極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

真空巡礼の明日

2013年06月11日 | ネオコンバーテック

 

 

 

 I would rather discover one true cause than gain the kingdom of Persia.

 

およそ、この世界で真空という言葉ほど不自然で謎めいた響きはなく、真空ついて、古代ギリシア
時代から論争が絶えなかった。デモクリトスの原子論では、万物の根源である粒子アトム(
atom)が、無限の空虚な空間であるケノン(kenon)の中で運動しているとして、真空の存在
を認めたが、アリストテレスは「自然は真空を嫌う」(真空嫌悪)と述べ、空間は必ず何らかの物質が
充満しているとして、真空の存在を認めなかったが、17世紀に入り議論に集束の兆しが現れ
た。1643年にエヴァンジェリスタ・トリチェリは、一方の端が閉じたガラス管に水銀を満たし、
このガラス管を立てると、水銀柱は約76cmとなり、それより上の部分が真空になっていること
を発見。また、オットー・フォン・ゲーリケは1657年、ブロンズ製の半球を2つ合わせて中空
の球にして、内部の空気を抜いて真空にする実験を行いあっと驚かせる。この2つの半球はぴ
ったりとくっ付き、16頭の馬で引っ張ることでようやく外すことができたのである。この実験
はマクデブルクの半球として知られ、これらは真空の発見であると同時に、気圧の発見でもあ
った。何も存在しない以上、その空間が何らかの吸引力を発揮するわけがなく、周囲の空間か
らの圧力を想定する必要に迫られる。

さらに、18世紀に入っり真空が一般化し、様々な真空ポンプが開発され、蒸気機関や、排水ポ
ンプ、紡績機械などの動力に応用展開され産業革命の基礎的技術になるが、19世紀に入り、白
熱電球や、真空管などが開発されることで「真空」という名称が広がり、さらにより高性能の
真空ポンプの開発が進むようになっていく。20世紀に入ると電球、真空管の進歩や、真空技術
の発展により、粒子加速器や電子顕微鏡など真空を利用した機器の発達、また電子やイオンに
関係する新たな知識、技術が生まれ、一方で食品や鉄鋼などの産業に真空が利用されるように
なると真空ポンプや真空計、真空部品などが産業化され発展する。

 

特に1953年にB-Aゲージが開発されると今まで測定できなかった超高真空が測定可能となり超
高真空に対応した真空ポンプや真空部品が発展していくことになる。現在における代表的真空
利用はシリコンウェハーへ様々なプロセスを経て形成する集積回路を製造する半導体製造工程
であ
る。この半導体産業の発展により真空関連産業は急速に発展し、今では多くの産業を支え
る基盤産
業として貢献。現在では、真空とは、十分な低温状態下を仮定した場合に、その物理
系の最低エネルギー状態として定義され、粒子が存在して運動していると、そのエネルギーが
余計にあるわけで、それは最低エネルギー状態でなため、十分な低温状態下では粒子はひとつ
もない状態が真空であるとする。ただし、場の期待値はゼロでない値を持ち、それを真空期待
値という。たとえば、ヒッグス場がゼロでない値をもっていることが、電子に質量のあること
の原因となっている-以上が量子論による定義だが、日本工業規格JISでは「大気圧より低い圧
力の気体で満たされた空間内の状態」と定義。これは1気圧に対してではなく、周囲の圧力に
対して減圧された状態を示しており工業的に利用できる圧力として定義され、真空とは全く空
気のない状態をイメージされるが、JISにおける真空の定義は「大気圧より低い圧力の気体で満
たされた空間内の状態」を指す。このように、この圧力の低い状態で起こる現象を利用し、吸
引、吸着、成型、充填、置換、保存、乾燥、蒸留、濃縮、脱気、成膜、断熱、冷却といった操
作が行われている。

 

ところで、真空プロセス及び真空装置を大量に多用する産業として半導体製造が出現するやい
なやその市場規模は、下表のように推移し、国内では、元来,真空産業の中核を占める真空ポ
プ産業は,欧米からの輸入が中心だった。半導体や精密機器産業の成長に合わせ、日本国内
に合弁や独自の真空ポンプメーカーが登場。半導体、FPD産業の成長に合わせ、国内組は大きく
成長,欧米組を陵駕する。実際は欧米はもちろん韓国、台湾など日本メーカーの手が回らない
ところで、欧米組はかなりのシェアを有し、国内でも
新規参入組が登場台風の目となるという現
状にあり、日本真空機器全体の売上額は凡そ、7千億円規模までに成長してきている。今後の動向と
しては、半導体・デジタル家電・デバイスの売上規模に比例していくものと考えられるが、わたし(たち)
が注目しているのは、新規な量子ドット製造産業市場-とりわけ太陽電池-の創生とその伸長にある。

 

 
スリーディープリンターをはじめナノプリンタブルな製造プロセスや装置の研究開発に期待が
かかる反面、
堅牢な真空構造を要す真空プロセスは残念ながら今後も堅調に続伸しそうな勢い
にある。そこで、最近の真空ポンプ製造技術の新規考案動向をネットで下調べしてみた。

 特開2013-100781「ターボ分子ポンプ装置」

 【符号の説明】
1 ターボ分子ポンプ装置  2 翼排気部  3 ネジ溝排気部  6 ロータ翼  7 ステータ翼 
10 ターボ分子ポンプ 12 上ケース 12a 第1のフランジ 12b 第2のフランジ 
13 ベース 13a ベース上部  13b ベース下部  14 第1のベース 14a 第3の
フランジ 14b 第4のフランジ 15 第2のベース 25 吸気口  30 ロータ 45排
気口  61~68 締結部材  70 制御ユニット 91 第1の取付部材  92 第2の取付
部材

上図のように、ターボ分子ポンプ装置は、半導体装置、液晶等の製造装置に取り付けられ、内蔵
するロ
ータを高速に回転し、気体分子を吸気口から引込み、排気口から排出して製造装置内部を
高真空にする。ターボ分子ポンプ装置は、ロータを内蔵するターボ分子ポンプに、このターボ分
子ポンプを駆動制御する制御ユニット(電源装置)が締結部材により固定された一体型の構造を
有し、制御ユニットをターボ分子ポンプに一体化すると、ターボ分子ポンプのモータや、磁気軸
受に接続するケーブルの引き回しが簡素となり、接続作業の効率が向上。このようなターボ分子
ポンプと制御ユニットが一体化されたターボ分子ポンプ装置は、多数のターボ分子ポンプ装置が
必要とされる大型の製造装置用に必要である。

ターボ分子ポンプのロータは、高速で回転し、外乱等によりロータ破壊が起き、ロータが破壊す

ると、ロータの破片がケース部材に衝突し、ケース部材に大きな破壊トルク(急停止トルク)を
与え、吸気口の周縁部にフランジを設け、締結部材によりこのフランジを製造装置に締結して製
造装置に固定する。制御ユニットは、製造装置に固定されたターボ分子ポンプに締結部材で締結
固定するが、ロータが破壊した場合、ケース部材に与えられた破壊トルクは制御ユニットにも伝
する。 制御ユニットとターボ分子ポンプとを締結する締結部材の強度を破壊トルクに耐えるに
締結部材のサイズを大きくする必要があるが、これが制御ユニットを大型化し、ターボ分子ポ
ンプのケ
ースの底面に八角形の環状凹部を形成し、制御ユニットのケースに環状凹部に嵌合する
環状凸部を設けることで対応。このため、制御ユニットのケースを、肉厚を大きくしたり、強度
が大きい材料により形成したりする必要があり、装置が大型化され、または製造コストが上昇す
る要因となる。これに対し、ケース部材と、ケース部材内に収容されたロータとを有し、ロータ
を高速に回転してケース部材の吸気口から排気口側に気体分子を移送するターボ分子ポンプと、
ターボ分子ポンプを駆動制御する制御ユニットのケース部材に、吸気口側に設けられた、外部装
置に取り付けるための第1の取付部と、排気口側に設けられた、外部装置に取り付けるための第
2の取付部とで形成、ターボ分子ポンプと制御ユニットとは、ターボ分子ポンプと制御ユニット
とを固定する締結部材で固定することで、ケース部材に作用する破壊トルクは、ケース部材の第
1、第2の取付部から外部装置に伝達され、ターボ分子ポンプと制御ユニットとを締結する締結
部材および制御ユニットのケースの強度を小さくし、引いては制御ユニットを小型化および製造
コストを低減させることができる構造の新規考案である。

このように、真空容器・真空装置はデジタル革命の基本特性が効きにくい分野ではあるが、それ
は「真空」に絡む操作に起因するのではあるが、これが現在的な重要プロセスであることの証で
もあることを改めて腑に落とすこととなった。

    

野村克也元楽天監督(日体大客員教授)は野球は頭脳ゲームで東京大学の野球部が勝てないのは
可笑しいと評論し、サッカーは頭脳ゲームでないようなことを言っている。確かに、サッカーは
動的で密集戦ゲームで、野球は静的で幾何学戦ゲームだ、と思う。大リーガーでは岩隈久志投手
が好調で、何と言ってもコントロールが抜群だが、彼をみているとなるほど技量もさることなが
ら「スマート」だと感歎してしまう。
 

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