退社が決まってからの日々は、躁と鬱が行ったり来たりのような
感じになっていた。
夢にまで見たお絵かき三昧の生活が待っていることに喜びが溢れる一方で、
親近感を覚える人たちとの別れの切なさに苛まされていたのである。
しかし前日に親近感覚える人と話せる機会を得たためか、「あら、昨日まで
ションボリしてたように見えたけど、きょうは元気いいわね」と掃除中の事務員さんに
言われるほど退社当日はスッキリした気分だった。
最後の仕事が終わりになる頃、「きょう○○残ってる?」とパートさんに聞くと、
「残ってるよほしいの?」「お願い」と言うと「最後になるわね」と言ってその品物を
袋詰めにしてくれた。そして緑の箱に入れるのを見せ、「ここに入れとくからね」と
言ってニッコリと笑った。
この会社では、食品を扱っているのだが、検品で撥ねられた品物や前日の余り物など、
従業員が持ち帰っていいことになっているのだ。これらの品は、出入り口付近の
階段下に何色かの箱に入れられ積み置かれているのである。「会社を辞めても
あの品だけは欲しいのにね」と身内がいうほど気に入っていたのである。
仕事が終わると、事務所の役員、課長、事務員さん一人一人に
お別れの挨拶をして回った。わたしは事務員さんとはなぜか話がしやすく、
よく話をしていたので、一番親近感を覚える部署だったのである。
事務所を後にした後、ロッカーの後片付けをして、会社の玄関へ向かった。
階段下を覗くと、持ち帰り品が積み置かれているところへ行き、緑の箱を
覗いてみたが空っぽだった。念のため他の箱も覗いてみたが、他の品物は
入っているもののわたしの希望の品はついに無かった。
「ありゃあ持って行かれちゃったか…」ここの品物は従業員なら誰でも持っていける
ので、持っていかれても仕方ないのである。ただ、パートの人がやってくれたように
袋で包んでいると、普通は誰かの物と判断して持っていかないものなのだが、時には
このように持っていかれることもあるのだ。
「ま、いいか…」これはこれで、一つの思い出として、残るかな…と苦笑いしつつ、
会社の玄関を出た。午後5時を回っていたが、外はもはや真っ暗になっていた。
わたしは会社を見上げ、「さらば○○」と別れを告げ、外駐車場へと向かった。
そして、わたしの車を見たとき「あっ…」と驚いた。わたしの車のフロントガラスと
ボンネットとの間に、あの袋詰めにされた品物が置かれてあったのである。
それはきっと先に帰ったパートの人が、他の誰かに持っていかれることを心配して、
確実にわたしの手に渡るようにと考えた、苦肉の選択だったのだ。
わたしはその品物を手にすると、彼女らの最後の贈り物を「ありがとう」と
心より感謝を込め、胸を熱くして受け取った。それはズシリと重かった…。
思えばこうした有形無形の好意の恵みをわたしは受けていたんだなあ…と
改めて思った。「みんな、本当にありがとう。」
感じになっていた。
夢にまで見たお絵かき三昧の生活が待っていることに喜びが溢れる一方で、
親近感を覚える人たちとの別れの切なさに苛まされていたのである。
しかし前日に親近感覚える人と話せる機会を得たためか、「あら、昨日まで
ションボリしてたように見えたけど、きょうは元気いいわね」と掃除中の事務員さんに
言われるほど退社当日はスッキリした気分だった。
最後の仕事が終わりになる頃、「きょう○○残ってる?」とパートさんに聞くと、
「残ってるよほしいの?」「お願い」と言うと「最後になるわね」と言ってその品物を
袋詰めにしてくれた。そして緑の箱に入れるのを見せ、「ここに入れとくからね」と
言ってニッコリと笑った。
この会社では、食品を扱っているのだが、検品で撥ねられた品物や前日の余り物など、
従業員が持ち帰っていいことになっているのだ。これらの品は、出入り口付近の
階段下に何色かの箱に入れられ積み置かれているのである。「会社を辞めても
あの品だけは欲しいのにね」と身内がいうほど気に入っていたのである。
仕事が終わると、事務所の役員、課長、事務員さん一人一人に
お別れの挨拶をして回った。わたしは事務員さんとはなぜか話がしやすく、
よく話をしていたので、一番親近感を覚える部署だったのである。
事務所を後にした後、ロッカーの後片付けをして、会社の玄関へ向かった。
階段下を覗くと、持ち帰り品が積み置かれているところへ行き、緑の箱を
覗いてみたが空っぽだった。念のため他の箱も覗いてみたが、他の品物は
入っているもののわたしの希望の品はついに無かった。
「ありゃあ持って行かれちゃったか…」ここの品物は従業員なら誰でも持っていける
ので、持っていかれても仕方ないのである。ただ、パートの人がやってくれたように
袋で包んでいると、普通は誰かの物と判断して持っていかないものなのだが、時には
このように持っていかれることもあるのだ。
「ま、いいか…」これはこれで、一つの思い出として、残るかな…と苦笑いしつつ、
会社の玄関を出た。午後5時を回っていたが、外はもはや真っ暗になっていた。
わたしは会社を見上げ、「さらば○○」と別れを告げ、外駐車場へと向かった。
そして、わたしの車を見たとき「あっ…」と驚いた。わたしの車のフロントガラスと
ボンネットとの間に、あの袋詰めにされた品物が置かれてあったのである。
それはきっと先に帰ったパートの人が、他の誰かに持っていかれることを心配して、
確実にわたしの手に渡るようにと考えた、苦肉の選択だったのだ。
わたしはその品物を手にすると、彼女らの最後の贈り物を「ありがとう」と
心より感謝を込め、胸を熱くして受け取った。それはズシリと重かった…。
思えばこうした有形無形の好意の恵みをわたしは受けていたんだなあ…と
改めて思った。「みんな、本当にありがとう。」
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