極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

イーロンの野望「天下布光」

2016年08月12日 | デジタル革命渦論

 

     

             わたしには高度な資本主義下の市民が、政府に対して部分的な
             リコール権を行使
していることを意味しているとおもえる。

                               「住専」現象とはなにか:情況との対話
                        
                        サンサーラ 1996.04
                 

                                            
                                                      Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

● 夏の暑さにひこにゃんも打ち水のお手伝い

 

  

昨年10月、米国の太陽電池メーカーであるソーラーシティは、屋根型ソーラーパネルでエネル
ギー効率22
%を実現する太陽電池モジュールを開発したと発表した。同社はテスラモーターズ
などを展開するイーロン・マスクののいとこが創業した企業で、マスクも会長を務める。新しい
ソーラーパネルは米国ニューヨーク州バッファローにある1ギガワットの量産工場で生産を行う。
フル生産を行えば、1日9千~1万のソーラーパネルを生産する。

 Aug 10, 2016

【百パーセント再エネ時代:ステラ 太陽光で垂直統合】

昨年10月、米国の太陽電池メーカーのソーラーシティ社は、屋根型ソーラーパネルでエネルギ
ー効率22%を実現する太陽電池モジュールを開発したと公表。同社はテスラモーターズなどを
展開するイーロン・マスクのいとこの創業企業で、マスクも会長を務める。新しいソーラーパネ
ルは米国ニューヨーク州バッファローにある1ギガワットの量産工場で生産を行い、フル生産を
行えば、1日、9千~1万のソーラーパネルを生産する。

 Aug 9, 2016

今月9日、同社の最高経営責任者のイーロン・マスクとソーラーシティ最高経営責任者のリンド
ン・リヴは、ルーフ・トップソーラーパネルを新規に取り付けるだけでなく、既設の劣化屋根の
改修時にも取り付ける(年間5百万棟市場との予測)、世界初の持続可能なエネルギー会社によ
る垂直統合事業に、今後2億8千億ドルを投資し共同事業を行う方針であるという
 太陽光→
核融合エネルギ利用→ソーラーパネル→ハウジング(ルーフ・トップ)→蓄電・充電装置→電気
自動車と垂直統合する「天下布光」(てんかふっこう:世界をあまねく太陽光エネルギーで治め
る)というイーロン・マスクの野望である。


 Jul 21, 2016

Elon Musk Unveils Tesla's 'Master Plan'

  

  

【量子ドット工学講座 18】

今回は、信頼性が高く、効率のよい量子ドットを得る量子ドットの製造方法(スタンレー電気株
式会社)の
特許事例を紹介。この方法はⅡ族元素としてZn,Mgの少なくとも1つを含む Ⅱ-
Ⅵ族半導体材料で形成
された母材粒子を準備する工程と、液相中において、前記母材粒子をエッ
チして、特定面方位を有し、ナ
ノシード粒子に加工する加工工程と、を有するもの(下図4参照
)。


特開2016-145972 量子ドットの製造方法と量子ドット ;2016年08月12日


【符号の説明】

11  母材粒子、13  InGaN、15,31 InAlN, 39  フラスコ 16  ポート、 
17  シリンジ、18  温度測定部、19  ヒータ、 27  励起光源、28  モノクロメータ,
32  反応容器、33  温度センサ(熱電対)、 34  ヒータ 35  撹拌機構(回転羽根)、
36~38    吸気口/排気口。

 上図1は、ZnOS混晶系、GaInN混晶系、AlInN混晶系の格子定数とエネルギーギ
ャップの関係を示すグ
ラフである。「混晶系」は、両端物質と中間の混晶を含む系を表す用語で
ある。横軸がナノメータを単位と
する格子定数を示し、縦軸がeV(エレクトロンボルト)を単
位とするエネルギーギャップを示す。発光波長
を決定するエネルギーギャップは、ZnO:3.
2eV、ZnS:3.8eV、AlN:6.2eV、GaN:3.4eV、InN:0.64e
Vである。

6方晶系の結晶をc軸方向に結晶成長する場合、成長面内の格子定数としてa軸方向の格子定数
を用いる。ZnO、ZnSの格子定数はa軸0.324nm、0.382nm、AlN、GaN、
InNの格子定数はa軸0.311nm、0.320nm、0.355nmである。化合物を対
とする場合、格子定数の1番近い組み合わせでも、ZnOの0.324nmとGaNの0.32
0nmであり、1%を超える格子不整が存在する。

 図2は、図2は、ZnO1-x混晶系、Ga1-xInN混晶系、Al1-xInN混晶系
の組成xに対する格子定数(a軸方向)の変化を概略的に示すグラフである。横軸が組成xを示し
縦軸が格子定数を示す。ZnOSとAlGaInNは同じ六方晶系のウルツ鉱結晶構造を持つ。
混晶を形成すると両端物質の中間の格子定数を調整でき、格子整合を実現できる。格子定数、エ
ネルギーギャップ、組成は一定の関係にあり、図2は、基本的に図1と同じ内容を示す。着目す
るパラメータに従って、グラフを使い分ける。例えば、格子整合する組成は、図2において、縦
軸(格子定数)」が同一となる組成である。好ましい格子整合の整合範囲は、小さい方の格子定
数を基準(100%)として、格子定数の差が±1.0%以内であろう。

ZnO1-xとAl1-xInN、Ga1-xInNとが格子整合可能な領域を四角で囲って
示す。Al1-xInN(x:0.3~1.0)、Ga1-yInN(y:0.15~1.0)、
ZnO1-z(z:0.47~1.0)の組成範囲において、ZnOSとAlInN,GaI
nNの格子整合が可能である。

 

   

【帝國のロングマーチ 24】      

        

● 折々の読書  『China 2049』42       

                                     秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

 【目次】   

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣)   
  

 

    第9章 2049年の中国の世界秩序 

                          反客為主――反って客が主に為る

                             『兵法三十六計』第三十計


 【危機●】中国はエアポカリプス(大気汚染による世界終末)を輸出する

  2013年1月、「悪臭を放つ煙霧}が北京を飲み込んだ。「エアポカリプス(訳注*「大
 気」と「終末」の造語)」と呼ばれるそれは何週間も続き、その問住民や滞在者は、大
気汚染
 の「臭いや味がして、うんざりさせられた(注46)」,今日の中国の繁栄は、産
業革命にさら
 に筋肉増強剤を注入したかのようだ。その結果、中国人は、地球の大部
分を破壊する力を手に
 し、実際、すでにそうしはじめている。

  中国はまもなくアメリカの2倍の大きさのGDPを持つだけでなく、2015年までに、危
 険な排気ガスを現在のアメリカの2倍、放出するようになると予測される
(注47),エコノミ
 スト誌の調査では、「1990年から2050年の間に(中国の)人
為起源のC02累積排出
 量は、およそ5000億トン(産業革命の始まりから197
0年までの全世界のC02累積排
 出量とほぼ同じ)に達するだろう」と予測されてい
る(注48)。この汚染は、毎年何千人もの
 人々に死をもたらすだろう。経済協力開発機は「増える一方のエ場や自動車の排気による大気
 汚染のせいで、世界全体で、毎年
200万人から360万人が早死にするだろう。その大半は
 中国とインドで発生す
る」と予測する(注山49)。中国のスモッグや煤煙は、何日も日本を覆
  った。大気汚染は
太平洋をも渡り、カリフォルニア州の粒子状物質汚染の29パーセントは中国
 由来だ
注50)。そしてもちろん地球温暖化に国境はない。 

  大気汚染の主な原因は、中国が、最悪の大気汚染源である石炭に依存していることである。
 アメリカのエネルギー情報局は、中国が他のすべての国を合わせたのとほぼ
同じほの石炭を燃
 やしていると報告している(注51)。中国は、環境への影響を改善す
る途上にあると発表して
 きたが、実際の記録は問題が悪化しつづけていることを示し
ている,中国は依然として、石炭消
  費に助成金を支給している数少ない国の一つだ。

  化石燃料は、中国の商業用一次エネルギー消費量の75パーセントを占めており、この先も
 しばらく中国の主要燃料のままだろう(注52)。2011年、中国の石炭消費量は
なおも9パ
  ーセント以上増加し、世界全体の石炭使用ほ増加の87
パーセントを占めている(注53)。
 国が成長しつづけるにつれて、大気汚染は悪化するばかりだ。排出増加のペース
を落とすには、
 中国は本気で成長率を抑える必要がある。だが中国にとって成長率
は、他のどの政策目標にと
 っても重要なものだ。したがって、2049年の世界は、
まさに文字通り中国の成功の「臭いや
  味がして、うんざりさせられる」に違いない。


 【危機●】中国の成長戦略は深刻な水の汚染と枯渇を引き起こす


  政権を維持するには、高度成長が必要であることを、中国の指導者たちは知っている。現在
 の行き詰まった状況がこの先30年続けば、その未来図には恐怖を禁じえな
い。1980年代以
 降、中国は石油化学製品工場を、長江沿いに1万軒と、黄河沿い
に4000軒建てた(注54)。
 これらのエ場の影響と、中国が環境保護より経済発展を
優先した結果、中国の川の40パーセ
 ントがひどく汚染され、20パーセントの川の水が
有毒になり、飲むことはおろか、触ること
 もできなくなった(注55)。中国の地下水の
少なくとも55パーセント(そもそも中国の地下
 水は少ない)が飲用に適さない,実
際、中国の工場が川に流している汚水が、年間6万人に早
 死にをもたらしている(注56
)。もちろん中国の情報規制と検閲ネットワークのせいで、多く
 の中国人は飲用水の
せいで死ぬ恐れがあることを知らない(注57)。  

  すでに中国の近隣の国々は、中国の無謀な開発の副次的影響を受けている。中国沿岸海域の
 水質汚染が深刻化し、国の水産業の多くが、東シナ海、南シナ海、太平洋と
いった領海争いが
 激しい海域に移った(注58)。韓国沿岸警備隊は、2011年だけ
で、領海侵犯した中国漁船
 470隻を送還した(注59)。この問題に関して、中国とベ
トナム、フィリピン、日本は常に
 争っており、武力紛争につながる可能性も懸念される。
 

  近隣諸国は、中国のダム建築ラッシュについても心配している。中国は2020年までに水
 力発電量を3倍にする計画だが、そうなると、中国の多くの川は、水量が激
減するだろう。中
 国には、水利権を他国と共有しているという意識が欠けており、水
利用に関する情報を他国と
 共有していないため、近隣諸国は水資源の枯渇を受け入れ
るか、極めて危険で動揺を伴う方法
 で中国に抵抗するしかないだろう(注60)。



   中国の水資源の利用が影響するのは、アジア諸国だけではない,2050年までに、世界人
 口は90億を超し、その70パーセント近くが都市部に住む、と科学者は予測
する。そうなる
 と、水と廃棄物の管理に深刻な影響が出るだろう(注61)。中国に関し
てそれは、国内問題の
 ように思えるが、そうではない,中国がアメリカの3倍強くな
れば、それは世界的懸念となる
 はずだ。今日、多くの人が中国で大規模な環境保護運
動が始まることを期待しているが、それ
 はまだ始まっていない。



The state’s grip on the economy has been tightening. Could foreign
pressure  persuade the new leadership to reverse course?



 【危機●】がん村

  中国の大気汚染や水質汚染の犠牲者は、中国の工場付近に現れた「がん村]の数に
直接見る
 ことができる。それらのエ場は、廃棄物、有毒化学物質、その他問題のある
物質を川に投棄す
 る。それらが野生生物を殺し、水を台なしにし、先天性欠損症を引
き起こし、近隣住民の死
 を招いている。原因は、中国の環境基準が先進工業国のそれ
よりひどく遅れていることにあり、
 すべての基準のうち国際基準に並ぶものは40パ
-セントにすぎない(注62)。この数十年間
 に中国でがんになった人の数は、他の国す
べてでがんになった人より多い(注63)。

  被害は川沿いの村に限ったことではない。今やがんは、北京市民の死因のトップで、環境汚
 染が主な理由の一つである(注64)。がんになる割合はまだアメリカより低
いが、中国が現在
 の方針を改めなければ、それも長くは続かないだろう。
中国は、他の先進国も工業化が進んだ
 時代には公害の問題を抱えていた、と何度も
主張している。しかし、少なくとも二つの点で、
 中国の公害は、他の先進諸国の状況
とは異なる。まず、中国の産業革命の規模ははるかに大き
 く、そのため、予想される
被害は前例のないスケールになるはずだ,中国はまもなく世界最大
 の経済国となり、
それに伴い、化石燃料、有毒化学物質、その他の汚染物質の使用も最大にな
 るだろ。
 

  次に、中国には、健全で生産的な市民社会が存在せず、発がん物質やその他の有毒物質にさ
 らされる人々の代弁者も皆無だ,がん村に住み、夫と息子をがんで亡くした
ある女性は、「わ
 たしが望むのは、きれいな空気を吸い、安全な水を飲み、汚染されて
いない土を使うことだけ
 です……けれども、それは高望みなのでしょう」とはっきり
述べた(注65)。シェロッド・ブ
 ラウン上院議員は次のように説明する。「問題を世間に知らせるのを助ける出版や報道の自由

 はありません」。そして真実が明らかになった時でさえ、「長期的にそれを世間に訴える自由
 も中国の社会には存在しないのです (注66)。

  中国の国際貿易が成長するにつれて、その農業や食品加工業が他の国々に悪影響を及ぼすよ
 うになった,それらは、収腰高を増やすための危険な農薬、禁止された農薬
を使い、家畜や魚
 の成長を促進させる抗生物質やホルモンを乱用し、加工食品の商品
価値を高めるために違法な
 保存料を使っている(注67)。その結緊、東アジア、欧州連
合、日本、アメリカで、中国産食
 品の輸入が禁止される事態が起きた(注68)。

                                                                    この項つづく

  

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今日は山の日

2016年08月11日 | 時事書評

 

     

           農業への執着心が農家から奪えないのは、土地所有への執着心にちがいない。
           しかし
無意識や本能的な性向までを含めていえば、土地所有への執着心は、
           本質的にはじぶ
んの私有する土地から得られた生産物を、じぶんの自由な裁
           量によって、誰からも制肘
されずに生産し、処分できる自由への執着心に帰せ
           られることは疑いない。それが貧困
に耐えてもなお成就されるべき農業革命の
           最終目的だといえる。

                              「情況との対話:コメの話もう一度」/サンサーラー

                                            
                                                      Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 



ポスト・オスプレイの此岸:垂直離着陸できる小型機 TriFan 600】

『縄すてまじ!』で提案したメガフロート式空港のシャトル垂直離着陸飛行機の構想が、米国はデ
ンバーのXTIエアクラフト社のVTOL機「TriFan 600」――6人乗り(パイロット含む)の
型機で、約1300~1900キロメートル圏内を移動する機体エンジンは Honeywell Aerospace 
社が供給。特徴は機体に3つのダクテッドファンを搭載、これにより垂直離着陸が可能。また、空
中へと浮上すると、翼に備え付けられた2つのダクテッドファンの向きを変えることにより、高度
9千1メートル、時速約600キロメートルで飛行――が開発中だという。反応が早い!と感心し
しつつ、これが電動飛行機ならなおのこと結構。
 
発表によれば、XTI社はTriFan 600のプロトタイプ機のエンジンとしてHoneywellの「HTS900
を利用。プロトタイプ機は実際の機体の2/3サイズにダウンサイジング、2年以内の飛行を目標。
さらに、有人機を飛行させる前に1/10サイズの無人機も製作――6ヶ月以内に試験飛行
させる
予定

【新興第4次産業の此岸:拡張現実の1つの事例】

● 世界初の「VR人工衛星」来年夏に打ち上げへ 360度映像を世界に配信

8日、SpaceVR社は来年夏の早い時期にVR人口衛星「Overview 1」を国際宇宙ステーション(ISS
に打ち上げると発表。Overview 1は2つのカメラを搭載した立方形型人工衛星。スペースXX社はI
SS
への補給ミッション「CRS-12」を来年夏に予定、その打ち上げロケットのファルコン9ロケット
により打ち上げられ、ISSに到達すると
は同施設に設置されたNanoRacksの小型衛星放出機構(NRC
SD
)で、地球低軌道(LEO)へと放出される。Overview 1の撮影映像は
ライブストリーミング配
信したり、他社へと販売される。

もともとSpaceVRVR人工衛星の計画は2015年に、クラウドファンディングサイトのKickstarter
から始まる。当初12個のカメラを搭載する予定であったが資金集めに失敗。その後目標金額を下げ125
万ドル(約1億3千万円)の投資を受けて、2個のカメラを搭載した「世界初のVR人工衛星」の打ち上げにこ
ぎつけている。

 【今日は山の日:サハマ山にGO!】

 

 Wikipedia/Mt. Sajama

今日は山の日だという。それで何だ?!ということなんだけれど、これで一儲けしようという事業
主体が色めき立っているが、ファミリーマートは、昨年12月よりコピーを使い、登山地図を1枚
300円で販売したところ、売り上げが10%増という(NHKニュース 2016.08.11)。ところ
で百名山踏破は計画より遅れている(もっとも、それ以外にも遅れているものばかりだが)。そこ
で、ルームウォーキング中、登山番組の録画再生しながら仮想登山しているのだが、今日は、ボリ
ビアにあるサハマ山(Mt. Sajama)――南アメリカ大陸の山。ボリビア西部のオルロ県にあり、ボ
リビアの最高峰。サハマ山を含む一帯は、サハマ国立公園に指定され、チリの国境から20キロメ
ートル程度にある。活火山とされているもの最後の噴火がいつなのか不詳――の映像を見ながらト
レーニングする。いつの日か登ってみたいと夢が広がる。
 

  ● 今夜の一曲

Leo Rojas - El Condor Pasa  

   

【帝國のロングマーチ 23】         

        

● 折々の読書  『China 2049』41       

                                     秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

 【目次】   

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣)   
  

 

    第9章 2049年の中国の世界秩序 

                          反客為主――反って客が主に為る

                             『兵法三十六計』第三十計

 【危機●】中国はインターネット上の反対意見を「和諧」する

  言論の自由との戦いにおける中国の武器の一つは、インターネットの検閲である。
 現在、百万人以Lの中国人が、オンライン検閲ピジネスに従事している(注15)。世界のイン
 ターネット利用者の大部分は中国人だが、中国政府当局が人権機関、外
国の新聞、その他、数
 えきれないほどの政治団体、文化団体のウェブサイトヘのアク
セスを監戻およびブロックして
 いるので、中国国民は自由世界の人々と同じ情報にア
クセスすることができない。「和諧」と
 はインターネットを検閲されることを指すネッ
トスラングだ(注16)。



  中国は、天安門広場虐殺事件の記憶を消すために多大な努力をしている。事件から23年目
 を迎えた2012年6月、検関宮はそれに言及するネット上の記事をすべてブロックした。3
 人の活動家が追悼行進を行う許可を申請したところ、投獄された(注17)。インターネット利
 用者が事件の象徴となっている、戦車の列の前に学生が立つ写真を合成し、戦車の代わりに大
 きな黄色いアヒルを並ばせて検閲を出し抜こうとすると、中国政府は「巨大な黄色いアヒル」
 というワードを検索禁止にした(注18)。検閲は非常に広範囲に及ぶので、6月4日(天安門
 広場抗議行動の記念日)は皮肉たっぷりに「インターネット・メンテナンスの日一と呼ばれて
 いる(注19)。



  情報の抑圧に加えて、中国政府は当局の考え方を売り込むために、ブロガーを多数採用し、
 反対派勢力の信用を傷つける偽情報を広めている(注20)。その虚報のせいで、インターネッ
 ト利用者は、事実に基づいたニュースと政府側の偽りのニュースを見分けるのが難しくなって
 いる(注21)。



  数千年前から、抑圧的な政権はいずれも情報管理を悪用してきた。だが昔の検閲と、205
 0年までに中国が行う可能性のある世界的検閲との重要な違いは、中国の国民が見るものだけ
 でなく、ほかの多くの国の国民が見るものについても検閲できるようになることだ。中国によ
 るインターネットの乗っ取りは、以前は国内に限られていたが、今後これらの戦術はますます
 国際的に展開されるようになるだろう。中国の革新的なインターネット管理技術は、すでに少
 なくとも11カ国で採用されている(注22)。

  もちろん中国は、ニューヨーク・タイムズやウオールーストリートージャーナルが中国に関
 する真実のニュースを伝えるのを止めることはできないだろう。しかし中国が力をつけ、影響
 力を増すにつれ、中国と協力する国では、国民がそのようなウェブサイトを見られなくなるこ
 とが増えていくだろう。たとえば、中国の二つの大企業、ファーウェイとZTEは、ニケーシ
 ョン・ハードウェアを、中央アジア、東南アジア、東ヨーロッパ、アフリカに供給する主要業
 者だ(注23)。これらの国や顧客(カザフスタン、ベトナム、ベラルーシ、エチオピア、ザン
 ビアを含む)は、インターネットを政治的および技術的に厳しく管理する手法を中国に学び、
 その技術も中国から買っているかもしれない(注24)。


 【危機●】中国は民主化に反対しつづける

  中国当局は、独裁主義国が多く民主主義国が少ない世界を好む。1955年以降、北京は、
 各国の国内問題への干渉を禁止する五原則を宣言してきたが、中国の力が増大していくにつれ、
 中国寄りの独裁的政府を保護し、民主主義政府を弱体化させる力も劇的に増大していくだろう。
 マラソン戦略の他の取り組みと同じく、それはニュースや情報の操作から始まった。65億8
 000万ドルをかけての「外宣工作]の一部は、独裁的政府のあからさまな支持に向けられて
 いる(注25)。中国政府はジンバブエのロバート・ムガベ大統領やスーダンのオマル・アル=
 バシール大統領を公然と支持している。アル=バシールは、戦争犯罪人としてハーグの国際裁
 判所に引き渡される可能性があるため、海外渡航を恐れているような人物だ。


  独裁政権を強化するための中国のもう一つの戦略は、戦略的融資と投資である(注26)。2
 009年と2010年に、中国が企業や途上国の政府に融資した金額は、世界銀行のそれを上
 回った(注27)。中国はこの経済力を武器として、その政治アジェンダを世界に広めている。
 これまでのところ2兆ドルをアフリカ諸国に無条件に融資し、反欧米アジェンダの浸透を図っ
 てきた(注28)。NGOのフリーダム・ハウスによると、「人権にまつわる付加条項や経済的
 見返りを必要としないこの無条件の支援は、発展途L世界の広範囲に、信頼できない腐敗した
 政権を増やそうとしている(注29)」。


  ケンブリッジ大学のステファン・ハルパーによると、ジンバブエは、中国の影響が「最も顕
 著で、最も知られているアフリカの国の一つ]である(注30)。中国は、ムガベが荒廃した自
 国を掌握しつづけるのを助けている。初めは兵器を提供し、それに続いて、インターネット監
 視ハードウェアなど、国民を支配するのに欠かせない技術を提供してきた。ムガベに対する国
 連制裁も中国は拒否した(注31)。

※だとすると、中国は冷戦時代の「第三世界」の革命輸出の外交手法踏襲(=経路依存性)を意味
 しているように思えるが、それでは米国はその当時の手法とどこが違うかを公開しなければ「公
 正」でないというのが原則である。

  中国の戦略の一つは、不干渉の原則に基づいて、アフリカの政府と「相互に有益な提携一を
 結ぶことだ。中国政府は、アフリカのピジネスパートナーが「政治の約束事を伴わない、ただ
 のビジネス」(胡錦濤前国家主席の言葉)という方針のもと現地の人々を虐待していることを
 無視している(注32)。中国は、国際基準を無視することにより(注33)、アフリカの民主主
 義をさらに弱体化し、独裁政権をさらに強化するだろ。



  中国は、このジンバブエのモデルを、アジア、アフリカ、南米に適用した。また、シリア、
 ウズベキスタン、アンゴラ、中央アフリカ共和国、カンボジア、スーダン、ミャンマー、ベネ
 ズエラ、イランの独裁政権も支援した(注34)。中国経済がアメリカの3倍の大きさになれ
 ば、発展途上の国々を、紛争解決と健全な統治とは逆の方向ヘ進ませようとする中国の行動は、
 さらに影響力を強めるだろう(注35)。

  もちろん今から2049年までの間に、中国が専制政治から方向転換し、国内外で民主主義
 を受け入れる可能性もある。しかしそのような楽観論を支持する根拠はほとんどない,何十年
 にもわたって、欧米の多くの学者が、中国は自由民主主義に向かう長い道を進んでいくと予想
 していた。民主主義が中国にも訪れるという希望(根拠はないにしても)を抱きつづける学者
 もわずかにいるが、彼らの多くは今、その楽観的な予測を恥じている,結局、希望的観測とい
 うものは希望的であるがゆえに、もともと反論が難しいものなのだ。


 【危機●】中国はアメリカの敵と同盟を結ぶ

   確かな真実は、中国の指導者がアメリカを、世界を舞台にした競争(中国が勝つ予定である)
 の‘フイバルと見なしていることだ。この見方は、特にアメリカの対テロ戦争において、中国
 がアメリカの敵を繰り返し支援してきた理由を説明する。2001年にアメリカの諜報機関は、
 ウサマ・ビンラディン配下のテロリストをかくまっていたタリバンを、中国が支援しているこ
 とを知った。具体的には、中国の二大電気通信会社が、タジバンがカブールに大規模な電話シ
 ステムを構築するのを手伝っていた。この支援は、9・11のテロ攻撃後も続けられていた(
 注36)。

  この件について説明を求められた中国は、独裁政権の扇動者が同様の問題に直面したときに
 するであろうことをした。つまり、民間企業がやっていることなので、政府は関知していない、
 と装ったのだ。しかしそれらは民間企業ではなく、北京が知らないはずはなかった。そのうち
 の一社は少なくとも人民解放軍の関係者が設立し、中国軍のための通信ネットワークを作る手
 助けをしている(注37)。

  中国のタリバンとの関係は、電話システムの構築だけにとどまらなかった。1998年にタ
 リバンは、中国政府からさらに支援を受けた。おそらく、クリントン政権がアフガニスタンの
 アルカイダ訓練キャンプに打ち込み、不発に終わったトマホーク巡航ミサイルを、アルカイダ
 が密かに北京に提供したことへの返礼だろう。中国はそのミサイルをリバース・エンジニアリ
 ングした。3年後、まさに9・11の攻撃の日に、カブールの中国当局者グループとタリバン
 は、経済的・技術的支援を約束するもう1つの協定を結んだ。もっとも、それらは中国がタリ
 バン と結んだ数多くの協定のごく一部にすぎない。

  アルカイダと中国との協力は、必ずしも間接的になされたわけではなかった。2001年1
 21月にアメリカ国防総省が入手した情報により、9.11のテロ攻撃後に中国がアルカイダ
 に武器を供給したことが明らかになった。9・11のわずか1週間後に、タリバンとアルカイ
 ダの兵士が、中国製の地対空ミサイルを受け取ったのだ。2002年5月、アメリカの特殊部
 隊がそれらのうちの30発を発見した。タリバンの司令官がパキスタンのウルドゥー語の新聞
 に「中国はタリバン政府への援助と協力を拡大している」と話し、中国の支援を公然と賞賛し
 たのも無理はない(注38)。

  中国はイラクのサダム・フセイン政権への支援も拡大した。タリバンに協力した中国の電気
 通信会社の1つが、イラクに対する国連制裁の妨害に間わっていた。1999年5月、同社は、
 国連の石油・食糧交換計画に取り組みながら、光ファイバー通信システムをイラクに売る許可
 を国連に求めた。国連がその要求を二度にわたって拒むと、この会社は国連の意向を無視し、
 そのシステムをイラクに送った(注39)。

  二度目のイラク戦争中の、わたしが国防総省で働いていた時期に、同省の高官が次のように
 認めた。中国人は「イラクの防空システムをより良くするために、光ファイバー接続ネットワ
 ークの構築を手伝っている。その光ファイバーケーブルは、大半が地中に埋設されており、天
 候(あるいは連合軍の空襲)など、さまざまなことから守られている(注40)」。この報告が
 公になると、ジョージ・W・ブッシュ大統領は懸念を表した。「われわれはイラクにおける中
 国人の存在に不安を感じており、わが政権は中国人に相応の返礼をするつもりだ」とブッシュ
 はレポーターに話した。「米軍パイロットを危険にさらすシステムの構築を中国人が助けてい
 るというのは、厄介きわ まりないことだ(注41)。

  中国は、その申し立てを否定した,「それは噂にすぎず、アメジカとイギリスのイラク爆撃
 に対する言い訳だ」と国連の中国代表代理である沈国放は言った。
 「中国の軍人も民間人も、イラクで働いてはいない(注42)」 実際は、中国の企業はイラク
 にオフィスを持っており、イラク当局者は、中国南部にある同社のオフィスを訪問していた,
 イラクは2000年から2001年にかけて注文しており、2002年に中国企業との違法な
 関係が確認された。1万2000ページに及ぶ関係書類をイラクが国連に提出したのだ。それ
 によると、中国の三つの企業が、光ファイバーや通信交換Sをイラクの防空ネットワークに提
 供していた。

  2003年3月、米軍主体の「有志連合」軍がイラクに侵攻し、イラク戦争が勃発した。開
 戦にいたるまでの数カ月間、中国の電気通信専門家だけでなく、軍当局者も、イラク軍を支援
 する重要な役割を果たしたことを、イラク軍の元防空部隊長が同年の後半に認めた。「200
 2年の存、彼らはやってきた」と彼は言う。
 「彼らはサダム・フセイン直々の歓迎を受けた。そのうちふたりは、わたしたちに似せて、ロ
 ひげをはやし、頭にカフィエ(アラブ式スカーフ)を巻いていた」
 
  元イラク当局者によると、中国人は有志連合軍の軍用機が投下する誘導爆弾をそらすハイテ
 クのおとり装置を間発した。そのせいで誘導爆弾はたびたび的を外した。「中国製装置の費用
 はわずか25ドルだったが、すばらしい成果をあげた」と彼は言った(注43)。
  無法国家中の、もう一つの悪名高い仲間は、中国北方工業公司、またはノリンコと呼ばれ
 る国営の兵器メーカーだ。2002年に同社は、ミサイル計画のために特殊化した鋼鉄をイラ
 ンに売って捕まり、翌年、経済制裁を受けた。アメリカ国務次官捕(軍備管理協定の検証・遵
 守・履行担当)のポーラ・ドサッターは、中国合同安全保障検討委員会において、「中国政府
 はノリンコの行動の拡大を野放しにしていました」と証言した。「それでも中国政府は、ミサ
 イル拡散には反対だ、中国の企業や事業体がアメリカとの約束に反する輸出を行うのを禁止し
 ている、と主張したのです]と彼女は続ける。「しかし、現実はずいぶん異なります]。彼女
 は、ミサイルや危険物をパキスタンなどの国に輸出しないという中国の約束をリストアップし、
 それぞれについて中国の嘘をアメリカ政府がどのように立証したかを述べた(注44)。

 ドサッターは、中国が大量破壊兵器を作る技術を無責任に売ったことについても証言した。中
 国は多くの核兵器拡散防庄の合意書に署名しているが、「中国がパキスタンとイラン両国の核
 開発計画に関与しているのは明らかです」と彼女は言った。さらに中国は、イランを含む多く
 の無法国家の毒ガスや化学兵器の開発計画にも関わっている。またドサッターによると「生物
 兵器禁止条約の締約国であるにもかかわらず、中国はそれらの協定に違反する(生物兵器)計
 画を持続しています」。中国が政府の計画として世界に話すことの大半と同様、生物兵器は研
 究も製造も保有もしたことがないという主張は「真実ではありません(注45)」。

                                    この項つづく

 

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帝國のロングマーチ 22

2016年08月10日 | 時事書評

 

     

      現在までの日本国のように、片道の民主主義(言い換えれば非民
      主主義)の国では、日本が滅びるか、滅びないかを決定するのは、
      ほと
んど全面的に政治家とくに政治的な国家(政府)の首脳で決
      まるもので、国
民が関与するべき場所も責もない。

              「吉本隆明TVを読む」朝日新聞 2000.11.19

 

                                         
                                               Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 



● 腹部大動脈瘤解明に光 近畿大学の財満信宏准教授ら

8日、近畿大学の財満信宏准教授らのグループは、司馬遼太郎やアインシュタインの死因となった
腹部大動脈瘤――日本人の死因の10位前後に位置する疾患。大動脈瘤の8割以上は腹部にできる。
大動脈瘤は、腹部大動脈が進行的に拡張することを主病変とする疾患。拡張
した大動脈は瘤状とな
るが、自覚症状がほとんど無いため、病院などで偶然発見されることが多く、
破裂すると致命的と
なるため、一定の大きさに達した大動脈瘤は手術が必要――が破裂する原因を
解明。それによると
(1)血管壁に脂肪細胞が異常出現することで腹部大動脈瘤破裂のリスクが増
加、(2)EPA(エ
イコサペンタエン酸)高含有魚油の投与で、血管壁の脂肪細胞の数と肥大化が抑
制され、腹部大動
脈瘤破裂のリスクが低下することを発見(3)未だに開発されていない瘤の破裂
を予防する薬や機
能性食品などの開発につながるとみられている。

大動脈瘤破裂及び解離は、なぜ破裂に至るかというメカニズムの詳細は不明であった。腹部大動脈
瘤治療の大きな問題点は、破裂を予防する薬剤や、拡大を抑制する薬剤が一つも開発されていない
点にあり、腹部大動脈瘤が見つかった場合、現段階ではステントグラフト内挿術や人工血管置換術
などの外科手術により破裂を未然に予防するしか手がない。外科手術にはリスクが伴い、腹部大動
脈瘤の破裂を予防する薬物等の開発が望まれている。

腹部大動脈瘤。恐ろしい疾病である。早期の予防方法の開発が望まれる。

  
論文名:Adipocyte in vascular wall can induce the rupture of abdominal aortic aneurysm(血管壁の脂肪細胞
が腹部大動脈瘤の破裂を誘導する):doi:10.1038/srep31268

 

   

【帝國のロングマーチ 22】         

        

● 折々の読書  『China 2049』41       

                                     秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

 【目次】   

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣)   
  

 

   第8章 資本主義者の欺瞞     

                          順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                             『兵法三十六計』第十二計
  

  ルールを無視すれば、儲けは多くなる。ある研究は、中国が四つの基幹産業(鉄鋼、自動車
 部品、ガラス製造、製紙)で世界市場のシェアを迅速に拡大できたのは、補助余を増やし、税
 を控除し、土地を安く提供し、技術援助した結果だとしている。本来、これらの四つの産業に
 おいて、労働力も含め、中国に優位性はなかった(注62)。また、伝統的な自由市場経済理論
 では、そのような国の支援は、歪曲的で、非能率的で、費用がかかると見なされていた。しか
 し結果は正反対だった。中国の製紙生産は、10年でアメリカを抜いて世界最大になり、ガラ
 ス製造では、世界の生産量の30パーセント以上を占め、輸出量が国内需要を上回った。鉄鋼
 について言えば、2000年の時点では純輸入国だったが、現在、世界市場の40パーセント
 を占める世界一の製造国・輸出国になった,自動車部品でも、2001年以降、世界トップク
 ラスの製造国・輸出国の仲間入りをした。これらの快挙は、すべての部門で経費の10パーセ
 ント未満という安い労働力のせいでもなければ、安く卸えている通貨のせいでもない。言うま
 でもなく中国は、このような目覚ましい市場占有率を宣伝することもなければ、公に説明する
 こともなかった。



  また中国は、外国製品のまがい物作りにも大々的に取り組んでいる。具体的には、認可され
 ていない製造や流通、製品やデザインや主要技術の無断使用などである。2002年にABC
 ニュースは、中国の模造による外国企業の損失は、年間200億ドルにのぼると報じた(注63)。
 それよりはるかに多いと見る人もいる(注64)。北京のアメリカ大使館の元公使、トマス・ボ
 ームは、全米製造業者協会に向けての最近のスビーチで、中国のGDPの10~30パーセン
 トが 海賊版や模造品の生産によるものと断言した(注65)。他の概算では、欧米製品の海賊
 版や摸 造品は、現在、中国国内の小売販売額の15~20パーセントを占めているとされる。
 一部の市場(音楽CD市場やビデ
オレンタルなど)では、そのシェアは90パーセントに近づい
 ている。
最近のアメリカの国家対情報局の報告は、中国を「世界で最もアクティブで図太い経
 済
スパイ」と評している(注66)。中国はデリケートな経済情報(企業秘密、特許取得済みの
 プロセス、事業計画、最先端技術、輸出規制商品等々)を集めて国内産業を
支援し、情報収集
 には、従来の方法とサイバーベースの両方を用いている。後者に関
して、中国のやり方は世界
 一、荒っぽいようだ。

注64.
例えばエコノミストのジェームズ・キングは、中国の模造によるアメリカ、ヨーロッバ、
   日参の金貨の損気は、2004年だけで6000億ドルにのぼると推定。



  2000年以降、ネット利用の高まりに応じて、サイバーベースの諜報活動は、収集量も巧
 妙さも急激に増している。中国人はサイバーテクノロジーを巧みに活用し、
企業、政府、学術
 機関、研究機関などから機密情報を盗みとり、国内産業を支援して
いる。発覚を逃れるために、
 悪質なソフトウェア、サイバーツール・シェアリング、
プロキシサーバーを使ってのハッキン
 グ、第三国を経由したサイバーオペレーション
のルーティングといった、急速に進化した手段
 を用いる。

  アメリカの企業とサイバーセキュリティーの専門家は、中国国内からのネットワーク侵入の
 猛攻を報告した。残念ながら、その大半について、アメリカの情報機関は
責任のある人物を特
 定できなかった(注67)。これらの攻撃による損害の概算額はあまりあてにならないが、損害
 の規模は、いくらか把握することができる。爆撃機やスペースシャトルなどを扱うアメリカの
 企業で働いていたエンジニアの鍾東蕃は、2010年に、中国の航空産業に機密情報を漏洩し
 ていたとして有罪判決を受けた。逮捕されたとき、自宅には25万ページに及ぶ機密書類があ
 った。1979年から2006年までの問に鍾が中国当局に伝えた情報量は計り知れない。し
 かし、その25万ページ分のデータは、IドルもしないCD1枚に保存できた(注68),

  2005年、ふたりの亡命者が中国のマラソン戦略の経済的側面の起源を教えてくれた。ミ
 スター・ホワイトとミズ・グリーンとは追って、彼らの説明は完全に一致した。中国の戦略の
 多くは自由市場や資本主義の戦略ではなく、財界銀行の北京のスタッフのアイデアと、アメリ
 カ経済の歴史の歪んだ解釈とのハイブリッドだった。発案者たちがfを組んだのは、市場本位
 の経済改革を提唱する人々を追い出し、反自由市場を貫こうとする中国の指導者たちだった。
 彼らはハイグリッドの重商主義戦略を立て、それを30年にわたって隠してきた。ここでも再
 びタカ派が勝った。当時のわたしたちがこの議論に影響を及ぼす見込みはなかった。重ねて言
 うが、誰がタカ派で誰がハト派なのか、わたしたちにはわからなかったからだ。


  

反客為主とは乗っ取りの計略。最初は弱くてもいずれ強者を併呑する、そんな下克上の計略でもあ
る。この計略でイニシアティブを取るためには段階をおって進めなければならない。つまり、まず
客の座を得て、信用を勝ち取り、主の弱点を探し、権力を奪取し、乗っ取り、権力基盤を固めると
いうステップが必要となる。根気のいる計略で隠忍自重し、軽挙妄動を控えなければ成功しない。

   原文

  為人驅使者為奴,為人尊處者為客,不能立足者為暫客,能立足者為久客,客久而不能主
  事者為賤客,能主事則可漸握機要,而為主矣。故反客為主之局:第一步須爭客位;第二
  步須乘隙;第三步須插足;第四足須握機;第五步乃成功。為主,則並人之軍矣;此漸進之
  陰謀也。如李淵書尊李密,密卒以敗;漢高視勢未敵項羽之先,卑事項羽,使其見信,而漸
  以侵其勢,至垓下一役,一舉亡之。
 


    第9章 2049年の中国の世界秩序

 

 

                          反客為主――反って客が主に為る

                             『兵法三十六計』第三十計


  20年以上にわたって、アメリカは世界で唯一の超大国だった。アメリカの軍隊に並ぶもの
 はなく、経済も今のところはそうである。世界はアメリカ映画を鑑賞し、アメリカのポップス
 を歌い、アメリカの炭酸飲料を飲み、アメリカのチェーン・レストランで食事をし、アメリカ
 の大学で学び、アメリカの大統領選を見守る。世界の70億以上の人々の大半にとって、ア

 リカの文化、軍、経済が影響しない生活は想像できない。同様に、ほとんどのアメリカ人に

 って、自国が覇権国でない世界などまったく想像できない。



  だが、そんな世界を想像しはじめる時が来た。2050年までに、中国経済はアメリカ経済
 よりはるかに大きくなり(いくつかの予測によれば、およそ3倍になる(注1)。世界は中国
 をリーダーとする単極世界になるかもしれない。別のシナリオは、中国とアメリカを超大国と
 する二極
世界予測し(注2)、さらに別のシナリオは、中国、インド、アメリカの三極世界を
 予測する(注3)。

  これらのシナリオに共通するのは、経済では中国が世界を支配するということだ。米ドルは
 もはや有要通貨ではなく、ドル、ユーロ、人民元からなる複数通貨制度に取って代わられるだ
 ろ
う(注4)。中国は軍事費も、アメリカより多く費やせるようになる。これまで何十年にも
 わたってアメリカ
がしてきたように、中国は近隣諸国や同盟国に強い影響を及ぼすようになる。
 そして少なくともある程度、自らのイメージ通り
の財界を作ることができるだろう, 

   https://youtu.be/7zlXqQ7yZKs

  それはどんな世界だろう。抑ぼされた人々が独裁政治から逃れるのは簡単なのか、難しいの
 か。わたしたちが呼吸する空気はきれいなのか、有毒なのか。取引を保護
し、自由を促進する
 機関は強いのか、弱いのか。

  もちろん、このような疑問のいくつかは答えようがない。だが一つ確かなことがある。それ
 は、もし中国政府が現在の優先事項を堅持し、同じ戦略を続け、毛沢東が政
権をとって以来、
 大切にしてきた価値観に固執するのであれば、中国が形成する世界は、わたしたちが今知って
 いる世界とは大いに異なるものになるということだ

  2049年に中国が率いる世界は、タカ派が中国の政策を決定するのであれば、より悪く
 るだろう。もしハト派と真の改革派が、欧米の支援を得てタカ派を凌駕すれば、優勢となった
 中国は、脅威にはならないだろう。中国がタカ派を選ぶか、ハト派
を選ぶかに、わたしたちが
 どの程度、関与できるかについては最終章で述べよう。改
革派を支えられなかった場合、世界
 は次のような危機にさらされる。

 【危機●】中国の価値観がアメリカの価値観に取って代わる

  アメリカ社会はきわめて個人主義だ。この国の土台は、トマス・ジェファーソンやベンジャ
 ミン・フランクリンのような個人主義者と、大英帝国の一部になることを拒んだ反逆者たちが
 築いた。わたしたちは彼らを賞賛する。権利章典は、すべてのアメリカ人が好きなように話し、
 好きなように祈り、不合理な捜索や押収を受ける恐れのない家に住む権利を保護している。す
 べてのアメリカ人は、自らの人生の道筋を決める権利を不可侵のものとして保証されている。

  だが中国に、アメリカ人が考えるような個人の権利は存在しない,文学者のリディア・リウ
 (劉禾)によると、1860年代にマーティンという名のアメリカ人宣教師が、国際法の教科
 書を初めて中国語に翻訳しているときに、中国語には「right(権利)」に相当する言葉がない
 ことに気づいたそうだ。そこでマーティンは「権(強制力の意)」と「利(利益の意)]を合
 わせて、「権利]という新語を作った。この言葉は今も便われている(注5)。中国共産党が
 築いたのは、集産主義の社会で、1949年以前の文化を引きずっている。中国を広範にわた
 って研究しているふたりの国際ピジネス戦略家が言う。

  「中国では、人間であることは、より大きな人間社会の一部であることなのです(注6)」

  中国の憲法には、言論の自由、結社の自由、宗教の自由について多くのことが書かれている
 が、実際のところ、これらの権利はほとんど保護されていない(注7)。 何十年もの間、中
 国政府は国民の個人的権利を認めていなかった。そして国が強くなるにつれ、国外にいる中国
 人の権利にも干渉しはじめた。ニューヨーク在住の人権活動家、温云超が国連でスピーチを行
 ったあと、彼の携帯電話やEメールやツイッター・アカウントが、中国政府による組織的攻撃
 と思われるハッキングを受けた(注8)。アメリカ議会の公聴会で、シェロッド・ブラウン上
 院議員が温に、中国の他の抗議者のように刑務所に入っていないのはなぜかと尋ねると、彼は
 「中国にいないからです」と答えたそうだ(注9),さらに2009年に中国は、65億80
 00万ドルの予算で「外宣工作」と呼ばれるプロジェクトを開始した(注10)。「海外でのプ
 ロパガンダ」という意味で、外国や外国人に中国を好意的に伝えるネットワークを作るのが目
 的だった。今もそれは続いている。

  外国の人権擁護団体に対する攻撃はよくあることだ(注11)。全米民主主義基金の副総裁、
 ルイザ・
グリープが証言したように、中国は日常的に人権擁護団体やNGOのコンピューター
 システムに侵入している(注12
)。その狙いは「反対者の間の信頼を揺るがし……コストを
 引き上げ、恐怖を誘発する」ことだ(注13)。それらは「独裁国家が国境を越えて自国民を弾
 圧する注目すべき手法]だとグリーブは結諭づけた(注14)。 

  気になるのは、これらの弾圧戦術が今後も散発的に行使されるだけなのか、それとも、中国
 が力をつけるにつれて、当たり前に使われるようになるのか、ということだ。いったん中国が、
 アメリカとその同盟国に反抗できるほど経済的にも軍事的にも強くなれば、中国当局は気に食
  わないスピーチをした人に、誰彼かまわずサイバー攻撃を仕掛けられるようになる。そうなれ
  ば、中国の外でも、アジアから北米まで、多くの人が攻撃を恐れて発言に注意するようになる
 だろう。

今夜から第9章に移る。中国だけでなく、程度の差はあるが、日本もアジア専制遺制的政治風土に
引きずられていることを再確認。

                                     この項つづく

 

● 競泳男子800mリレー 日本が銅メダル 52年ぶり

日本は7分3秒50の記録で、半世紀ぶりのメダル獲得。意外に思えたが、特にアンカーの松田丈
志選手は天晴れだ。

話は変わる。昨夜、関テレの『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(第5話)――内藤了による
ステリー小説『猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』
シリーズ――を「流し」ではなく通して鑑賞する。
結構面白いし、メインキャストの熱演に感心する。メインテーマは、殺人犯の動機ではなく、その
人物が殺人を行う「契機」(=スイッチ)の解明(あるいは殺人の予防法の開発)にあるというら
しい?犯罪心理学興味があり、以前から余裕があれば少し踏み込んで考えていたので、面白い。



ところで、きょうは親父の月命日。2年前に植えた高野槙(朝鮮槇)が大きくなり、それを切り仏
花としたが、煩悩は消えず。琵琶湖マイナス30センチ、快晴。昼は、家で素麺をいただく。

                                         
                                    
 

 

 

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赤色グローバル化もGO!

2016年08月09日 | デジタル革命渦論

 

     

       定年延長と年金の充実。この二つができたら、高齢社会に向けて
             政治としてやることは
もう無いと言ってもいいぐらいです。


                           第4章 サラリーマンを蝕む危ない常識

                          『僕なら言うぞ!』

                                         
                                                      Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 
【新興第4次産業の此岸:拡張現実の2つの事例】

8月3日、App Store が7月に前例のない売り上げを記録したとアップルのクックCEOがツイートし
ている。実は、前四半期に売り上げ増はタブレットiPad ――そのiPadも販売数は前年同期より減少
――だが、価格が高いiPad Pro が売り上げを支えた分析されている。開発者がアプリでお金を稼ぐ
のは相変わらず簡単ではないアプリビジネスでは大きな変化を迎えている。調査会社アップアニー
によると、ポケモンGO!App Storeが提供されている地域の半数未満の地域公開だけで、1カ月足
らずで123億円以上のアプリ課金を生み出している。



その理由の事例で日本ではポケモンGOをダウンロードした人の4人に1人が毎日プレイしている。
先日、ポケモンGO!はダウンロード数が1億件を突破。また、近くにいるポケモンはどこを探せ
ば見つかるのかがわかるというマップアプリ「Go Gear」が、App Storeの有料アプリの第2位。同
様のアプリがたくさんトップ百に入いるほど、売上シェアは3~4%程度ではあるが、知的財産と
素晴らしい制作の組み合わせの力を発揮した事例としてポケモンはひとつの「産業」を形成したと
する見方もある。ポケモンGOの好景気は、学校の新学期が始まると消えてしまう一時的な可能性
もあるが、現在の成長率と利用状況からは、ポケモンGOには持続力があるという(ポケモンGO、
すでに1億2千万ドル以上の「課金」 App Storeドル箱化への道, WIRED. 2016.08.08)。

 日経デジタルヘルス 2016.08.08

これは、拡張現実(エイアール)事業の1つに過ぎない、もっと言えば、第4次産業を銀河系と
た1つの惑星にすぎない。さらに、世界で初めて、NTT東日本関東病院 泌尿器科 杉本真樹医師ら
の研究グループは、8Kカメラでダビンチ手術のロボット支援手術を撮影――従来のロボット支援
手術には欠如していた覚があるかのように感じられ、術中の判断の迅速化や安全性向上に役立つ
――することに成功する
が、ロボット支援手術などに向けた、新しい医療機器の開発につながると
期待
されていて、遠隔医療の、「医療用拡張現実」の1つとして成長していくものと考えられる。

 

  

【帝國のロングマーチ 21】        

       

● 折々の読書  『China 2049』40      

                                         秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

 【目次】  

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか 森本敏(拓殖大学特任教授・
     元防衛大臣)   

 

   第8章 資本主義者の欺瞞    

                           順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                              『兵法三十六計』第十二計
 

  中国チームと世界銀行のエコノミストは、詳細にわたる研究の後、民営化と政治改革を進め
 ないことに決めた。彼らはともに、経済成長を支える安定した道は、社会主
義的経済政策と中
 国共産党による政治の独占を維持することだと判断した。民営化を
拒んだ理由の一部は、中国
 の国有企業は2兆元の価値があるが、国民の総貯蓄額は推
定で、1兆元しかなかったからだ。
 つまり、中国国民が国有企業に投資してオーナ
ーになるのは、計算上、不可能だったのだ。そ
 ういうわけで中国は、ソビエト式の民
営化を選ばなかった。何しろ、中国の田舎では、私有財
 産自体が存在しないのだ。
014年になっても、中国の6億の農民は自分の土地を持ってい
 ない

※中国では半分しか農業革命は進んでいない。片や日本では、高度農業化という第二次農業革命が
 進行中。


  こうした議論の一部は、2013年に茅于弑が明らかにした。2012年にケイトー研究所
 が自由の推進に貢献した人に与える「ミルトン・フリードマン賞」を受賞し
たときのことだ(
 注40)。この時代に穏健な自由市場提唱者とタカ派が交わした論争に
ついて、もしアメリカ政
 府の当局者が知っていたら、ワシントンでの決定は違ってい
たかもしれない。

  1990年代初め、欧米の経済界の人が知っている中国企業は、「青島ビール」くらいのも
 のだった。しかし今日、世界の主要企業のいくつかは中国の国有企業だ。中国
石油化工集団公
 司(シノペック)、華為銀行、中国電信、中国移動通信、ファーウェイ
等々。国有企業を持つ
 国は多いが、たいていは、国民の生活に欠かせない産業を税金
で支えるのが目的で、自由市場
 にまかせておいては十分な資源が行き渡らないと予測
されるからだ。

  中国は韓国の財閥と日本の複合企業のモデルに基づいて、数段階先の概念を取り入
れた,中
 国の国有企業モデルでは、共産党は国有企業を作ってその戦略的目的を明確
にする。その目的
 の大筋は、四つの近代化のうち一つ以上を進めることにより、国の
利益を増やすところにある。
 そして主要な国有企業の経営者も共産党の中央委員会が
決める。多くは国の諜報機関か軍の出
 身者で、そのつながりは国有企業が稼働しはじ
めた後も続く。さらに、中国国営銀行は、民間
 企業より国有企業を重視する。巨額の
資本を注入し、これらのナショナル・チャンピオンは外
 国の技術の導入と、原料の確
保を後押しされる。国有企業への助成金は、非効率的で不正な行
 為を助長する恐れも
あるが、欧米の企業に対する非常に大きな競争力を国有企業に与えること
 になる(注
41)。実のところ、フォーチュン・グローバル500のリストに載った100社近
 い中
国企業のほぼすべてが国有企業である。

  
驚くべきことに、通常は民間企業を重視する世界銀行と国際通貨基金が、中国政府の利益を
 守るには国有企業が必要だ、という中国の主張を認めた。これは中国の当初
の約束に反するも
 のだったが、実のところ世界銀行は1993年に機密文書で、もし
国有企業が改善できず、利
 益をあげられなければ、中国の他の改革は失敗するだろう
と警告さえしている(注42)。世界
 銀 行が掲げたコンセプトは国有企業を「企業らしく
すること」であり、具体的には、国による
 管理を緩め、一部の企業は破産または解散
させ、小規模であまり利益をあげていない企業を統
 合して少数の大規模な企業を作
り、利益をあげさせる。こうして10年後に、「ナショナル・
 チャンピオン・システムと
して知られるようになった仕組みが始動した。

  世界銀行は、さらに先へ進むよう中国を促し、中国は従った。世界銀行は自由市場経済のミ
 ューチュアル・ファンドのような、ポートフォリオを保有する会社を作ることを勧めた。最も
 驚かされるのは、国有企業の株式を売却するための証券取引所の設
立を提案したことだ(株式
 市場は民間企業のためのものであり、本来、国有企業は無
関係だ)。この取り決めは、遠回し
 に「部分的民営化」と呼ばれた。これに関しても、
中国は世界銀行の青写真に(秘密裏に)従
 った。アメリカ、ヨーロッパ、日本は天安
門事件の後、中国に制裁を加えたが、世界銀行は密
 かに中国を援助していた。再び世
界銀行のアドバイスに従って、中国はアメリカ連邦準備制度
 に相当するものを設立し
た(注43)。



  2003年より、中国当局者はナショナル・チャンピオンを作る計画について語りはじめた。
 それは2010年までに中国の企業50社をフオーチュン・グローバル50
0のリストに載せよ
 うとするもので、彼らはそれを達成した。ナショナル・チャンピ
オンの候補になったのは、軍
 備、発電、エネルギー、情報技術、民間航空、海運業な
どの企業で、土地とエネルギーの供与、
 税制上の優遇、国有銀行からの低金利ローン
(返済の必要がないか、ほとんどない)という形
 で共産党の援助を受けている(注44
)。

  今日の中国経済で、国の所有や支配下にあるものが占める部分は非常に大きい。利用可能な
 データによると、国有企業やそれらが直接管理する事業体は、中国の農業を
除くGDPの40
 パーセント以上を占める,間接的に管理する事業体、都市の集団企業
体、小規模農村企業(郷
 鎮企業=TVE)も含めれば、中国経済に占める割合は50パ
ーセントを超す,自分の国は資
 本主義を目指しており、中産階級はじきに民主主義を
求めるようになる、と覇権国に信じさせ
 たいのであれば、これは不都合な事実だ。


  さらに中国では、五大銀行が中国人のすべての預金の50パーセントを保持してい
る。人口
 が13億千万人もいるのに、国と地方が所有する銀行が29行、特別行政
区の銀行が34行、
 私有銀行が2行しかない(注43)。アメリカに私有銀行が9000行
もあるのとは対照的だ(
 注46)。2013年末、中国の中央銀行の外貨準備高は3兆6
600億ドルに達した(注47)。
 この莫大な金額は、中国のGDP全体のおよそ40パ-セントに相当する(注48)。

  もっとも、国有企業が長期的に好業績を出せるかどうかは疑問だ(注49)。国有企業は市場
 の需要ではなく、政治上の要請に応えがちだということを、ほとんどのエコノミストが認めて
 いる。国有企業は製品やサーピスヘの需要の変化を追うのが難しく、私有のライバル会社に比
 べて非能率的になりがちで、コネによる人事の害も受けやすい。その企業統治システムは概し
 て不透明である。

  国による干渉も、国有企業の経営を非能率的にする。したがって欧米の支援がなければ国有
 企業は弱体化し、いずれは民同企業に負けていただろう(注50)。現在、国有企業が繁栄して
 いるのは、欧米の支援があれぱこそだ。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど
 の企業は、中国の国有企業を再編成し、幹部社員に国際金融や経理上の必要を満たす方法を教
 えた(注51)。その結果、国有企業はロンドンからニューヨークまで諸外国の証券取引で株式
 を新規公開(プライマリー上場)し、上海、深周、香港ではセカンダリー上場した。

  傑出した国有企業のいくつかは、欧米の投資銀行が作ったものだ。たとえば中国移動通信は、
 経営がうまくいっていない地方の電気通信事業体をまとめて外国のファンドマネジャーに売却
 したところから生まれた。1997年のニューヨーク証券取引所と香港証券取引所での重複上
 場によって45億ドル以上集め(注52)、同社は現在、世界最大の携帯電話会社になっている。
 その巨大さゆえに、アップルが同社を通じて・iPhoneを販売すると発表した日に、アップルの
  株価は4パーセント近く上昇した(注53
)。

※これらの流れは、英米流金融資本主義(=似非グローバル化)であり、米国を主体に、財政力
 軍事力の圧力が加わったもの。本物のグローバル化の流れでない。「欧州危機」「分断される米
 国」のように「搾取・格差・貧困」が世界で蔓延している。

  欧米人は、中国人起業家や投資家の教育においても、重要な役割を果たした。たとえば中国
 は、アメリカやヨーロッパのビジネススクールの指導者を招いて、独自のMBAプログラムを
 開発した。ロンドン・ピジネススクールやロッテルダム・スクール・オブ・マネジメントの元
 学長は、現在、上海に設立されたビジネススクール、中欧国際工商学院で働き、デュークやハ
 ーバードなどのビジネススクールは中国で財界人の教育を請け負っている(注54)
。スタンフ
 ォードやウォートンのMBAを持つ中国人は、アメリカのベンチャー・キャピタルや投資会社
 で経験を積み、投資の機会を見つけるために中国へ送られる,

  中国の指導者たちは、欧米が国有企業に批判的なのを知っていても、いくつかの理由から国
 有企業に依存しつづけるだろう。第一に、これまでのところ国有企業は成功している。中国は
 わずか一世代で、無力な国から経済大国に昇りつめた。第二に、中国の国有企業は、共産党に
 よる政治支配に、意味と正当性をもたらしている。「中国的な社会主義」という旗のもと、共
 産党は国民を結束させることができる。第三に、中国の指導者たちは、中国の経済と安全保障
 に必要な主要産業を正しい方向へ向かわせるには、政府が完全かほぼ完全に支配し、国家が主
 役でありつづけるには、財産の大半を国が所有する必要がある、と考えている。第四に、国有
 企業は任命権や合法性を党にもたらし、党による国の支配を維持するための重要なメカニズム
 になっている。

  第五に、国有企業は中国発のイノベーションを促し、外国への技術依存度を下げるというも
 う一つの国家目標を後押しする。そして最後に、中国の指導者たちは、ソ連崩壊後にロシアが
 経験した最悪の事態、つまり国の産業を政治家の取り巻き連中に二束三文で叩き売り、結果と
 して、少数の途方もなく裕福な支配者が、国際的な競争力のない硬化した企業を経営するよう
 になったという事態をどうにか避けたい、と思っているはずだ。

  中国の最新の5ヵ年計画には、戦略上重要な新しい先端産業のためのナショナル・チャンピ
 オン戦略が含まれている(注55)。中国は、国内で開発された高度な技術を国際市場で売りは
 じめた。これは国有企業の経済的成功と言うだけではすまない不安をかきたてた。たとえば世
 界最大の電気通信会社の一つ、華為技術(ファーウェイ)は、中国の諜報機関と密接に関わっ
 ている恐れがある(注56)。今後、アメリカの企業、政府関係機関、軍部を含む世界規模の通
 信が、長期間にわたってファーウェイのネットワークを使うようになれば予想される脅威は明
 らかだ。中国のスパイが通信網を監視したり、リルートしたりするのではないか? 彼らはこ
 のネットワークを使って情報を盗むことができるのか?将来、危機的な状況になった時、中国
 は重要な国際ネットワークを「キルポタン」で遮断するのではないか(注57)? このような
 懸念から、とりわけアメリカとイギリスの政府は、国内でのファーウェイの機器の販売を阻止
 した。

 Time Dec 10, 2013

  また中国は、国有企業を発展させるために、資本を海外にも展開した。中国人は、ビジネス
 の国際化を表現する言葉まで作った。「走出去」戦略である。さらに中国は世界の準備通貨で
 ある米ドルに取って代わるために、人民元の国際化を進めようとしている(注58)。「走出去」
 戦略の一端として、中国企業はいわゆる「海外の底値株狙い」に着手し、外国企業を安値で買
 収しはじめた(注59)。国有銀行から有り余るほど資金が提供され、また、利益を回収する必
 要もないので、向かうところ敵なしだ。

  Go Global

  中国の経済政策の中心には、国家発展改革委員会(NDRC)という政府機関がある,ND
 RCは、戦略的産業の国策、主要な投資、国有企業の合併・買収を決めたり承認したりする。
 ウイスキーからガソリンまで、すべての消費財の価格を決める権限も持っている。すなわち中
 国の経済戦略の中枢と考えていい(注59)。国際市場への拡大を図る中国だがルールに従うつ
 もりなどないということを、西側のライバルは覚悟しておいたほうがいい。最近のアメリカ政
 府の報告によると、中国は自国の産業を守るために多くの非関税障壁を築きつづけている。こ
 れらの障壁には「国営貿易、国内産業への過剰な補助金、過剰備蓄、差別的税金、反ダンピン
 グ関税の乱用、アメリカ産遺伝子組み換え作物の承認の遅延」などがある(注61)。これらは
 すべてWTO協定に違反している

IMFにしろ世界銀行にしろ背景の力の存在の「色」が投影される。また、国際ルールにもバイア
スを帯びる。例えば、「米国産遺伝子組み換え作物」の環境紊乱リスクが定まらない。しかし、強
欲な? 農薬・製薬資本の政治的バイアス=「色」)に対抗する中国側の抵抗はわたし(たち)の眼
からは正当のように映るが、米国式グローバル化も、中国式グローバル化にも、容易に「その侵略
性」を見つけることができるだろう。
                                                     

                                                        この項つづく

 

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イチローの日

2016年08月08日 | 時事書評

 

     

           達成するなら多分シングルヒットだろうなという風に確率
           としては思っ
て(三千本安打が三塁打)いたので、チーム
           メートに労力をかけなくてよかったなと思います。

                             イチロー 2016.08.08

            年寄りが病気を治すには、自分が主体的になり、積極的に
           病気を治そうという意志がないとダメなような気がします。

                         「克服記」 2001.11.01   
                                        
                                 

                                               
                                                      Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

● イチロー三千安打達成 日本選手で二度目の記録

ホームラン性の三塁打を放ち記録を達成したイチローがナインに祝福されベンチに座ると涙がサン
グラス越しに涙が頬を伝う姿を左側面からテレビカメラが撮す。チャンネルをメジャーリーグ放送
にチェンジすると、朝早くからライブ放送されていたスタメン出場で彼が本塁打性の三塁打で出塁
すると球場は祝福のスタンディングオベーイションに包まれる。感動で鳥肌がたち、記録達成を彼
女に伝える声は心なしか震えている。しばらく二人でその実況中継を見続けていた。

マーリンズ・イチロー外野手の3千安打達成を受け、公式サイトが3千安打達成者のコメントを伝
えた。その中で、イチローが日米通算安打で4257安打を記録した際に少なからずを苛立ちを見
せていたピート・ローズがその偉業を素直に称えている。イチローが今年の6月に日米通算で42
57安打に到達したことで、ローズの持つメジャー最多4256安打を上回ったことで、米国内で
日米合算の記録を認めるかどうかで――この時、当のローズはインタビューで、イチローの功績に
ケチをつけようというわけじゃないが、これじゃいつかは高校時代の記録まで含むようになってし
まうだろう語る――論争となっている。しかし、イチローがロッキーズ戦で達成した史上30人目
の3千安打について――三千安打を放った者は誰もが偉大な打者。イチローはとてつもない打者。
この記録で自動的に殿堂入りにさせるもの。少なくともそうすべきで、スピードと強肩を兼ね備え
た偉大な打者。「3000安打クラブ」にホームランヒッターではない打者が入って良かったとコ
メントしている。

尚、ニューヨークタイムスの記事によると、外人選手での三千安打記録としては、ロベルト・クレ
メンテ(プエルトリコ)、ロッド・カルー(パナマ)、ラファエル・パルメイロ(キューバ)に次
ぐ四人目(日本人)となり、三塁打で同記録を達成したのはポール・モリター(当時ツインズ)に
つづく二人だけである。また、42歳9か月での記録達成は、45歳で達成した19世紀の名選手、
キャップ・アンソンにつづく史上2番目の年長となる。オリックスでプレーした当時に打撃コーチ
を務め、この試合の解説を務めた新井宏昌や元プロ野球選手で監督の大島康徳は、日米通算安打数
記録などイチローの記録を破ることはできないのではと賞賛感動していたが、鬼才イチローの伝説
で語られる記録が今後も塗り替えられていくことだけは確かだ。

 

 

【帝國のロングマーチ 20】       

       

● 折々の読書  『China 2049』39      

                                         秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・
ピルズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の
知られざる秘密戦略「1000年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。
日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日
常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】 

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか

            森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)   

 

   第8章 資本主義者の欺瞞    

                           順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                              『兵法三十六計』第十二計
 

  わたしがミズ・リーと呼ぶ中国からの亡命者は、機密会議とのつながりを生かして集めた、
 1995年から2000年までの間に中国がついた嘘の詳しい実例を教えて
くれた。中国はそ
 れらの嘘で連邦議会を説得し、恒久通常貿易関係(PNTR)を中
国に供与させ、WTO加盟
 への道を聞かせた。ミズ・リーはまた、中国の指導者が、WTO
加盟を問う投票で賛成してく
 れた人々をぬかりなく支援し、自国の重商主義的
経済戦略を暴く情報をひた隠しにしたことも、
 明らかにした。中国に自由市場を実現
する気がない(永遠にではないとしても)ことを連邦議
 会が知れば、投票は認められ
ないということを、彼らは理解していた。そこで、アメリカの情
 報コミュニティの誰
にも気づかれないほど巧妙に、宣伝とスパイ活動を始めた,ミズ・リーに
 よると、中
国は、1930年代に毛沢東が書いた、政治的相違の分析の仕方を手引きとして、
 外
交政策を巡るアメリカ政府内の対立を調べ、それを利用したそうだ(注27)。そのときに中
 国が送った主要なメッセージは、今後、中国では国有企業が次第に減り、自由市
場の政策が公
 表され、国は通貨を操作せず、多額の貿易黒字を蓄積せず、アメリカの
革新と知的財産はもち
 ろん尊重されるだろう、というものだった。すべて、WTOヘ
の加盟に必要とされることだ。
 またWTOへの中国の加盟が議論されているさなか、
中国の発議で2000人から3000人
 の中国政治犯の運命を左右する条件を取引協
定に加えようとしてクリントン大統領に働きかけ
 たが、失敗に終わった。

   2000年5月24日、下院は、賛成237票、反対197票で、対中通商関係正常化法案
 を可決した(注28)。9月19日に上院も、賛成83票、反対15票で、法案を可決した(注
 29)。他人のエネルギーと勢いを自分の強みに変える「無為」と「勢」の教えに基づき、中国
 は欧米から最高の技術を借りて、株式市場、借入資本市場、投資信託産業、年金基金、政府系
 投資ファンド、通貨市場、外国の参加、国際主義中央銀行、住宅ローンとクレジットカード、
 自動車産業を開発・育成した,いずれも、世界銀行のような公共機関や、ゴールドマン・サッ
 クスのような民同企業の積極的な指導に助けられた。

USA: ALAN GREENSPAN ON TRADE TIES WITH CHINA  18/05/2000 04:00 AM,  AP ARCHIVE

  その一方で、共産主義政府は、欧米の技術や知的財産を盗む秘密の計画を許可し、奨励した,
 結果、偽造や模造による収益がGDPの8パーセントを占めるまでになった(注30)。
  ジャスティン・リン(林毅夫)は中国の首席経済顧問で、2008年に世界銀行のチーフ・
 エコノミストになった。彼の著述やスピーチの大半は英語で行われており、中国の経済戦略を
 西側のわたしたちに教えてくれる、最善の情報筋のひとりである(注31)。リンはきわめて信
 頼できる人物だ。わたしは国立台湾大学に留学していた1971年からその名前を知っていた。
 当時、彼はその大学の学生会長だった。10年後、彼は中国本土に亡命し、北京大学で政治経
 済学の修士号を取得後、シカゴ大学で経済学博士号を取得した。その後、ソビエト式の国有企
 業を立て直す方法をアドバイスするために中国に戻った(注32)。

  リンによる中国の経済発展についての説明は、驚くべきものだった。鄧小平は公の場で、中
 国に戦略はないと言いつづけたが、実のところ、市場経済を育て、国際的競争力を高めていく
 ための入念な戦略が存在していた。リンは、中国の経済戦略をきわめて率直に諭じた本を3冊
 出している。それらの主な情報源は、中国古代史と世界銀行だ(注33)。それについては、少
 なくとももうひとりの亡命者も同じことを述べている。その人物は、世界銀行と皮肉にもアメ
 リカの自由市場支持者が中国に勉強の機会を提供したおかげで、中国は重商主義的姿勢を固め
 ることができた、といういきさつを詳しく語った。(中国が大規模な戦略を立てているという)
 リンの見解は、中国の最も権威あるアメリカの専門家、王揖思(オックスフオード大学で学ん
 だ、北京の名誉ある研究所の所長)の見解とは逆だった,王は鄧小平と同じく、中国に大規模
 な戦略などなく、過去30年間をなんとか乗り切っただけだとたびたび主張している。王は20
  11年にフォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたエッセイ China's Search for a Grand Strategy
 
(大規模戦略のための中国の調査)のなかで、中国に戦略があるという主張は間違っており、
 おそらくその陰には、反中国の動機があるのだろう、と書いた(注34)。同様に男小平は19
 97年に 亡くなるまで、中国は包括的な経済戦略を持っていない、と訪問者に語っていた
 (注35)。

  By Wang Jisi

 1983年、世界銀行総統のA・W・クラウセンは中国を訪れ、鄧小平に会った。
 その際、クラウセンは、「世県銀行のエコノミスト・チームが、20年先を見据えて中国の経済
 について研究し、どうすれば中国がアメリカに追いつけるかを助言しましょう」と密かに約束
 した。当時、世界銀行は公には、中国が自由市場経済へ向かう必要性について、曖昧な報告を
 発表しただけだったが(注36)、そのエコノミスト・チームは、内々では違うことを語ってい
 た。すなわち中国に対して、どうすればアメリカに追いつけるかを説明していたのだ。もっと
 も世界銀行は、アメリカに追いつくという野望を隠し、資本主義国を目指しているふりをした
 ほうがいいと示唆したわけではなかったようだ。むしろそれは、覇権国に優越感を持たせてお
 くという戦国時代の戦略に基づく、中国の計略だった。

  1985年、財界銀行のチームは、中国が2050年までに先進国に追いつけることに気づ
 いていた。だが、そうなるには、5・5パーセント以上という極めて高い年間成長率を維持す
 ることが必要とされた。それまで、当時の中国に並ぶ低い経済水準から、アメリカやその他の
 先進国に追いつくことができたのは日本だけだった。世界銀行は、ある腫の戦略を駆使すれば、
 中国にもそれが可能かもしれない、と助言した。試みた国はなかったが、部分的に経験した国
 はあった(注37)。

  世界銀行のチームは、中国の貯蓄率は非常に高いので、もし中国が、科学や技術を導入して
 生産性を向上させつつ、人口増加を抑えることができれば、その野望も達成できる、と指摘し
 た。財界銀行は、非公式に六つの提言をした。それを公にしなかったのは、中国の社会主義的
 アプローチを承認するという政治的に微妙な決定をしたうえに、中国を真の市場経済へ向かわ
 せるための努力は何もしなかったからだ。最初の提言は、1985年からの20年間に輸出の
 構成を変え、特にハイテク製品に力を入れるということ。二番目の提言は、外国から過剰な借
 金をしないこと。三番目は、外国直接投資は、先進技術と近代的経営手法だけに限ること。四
 番目は、海外からの投資や合弁企業の設立を経済特区に限らず広域に広げること。五番目は、
 貿易会社を段階的に減らし、国有企業が独自に外国と貿易するようにすること。そして六番目
 は、国家経済の長期的枠組みを構築すること(注38)。

  1990年には、世界銀行の最大の代表団が北京にいた。中国の指導者たちは陰で糸を引く
 世界銀行の存在を隠しつつ、そのアドバイスのほぼすべてに従った。ピーター・ハロルド
 世界銀行の主席エコノミストになり、E・C・ファが協力した,ファは1984年の調査に深
 く関わっている。ファは、中国の経済界以外ではほとんど知られていないが、中国経済の基礎
 を築いたひとりだと、後に中国の事務次官がわたしに語った。わたしの知る人で、ファのこと
 を知っている人はいなかった。
 
  ソ連崩壊後の数年間、中国のエコノミストたちは、ロシアや東欧の例に倣うかどうかをめぐ
 って議論しつづけた。ロシアや東欧では国有企業がすぐに民営化され、価格の自由化も図られ
 た。当時、アメリカの当局者は知らなかったが、中国の改革志向の政治家の中には、ロシアの
 民営化のモデルに倣おうとする人々がいた。中国は再び岐路に立たされた。アメリカの中国専
 門家は、大安門事件の数年前に起きたこの議論のことを知らなかった。また、ふたりの共産党
 指導者が真の改革派だったためにその地位を追われたのに、何もしなかった。そしてアメリカ
 はパリに亡命した彼らを支援しようとしなかった。どうやらクリントン大統領は、中国で起き
 たこの議論について何も知らなかったようだ。それは、自由市場と私有財産に向かって進むべ
 か、あるいは政府がコントロールできる企業をたくさん作って、技術の盗用、偽造、情報収
 集を進めてアメリカの打倒を図るべきかという、中国のその後を決める重要な議論だったのだ
 が。もし知っていれば、真の自由化を求める人々をアメリカ政府は支援したはずだ。しかし、
 結局は、周小川などの強硬派が特利を収めた,周は後に中国中央銀行の頭取になる人物で、中
 国のマラソン戦略を支援する世界銀行と早くから手を結んだ。ソビエト崩壊後、影響力ある中
 国の政治家の中にロシアの改革モデルを真似ようとした人々がいたことを、わたしたちは後に
 なって知った。彼らを後押しすれば、周のような強硬派に対抗できたはずだが、そもそもそう
 した議論が起きたことさえわたしたちは知らなかった。

中国人民銀行総裁が行方不明に 原因は人民元に重大な危機か個人的事情か 新唐人 2016.06.14

  周は民営化や政治改革を拒んだ。その代わりに、協力的な世界銀行のエコノミストとともに、
 党による支配のもと、国有企業の収益性を向上させる戦略を進めていくことを奨励した。周が
 世界銀行のためにまとめた機密文書には、欧米の市場志向の経済も、ロシアと東欧でうまくい
 った改革も受け入れようとしない、彼の計画の詳細が書かれていた。代わりに周と世界銀行中
 国支部長のビーター・ハロルドは、中国の非効率的で、構造も経営状態もおそまつな国有企業
 を変える独自の戦略を計画した。これらの国有企業は赤字経営で、政府の銀行からの融資でそ
 れを埋めていた(注39)。彼らの計画は、その恐竜、すなわち時代遅れの国有企業を救い、国
 家的な勝者にしようとするものだ。それはかつて誰もしたことのない挑戦だった。

※ 融資の急膨張は地方に深刻な債務問題を引き起こした Rapid Loan Growth Has Led to Serious
   Debt Problems at Local Governments, The Wall Street Journal.   Aug. 15, 2013 6:02 a.m


ここは経緯を考察するだけで特にコメントはしない。

                                    この項つづく

 

  

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縄すてまじ!Ⅳ

2016年08月07日 | 時事書評

 

     

          あのねー、悩むのはいいことなんですよ。マルクスの言葉じゃないけ
                  ど、『人間は自分が解決できることしか悩まない』っていいますから
                  ね。適当なところで切り上げないで、もっと悩んだ方がいいですよ。


                                        
                                 週刊文春 2008.10.30

                                               
                                                      Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

【縄すてまじ!Ⅳ:ヘイトスピーチから集団殺人まで】

今年6月より「ヘイトスピーチ対策法」施行されたが、“ヘイトデモ”は10年ほど前から外国籍
住民の集住地域を中心に、各地で見られるようになったというから、丁度、東日本大震災・福島第
一原発事故からになる。そのことはまた、関東大震災の際に発生した朝鮮人虐殺――震災発生後、
混乱に乗じた朝鮮人による凶悪犯罪、暴動などの噂が行政機関や新聞、民衆を通して広まり、民衆、
警察、軍によって朝鮮人、またそれと間違われた中国人、日本人(聾唖者など)が殺傷される被害
が発生した。これらに対して第2
次山本内閣は、民衆に対し、もし朝鮮人に不穏な動きがあるのな
ら軍隊及び警察が取り締まるので、民間人に自重を求める「内閣告諭第二号」(鮮人ニ対スル迫害
ニ関シ告諭ノ件)を発した事件。これに対し、韓国の政府機関「対日抗争期強制動員被害調査およ
び国外強制動員犠牲者ら支援委員会」は「日本震災時被殺者名簿」にある286人を調べた結果、
28人が1923年の関東大震災当時に発生した朝鮮人虐殺事件の犠牲者だったことを確認したと
公表している
Wikipedia)―――のイメージを想起させる。


 へらへら笑いながら「おーい、売春婦」などと沿道の女性をからかう姿からは、右翼や保守と
 いった文脈は浮かんでこない。古参の民族派活動家は私の取材に対し「あれは日本の面汚し」
 だと吐き捨てるように言ったが、当然だろう。ヘイトスピーチをぶちまけ、外国人の排斥を訴
 えることでどうにか自我を保っていられる、単なる差別者集団だ。

                         安田浩一「沖縄ヘイトを考える(上) 」

                                                  沖縄タイムス 2016.08.03

このオンライン記事が目にとまる。安田は、外国籍住民へのヘイトスピーチと沖縄バッシングは地

続きだった。「愛国運動」などと称し地域を破壊し、分断し、人々の心を傷つけているだけで「沖
縄ヘイト」は、いま、社会の中でさらに勢いを増していると指摘した上で、そもそもヘイトスピー
チとは、乱暴な言葉、不快な言葉を意味するものではない。人種、民族、国籍、性などのマイノリ
ティーに対して向けられる差別的言動、それを用いた扇動や攻撃を指すものだ。ヘイトスピーチを
構成するうえで重要なファクトは言葉遣いではなく、抗弁不可能な属性、そして不均衡・不平等な
社会的力関係であるとし、「米軍基地への抗議は憲法で認められた政治的言論の一つ。同法の対象
であるわけがない」と彼の取材に西田昌司自民党議員が答えていると引用し、基地反対運動とヘイ
トスピーチを無理やりに結び付けようとする動きには、基地問題で政府を手こずらせる「わがまま
な沖縄」を叩きであると結ぶ(「沖縄ヘイトを考える(下) 」)


基地問題などの住民運動の関わり方の原則は、、まず、当該住民の生活を「共有」し、「ヘイトス
ピーチ側」の思念を対置し、そこから汲み揚げた思念を具体的に展開するほかない、というのが
わたし(たち)の金科玉条である。この記事から、ヘイトスピーチがやがて、わたしたちの生活か
ら乖離・浮遊し、独善と観念の世界と敵対者をつくり、逆立ちした閉じられた世界に支配されてい
く。その過程では、テロリズム、クーデターなどを経て、専制・独裁を形成し、より大きな集団殺
人行為を引き起こすリスクもある。それを防ぐのは当事者がそれぞれ悩み抜き克服するしか道はな
いことを再確認しておきたい(ブログ『縄すてまじ!』 2012.12.15、12.31/2014.12.20/2015.
02.20、02.27、10.19)。
 

 

 

【帝國のロングマーチ 19】       

       

● 折々の読書  『China 2049』39      

                                         秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】 

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか

            森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)   

 

   第8章 資本主義者の欺瞞    

                            順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                               『兵法三十六計』第十二計
 

  別のいくつかの会合で中国は、GDPが2020年頃までにアメリカのGDPを上回るという、
 1990年代初期に国内で出された予測に関して、そのような成長の見
通しはないと述べた。なぜ
 中国は、30年にわたる好調な経済成長の戦略的要素を秘密
にするのだろうか。なぜ、自由市場への
 動きを誇張するのだろうか。答えは簡単だ。
北京の指導者は、古代中国の政治的f腕の土台となっ
 ている教えに従って、敵を安心
させるメッセージ送り、中国に下心があるのではないかと疑わせる
 ような危険な情報は隠して、相手を安心させようとしているのだ。もし2020年までにアメリカ
 を超えるという内部予測が、大々的かつ自慢げに公表されていたら、覇権国は戦々恐々とし、中国
 を封じ込めようとするだろう。そういうわけで、中国は外国人に、前途にどれほどの障害が待ち受
 けているかを語り、見通しは暗いと嘆いてみせたのだ。

  近年、中国の指導者が世界に信じさせてきたこの一般的な見方に対して、欧米の少数のアナリス
 トが異を唱えた(注16)。彼らはこう見ている,中国は、世界の石油・ガス生産がピークに達しよ
 うとしているという偏執的な思い込みから、外国のエネルギー資源を我がものにするため、基幹産
 業の支援と政府主導を軸とする重商主義的戦略を露骨なまでに追求している,数十年後には必ず天
 然資源を巡る争いが起きるので、中国は自国の乏しい資源を守りつつ、外国から資源を買って貯蔵
 しなければならないと考えているのだ(注17)。

  多くの中国の戦略家は、「石油ピーク説」、つまり石油の供給は近々ピークに達した後に下り坂
 となり、価格が急騰するという説を信じている。それが正しければ、世界を舞台とする「囲碁」で
 は、銅、石油、リチウムなどの資源を獲得し、ライバルに取られないようにしなければならない。
 中国社会科学院のあるアナリストは、「世界的にエネルギーが不足しはじめると、中国とアメリカ
 は(特に石油問題に関して)意見の衝突や紛争を避けられない」と述べ(注18)、中国人による地
 政学的な戦略分析の多くもそれを懸念する。ワン・シアーリンは、「中国は2015年に石油ピー
 クに直面すると、専門家は予測する。石油生産がピークに達し、減少しはじめると、中国では石油
 とガスが不足し、ますますそれらを輸入に頼ることになる」と書いている(注18)。

  こうした誤解を招きそうな中国のメッセージに対して、外からの警鐘はまだ鳴らされていない。
 それどころか、中国の嘘の大部分がそのまま信じられている。「スズメを一羽残らず殺せ」という
 毛沢東流の命令方式により、今では自由経済や、国際規定に沿う通商政策が容認されていると、西
 側の多くの人は考えている。だが中国の指導者は、かつて自分たちが大言を吐いたせいで、ソ連が
 中国を警戒し、遠ざかり、ついには支援を打ち切ったことを知っている。同じことをして欧米を怒
 らせたくはない。「スズメ駆除作戦」の愚を繰り返さないだけのことは学んできた。むしろ西側の
 指導者には、中国は欧米のようになりたがっていると思わせておいたほうがいい。そして、この見
 えすいた嘘を信じさせるのは、それほど難しいことではなかった。

  ネズミやハエや蚊に加え、スズメは四大「有害生物」の一つであり、毛沢東の考えでは、中国の
 衛生状態(および、経済の発展)にとって脅威になるものだった。大躍進政策の一部である195
 8年の「スズメ駆除作戦」は中国の農業経済を20
世紀にふさわしいものにするという強い願望か
 ら生まれた。スズメは何千トンもの穀物を食べているが、本来それらの穀物は、中国国民を養い、
 地域社会や大規模工業を活気づけ、ひいては中国経済を欧米と同等に引き上げる原動力になるはず
 のものだ、と毛沢東と彼の最高顧問は考えた。農民は田園地方の隅々まで散らばり、巣を破壊し、
 卵を割り、鍋やフライパンを持ってスズメの群れを追った。この作戦は大成功を収め、1959年
 までに中国のスズメはほぼ全滅した。

  中国当局が気づいていなかったのは、スズメは穀物だけでなく、昆虫も大量に食べていたことだ。
 その後数年で、捕食者のスズメがいなくなったために、イナゴが大発生し、作物は多大な害を被っ
 た。それに追い打ちをかけるように、深刻な干ばつが中国を襲った,1958年から1961年ま
 での問に、中国では3000万人以上が餓死した。欧米に比肩する経済力をつけようとした共産主
 義中国の初の大実験は、失敗に終わった。

※ 「大躍進」の失敗

  1978年に郵小平が事実上、中国の最高指導者になhへ毛沢東時代に中国経済が後れをとった
 ことに鑑み、それとは異なる経済路線を進むことを誓った(注20)。郵は、活気にあふれた民間部
 門がなければ、中国は競争力を備えた大国にはなりえないと考えていた。そして、大々的な改革に
 着手し、次第にマルクス・レーニン主義から離れていった。「四つの近代化」と呼ばれる彼の改革
 は、農業、工業、科学技術、国防に重点を置いた。なかでも最も重視したのは、「中国式社会主義
 のために市場のカと国家計画を統合することだった。

  今日、外部の人の大半は、中国では毛沢東流の命令方式は過去のものとなり、自由経済と国際規
 定に沿う通商政策が受け入れられたと信じている。国際的な銀行、研究者、シンクタンクの専門家
 といった、だまされやすいコミュニティのおかげで、中国は、欧米のようになりたいというメッセ
 ージでその場その場を切り抜けてきた。しかし中国経済を近くでよく昆てみると、まったく違うも
 のが見えてくる。

  2001年10月、わたしはアメリカ国防総省から副業を持つことを許され新しく設立された議
 会の米中委員会に上級研究顧問として加わった。この委員会は、中国の
世界貿易機関(WTO)加
 入を認める法案を米上院で通すための集票活動の一環とし
て作られた。わたしたちの任務は、中国
 の経済政策がアメリカの国家安全保障に及ぼ
す影響を調べることだ。特に民主党は、WTOへの加
 盟を求める中国の真意と、貿易
は中国に民t主義をもたらすという、自由市場でよく聞く主張に疑
 いを抱いていた,



  委員長とわたしがClAから受けた説明は、ニつの見通しを強調していたが、後にどちらも誤り
 だったことがわかった。一つは、中国は自由市場経済に向かっており、
大規模な国営企業をすべて
 売却するだろうということ,そしてもう一つは、中国が経
済的にアメリカに勝つ可能性はなく、た
 とえ勝ったとしても(たとえば2100年ま
でに)その頃の中国は、自由市場を擁し平和を愛する、
 民主主義の国になっていると
いう見通しだった。少なくともニューヨーク・タイムズのコラムニス
 ト、トーマス・
フリードマンが広め、当時流行した「黄金のM型アーチ理論(訳注*M型アーチは
 マクドナ
ルドのシンボルこによると、そうなるはずだった。フリードマンは著書「レクサスとオリ
 ーブの木」――『グローバリゼーションの正体』において「マクドナルドのある豊かな国は戦争を
 しない。国民は、戦争よりむしろマクドナルドの店頭に並ぶことを選ぶからだ」と述べている(注
 21)。

  そこでわたしたちは、中国の当局者の話を聞くために北京へ飛んだ。
  搭乗したボーイング747の座席はがらがらだったので、客室乗務員が緊張しているのが見てと
 れた。9・11同時多発テロから1カ月もたっていなかった。アメリカ人が心配するのは当然だが、
 心配する先が間違っていた,わたしたちが向かっている国のことをもっと心配すべきだったのだ。
  1950年代の中国は、財界の最貧国の一つだった。当時の国民1人あたりのGDPは、工業叱
 が始まったばかりの1820年代のヨーロッパやアメリカよりも低かった。1975年になっても、
 1人あたりの所得は世界の最低レベルだった(注22)。しかしその後数十年で、経済状況は劇的に
  向上し、経済成長率はアメリカの5倍にもなった。

  2001年の時点では一般に、中国経済の二桁の成長率は持続しない、と考えられていた。CI
 Aの機密報告書に記された評価も、そのようなエコノミストの見解を反映していた。中国経済に関
 するアメリカの予測は、ほぼすべてが悲観的だった。中国は貧しく、無教育の労働人口を抱えてい
 る。その膨大な人口に比べて天然資源があまりにも乏しい。時代錯誤のマルクス・レーニン主義の
 イデオロギーにまだ囚われている。何十年にもわたって、起業家がほとんどいない。現代のビジネ
 ス手法や健全な経済運営について何も知らない官僚が経済を仕切っている。したがって、10パー
 セント以上の成長率がこの先何十年も続くはずがない、と考えられていたのだ。

  欧米の主要国にも、それほどの成長率を記録した国はなかった。工業化の全盛期にあったアメリ
 カでさえ、そうだ。中国の経済成長ははるかにゆっくりで当然と考えられていた。だが、後にCI
 Aのあるエコノミストが申し訳なさそうに言ったように、「わたしたちのモデルは間違っていた」。
  現在、中国の成長に関する予測は逆転した。まともな金融機関で、中国経済が今後もずっとアメ
 リカより小規模なままだと信じるところはない。多くの書籍は、中国は「川底の石を探りながら川
 を渡る」ことで成功を実現したと評している。鄧小平が外国からの客を迎えた時に、しばしば引用
 した言葉だ(注23),中国に包括的な戦略はなく、たまたまやったことがうまくいっただけ、とい
 う意味だ。中国の指導者たちは、見たところ奇跡的な自国の経済発展を説明するために、格言をよ
 く使った(注24)。



  ところがこの「偶然うまくいった」という物語は、真実の一部にすぎない。実のところそれは、
 批判を和らげ、中国の発展戦略の本当の目的と起源を隠すために賢くデザインされたものだった。
  世界経済の覇権を握ることに関して、鄧小平は古代の老荘思想の根幹をなす「無為」を利用した。
 「無為」は、「作為なしに」「努力なしに」と訳されるが、この場合は「他人のカに頼って多くを
 成し遂げる」という意味だった。鄧小平は現実的な人間で、
1944年にブレトンウッズで策定さ
 れた第二次世界大戦後の世界の経済秩序におい
て、マルクス・レーニン主義に頼るだけでは不十分
 だと認識していた。アメリカやそ
の他の先進国に追いつくには、WTOに加わり、国際通貨基金や
 世界銀行(いずれも
欧米の政財界エリートが積極的に後押ししている)から融資を受ける必要があ
 るとわ
かっていたのだ。 

  共産主義中国に、WTOの加盟条件を満たす気が本当にあるのかということについては、当然な
 がらアメリカ政府内の多く人が懐疑的に見ていた。その結果、中国がW
T0一員となるまでには
 15年という歳月がかかり、加盟に際しては、これまでの他の
どの国とよりも詳細な協定が結ばれ
 た,例えばその数年前に加盟したインドに対し
て、要求ははるかに少なかった。中国は、WTOに
 加わればとてつもない利益を得る
ことがわかっていた。しかしアメリカ人がそれをさせるだろうか。
 2001年にWT
Oに加わったとき中国は、加盟国政府は直接的にであれ、問接的にであれ、国営
 企業
の商業的決定に関与してはならないという、WTOの条件を受け入れた(注25)。

  とこ
ろが中国はこの契約を守らなかった。中国のすべての国有企業は、依然として市場の力に反
 応してではなく、国の目標にかなうよう運営されており、また、個々の国有企
業の投資先は、相変
 わらず共産党が決めていた。中国の炭鉱会社が、国の政治的影響
力を広げるために、アフガニスタ
 ンやアンゴラで鉱山を開発するよう指示されれば、
多少は困惑したとしてもそうするだろう(注26)。


ここでは。中国共産党がロシアマルクス主義を遠ざけ、「中国式社会主義」(
新自由主義+地域限定開
発ケインズ主義政策)にはしり、驚異的な成長を遂げる経緯を解説されている。なぜ成功したのか?こ
のことを「中国における共産主義とは、国民の生活水準の一括的引き上げ」と吉本隆明は簡潔に表現し
予言する。その通り、韓国は中国より先行して成長(後に米国主導のグローバリズムにより手ひどい痛
手を負うことになるが)を、続いて、天安門事件以降、高度成長を遂げていく。しかし、その裏で、環
境破壊、汚職蔓延、格差拡大、過剰生産などを抱え、「体制矛盾」が進行していくのである。

                                       この項つづく

  ● 今夜のビデオ

【イチロ-2999本安打達成!】



Ichiro notches his 2,999th career hit, scheduled to start Sunday

マーリンズのイチロー外野手は、敵地でのロッキーズ戦に途中出場し、2打数1安打。8回に代打で三塁
内野安打を放ち、史上30人目のメジャー通算3000安打へついに王手をかけた。

 

 

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不実 年寄りの日光浴

2016年08月06日 | 医療健康術

 

     

        目に見えない、人に言ってもあまり意味のない、でも自分には重要なことを
        表現する、そういう苦労を人一倍した人(三島由紀夫)ではないでしょうか。


                                        
                           「真贋」講談社文庫 193頁

                                         

                     Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 
  Darth Vader 

 【最新カーボンナノファイバー電子工学】

● 史上最強 黒の正電極触媒とソリューションプラズマ

今月3日、次世代電池として、より大きな容量を得ることができる金属空気電池や、既存の燃料電池
の高機能化技術などの開発が注目されている。この中で、正極触媒には触媒性能などの点で、白金な
ど高価なレアメタルを用いることが多い。また、従来は NCNP (窒素含有カーボン)を合成するため

に、真空プロセス/高温処理などが必要となるなど、コスト高の要因となっていた。芝浦工業大学の
石崎貴裕准教授らの研究グループは、常温環境下のソリューションプラズマ処理で、窒素含有カーボ
ン(NCNP)とカーボンナノファイバー(CNF)からなる炭素複合材料「NCNP-CNFコンポジット材料
の合成――燃料電池の正電極触媒として実用化できれば、白金などを使った場合に比べて部材コスト
の低減が可能――に成功したと発表している。 




 

● ソリューションプラズマ処理とは

現時点では「ソリューションプラズマ処理」の規定は一様でないが、液中プラズマ処理を意味する。
従来法では、液中プラズマは、高温プラズマであったため溶液も高温となり、反応を制御することが
難しかったが、電極間に印加する電圧制御の最適化により、液中に低温プラズマを生成できるように
なる。その特徴は、溶液中のプラズマを材料合成に応用できる。あるいは、ソリューションプラズマ
は、溶液の温度を制御できことで、ナノ粒子の粒径制御や、ソリューションプラズマによって誘起さ
れた化学反応を制御できる。従来のプラズマでは分子構造が破壊される程の高エネルギー反応場であ
ったが、ソリューションプラズマでは、分子構造を破壊することなく反応誘起できるため、表面修飾
やボトムアップな材料合成にも応用できる点である。 

 

● プラズマの産業界における有用性

気相で生成するプラズマの場合、中性のガス粒子(原子あるいは分子)が電離し、電子と正イオンが
生成する。これらの量は中性ガス粒子にくらべ少ない。また少量ではあるが、中性ガス粒子への電子
の付着により負イオンも生成する。これ以外に、中性で活性な励起種、不対電子を有し活性なラジカ
ル、また放射される光子を生成している。これらの粒子の作用により、プラズマを用いると、反応を
(1)ドライ、(2)低温、(3)高速の条件下で行わせることが可能になる。

気相で生成するプラズマは、産業界の多くの分野で使用されている。 これに対し、 固相である金属
中では、自由電子が集団的に振動している状態は固相中のプラズマと呼べる。この振動を粒子として
量子化しプラズモンと呼ぶ。金属表面に微細な構造が形成された場合や金属ナノ微粒子の表面では、
光が照射された場合、プラズモンが共鳴励起され、表面(局在)プラズモンが生成する。この表面プ
ラズモンと光との相互作用により、金属ナノ粒子は独特の色調を呈する。こういった現象は、表面(
局在)プラズモン共鳴と呼ばれ、局在的に著しく増強された電場が生成する。この共鳴現象を、表面
分析、表面加工、医療などに応用。プラズモンを用いる学問分野は、電子を用いるエレクトロニクス、
光を用いるフォトニクスに対し、プラズモニクスと呼ばれ、産業の基礎として成長をはじめている。

これらに対し、液相中で生成するプラズマは、古くから、放電加工、水中溶接、放電浸炭、液体絶縁
などの液中の放電現象技術として扱ってきたが、その物理・化学的な基礎については、ほとんど研究
されなかった。近年、プラズマ材料科学分野で、液中で生成するプラズマ(『ソリューションプラズ
マ』)を、21世紀のコア技術研究を進められよとしている。ソリューションプラズマと名付けたの
は、溶質と溶媒の組み合わせにより、さまざまなプラズマを生じさせることができ、 溶液(ソリュー
ション)を強調するためといわれている(上図ダブクリ参照)。

● 関連特許及び非特許文献

 
以下、関連技術資料を参考事例とし記載する。

1.特開2012-014919 コロナ放電とその利用

2.稗田純子他“ソリューションプラズマ表面修飾を用いたナノカーボン分散コンポジッ材料の
   作製”日本金属学会誌、第73巻、第12号(2009

3.
ソリューションプラズマ反応場の自律制御化とナノ合成・加工への応用 名古屋大学
    工学研究科・教授 高井 治
4.特開2016-108560  ナノコンポジットフィルム及びナノコンポジットフィルムの製造方法 株式会
    社サムスン日本研究所 他 2016年06月 
 
5.特開2016-102034  導電性グラファイトの製造方法及び導電性グラファイト 旭化成株式会社 他
6.特開2014-144900  表面修飾炭素材の製造方法 国立大学法人名古屋大学 2014年08月
 
 
 
 
 
 
 


● 不実 年寄りの日光浴

オリーブの木が不実だという。(1)肥料が足り(あるいは配合が悪い)ないのか、(2)枝が混み
合っているのか、(3)他種のオリーブの木からの受粉が少ない(あるいは皆無)のか見当がつかな
い。しばらく考えてみよう(ようするに、忙しいすぎて余裕がないのだ)。それも問題なのだが「ル
ームウォーキング」も「スリーディープリンター」も停滞してしまっている。前者は登山実行が迫っ
ているにも関わらず、トレーニングにすら至っていない。そこで、2、3日前から、斜度9度の最高
レベルの10にあげている(因みに、脈拍は150にも上昇、これは20代のレベルに相当で50%
脈拍数が多いことになる)。ただし、距離は2キロ足らずで、目標の2回は達成していない。そこ
「年寄りの冷や水」ではなく「日光浴」を正午過ぎにやってみた。これは油断禁物。息子が海水浴
焼き過ぎでちょっとした騒ぎになってた。だから、焼ける前に室内待避する。明朝は、町内の草刈
り。
これで少しは焼けるだろうが、今後も続け、急な山登りのリスクをできるだけ小さくしたい。
 
  ● 今夜の一曲

                   FU-JI-TSU

   こんな小さな星では

   きっと出会ってしまう

   二人…別れ告げても

   あんな輝いた日々を

   全部無駄にするような

   再会だけはよしたいね

   大人になって苦笑いだとか

   それとも子供の言葉でなぐさめを


   不実です初めて会ったような不思議顔

   私は街角ピエロ

   不実です微笑んだ私を不思議顔

   それはないんじゃない ?

                                                         作詞 中島みゆき
                               作曲 後藤 次利

この曲は、「FU-JI-TSU」(ふじつ)は、工藤静香通算4枚目のシングル。1988年6月1日に発
売された。発売元はポニーキャニオン。初めて作詞家に中島みゆきを迎えた。中島みゆきの著書『愛
が好きです Ⅱ』(歌詞&エッセイ集。新潮社刊、ISBN 9784101283074)内のエッセイで、この曲のタ
イトルをめぐるエピソードが披露されている。そんなわけで、今夜は、不実、FU-JI-TSU、不実日和。

                                                                                     

  

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コンテンツのないコンテナ

2016年08月05日 | デジタル革命渦論

 

 

 

     

     ある局面になるとものすごく愚かなことができるというのが人間なのです。善悪二つ
     のモノサシしか持っていないと、人間は非常に生きづらさを感じるものなのです。


             

                                               

                                 Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

  

   ● 今夜の一枚

 【ひこにゃん 空中散歩】 彦根城と花火の競演

 

 

● 次世代太陽電池実用化に期待:エネルギー変換材料開発と基礎物性評価

今月4日、安くて高効率なペロブスカイト太陽電池の開発が行われているが、性能を左右する因子の
特定が
難しく、高速かつ因子の特定が容易な評価法の開発が望まれていた。阪大と京大の研究グルー
プは、新たにデータ科学的統計法と高速スクリーニング法を融合し、素子の性能を決める因子を今ま
での10分の1以下の時間で評価することが可能となったと公表。これにより、次世代太陽電池の実
用化につながるエネルギー変換材料の開発と基礎物性評価への応用が期待されている。、

それによると、マイクロ波の一種を用いたマイクロ波伝導度法で、ペロブスカイト発電層の電気物性
の評価に有効であることが判明、さらに、太陽電池素子と同じようにペロブスカイト発電層の上に正
孔輸送層を塗布することで、マイクロ波信号が大きく変化することを見出すが(下図2a)、どのよ
うな材料が正孔輸送材として適しているのか、またマイクロ波測定の結果をどのように解釈して材料
設計へ反映させるのか不明であった

今回、数種類の高分子を個別にペロブスカイト層に塗布し、マイクロ波法を用いてナノ秒~マイクロ
秒での電荷の時間挙動を評価。青緑色のレーザー光パルスを照射すると、ペロブスカイト中に瞬間的
に正孔と電子が生成し、大きなマイクロ波信号が観測されるが、正孔輸送層である高分子膜を塗布し
た2層膜ではマイクロ波信号は大きく減少し、減衰速度も速くなることが観測された(図2b)。こ
のマイクロ波信号の減少量を解析することで、正孔移動効率の時間変化を定量することに成功し、さ
らに詳しく解析することで、1つの材料につき4つの実験変数を抽出することができることを発見。

一方で、それぞれの高分子を正孔輸送層に使ったペロブスカイト太陽電池素子を作製し、素子性能を
評価したところ、ペロブスカイト発電層そのものは同一であるにも関わらず、変換効率は1%程度か
ら17%程度まで大きく異なるが、素子性能とマイクロ波信号の間にどのような関係があるのか分か
らずにいた。そこで、実験変数を個々に扱うだけでなく、和や積などの組み合わせを検討し、評価を
行い8種類の高分子だけでなく、過去に行った低分子材料のデータを加え、データ科学的統計法を用
いて素子性能との相関を調べ、その結果、実験変数のうち、初期正孔移動効率と移動速度の積が、太
陽電池素子の短絡電流密度に最も相関することが分かる(下図)。今回明らかになった実験指標を用
いることで、新規の正孔輸送材開発と評価が格段に容易になり、高効率化に向けた研究を加速できる
という。

※ データ科学的統計法:非常に多くのデータを基に、回帰分析、機械学習、人工知能といった方法
  で傾向や特徴量を抽出する手法。

※ マイクロ波伝導度法:時間分解マイクロ波伝導度法。光や放射線パルスを有機物に照射すると短
  寿命の電荷が生じ、その電荷がマイクロ波と相互作用してマイクロ波のパワーが減少する。この
  現象を観察し電荷の時間挙動やナノスケールの電荷キャリアの局所的な振動速度を評価する手法。

 

 

【量子ドット工学講座 17】

毎度のことだが、量子ドット太陽電池として知られる光電変換装置は、量子ドットに特定波長の太陽
光が当たり励起される電子と、その電子が価電子帯から伝導帯まで励起されたときに生じる正孔とを
キャリアとして利用する。その量子ドットは、通常、その周囲を、量子ドット自身のバンドギャップ
よりも大きなバンドギャップを有する障壁層によって囲まれている。

このため、理論的には、電子のフォノン放出によるエネルギー緩和が起こりにくく消滅し難いと考え
られているが、量子ドットを集積させて量子ドット集積部を形成した場合には、量子ドット内に生成
したキャリア(電子、正孔)は、障壁層を含む量子ドット集積部内に存在する欠陥と結合して消滅し
やすく、これによりキャリアの密度が低下し、電極まで到達できる電荷量の低下が起こり、光電変換
効率を高められないという問題がある。このような問題に対し、光電変換層内において、キャリアの
収集能力を高めるための構造が種々提案されている。

下図6(a)は、従来の光電変換層の一例を示す断面模式図であり、(b)は、(a)のバンド構造
を模式的に示したものである。ここで、符号Ecはバンド構造における伝導帯のエネルギーレベル、
Evは価電子帯のエネルギーレベルを表している。また、符号Egはエネルギーギャップを表してい
る。図6(a)に示した光電変換層100は、キャリアの収集能力を有するバルク体からなる集電部
101を、複数の量子ドットを集積させた量子ドット集積部103の一方主面に重ね合わせた構成と
なっている。



この光電変換層の場合、集電部101は、その主体が、例えば、酸化亜鉛などの半導体によって形成
されていることから、一定の導電性をもつが、未だ、集電部101内におけるキャリアCの移動度が
低いことから光電変換層の変換効率を高くできないという問題がある。

【符号の説明】A1、A2、A3光電変換層 B光電変換装置 Cキャリア 1量子ドット集積部 
1a量子ドット 3・集電部 5集電基部 7(7a、7b、7c)・ナノ構造層 7aa量子粒 
7bb量子細線 7cc量子薄膜 9・透明導電膜 11ガラス基板 13電極層


特開2016-139735 光電変換層および光電変換装置

従ってこの発明は、集電部におけるキャリアの移動度が高く、光電変換効率を高めることのできる光
電変換
層および光電変換装置を提供することを目的とする。この発明の光電変換層は、複数の量子ド
ットを有する量子ドット集積部と、少なくとも一方主面に配置された集電部と、を備えている光電変
換層で、集電部が、量子ドット集積部よりも導電率の高いバルク体からなる集電基部と、集電基部と
同じ材料でなり、集電基部よりもエネルギーギャップの大きいナノ構造層で構成するとともに、ナノ
構造層が量子ドット集積部と集電基部との間に配置されている。この
発明の光電変換装置は、光電変
換層が2つの導体層間に配置されている。

上図1は、この発明の光電変換層の第1の実施形態を部分的に示す断面模式図、(a)はナノ構造層
が量子ドットの場合、(b)はナノ構造層が量子細線の場合、(c)はナノ構造層が量子薄膜の場合
である。

ここで、(c)の量子薄膜については図面の奥行き側に2次元的に広がった構造を成している。また
図1には光電変換層1が1層の構成を示しているが、これに限られるものではなく、光電変換層1が
2層以上となったものにも適用される。図2は、図1(a)の光電変換層のバンド構造の模式図。こ
こで、符号Ecはバンド構造における伝導帯のエネルギーレベル、Evは価電子帯のエネルギーレベ
ルを表している。また、符号Egはエネルギーギャップを表している。実線のエネルギー線(L
は集電部3にナノ構造層7が設けられていない場合、破線のエネルギー線(L)は集電部3にナノ
構造層7が設けられている場合を表す。 図1に示す実施形態の光電変換層A、AおよびAは、
複数の量子ドット1aが集積された量子ドット集積部1と、この量子ドット集積部1の少なくとも、
一方の主面に配置/された膜状の集電部3とを備えている。

この場合、集電部3は、量子ドット集積部1よりも導電率の高い材料のバルク体からなる集電基部5
と、集電基部5と同じ材料からなり、集電基部5よりもエネルギーギャップの大きいナノ構造層7と
を有している。この場合、ナノ構造層7は量子ドット集積部1と集電基部5との間に配置されている。
ここで、量子ドット集積部1は太陽光など特定波長の光を吸収した際に電子やホールといった伝導性
のキャリアCを生成する層であり、一方、集電部3は量子ドット集積部1にて生成したキャリアCを
収集する機能をもつ層である。

この実施形態の光電変換層A、A、Aによれば、量子ドット集積部1に隣接して設けられてい
る集電部3に、同じ材料で量子効果を有するナノ構造層7を設け、これら量子効果を有するナノ構造
層7が量子ドット集積部1側に隣接するように配置させることにより、集電部3内のバンド構造にお
ける伝導帯のエネルギーレベル(Ec)が量子ドット集積部1側で高く、量子ドット集積部1とは反
対側の集電基部5側で低くできることから、集電部3の厚み方向に向くエネルギー線(L)に勾配
を持たせることができる。これにより集電部3におけるキャリアCの移動度を高めることができ、光
電変換効率を向上させることができる
。これは、集電部3を構成する材料のバルク体を量子効果をも
つナノ構造層5に変化させたことにより、ナノ構造層7はエネルギーギャップ(Eg)の拡がりが
起こり、これによりナノ構造層7における伝導帯のエネルギーレベル(E)が集電基部5側よりも
高い準位に変化したためで、ここで、バルク体とは、結晶相もしくは非晶質相、あるいはこれらが複
合された相が高い密度で膜状または板状を成しているものを言う
。量子ドット集積部1およびバルク
体からなる集電基部5の導電率は、例えば、光電変換層Aの切出し片を測定用試料として4端子法
により求める。

この場合、ナノ構造層7としては、図1(a)(b)(c)にそれぞれ示すに、量子粒7a、量子細
線7bおよび量子薄
膜7cのうちのいずれかであることが望ましい。ナノ構造層7が上記した構造体
であると、電子などのキャリアCをバルク体(3次元)よりも確実に低い次元(量子薄膜は2次元、
量子細線は1次元、量子粒は0次元)に拘束することができることから、集電基部5と量子ドット集
積部1との間に、集電基部5と量子ドット集積部1との中間領域に位置する、伝導帯のエネルギーレ
ベルを形成することができる。これにより量子ドット集積部1から集電基部5側に及ぶエネルギー線
(L)によって高い勾配を形成できる。

また、この光電変換装置A、A、Aでは、ナノ構造層5は、量子粒7aaの直径、量子細線7
bbの線径、および量子薄膜7ccの厚みが、量子ドット集積膜1側で小さく、集電基部5側で大き
いことが望ましい。ここで、量子細線7bbは集電基部5側から量子ドット集積部1側に向けて線径
が小さくなっている。量子薄膜7ccは集電基部5側から量子ドット集積部1側に向けて厚みが薄く
なっている。

例えば、上図3(a)に示す量子粒7aaを例に説明すると、ナノ構造層7を構成する量子粒7aa
の直径を量子ドット集積部1側が小さく、集電基部5側で大きくなるように配置した場合、ナノ構造
層7を構成する量子粒7aaは量子ドット集積膜1側のエネルギーレベルを高くでき、集電基部5側
の量子粒7aaとの間で伝導帯のエネルギーレベル(Ec)により大きな差を持たせることができる。
同様に、量子細線7bb、量子薄膜7ccにも同様に量子ドット集積部1側のサイズ(線径、厚み)
を小さくしたものが良い。
また、量子粒7aaの直径、量子細線7bbの線径、量子薄膜7ccの厚
みが、量子ドット集積膜1側から集電基部5側へ向けて次第に大きくなっていることがより望ましい。
量子粒7aaの直径、量子細線7bbの線径、量子薄膜7ccの厚みが、量子ドット集積膜1側から
集電基部5側へ向けて次第に大きくなっていると、ナノ構造層7の厚み方向(図3におけるD、D
の方向)の全体において伝導帯のエネルギーレベル(E)に勾配を形成することができるため、集
電部3におけるキャリアCの移動度をさらに高めることができる。

量子粒7aa、量子細線7bbおよび量子薄膜7ccは、集電基部5との間で低い抵抗になるように
当接されていれば良いが、ナノ構造層7と集電基部5との間がより低い抵抗になるという点で、ナノ
構造層7は集電基部5と一体化しているかまたは集電基部5から成長した構造であることが望ましい。

集電部3(集電基部5およびナノ構造層7)の材料としては、Ti、Zn、Ga、Ge、As、Sb、
SnおよびInの群から選ばれる少なくとも1種が好適なものとなるが、量子ドット集積部1を構成
する量子ドット1aの材料にシリコン(Si)やPbS(イオウ化鉛)を適用したときに、これらよ
りもエネルギーギャップ(Eg)が大きくかつ導体抵抗を低くできるという点で、Zn、Snおよび
Tiがより好ましい。

上図4は、本発明の光電変換装置の一実施形態を部分的に示す断面模式図である。図4には光電変換
装置Bとして、上記した光電変換層A1を備えた例を示している。光電変換装置Bは、光電変換層A1
の下層側に透明導電膜9およびガラス基板11を有し、光電変換層A1の上層側に電極層13を有す
る。この場合、ガラス基板11の下面側が光の入射面15aとなり、電極層9の上面側が光の出射面
15bとなる。なお、光の入射面15a側であるガラス基板7の表面や光の出射面15bである電極
層9の上面には保護層や反射防止材などが設けられる場合がある。

実施形態の光電変換装置Bによれば、量子ドット集積部1に隣接して設けられている集電部3に、同
じ材料で量子効果を有するナノ構造層7が設けられていることから、集電部3内のバンド構造におけ
る伝導帯のエネルギーレベル(Ec)が量子ドット集積部1側で高く、量子ドット集積部1とは反対
側の集電基部3側で低くできる。また、集電部3の厚み方向にエネルギー線に(L1)勾配を持たせ
ることができる。これにより集電部3におけるキャリアCの移動度を高めることができ、光電変換効
率を向上させることができる。


上述のように、本実施形態の光電変換層A1および光電変換装置Bについて、図1~図4を基に説明
したが、本発明はこれに限らず、光電変換層Aの代わりに、ナノ構造層7に量子細線7bb、量子
薄膜7ccを適用した光電変換層A、Aについても同様の効果を得ることができる。
上記した光
電変換層A、A、Aおよび光電変換装置Bを構成するナノ構造層7の成分分析、形状の判定や
サイズの評価は電子顕微鏡およびこれに付設の分析器によって求める。

上記した量子ドット集積部1を構成する量子ドット1aの材料としては、種々の半導体材料が適用さ
れるが、そのエネルギーギャップ(Eg)としては、0.15~2.50evを有するものが好適
ある。具体的な半導体材料とし
ては、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、
インジウム(In)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、鉄(Fe)、硫黄(S)、
鉛(Pb)、テルル(Te)およびセレン(Se)から選ばれるいずれか1種またはこれらの化合物
半導体
を用いることが望ましい。

また、上記した量子ドット1aにおいては、電子の閉じ込め効果を高められるという理由から量子ド
ット1aの表面に障壁層(バリア層)を有していてもよい。障壁層は量子ドット1aとなる半導体材
料に比較して2~15倍のエネルギーギャップを有している材料が好ましく、エネルギーギャップ
(Eg)が1.0~10.0evを有するものが好ましい。なお、量子ドット1aが表面に障壁層を
有する場合には、障壁層の材料としては、Si、C、Ti、Cu、Ga、S、InおよびSeから選
ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物(半導体、炭化物、酸化物、窒化物)が好ましい。

図5は、本実施形態の光電変換装置の製造方法を示す工程図である。まず、図5(a)に示すように、
支持体となるガラス基板11を準備する。次に、このガラス基板11の一方主面にITOなどの導体
材料を用いて透明導電膜9を形成する。【図2】図1(a)の光電変換層のバンド構造の模式図であ
る。
次に、図5(b)に示すように、透明導電膜9の表面に集電基部5となる酸化亜鉛のバルク体を
スパッタ法などにより膜状に形成する。次いで、この集電基部5の表面にナノ構造層7を形成する。
ナノ構造層7を構成する量子粒7aaは、以下のようにして作製する。例えば、酢酸亜鉛のエタノー
ル溶液中に水酸化リチウムを添加して、室温以下の温度(例えば、-5~5℃)にて混合することに
よってコロイド状の量子粒7aaを形成する。この混合液にヘキサンとヘプタンを混合させることで
コロイド状の量子粒7aaのみを沈殿させリチウムと酢酸の残留物を取り除く。その後、コロイド状
の量子粒7aaをエタノール溶液に再分散させる。

次に、作製した量子粒7aaを集電基部5の表面にスピンコート等の成膜法により塗布し、乾燥処理
や加圧加熱による緻密化処理を行うことによってナノ構造層7を有する集電部3を形成する。
集電部
3内に量子細線7bbや量子薄膜7ccを形成する場合には、酢酸亜鉛を含む溶液を透明導電膜7の
表面に塗布した後、約350℃の温度に加熱することによって形成する。量子薄膜7ccを形成する
場合には、量子細線7bbを成長させる条件よりも温度、圧力、保持時間を高めに設定する。この場
合、酢酸亜鉛を含む溶液は、例えば、硝酸亜鉛500mM(ミリモル)とヘキサメチレンテトラミン
250mM(ミリモル)とを混合した溶液中に、副成分となる元素(陽イオン)を含む水溶液を加え
ることによって調製する。

次に、図5(d)に示すように、形成した集電部3の上面に量子ドット1aとなる半導体粒子を充填
し、緻密化処理を行うことによって量子ドット集積部1を形成する。半導体粒子を充填する方法とし
ては、半導体粒子を含む溶液をスピンコート法や沈降法などが好適なものとして選ばれる。緻密化処
理には加熱もしくは加圧、あるいはこれらを同時に行う方法が採られる。量子ドット集積部1の厚み
は堆積させる半導体粒子の量によって調整する。量子ドット集積部1を含む光電変換層A1を多層化
する場合には、図5(b)~(d)の工程を繰り返す。
最後に、量子ドット集積部1の上面側に金な
どの導体材料を蒸着して電極層13となる導体膜を形成し、次いで、必要に応じて、この導体膜の表
面に保護層を形成した後、ガラス膜などで被覆する。

 

 

 ● 今夜の一曲 

Little surfer, little one
Made my heart come all undone
Do you love me, do you, surfer girl?
Surfer girl, my little surfer girl

I have watched you on the shore
Standing by the ocean's roar
Do you love me, do you, surfer girl?
Surfer girl, surfer girl

We could ride the surf together
While our love would grow
In my Woody I would take you everywhere I go

So I say from me to you
I will make your dreams come true
Do you love me, do you, surfer girl?
Surfer girl, my little surfer girl

                                               Surfer Girl

                                          Music & Word  Brian Wilson

1963年、シングルレコードとしてビーチボーイズの曲として、ブライアン・ウィルソンが最初の
オリジナルとして作曲し、後にアルバム「サーファーガール」に挿入される。因みに、シングルのB
面の曲は「リトルデュースクーペ」。彼が19歳の時、3年半交際していた初めてのガールフレンド
のジュディ・ボウルズのために書かれたもの。メロディーはピアノなしで、ホットドッグ・スタンド
で車の中で思いつき、帰宅しハーもーニーを入れ「サーファー・ガール」としたと言う。曲はディオ
ンとザ・ベルモンドズの「星に願いを」に影響を受けている。後にブライアンは、2011年にディ
ズニーのキーバージョンでソロでトリビュートアルバムとしてカバーしている。

  

● コンテンツのないコンテナ

ところで、2020年東京オリンピック種目として「サーフィン」が競技種目に採用決定している。
その記録として
今宵の一曲として掲載。^^;

リオ・オリンピックも東京・オリンピックも正直もうひとつパッとしないのはなぜか?国威発揚をコ
ンテンツにした北京オリンピックやソチ・オリンピックなどは後進国(失礼、大国です)としてはそ
れなりに妥当性もあるだろうが、「ドーピング」問題に揺れるロシア選手団などは「過剰な政治」が
コンテンツとなり、他国民の失望・失笑をかう始末だし、プロ野球選手の(八百長)賭博やドーピン
グなどと同じで、ファンの楽しみを踏みにじる行為。都知事選挙で小池知事が誕生したが、不透明な
意思決定過程などが話題となり、オリンピック開催のコンテンツやテーマ設定について、わたし(

ち)
の耳には届かず、聞こえるのは土建見積額の ”大きさ”や"箱物"の話題ばかりで「コンテンツの
ないコンテナ」状態。こんなことなら、各競技毎にまとめ分散開催、4年に一度程度、競技別に都
市ごとで開催すればいいように思う。こんなことが
、もうひとつ盛り上がらない理由なのであろう。
新しい考え方や構想力がないなら、いっそう、大がかりなオリンピックなど一時的にやめて様子をみ
たらと思うのだが如何に?!

                                                              

  

 

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第5次産業革命のトラベリン・バス

2016年08月04日 | 時事書評

 

 

     

               
僕らは、日本の近代史は終わったんだな、何かやんなきゃいけない、何か
                新しい
考え方を出せなければ生きてはいけないんだよ、と思いました。

                    「靖国論争にとらわれては日本は変わらない」

                                                          サンデー毎日 2006.9.3

                                             
                              Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

 

    

【帝國のロングマーチ 18】          

      

● 折々の読書  『China 2049』38     

                                         秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】 

  序 章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか

            森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)   

 

順手牽羊とは、あたりにあるものを手当たり次第パクル行為(=侵略戦争)を意味する。三十六計では
敵の隙につけこみ戦果を得る策略をさし、この策略の肝は、あくまで本来目標の遂行にあり、目の前の
利益を優先して、目標を見失ったのでは本末転倒であり、そのようにならぬために得られる利益は容易
に手に入る状態でなければならないと諭す。

      顺手就牵了羊。比喻不费劲,乘机便得到的。现多指乘机拿走人家东西的偷窃行为。

  史例 

  春秋時代、呉の公子光が、楚を追われてきた伍子胥の協力を得て、呉王僚を倒して呉王闔閭(闔
 廬)になったとき、呉ははじめ漢人と異なる蛮夷の国とされていたが、紀元前六世紀の王、寿夢の
 ころから中原諸国と往来を始め、その子諸樊のころには次第に強国となり、越と対立した。諸樊(
 寿夢からかぞえて二代目の王)の跡の三代目ははっきりしないが、四代目の王は三弟の余昧であっ
 た。五代目は本来諸樊の子・光が継ぐべきであったが、余昧は自分の子・僚を王位につけた。怒っ
 た光は伍子胥と談らい僚から王位を奪おうとした。その奪い方が、順手牽羊の計、すなわちわずか
 な僚の隙に乗じて彼を倒したというもの。


         公子光、微隙を衝き呉王僚を斃す

  わずかな隙でも絶対に利用しなければならないし、小さな勝利でも絶対に得なければならない。
 わずかな隙を利用し、小さな勝利を得れば、全面的な勝利の機会と発端を手に入れることができる。

 

   第8章 資本主義者の欺瞞    

                            順手牽羊――手に順いて羊を牽く

                               『兵法三十六計』第十二計
         


  2005年にわたしたちは、中国からの亡命者(仮にミズ・タンと呼ぼう)の話を聞き、中国が
 マラソン戦略によって世界一の経済大国の座をアメリカから奪取しよう
としていることを確信した
 ミズ・タンによると、少なくとも次官級以上の共産党高
官は、北京中心部にある共産党中央党校で、
 極秘とされる戦略プログラムを学んでい
るそうだ。その一団には将来の将軍 も含まれ、プログラ
 ムの履修は昇進の条件となっ
ている。カリキュラムには古代史の研究も含まれている。さらに重要
 なこととして、
肢らは少なくとも6冊の翻訳書を教材として、アメリカが2世紀にわたる戦略を通
 し
て、いかにして世界最大の経済国になったか、さらには、どうすれば中国はアメリカの例に倣う
 ことができるか、それもアメリカ以上に速いペースで、ということもを学んでいた(注1)。

  教育の軸となっているのはダーウィンの進化論で、1840年から第一次世界大戦 勃発までの
 間に、ドイツや英国の企業に勝てるよう、アメリカ政府が自国の企業を支援したことに注目してい
 る。講座では、それこそがアメリカが覇権国になった主要な理由であり、中国がアメリカを超える
 のに必要なことだと教える。そして、異なる業種の約20件の実例を検討し、アメリカ政府が果た
 してきた戦略的役割から何を学び、その教訓をどう生かすかを見ていくそうだ。

  検討されるアメリカの戦略には、国内市場の保護、国内企業に対する経済的支援、輸出促進など
 が含まれる,市場競争を活性化するための独占禁止法についても深く掘り下げ、後に中国はそれを
 導入した。投資家にとって魅力的なアメリカの証券取引システムは、多くの資本を呼び込み、アメ
 リカを世界最大にして最も効率的な市場にした。何よりも重要な教えは、政府に育成された産業が
 アメリカ市場全体の規模を拡張したことだ、と彼女はつけ加えた。19世紀から20世紀初めにか
 けてアメリカ政府は、大企業の市場拡大を助成金によって後押しした。中国共産党幹部は、アメリ
 カ人は自動製粉機の技術をヨーロッパから盗んだと教えられる。小麦やオート麦を小麦粉やシリア
 ルに加工する機械である。この技術を最初に用いたのは、ピルズベリー社(ドゥボーイのキャラク
 ターで知られる、アメリカの老舗製粉会社)で、小麦粉を作るためだったとミズ・タンは笑いなが
 ら言い、わたしをじっと見つめた(注2)。

  アメリカ政府は、アンハイザー・ブッシュ(バドワイザーの製造元)などの醸造メーカー、コカ
 コーフなどの清涼飲料メーカー、その他のメーカーが海外に工場を建てるのを支援したと講座で学
 ぶ。そのいくつかは真実だとわたしは知っていた。
  またその講座では、アメリカは製紙業でも自国企業を支援し、1900年に新技術を持つドイツ
 企業を吸収合併させ、業界のトップに立った、と教わる。同様に鉄鋼業でも、アメリカ政府はアン
 ドリュー・カーネギーを支援し、1879年までに彼は鉄鋼王になった。次にアメリカは、ヨーロ
 ッパの技術を習得して鋼やアルミニウムの製造でも優位に立った。また、1880年代にはゴム産
 業と石油産業も支配するようになり(注3)、タイヤメーカーのB・F・グッドリッチは、政府の
 援助によって世界のトップになった。
  第一次大戦までにアメリカは、世界のリーダーとしての地位をヨーロッパから奪うという戦略上
 の目標をほぼ達成した。1890年代半ばに誕生したゼネラルエレクトリック社も、ドイツ企業の
 シーメンスやAEGをしのぐよう、アメリカ政府が支援したと教えられる。金融会社を作り、傘下
 の公益企業の主要な株主になるという手法もおそらくはシーメンスやAEGを真似たものだ。

 この話の第二段階、つまり彼女の言う「第二の波」は、1914年から50年までの間で、アメリ
 カは自動車、エレクトロニクス、製薬といった新たな産業を支配するようになった。アメリカ政府
 は特にゼネラルモーターズと強く結びつき、ディーゼル機関の開発を支援した。そのため、ヨーロ
 ッパで使われていた蒸気機関は時代遅れになった。また、アメリカ政府は自国の石油会社、5社を
 支援し、外国の油田の利用を巡って、ブリティッシュ・ペトロリアムとロイヤル・ダッチ・シェル
 を出し抜こうとした。いずれ中国共産党のリーダーになる人々は、ドイツの製薬技術が生み出した
 アスピリン、抗生物質、ノボカイン(訳注*局所麻酔薬の一種)の製造特許をアメリカ人がどうや
 って我がものにしたかも学んだ、と彼女は言った,

  第二次世界人戦後、アメリカ政府による巨大企業支援の「第三の波」は、航空宇宙産業や石油化
 学産業の支配に重点を置いた。デュポンは政府の後押しにより、イギリスのインペリアル・ケミカ
 ル・インダストリーズからポリマーの特許を買い取った(注4),ミズ・タンは、医薬品開発にお
 けるアメリカ政府の役割について語った。1942年にメルクが初めて工業で生産したペニシリン
 を市場に出したときのことなどだ。



 「マラソン」という言葉がこの講座で使われましたか、とわたしは尋ねた。「はい」と彼女は答え
 た。そして、中央党校の書店で(Innovation Marathon: Lessons from Hight-Technology Firms(革新の
  マラソン:ハイテク企業からの教訓)という翻訳書を探してください、と言った。その本は確かに
 そこにあった。著者はマリアン・グリメクとクローディア・バード・スクーノヴァで、1990年
 にオックスフオード大学出版局から出版された。マラソンの概念について書かれたもう1冊の本は、
 チャールズ・R・モリスとチャールズ・H・フアーガスンによる Computer Wars: How the West Can
    in a Post-IBM World
(コンピューター戦争:IBM後の世界で欧米はどうすれば勝てるのか
)である
  (注5)。

  

  わたしは、アメリカはソ連式の国有企業を救うためのモデルになったのですか、と尋ねた。「い
 いえ」と彼女。アメリカにはテネシー川流域開発公社(ニューディール政策の一環で設立された)
 を除けば、そのような公営企業はない。経済を建て直す方法はすべて、世界銀行から学んだと彼女
 は言う。彼女との話は、1時間以上に及んだ。わたしのノートはいっぱいになった。さらに深く知
 るには、北京にある巨界銀行のオフィスタワーのエコノミストを訪ねる必要がある。

  過去2世紀にわたって中国の指導者たちは、中国は個人の財産権や自由市場を伴う経済の自由化
 へ向かっていると、世界に信じさせてきた,タイムやニューズウィーク
の表紙は、中国は資本主義
 の道を進んでおり、そうなれば自ずと欧米流の民主主義が
実現される、と宣伝してきた。1978
 年以降、中国は世界銀行とその他の欧米の機
関の援助により、精力的に近代化を推し進め、目覚ま
 しい成功を収めた。そして30年
以上にわたって、その経済はコンスタントに成長しつづけている。
 小さな変動はあっ
たものの、中国経済は世界平均のおよそ3倍の速度で成長した。2001年以降、
 年
間成長率は平均で10.1パーセントに達する。1980年の名目上のGDPは約70O億ドルだ
 ったが、2011年までに7兆ドルを超えた(注6)。

  1980年には経済
発展の遅れた地域だったが、今やアメリカに次ぐ世界第二の経済大国となっ
 た。20
14年のフオーチュン・グローバル500には、中国企業が95社ランクインした(注7
 しかもそのうち5社は、上位50社に大っている(注8)。2000年はゼロだっ
た。中国は今や
 世界最大の自動車生産国であり、世界最大のエネルギー使用国であ
り、世界最大の二酸化炭素排出
 国である(注9)。依然として人口は世界最多で、増加
抑制に努めてきたにもかかわらず、13億
 5000万人を擁する(注10)。

注10. The Economist Pochet World in Figures, 2014 ed., 14,  1949年の中華人民共和国建国の直後から人
      口増加を抑制するための努力が払われてきたが、ほとんど成果はなく、1979年に全国的に「一
   人っ子」政策が命じられて初めて、人口増加にブレーキがかかった。毛沢東は、中国にふさわ
   しい人口は「約6億人」だと考えたと言われている。Susan Grccnhalgh,Just One Child: Science
            and Policy in Deng's China
Berkeley: University of Califomia Prcss, 2008),46-53. 1958年に毛沢東
      は、「過去にわたしは、8億人ならどうにかやっていけると討った。今は10億人以上でも心
   配はいらないと思っている」と言った(52)。


  これは経済の奇跡にほかならず、欧米には大いにその責任がある。マスコミや政治
評論家は、中
 国は資本主義、自由市場経済に向かっていると賞賛した。しかし、中国
にそんなつもりはまったく
 なかった。中国に資本主義が到来したという神話から数十
年もたっているというのに、2014年
 を迎えても中国経済のおおよそ半分はまだ政
府の手中にある。
  欧米の専門家の大半は、中国の躍進をもたらしたのは、控えめな革新と、人民元を安くして人件
 費や製造費を抑え、欧米より廉価で商品を提供したことだと見ている
(注11)。けれども、中国の
 成長を促進しているのは革新などではなく、いまだに中国
のGDPの40パーセントを占める国有
 企業(SOE)に国から政策的に与えている助
成金である(注12),これらのSOE、あるいは政
 府内で「ナショナル・チャンピオ
ン」と呼ばれる企業は、100年マラソンに不可欠な要素で、非
 効率的であるにもか
かわらず、商品を欧米の競争相手より安く売ることに成功し、国の経済発展の
 原動力
になった(注13)。

  このような遠慮会釈ない重商主義の歴史は古い。戦国時代、諸国は
戦争の延長として経済をコン
 トロールしていた。



  中国経済は今も誤解されたままだ。世界の一流エコノミストは、中国経済という怪物の動きには
 見えない部分があることを認めており、それもあって、経済の自由化に
向かっているという中国の
 主張は、精査や反論を受けることが少ない,ノーベル経済
学賞受賞者のロナルド・コースと王寧は
 2013年に、「中国の市場変化についてわた
したちが知らないことは多く、また、これまでに報
 告されたことの多くは、真実ではない」と警告した(注14)。彼らは中国の指導者たちが外国の指
 導者に戦略を秘密に
し、実際はそうでもないのに自分たちは民間資本による自由市場を目指してい
 ると告
げた事例を挙げる(注15)。他の学者たちも、中国が「資本主義に向かう」という戦略を語
  る時に、相手を油断させようと独特のひねりが加わることに気づいていた,

78年から中国プラント建設に入る前に、わたしなりに分析し、その体験をふまえ、「ロシアマルクス
主義に新自由主義を接木した経済」「アジア赤色官僚専制国家」と規定しブログ掲載してきているが、
国際的な専門家を欺き「相手を油断させようと独特のひねりが加わることに気づいていた」との著者の
感想に違和感はない。

  
                                                                          この項つづく

 

   ● 今夜の一曲

 

   ルイジアナテネシーシカゴ

   はるかロスアンジェルスまで

   きつい旅だぜお前に分るかい

   あのトラベリン・バスに揺られて暮らすのは

   若いお前はロックン・ロールに憧れ

   生まれた町を出ると言うけど

   その日ぐらしがどんなものなのか

   分っているのかい

   ルイジアナメンフィスジョージア

   遠くカンサス・シティーまで

   夜が更ければ又いつもと同じさ

   町に残した女想って

   黙りこくるあいつのそばで

   カードで遊ぶ寂しい笑顔

   たまらないぜあのトラベリン・バスに

   揺られて行くのは

   ルイジアナモンタナアうバマ

   逞か南のキャロライナ



                                      トラベリン バス

                                                  Music & Word : 矢沢永吉/西岡恭蔵
                        

作詞は西岡恭蔵、作曲は矢沢永吉。76年6月21日発売のアルバム『A Day』に収録。翌77年
のコンサート・ツアーのタイトル「TRAVELING BUS '77 PART-1」「TRAVELING BUS '77 PART-
2
」は、この曲名から取られている。同ツアーはチケットも長距離バスを模したデザイン。矢沢の
ソロ初のタイアップ曲であり、ソニーのラジカセ「リズムカプセル9000」のCMに使われた。矢沢は
広告にも出演し、とくにテレビCMは、矢沢がラジカセのリズムボックス機能を使い、同曲を弾き
語りする内容となっている。尚、『E.Y 70'S』は、97年に発売された矢沢永吉の70年代の楽曲
を収録されたベストアルバム。
 西岡恭蔵の「その日ぐらしがどんなものなのか」という歌詞が、
揺れ動く二十代の心情にシンクロナイズし記憶に残る一曲となる。70年代、80年代と時代は大
きく変化し、わたし(たち)は『第5次産業革命のトラベリン・バス』に乗り長い旅路に出て行く。
そして、演歌、フォークソング、ロック・ロールが融合する「JPOPs」時代を迎える。

  

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ファイアズ(炎)

2016年08月03日 | 時事書評

 

 

       

         今のグローバル化は、米国を主体に、財政力や軍事力の
         圧力が加わったもの。本物とはいえない。


                私の3作:評論家・吉本隆明さん/下 『悲劇の解読』

                              毎日新聞 2007.12.24

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 



California solar homes final - PaulosAnalysis | Tableau Public

【カリフォルニア州 50の屋根用ソーラー飽和地区】 

このところの原油価格下落の影響を受け、シェールガスの採掘関連事業が景気が悪い。そのなか
カルフォルニア州の各地区での家庭用ソーラー住宅が不動産販売が好調。04年アーノルド・
シュワルツェネッガー州知事が18年までに家庭用ソーラー導入目標を百万戸に設定。現在57
万7千戸(家庭・学校・企業・農場)の導入達成状況にある。特に、サンディエゴ郡の50地区
(郵便番号)調査で21地区がソーラー集中地区であることが判明。サンディエゴ郡は今年4月
辞典で一戸建てのうち76,239戸がソーラー住宅であったと、今月1日、EcoWatch 社は報じ
ている(上下図写真をバブクリ参照)。

 

50 Most Solar-Saturated Zip Codes in California EcoWatch Aug 01, 2016

 ● 折々の読書:ファイアズ(炎)Ⅱ

  影響というのは力である。環境やパーソナリティー、それらは潮の満ち干のようにあらが
 いがたいものである。私には自分が影響を受けたかもしれない作品や作家について語ること
 はできない。そういった影響、つまり文学的影響というものは、私はこれこれこういう具合
 に影響を受けましたと明確に指摘できるものではないのだ。私にとって、これまでに読んだ
 あらゆる本から私は影響を受けましたというのは、私はどんな作家からもぜんぜん影響なん
 て受けていないと思うというのと同じくらい不正確であるだろう。具体的に名前をあげるな
 ら、私はアーネスト・ヘミングウェイの長篇と短篇の長年のファンである。そしてなおかつ、
 私はローレソス・ダレルの作品は、文体において特異にしてかつ卓越したものだと思ってい
 る。もちろん私はダレルのようには書かない。そういう点では私は彼に「影響」されていな
 い。ときどき私の文章はヘミングウェイの文章「みたいだ」と言われることがある。でも彼
 の文章が私の文章に影響を及ぼしたと言うことは私にはできない。ヘミングウェイも、ダレ
 ルと同じように、私が二十代にその作品を初めて読んで非常に感心した数多くの作家たちの
 一人ということなのだ。

  Lawrence Durre 27 Feb 1912 - 7 Nov 199

  そんなわけで、私は文学的影響力というものについては多くを知らない。でもそれ以外の
 種類の影響力についてならいささかの意見を持っている。私に覚えのある影響力というのは、
 最初はしばしばミステリアスな、ときには奇跡に近い姿をとって私のところに押しかけてく
 る。しかしこのような影響力というものは、私の仕事が進捗することによって、初めて明ら
 かになるのである。これらの影響力は容赦のないものであった(今でもそうなのだが)。こ
 れらの影響力こそが私をこの砂嘴のような地に押し流したのである。それは私を、一例をあ
 げるなら、湖のあっちの岸には押しやらなかった。しかしながら、もし私の人生と文章とが
 受けた主要な影響力がネガティヴなものであり、抑圧的で敵意に満ちたものであったとした
 ら(事実そうであったと思うのだが)、いったいどう考えればいいのだろう?

  まず最初に断っておきたいのだが、私はこの文章をヤドーという場所で書いている。それ
 はニューヨーク州サラトガ・スプリングズのちょっと外れにある。八月の初めの、日曜日の
 午後である。しょっちゅう、だいたい二十五分に一回くらいの割合で、三万人以上の声がわ
 あっというひとつの巨大な叫びになってわき起こるのを私は耳にすることができる。この見
 事な雄叫びはサラトガ競馬場から聞こえてくるのだ。有名なレースが今開催されている。私
 は原稿を書いている。しかし二十五分おきに、私はアナウンサーがラウドスピーカーで馬の
 ポジションを放送する声を聞くことができる。人々の咆呼が大きくなってくる。その歓声は
 木立の上に作裂する。その雄大にして、かつまことにスリリングな音は、馬たちがゴールに
 駆け込むまで、あたりに響き渡っている。それが終わると私は、まるで私自身がそれに参加
 していたみたいに、どっと疲れてしまう。私は自分が入賞した馬や、またある場合には惜し
 いところで入賞を逸した馬の馬券を握りしめているところを想像する。もしそれが写真判定
 を仰がなくてはならないものであれば、一分か二分か経って写真が現像され公式判定が出た
 ときに、またあの歓声がどっとやって来るなと待ち受けることになる。

  何日か前に私はここにやってきて、ラウドスピーカーから流れてくるアナウンサーの声と
 興奮した観客たちの咆眸を初めて耳にしたわけだが、私はそれ以来ずっとエル・パソを舞台
 にした短篇小説を書いている。私はちょっと前のことだが、その町にしばらくのあいだ住ん
 だことがあった。それはエル・パソの郊外にある競馬場に出かけた人々の話だ。その物語は
 ずっと書かれるのを待っていた、というようなことを言うつもりはない。そんなことはなか
 ったし、もしそんな風に言ってしまったら話はちょっと違った色彩を帯びてくることになる 
 だろう。でもこの短篇を例にとって言うなら、私はこの作品に目の目を見せるためには、何
 かを必要としていたのだ。私がヤドーにやって来て、最初に観客の歓声やラウドスピーカー
 から聞こえるアナウンサーの声を耳にしたとき、あのもう過ぎ去ってしまったエル・パソで
 の生活のひとこまが私の脳裏に蘇ってきて、その物語のヒントを与えてくれたのだ。私は自
 分がその競馬場に行ったときのことや、そこで起こったことや、あるいは起こったかもしれ
 ないことや、ここから二千マイルも離れたところにあるその場所で(少なくとも私の小説の
 中で)これから起こるであろうこと。

  というわけで、私の小説は進行中である。「影響力」というのはこのような姿をとること
 もあるのだ。言うまでもないことだが、すべての作家はこのような種類の影響力の支配下に
 ある。これはもっともありふれた種類の影響力である。これがそれを示唆し、それは別の何
 かを示唆する。これは我々にとってはありふれたことであり、そしてまた雨降りのように自
 然なことである。

  しかし話の本題に入る前にもうひとつ、私はこの最初の例によく似た影響力の実例につい
 て語りたい。それほど前のことではないが、私がシラキュースの家で、小説を書いている真                         
 っ最中に電話のベルが鳴った。私は電話を取った。受話器の向こうから聞こえる声は間違い
 なく黒人のものだった。ネルソソを出してくれと彼は言った。それは間違い電話だったし、
 私は間違いですよと言って電話を切った。そして私は自分の小説に戻っていった。でも間も
 なく私は、自分が知らず知らずのうちにその小説の中に丁人の黒人を登場させていることに
 気づいた。それはネルソンという名の、不吉な影のある人物だった。そしてそれを契機にそ
 の小説は違った展開をみせることになった。でも今にして思えば(いやそのときにだってち
 ゃんとわかっていたのだが)有り難いことに、それは小説にとっては正しい展開であった。

  私がその短篇を書き始めたとぎには、ネルソンという登場人物をあらかじめ準備したり、
 その必要性を予知したりすることは不可能だった。でも今ではその小説は書き上げられ、間
 もなく全国詰に掲載されることになっている。そして私にはわかっている。ネルソソの存在
 が、そしてその不吉さの影の存在が、正しく、また当を得たものであり、審美的に見て間違
 いの ないものであるということが。もうひとつ私にとってよかったことは、この人物がい
 ねば出会いがしらにぴたっとうまく私の小説の中に入り込んできたことである。そして私は
 ちゃんとそれを受け入れたのである。

  私の記憶力は貧弱なものである。つまり私は、自分の人生に起こった多くの出来事を忘れ
 てしまっているということである。これはまことに有り難いことではあるのだが、しかし私
 には全然説明できなかったり、あるいは思い出すことのできないいくつかの長い期間がある。
 私の住んでいた町や都市のこと、知っていた人の名前、人々そのもの。それは大きな空白で
 ある。しかし私はいくつかの物事を記憶している。いくつかのささやかな物事――誰がどん
 な口調で何を言ったか、そしてまた、誰かの激しい、あるいは声をひそめた、神経質な笑い
 声。ある情景。誰かの顔に浮かんだ悲しみや当惑の表情。そして私はいくつかのドラマティ
 ックな出来事を思い出すことができる。誰かがナイフを手に持って、怒りに燃えた目で私の
 方に向き直ったこと。あるいは誰かをおどしつける私自身の声。誰かがドアを叩き破るのを
 見たこと。あるいは階段から転げ落ちるのを見たこと。そういうドラマティックないくつか
 の記憶を、私は必要に応じて思い出すことができる。でも私にはそのときの会話の全部をそ
 っくりそのまま、一言一句違わずにジェスチャーやニュアンスをも添えて、ここに呼び起こ
 せるような種類の記憶力は持ちあわせていない。あるいはまた、これまでに自分が暮らした
 どんな部屋でもいいけれど、そこにどのような家具があったかなんてまったく覚えてはいな
 い。ましてや家全体の家具となると、完全にお手上げである。あるいは競馬楊には具体的に
 どんなものがあったというようなことすら、私にはまるで思い出せない。

  私に思い出せるのは、そう、観客席とか、馬券窓口とか、場内中継テレビのスクリーンと
 か、人込みとか、その程度だ。そしてざわめき。私は小説の中の会話を自分で作り上げる。
 私は人々のまわりにある家具とか、物体とかを、必要があれば小説の中に差し入れる。たぶ
 んそのせいで、往々にして私の小説は飾りがなくて、寒々しいと言われ、あるいはまた「
 ニマリスト」的とまで言われてきたのかもしれない。でもそれはあるいは、ただ単に必要性
 と便宜性とが実際的な折り合いをつけたということに過ぎないのかもしれない。そしてその
 折り合いこそが、私が今書いているような種類の小説を、今書いているような方法で書くよ
 うにさせたものなのかもしれない。

  言うまでもないことだが、私の書いた小説はどれも本当に起こったことではない。私は自
 伝を書いているわけではないのだ。でもそれらの大抵のものには、それはほんのちょっとし
 たことかもしれないけれど、何かの実際の出来事やら状況やらへの類似性が認められる。し
 かし私がその物語の状況に関連して、そのまわりにあった物体なり家具なりのことを思い出
 そうとするとき(そこにはどんな花があったか、だいたい花なんかあったのか、それは匂い
 を放っていたのか、エトセトラ)、私はしばしば途方に暮れることになる。そんなわけで、
 私は話を進めるためにはその手のことを適当にでっちあげなくてはならない。その物語に出 
 てくる人々は、かくのごとき言葉が口にされたあと、どんなことを言いあうか、そのときに
 どんなことをするか。そしてそのあと彼らの身にどんなことが起こるのか。私は彼らがお互
 いに向かって言ったことを作り上げる。しかしそこには、その会話の中には、実際にそこで
 口にされた一言や、あるいはセンテンスのひとつやふたつは(それは私がいつか、何かの折
 りに耳にしたことのあるものだ)混じっているかもしれない。そのセンテンスこそが、ある
 いは私の小説の出発点であるということだってあるかもしれない。

  ヘソリー・ミラーは四十代のころに『北回帰線』(それはたまたま私の愛読書でもある)
 を執筆していたのだが、彼はそのときに他人の部屋で必死になってそれを書こうとしていた
 ときのことについて語っている。彼はそこではいつなんどき仕事を中断させられるか予測も
 つかなかった。というのは、彼が座っていた椅子は、次の瞬間にはお尻の下から持っていか
 れるかもしれなかったからだ。かなり最近になるまで、私の人生においてもそのような状況
 がずっと続いていた。私の記憶している限りにおいては、十代のころからずっと、私は常に、
 自分の座っている椅子が誰かに持っていかれやしないかといつもひやひやしながら暮らして
 いた。何年ものあいだ、私と私の妻とは、屋根の下に住み、テーブルの上にミルクとパンを
 並べるために、ほとんどすれちがい同然の忙しい生活を送らなくてはならなかった。私たち
 には金がなかったし、目に見えるような、つまりどこかに売り込めるような特別な職業的技
 能も持だなかった。

  そのおかげで、私たちはアルバイト同然の仕事をやりながら、やっとこさ生きていくしか
 道がなかったのだ。そして私たちには、私たちは二人ともそれを喉から手が出るほど求めて
 いたのだが、教育もなかった。教育は自分たちにチャンスを与えてくれるだろうと、私たち
 は信じていた。それは私たちにまともな職に就く機会を与えてくれるだろう、そしてそれは、
 我々が自分たちや子供たちのために求めているまっとうな種類の生活を与えてくれるかもし
 れないのだ。私と妻とは大きな夢を持っていた。自分たちは頭だって下げられる、懸命に働
 ける、やろうと心に決めたことならどんなことだってやれると我々は思っていた。でも我々
 は考え違いをしていた。

  私の人生と私の書くものを、直接的にであれ間接的にであれ、いちばん大きく左右した影
 響力といえば、それはやはり私の二人の子供であったと言わなくてはならない。彼らが生ま
 れたのは、私が二十歳になる前のことだった。そして一緒の屋根の下に暮らした期間を通じ
 て、その始めから終わりまで(それは全部で十九年間に及んだ)、彼らのずしりと重く、そ
 
して往々にして悪意に満ちた影響力が及ばない場所というのは、私の生活の中には一寸たり
 とも存在しなかった。

  Mary Flannery O'Connor (March 25, 1925 – August 3, 1964)

  あるエッセイの中でフラナリー・オコナーはこう書いている。作家は二十歳を過ぎてしま

 ったら、あとはその身に何が起ころうとたいして意味はない小説を作りだす材料の多くは
 それ以前に既に起こってしまっているのだ、十分すぎる以上に、と彼女は言っている。そこ
 にはその作家がI生かけても書ききれないくらいの十分な材料がつまっているのだ、と。こ
 れは私の場合にはあてはまらない。今私を執筆に駆り立てる「材料」の大半は、二十歳を過
 ぎてから私の身に起こったことである。私は子供が生まれる前の自分の人生について、本当
 にろくに覚えていないのだ。私は二十歳になり、結婚し、父親になる以前に、自分の人生に
 何かたいしたことが起こったとはどうしても思えないのだ。そのあとで、やっといろんなこ
 
とが起こり始めたのだ。

 ここで、翻訳者の村上春樹は「解題」で次のように解説しているので掲載する。

 John Gardner  (Jul 21, 1933 – Sep 14, 1982)


  1982年の秋に「アンティーアス」と「シラキュース・スコラー」という二冊の雑誌に
 掲載された。また
それと前後してハーバー・アンド・ロウから出版された『存続しつづける
 ものを讃えて』というアンソロジ
ーにも収録された。この題はカーヴァーの大学時代の先生
 であったジョン・ガードナーの言葉から
取っている。つまり炎とは、作家になるために必要
 な「創造の炎」のことである。これがなければ人は
作家になることはできない。しかし彼の
 中にあったその創造の炎は、二人の子供の面倒をみなくては
ならないという現実の重みに少
 しずつ押しつぶされ、吹き消されていく。彼にはじっくりと腰を据えて小説を書くだけの暇

 が与えられないのだ。「私はそのような飢えた年月を通じて、欲求不満のために徐々に正気
 をなくしつつあったように思う」と彼はここで書いている。そして彼は酒に溺れ、現実に子
 供たちのことを敵として憎みはじめるようになる。そして子供たちもまた彼を敵として憎み
 はじめるようになる。そのような子供だちとの深刻ないさかいは最後まで彼を苦しませるこ

 とになった。

  彼がここで言いたいのは、我々の書くものがどれほど強く現実の環境に支配されているか
 ということである。そのような現実的影響は(少なくとも彼の場合にはということだが)文 
 
学的影響なんかよりもずっと強いものであり、またあらがいがたいものである。彼が長篇小
 説というものを書けなくなってしまったのは、彼が子供たちに時間と精力を奪われ、仕事に 
 集中することがでぎなくなったからだ、と彼は言う。そのような生活が、彼の中から長篇小
 説を書くための炎を消してしまったのだ。彼はその悲痛な事実を混んだコイン・ランドリー
 の中で悟る。そしてそれ以降は長篇小説の執筆をあきらめて、短篇小説と詩にしがみついて
 書きつづけることになる。

  僕も彼の言わんとすることはよくわかる。僕には子供がいなかったけれど、最初の二冊の
 小説を書いたときには、自分で小さな店を経営していたから、文字通り朝から晩まで働かな
 くてはならなかった。夜中の一時に帰宅して、台所のテーブルに座って一時間か二時間の書
 く時間を絞り出すのがやっとだった。たしかにそういう風な書き方をしていると、長い小説
 は書けない。長い時間集中できないから、ストーリーも文章も分断されてしまう。とくにカ
 ーヴァーのような文章的な完璧さを目指す作家にとっては、それは本当に苦しいことだった
 と思う。

  カーヴァーは自伝的なエッセイをあまり残してはいない。そういう意味でもこの『ファイ
 アズ(炎)』というエッセイは、作家としてのカーヴァーの貴重な肉声であると言えよう。
 悲痛といえばたしかに悲痛な文章だが、自己憐惘に沈んでいかない率直な潔さのようなもの
 が文章をしっかり支えている。

                                   この項つづく

【男の野外料理レシピ:ベビーラムの炭火焼き】

焦げた皮は香ばしいので、野菜を巻いて食らう。通称バラ先と呼ばれる、あぱら骨の腹の部分。
あるいは、モモ肉の二度焼きはおすすめ。

● 材 料:ベピーラム(冷凍品)1頭(約5~6キロ)、香草(タイム。セージ、ローズマリー、
      オレガノ)、赤唐辛子、粉チーズ、ニンニク、オリーブオイル

● 作り方:①ベビーラムはあばら骨のつけ根を、ナタて切り離し、火が全体にまわるように
      開く(A)。股(モモ)の部分は骨に沿って、切れ目を入れて筋を切る(B)。②ボー
      ルにみじん切りにしたローズマリー、セージ、タイム、オレガノ、赤唐辛子、二
      ンニク、そして粉チーズ、オリーヴオイル、塩、コショウを入れてよく混ぜ合わ
      せる(C)。肉全体にすり込んで、10分位おき、なじませる。③はじめに羊の内
      側を炭火で焼き(D)、次に皮の方を焼く。

● この秘伝のたれは、どんな肉にもOK。鹿、兎、ジビエにもおいしい。いろいろな香草を
  入れ試そう。市販のタレは野外料理には似つかない。自分(たち)だけのタレを開拓した
  いもの。                 I

  ● 今夜のアラカルト

今じゃすっかりおなじみのカルフォルニアロール。

 

 

 

 

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帝國のロングマーチ17

2016年08月02日 | 時事書評

 

 

       
        

      親鸞が意識的に僧侶の戒律を破り、ふつうの人たちと同じ「非僧」の生活をした
      ことは、「僧的人間」から「ただの人間」に戻す親鸞の本懐だったと思います。
     

                                週刊仏教新発見 2007.12.23
 

                                            
                             Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

 

    

【帝國のロングマーチ 17】          

      

● 折々の読書  『China 2049』37     

                                          秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」  

ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者マイケル・ピル
ズベリーが自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざ
る秘密戦略「100年マラソン( The Hundred-Year Marathon )」の全貌を描いたもの。日本に関する言及
も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係そして、ビジネスや日常生活を見通すうえで、
職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。 
     

 【目次】 

  序  章 希望的観測
 第1章 中国の夢
 第2章 争う国々
 第3章 アプローチしたのは中国
 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
 第5章 アメリカという巨大な悪魔
 第6章 中国のメッセージポリス
 第7章 殺手鍋(シャショウジィエン)
 第8章 資本主義者の欺瞞
 第9章 2049年の中国の世界秩序
 第10章 威嚇射撃
 第11章 戦国としてのアメリカ
 謝 辞
 解 説 ピルズベリー博士の警告を日本はどう受け止めるべきか

            森本敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)   

 

   第7章 殺手鐗(シャショウジィエン)  

                   難知如陰、動如雷震
                   ――知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震うが如し  

                                    『孫子』軍争篇 


  21世紀の最初の年、これらのスパイ部門(および、その他のサイバー戦士たち)は、そのとて
 つもない力を見せつけた。アメリカ国防総省のコンピューター・ネット
ワークから「中国が10~
 20テラバイトのデータをダウンロードしていた」ことに、米
空軍のウィリアム・ロード少将が気
 づいたのだ,少将は中国の行動を「国民国家の脅
威」と呼んだ(注55)。2013年、ワシントン・
 ポスト紙は、国防科学評議委員会に
よる機密扱いの調査により、サイバー侵入者が24以上のアメ
 リカの兵器システム設計
にアクセスしていたことが明らかになった、と報じたが、侵入されたシス
 テムには
「パトリオット・ミサイル・システム、イージスミサイル防衛システム、F/A‐18戦
 
闘機、V‐22オスブレイ、沿海域戦闘艦」が含まれていた(注56)。ワシントン・ポストは、次
 のようにつけ加えている。

  「事情に通じた米軍の高官や産業関係の役人は、侵入の大多数は、中国が幅広く繰り広げている
 アメリカの防衛関係の請負業者と政府機関に対するスパイ活動の一環だった、と語った(注57)」
 もっと大胆なサイバー攻撃の一つは2003年から2005年にかけて発生したもので、狙われた
 のはアメリカの軍、政府、政府と取引のある企業のウェブサイトだった。「タイタン・レイン」と
 総称されるその侵入は、数百にのぼる政府のコンピューターを攻撃した。タイム誌は、その侵入を
 遡ると、広東省の三つのルーターに接続するローカル・ネットワークに至ると報じたが、この攻撃
 に関する報道についてアメリカ政府の当局者は、差し障りのないコメントしか述べていない(注58)。
 タイタン・レイン以降、ウォーツェルによれば、人民解放軍のある部隊(61398部隊)が「企
 業、国際組織、外国政府を含む、少なくとも141の組織のネットワークに侵入している(注59)」。
 
  さらに、中国を本拠地とするハッカー集団、「ヒドゥン・リンクス(訳注*隠れた山猫という意
 味)」は、中国発の最も悪名高いサイバー攻撃のいくつかに関わっている。ヒドゥン・リンクスは、
 グーグルやアドビなどのテクノロジー企業、金融サーピスプロバイダー、防衛請負事業者、政府機
 関を攻撃している(注60)。アメリカのサイバー警備会社は、ハッカーは「機密情報を狙うハンタ
 ーの粘り強さ、辛抱強さ」を持ち、「『水飲み場型攻撃』技術のパイオニア」だという。「水飲み
 場聖攻撃」とは、「攻撃対象のユーザーが利用する事業者のコンピューターを感染させ、感染した
 ソフトウェアが攻撃対象にインストールされるのを待つ」というものだ(注61)。さらに、アメリ
 カの情報セキュリティーの上級担当者だったポール・ストラスマンによれば、73万超のアメリカの
 コンピューターが中国の悪質なソフトウェア「ゾンビ」に寄生されているそうだ。ハッカーはゾン
 ビを利用してコンピューターを奴隷にし、その奴隷を使って、ネットワークやウェプサイトに圧倒
 的な量のデータを送りつけ停・比させる(注62)。

  中国軍事科学院のスン・バイリン少将は、アメリカはあまりにも「情報スーパーハイウェイ」に
 頼りすぎているため、「電気無力化システム」による攻撃に対して脆弱で、電カシステム、民間航
 空システム、輸送ネットワーク、海港、テレピ放送局気通信システム、コンピューターセンター、
 工場、ビジネスが妨害あるいは破壊される恐れが高いと書いている(注63),北京系統行程研究所
 の元エンジニア、チャン・メンションは、「21世紀の兵器」と題した論文において、「宇宙衛星
 への攻撃と防御に際しては、早期警戒管制機、電子戦機{訳注*一子戦を眼擬して設計された航空
 機)地上の指令地点が重要になるだろう」と記した(注64)。
 
  殺手鐗の開発は、監視システム、地上配備の電子インフラ、あるいは合衆国の航空母艦を無力化
 する兵器の開発から始まる。それらの中には電磁パルス(EMP)兵器が含まれるが、それは核爆
 発で生じる電磁パルスを増幅させることによって、広範囲のあらゆる電子装置を動作不能にする。
 近年、中国はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルでEMP兵器の威力を調べている。また、高出
 力マイクロ波兵器の研究も行っており、それはチャン・メンションによれば、「敵の電子機器を破
 壊する」ためのものだ(注65)。仮に第三次世界大戦が起きれば、コンピューターウイルスとEM
  Pとマイクロ波を放つ兵器が、アメリカ本土でコンピューター、携帯電話、航空交通管制センター
 を無力化し、戦場では兵士に対する指揮統制メカニズムとスマート爆弾を無力化するだろう。そう
 なった時、アメリカはどんな戦いを強いられるだろうか。

  Jan 13, 2013 The Korea Herralo

  人民解放軍機関紙の以下の主張について考えてみよう。
 「真珠湾事件一のようなものは情報化時代には起こり得ないと考える人もいるだろう。しかし、敵
 の重要な指揮と統制のための情報システムが急襲されたら、それは21世紀の「玖珠湾事件」にな
 るだろう。{中略)例えば電磁パルスなどは、そのような急襲を可能にする。核ミサイルや強力な
 軍隊を持つアメリカのような超大国でさえ、それを免れるという保証はない。(中略)アメリカ人
 自身、高度にコンピューター化された聞かれた自国の社会は、あらゆる角度からの電子攻撃に対し
 てあまりにも脆弱だと認めている。これはアメリカ経済が、銀行から電話システム、発電所、鉄工
 所にいたるまで、完全にコンピューター・ネットワークに依存しているからだ。{中略)ある国は、
 経済的、技術的に強くなるにつれて、近代的な情報システムにますます依存するようになる。(中
 略)したがってアメリカは世界のどの国よりも電子攻撃に対して脆弱なのだ(注66)。

  中国人は、アメリカのもう一つの深刻な弱点は、宇宙衛星への依存だと考えている。人工衛星は、
 敵の位置を撮影し、無線電信と通話を監視し、情報を集める。また、無人のドローン、巡航ミサイ
 ル、そのほかの誘導兵Sにも利用される。それら衛星のおかげで、アメリカ中央軍はフロリダ州タ
 ンパの司令部から、中東における自軍の活動を統括でき、アメリカ太平洋軍はホノルルの司令部か
 ら、1万500平方マイルの領域にわたって艦隊やその他の軍と交信できる。2004年、アメリ
 カは12隻の空母のうちの7隻を中国周辺の海域に送り、その圧倒的な力を見せつけたが、それら
 ははるか上空の宇宙を飛ぷ通信・情報衛星がなければ、通信不能になるだろう。

  20年にわたって中国は、それらの衛星を破壊したり、無力化したりするための殺手鐗兵器をい
 くつか作ってきた。そこには、アメリカの人工衛星を機能不全にしたり吹き飛ばしたりする地上配
 備レーザーも含まれる。また中国は、「寄生型マイクロ衛星」を作りはじめている,その名が示す
 ように、これらの超小型装置は、アメリカの人工衛星にくっついて、それを使えなくしたり、収集
 した情報を乗っ取ったりする。別の中国の超小型人工衛星は、電子妨害、EMP生成、あるいは軌
 道の外へ押し出すことによって、アメリカの人工衛星を無力化できる(注67)。

  中国はさらに、地上配備の対衛星ミサイルも開発した。人工衛星に打ち込んで爆破するためのも
 のだ。2007年の実験では、役に立たなくなった自国の気象衛星をみごとに爆破した。アメリカ
 国防総省の報告によると、「多くの国に懸念を引き起こし、結果として生じた残骸は、宇宙開発を
 進めるすべての国の資産を危険にさらし、人類の宇宙飛行にも危険をもたらした(注68)」。アメ
  リカのネイバル・ウオー大学のジョアン・ジョンソンフリーズの観察によれば、この実験は「無責
  任にも、3000片を超える破片を作り出し、それは今後何十年にもわたって低い軌道上を密集し
  た状態で周回するだろう(注69)」。

  中国の人工衛星破壊実験の最も厄介な点は、透明性の欠如である。「中国はこの実験の意図を説
 明していない」と、アメリカ国家安全保障会議のスポークスマンは述べ、「将来の実験計画の有無
 についても明言しない」と批判した。さらに、その実験が「宇宙空間の軍事化に反対する中国の公
 的な立場に矛盾しないものであったか」について何の説明もしていない、と断じた(注70)。

  おそらく、この実験に関してアメリカの当局者が最も困惑したのは、アメジカの情報コミュニテ
 ィがそれを予測できなかったことだ。国防総省が議会に提出する、中国の軍事力に関する三つの年
 次報告において、国防長官は、中国は「核兵器によってのみ」人工衛星を破壊できる、と報告して
 いた(注71)。ワシントン・タイムズは、この実験は、「戦略上の重大な脆弱性」を露わにするこ
 とによって「警鐘を鳴らした」と報じ、アメリカの防衛担当官の言葉を紹介した。日く、「アメリ
 カの人工衛星はあらゆる軍の通信のおよそ90パーセントを統御し、情報とミサイル誘導について
 も同様であるが、それを無力化あるいは使用不可能にする宇宙兵器や能力を、中国がどのくらい持
 っているか、あるいは開発中かについて、アメリカの情報には、事実との大きな隔たりがある(注
 72)]。

  2007年の実験の後も、中国はいくつか実験を行った。2013年の地上発射式の対人工衛星
 ミサイル実験もその一つだ。アメリカの当局者によると、この実験は、宇宙探査用ロケットの打ち
 上げと称して行われたそうだ(注73)。同じ年の後半、中国軍はアメリカの人工衛星を攻撃する能
 力を持つ三つの人工衛星を打ち上げたが、アメリカの当局者はそれを「中国の「スター・ウォーズ
 計画』の一部」と呼び、「アメリカの国防上、重大な関心事」と見なしている(注74)。人民解放
 軍は、人工衛星からの通信を乱したり消したりする他の兵器や妨害器の開発も進めており、おそら
 くレーザー、マイクロ波兵器、粒子ビーム兵器、EMP兵器が含まれる(注75)。

   人工衛星への依存度の高さに加えて、米軍のもう一つの弱点は、戦争をするために必要な弾薬、
  燃料、その他の資源を、長距離の供給ラインに頼っていることだ。第一次湾岸戦争で、アメリカ海
 軍は1日あたり1900万ガロンの石油と、朝鮮戦争時の20倍以上の弾薬を使用した。いずれも
 聞かれたシーレーンがなければ調達は不可能だが、シーレーンは潜水艦、機雷、魚雷、対艦巡航ミ
 サイルといった非対称攻撃に対して脆弱であり、そのすべてを中国はすでに武器庫に備えている。
 潜水艦はアメリカのシーレーンにとって脅威になるということもあって、中国海軍研究所はそれを
 21世紀で最も重要な船と見なしている。(中略)

  Nove 16, 2015 White Hourse

  つまりアメリカ国防総省が報告するように、中国の「作戦の本質」は、陸・海・空どの戦いにお
 いても、「敵の指揮システムを破壊し、敵の情報システムを無力化し、敵の最新の兵器システムを
 破壊し、敵の兵箔システムを無力化し、敵の技術的優位性から生じる相乗効果を否定すること」な
 のだ(注80)。中国流の隠喩で言えば、中国政府の戦略は、人体の構造に関する知識を利用して、
 自分より大きい敵をノックアウトするボクサーのようだ。アメリカ人にとっては、ギリシャ神話の
 英雄の話が馴染み深いだろう。すなわち、この20年にわたって中国は、敵の唯一の弱点、すなわち
 アメリカのアキレス腱を射るための矢を作ってきたのだ。

  北京の数名のタカ派が2013年にわたしに話したところによると、オバマ大統領の「リバラン
 ス政策」(世界政策の重心をアジア太平洋地域に移す)や「ピボット政策」(軍事外交の軸足をア
 ジア太平洋地域に移す)に関して、アメリカがどこまで真剣なのかを、彼らは測りかねたそうだ(
 注81)。彼らは、中国が誤った考えに陥っているではないか、アメリカが殺手綱計画に過剰反応し
 て、中国を標的とするより強力な軍隊を作るのではないか、と心配しているようだった。もしアメ
 リカが現在の計画どおり、今後10年で防衛費を1兆ドル削減するのであれば、「リバランス」に
 使う資金はないだろう、とその中国人は言った,わたしは正直に答えることにした。アメリカが中
 国への対応のために防衛費を増やすかどうか、予測は難しい、と。


できるだけ詳細に読み込んできたつもりだったが、「軍事戦術論」の展開となり、これ以上は無駄と判
断。つまり、果てしない疑心暗鬼・過剰連鎖の「合わせ鏡」のハレーション――写真の像で、特に強い
光の当たった部分の周りが白くぼやける現象――をいくら論じて無駄であり、思惑通り「アメリカにリ
バランスを担保する資金ショート」しても、中国の「帝國のロングマーチ」は止まらないとわたし(た
ち)は考える。奇しくも、マイケル・ピルズベリーは「アメリカが中国への対応のために防衛費を増や
すかどうか、予測は難しい」と中国政府のタカ派にこう返事し、この章は結ばれる。さて、次回は第8
章の「資本主義者の欺瞞」。


                                       この項つづく

 



【男の野外料理レシピ:パスタ入りカキのクリームスープ

プリッとした身には、ビタミンB1、B2、ミネラルが豊富。とろみのあるスープには、ショートタイプ
のパスタの方かソースのからみかいい。もし、これがスパゲッティなら、モソモソしこうはいかない。

● 材料(4人分):カキ(生食用)300グラム、玉ねぎ30グラム、ベーコン15グラム、牛乳70
          0ミリリットル、生クリーム100ミリリットル、バター大さじ3、小麦粉30
          グラム、パスタ(フジィリ)少々、パセリ少々

● 作り方:①小さな鍋に牛乳と塩少々を入れて、人肌程度に温めておく。②鍋にバターを入れ、溶け
      はじめたらみじん切りの玉ねぎを入れて、中火で焦がさないぶうに十分炒め、甘みを出す
      みじん切りのベーコンを加え、さらに炒め香りを出す。この中に小麦粉を加えて(A)、ル
      ーを作る要領で、3分間位炒める。③この中に温めておいた牛乳を入れてよく混ぜる(B)。
      中火を保ちながら煮ていると、自然にとろみが出てくる。④苑でておいたパスタを入れ(C)、
      生クリームを足し、昧をみて最後にカキを加え(D)、ふたをして2分間位蒸し、みじん切
      りのパセリをふる。 



● アウトドアークッキングの思い出

建てたばかりの南堀江の三階はまだ借り手のつかぬ部屋が2つあり、そこで、ビニール製のテントを膨
らませて、京町堀の従兄弟と二人でキャンプごっこを楽しんだ。彼の家は駄菓子屋をやっていたので、
持ち込まれたお菓子やインスタント食品は豊富にあった。コーラー(粉末のコーラー)や渡辺のジュー
ス素(色素が有害に指定され後に廃品)、日清食品のチキンラーメン、あるいは登山用の干し米やスー
ぷー、コーン・ビーフなどなど中学生にしてはリッチな食べ物を試食。バーナー、ランプなどのキャン
プ備品も一揃え準備し、一夜を明かし(火事になりかけたこともあったが)楽しんだものだ。面白い体
験を1つ話そう。当時、大日本製薬の『オールP』の眠気覚ましを飲み、寝ることを惜しんだのだが、
実は、このドリンク剤に含まれる覚醒剤が問題となり販売禁止になっている。安全や健康意識は低調な
高度成長期の最中で「知らぬが仏」状態だった。また、クラブは地学部に所属、化石採取などの野外活
動はお手のもので、一人で飯ごう炊飯していたから、登山やBQなどの野外活動はなれている。しかし、
本格的な野外料理の経験はない。だから、百名山踏破、トレッキング、カヤッキングでそれを実現しよ
うというのだ。ブログ掲載してきた『イタリアン・アウトドアクッキング』。教本は、45年前の本格
シェフの手になるもの(旧旭屋梅田店で購入)。ここでも夢を一つ叶えることになる。長生きはするも
んだ。

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鳥取砂丘にGO!

2016年08月01日 | 国内外旅行
 

 

 

 

          信念はどこへいったのかと、嘆かわしくなる。良いことばかりを言う集団や個人が増える         
          社会は衰亡していく。私はまず、私自身を「良いこと言いの悪癖」から切り離したい。

 

                                                                                                                  Takaaki Yoshimoto 25 Nov, 1924 - 16 Mar, 2012 

        ※ ちょっと、これは諄い言い回しだね。

 

  県鳥 オシドリ

● 盆休みは 鳥取砂丘にGO!

お盆休みには、鳥取砂丘に行きたいと言うので登山計画を9月頭に変更。急遽、ドライブコースを検索。
朝7時半に出発すれば、4時間で到着する、2時間滞在し、砂丘をめぐり、海岸で昼食をとり、海で泳
げば、帰りに雄琴温泉の湯元館で一泊し、琵琶湖と月を見ながら温泉で疲れを癒やすせば、「フルムー
ンの旅路」となる。予算もコースもきつめだがそれも可なりと、返事するすることに。

 

 

  

 

【量子ドット工学講座 16】

下図は、単接合型の光電変換装置が持つ光電変換効率の理論限界は約30%に留まる。このため理論限
界効率をさらに向上させるために、半導体の量子ドットを利用する方法が試みられている。量子ドット
を利用した光電変換装置の例として、図3に示されるような構成の光電変換装置――光透過性の基板1
01(例えば、ガラス基板)と、基板101上に設けた集電膜(透明電極膜)103と、集電膜103
の表面に形成した光電変換層105と、光電変換層105上に形成した裏面電極膜107との構成――
が開示されているが、この場合の集電膜103の材料は、例えば、インジウムスズ酸化物であり、一方、
光電変換層105には、例えば、SiまたはPbSなどの半導体材料の量子ドット105aの集積膜が
適用されるが、光電変換装置では、集電膜103がITOで形成され、比較的硬質の表面を有し、集電
膜103の表面は、ITOの結晶がところどころで部分的に飛び出した状態にあり、その表面には凹凸
存在する。 

このとき集電膜103の表面に配置された量子ドット105aは、集電膜103の表面との間は点接触
の状態か、これに近い部分的に接触する状態にあるため、量子ドット105aから移動してくるキャリ
アCは集電膜103との界面を通過し難い状態となり、これにより光電変換効率を高められない。従っ
て、この新規考案では、光電変換層内に生成したキャリアが集電膜との界面を通過しやすくし、高い光
電変換効率が得られるように改善する。

 

【要約】

光透過性の基板1と、基板1上に設けられた第1電極膜3と、電極膜3の基板1とは反対側に設けた複
数の量子ドット5aを有する光電変換層5と、この変換層5の第1電極膜3とは反対側に設けた第2電
極膜7とを備え、第1電極膜3が酸化錫、酸化亜鉛およびインジウム錫酸化物のうちのいずれかを主相
とするものであるとともに、第1電極膜3の光電変換層7側に、量子ドット5aよりも硬度の低い金属
膜9が配置することで、光電変換層内に生成したキャリアが集電膜との界面を通過しやすく、光電変換
効率を高めることができる。

【特許請求の範囲】

  1. 光透過性の基板と、この基板上に設けられた第1電極膜と、該第1電極膜の基板とは反対側に設
    けられ
    た複数の量子ドットを有する光電変換層と、この光電変換層の第1電極膜とは反対側に設
    けられた第2
    電極膜とを備え、第1電極膜が酸化錫、酸化亜鉛およびインジウム錫酸化物のうち
    のいずれかを主相と
    するものであるとともに、第1電極膜の光電変換層側に、量子ドットよりも
    硬度の低い金属膜を配置するこ
    とを特徴とする。
  2. この金属膜の第1電極膜側の表面は、第1電極膜の表面の形状に沿う形状を特徴とする。
  3. この金属膜の光電変換層側の表面は、光電変換層の表面の形状に沿う形状を特徴とする。
  4. この金属膜が、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケル、錫および鉛の群から選ばれる少なく
    とも1種の金属からなり、請求項1と3のうちいずれかである。
  5. この金属膜の厚みは1~20ナノメートルである請求項1と4のうちいずれかである。
  6. この複数の量子ドットの一部は、前記第1電極膜に接する状態にある請求項1と5のうちいずれ
    かである。

 

 

「ドライマウスからスマートキャンティ」2015.02.06

 

【デジタル革命渦論:ドローンで植林 DroneSeed 社の場合】

ドローンを使い植林やそのモニタリングや土壌検査がすでに欧米を中心にはじまり、広大な面積の農耕
植林の営農法生産性を高めつつある。そのー例に米国はオレゴン州のベンチャー植林企業の「ドローン
シード社」がある。彼らの植林の特徴は、樹木の種子を圧縮空気で毎分6キロメートルを噴出植林、フ
ル充電で1.5時間の連続運転が可能、時間あたり800種子(フル充電で1200種子)植林できる。
詳細のデータはないが、従来の人手での作業と比較し(1)作業が安全(2)重労働(マラソン選手の
2倍のカロリー消費)からの解放が実現、(3)生産性を高めることできコストも1/10に逓減でき
るとのこと。そこに付け加えると、日本のように急峻な斜面での防災林・保安林の植燐作業もこの無人
機で行えるのが、この温暖化での荒廃を食い止めるツールとして有効であり、喫緊で優先度の高い公共
事業になると考えられる。これは面白い。
  DroneSeed Co.

 June 29,2016



 今夜の二言、三言

「ポケモンGO!」は欠陥商品だ。ヒラーリー・クリントンは肝心なことを言い忘れてい
る。金のかかる選挙はもうやめよう!と。小池知事の誕生は、ドイツのメルケン首相誕生
背景と似ている。障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件の全貌解明・再犯防止には時
がかかりそうだ。高度コンピューター通信社会にあって、リニアー新幹線建設の優先度
レスダンセカンド。脱デフレには、30兆円の景気対策と格差是正税制が必要。

 

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