において、球状基材とは、上記の記載から明らかなよう
に、チタン粉末をコーティングするための球状の物質である。本実施形態
において「球状」とは、完全な球体を含む概念ではあるが、現実的には不
可能であり、現実的に許容される球状のものを含む。
球状基材の材質としては、本実施形態に係る光触媒(以下「本光触媒」と
いう。)を形成することができる限りにおいて限定されるものではないが、
セラミックス、金属及びこれらの混合物のいずれかを含むものであること
が好ましい。また球状基材がセラミックスである場合、これもまた限定さ
れるわけではないがアルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウム等を例示す
ることができ、球状基材が金属である場合、鉄及びその合金(ステンレス
等)等を例示することができる。
  また、球状基材の大きさは、本光触媒を製造することができる限りにお
いて限定されるわけではないが、例えば平均粒径が0.5mm以上10mm
以下、より好ましくは1mm以上5mm以下の粉末である。なおこの粒径
の測定方法としては限定されるわけではないが、顕微鏡写真を複数箇所に
おいて撮影し、撮影された個々の球状基材のサイズを測定して平均的に求
める方法を採用することができる。
  また本実施形態において、チタン粉末と球状基材の混合方法としては、
均一に混合することができる限りにおいて限定されず、例えばボールミル、
ポットミル、ロータリーミキサー等を用いて混合することができる。なお、
この結果、チタン膜が形成された球状基材を本明細書では「チタン膜形成
球状基材」という。
  また本実施形態においてチタン膜形成球状基材を焼結する焼結工程は、限
定されるわけではないが、放電プラズマ焼結によって行われることが好ま
しい。放電プラズマ焼結は迅速な昇温(短時間での処理と粒成長の抑制)
と還元雰囲気中での処理が可能といった特徴を備え、この焼結法によって
光触媒の固定化を行うとともに、可視領域にまで広げた光触媒機能を発揮
させることができる。
  また本実施形態において、焼結工程は、1000℃より高くチタンの融点
(1668℃)より低い温度で焼結することが好ましく、より好ましくは
1100℃以上1300℃以下の温度範囲である。1000℃より高くす
ることで球体チタン膜同士を結合させることが可能となり、1100℃以
上とすることで高い光触媒性能を発揮することが可能となる。一方、チタ
ンの融点より低くすることでチタンが球状基材から剥がれ落ちてしまうこ
とを防止することが可能となるとともに、1300℃以下とすることで、
球状基材同士が融着してしまう虞を防止できるといった利点がある。
  また本実施形態において、焼結工程は、チタン膜形成球状基材に5MPa
から40MPaの圧力を加えて焼結することが好ましい。この範囲とする
ことで、安定的に固定化することができる。
  また本実施形態において、焼結工程は、上記の温度で焼結することができ
る限りにおいて限定されるわけではなく、上記好ましい温度まで昇温させ
た後、1分以上10分以下の温度保持時間を設けることが好ましい。
 以上、本実施形態によれば、一回の焼結工程すなわち短時間で固定化され
た可視光応答性光触媒焼結体を製造することができ、生産効率を飛躍的に
向上させることができる。また、本方法では焼結工程を採用しておりバイ
ンダーポリマーの劣化や酸化チタン薄膜の低耐久性の問題がなく耐久性に
優れ、成形加工しやすい可視光応答性光触媒が製造できる。また、本実施
形態によると、球状基材を用いているため、チタン膜が形成された場合で
も球状基材同士の間が隙間として活用可能である。そのため、表面積が大
きく確保できるとともにその内部まで触媒としての機能を確保できるとい
った効果がある。特に、水等の液体を透過させることが可能となりフィル
ターとしての機能が大きいといった効果もある。
【実施例】【0037】
  ここで、上記実施形態の効果を確認するため、実際に光触媒を製造しその
効果を検証した。以下具体的に示す。
【0038】(実施例1)
  図3は、放電プラズマ焼結装置の概略を示す図である。チタン膜形成球状
基材は焼結ダイ51に詰められ、加圧機構59により上部パンチ54と下
部パンチ55に圧力が加えられ、この結果チタン膜形成球状基材52に圧
力が加えられる。焼結ダイ51はグラファイト型であり、内径φは20mm
(φ20)とした。焼結ダイ51には、焼結電源(パルス電源)58によ
りON、OFFが繰り返される直流パルス電圧が印加され、焼結ダイ51に
直流パルス電流が流れることにより急速に温度が上昇する。焼結ダイ51
の温度上昇に伴って紛体52も急速に加熱される。なお、図中、符号53
は水冷真空チャンバーである。

  本実施例では、原料粉末としてTi粉末(平均粒径30μm、大阪チタニ
ウムテクノロジーズ(株)TSP-350)及びアルミナボール(平均粒
径1mm、(株)ニッカトー  HDボール(HD-1))を用い、秤量した
Ti粉末とアルミナボールを遊星型ボールミル(フィリッチュ  P-5/4
)で10時間混合してからグラファイトの型(焼結ダイ)に敷き詰め、放
電プラズマ焼結(SPS:Spark  Plasma  Sintering)
装置により特定の温度まで加熱しながら10MPaの圧力を加え、この特
定の温度になった後の保持時間を3分間として焼結を行った。なおこの特
定の温度は、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃のいずれ
かとした。
この結果得られた焼結体の外観を図4及び図5に示す。1000℃ではチ
タン膜が形成されたアルミナボールそれぞれは焼結されていたようであっ
たが、結合が十分ではなく、アルミナボールが衝撃によって崩れてしまう
ほど脆い状態であった。一方、1100℃から1300℃の焼結の結果で
は、強固に結合した状態を保つことができていた。
 また、図6に、1100℃、1200℃、1300℃の焼結体の断面の写
真図を示す。これらにおいては、いずれも隙間が保持されており、Ti膜
によって接合されていることを確認した。一方で1300℃の焼結体では、
球状基材の変形が激しく隙間が保持できていないことが確認された。
  次に、得られた焼結体のそれぞれについて、それぞれ色素分解法による
触媒
機能の評価を行った。ここで色素分解法とは、色素を光触媒表面に吸
着させ、その脱色速度を測定し、分解活性を評価する方法である。

  図7は、本実施例で行った色素分解法の概略を示す図である。前処理とし
て、(1)アセトンによる洗浄、(2)自然乾燥(24時間)、(3)紫
外線照射(24時間)、(4)暗所にてメチレンブルー(20μmol)の
吸着(12時間)を行った。その後、内径20mmのセル81に光触媒
結体82を入れ、10μmol/Lの試験用メチレンブルー(MB)水溶
液83を7mL注ぎ、ブラックライト84(Pananasonic社製
蛍光灯。FL20SS-ECW)により1mW/cm、照度:5000l
xの光を照射し1時間ごとの吸光℃を測定して、Beerの法則により濃
度を測定した。
【0044】
  図8に、可視光照射時間とMB水溶液濃度の関係を、図9に紫外線照射
時間とMB水溶液濃度の関係をそれぞれ示す。これらのいずれにおいても、
時間とともにMBの濃度が下がっていることが示され、特に1100℃に
おいては最も効果が高いことが確認された。なお、それぞれの紫外線光下
における光触媒機能評価結果としては、1100℃においては15.4(
K・μmol-1-1min-1)であり、1200℃では9.8(K・
μmol-1-1min-1)、1300℃では5.5(K・μmol-1
-1min-1)であった。
以上、本実施例により、可視光においても紫外線においても光触媒機能を
確認することができ、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
  本発明は光触媒としての産業上の利用可能性がある。

心に響く歌曲     『家族になろうよ 福山雅治』
              ジャンル:J-POP 2011年8月1日
              作詞/作曲:福山雅治


 
今日の言葉:

   春が来ても、鳥たちは姿を消し鳴き声も聞こえない。
                   春だというのに自然は沈黙している。

                            レイチェル・カーソン 『沈黙の春』

 

                                                                                                     

 

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