「ドームやきものワールド」のブースをひと巡りして、戻ろうとしたのだが、迷い込んでしまった。
そして、たまたま迷い込んだところのお猪口に見入ってしまったのだ。
それは、他では見たこともない薄青、深緑、褐色、ベージュの4色が渦巻状に焼かれていて、
うわぐすりは塗ってなく、持ってみると何とも言えないいい手触りで、薄くて軽いのだ。
それに値段も手頃である。「これってあなたのオリジナルですか?」とそこにいたまだ若い
(40代前後と思われる)作者に聞いてみた。、「エエ、わたしが考えだしたもので、
他の誰もやってないです」と、照れくさそうな笑顔で答えた。
徳利も手に取ってみる。これもグルグル4色が全身見事な渦を巻いているではないか。やはり軽い…。
しかし…わたしは、古めかしい陶器の器で、じっくりとわびさび感に浸りながら酒を呑みたいのである。
この器はどちらかというと現代アートっぽい感じで、イカしてはいるが、わびさび感に浸れるかどうか…
それならむしろ先ほどチェックしていた苔むしわびさび色で…歪んだゆらぎのほうが…と思うのだが
もう、わたしの手が離さないのである。
「ビールジョッキみたいなのはないですよねえ」と聞くと、「ありますよ」と即座に答え、違う棚に
案内してくれた。
そこには取って付きのジョッキが3~4個置かれてあった。これも同じく4色渦巻きだ。「これはいいですよ」
と言うと、ちょっと後ろを向いてガサゴソしてたかと思うと手に缶ビールを持っているではないか。
そのニップルをプシュッと開けて、その内の1つに注ぎ始めた。350ml全部注ぐと「ほら泡が細かい
でしょう」と言うと「どうぞ」と勧めるのだった。なるほど、細やかな泡が出ていて、いかにもクリーミーな
感じである。
わたしは車で来たことを告げ、ゴックンと生唾を飲み込んだ。「そうですか車でしたか」と残念がって
くれたが、ゴクゴクと自分で呑み干してしまった。本当は自分が呑みたかったんじゃないの…と思わず
苦笑してしまった。
結局ここにて、お猪口、徳利、ジョッキ、焼酎湯割りカップの我がぐい呑み4点セットを購入して
帰路に就いたのだった。
早速その夜、めったの呑まないプレミアムビール500mlを買いこみ、渦巻きジョッキに注いでみた。
確かに細やかな泡だ。一口呑んでみる、ウ~ン…ホントにまろやかでクリーミーな味である。これだ…
わたしが求めていたものは、わたしは確信した。そしてじっくり味わいながら呑み干したのだった。
イヤ~ほんとに旨かった。翌日、酒を燗して呑んでみたが、これまた旨かったったのである。
しばし…夜は御機嫌だ…。