つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

あの人はどこへ?2

2005-11-03 08:24:19 | 思ひ出ぼろぼろ

家の近くにいつも何やらズダ袋をぶら下げて歩いている人が居た。
いわゆるホームレスである。まだ若く30代ではないだろうか。日焼け顔に無精ひげ、ヤセ型でうつろな目をして腰を浮かして歩いていた。
たまに座っているときは新聞や本を読んでいる。
「この間英語の本読んでたよ」とカミさんが言う。ほう…インテリなのかな。その人に何があったのか、何者なのか知らないが、とにかくひたすら国道沿いなどを歩いていた。
「競歩選手になればいいとこいくかもね」
などと家族のネタにされたりしていたのだが、4~5年前からパッタリ見なくなった。
どこやらの道で行き倒れたのだとか、病気で死んだらしい…とかの噂は耳にしたのだが、真偽のほどは定かではない。

しかし…秋風を肌に感じたりすると、ふと、あの人の人生は…と思ったりする。
夢はあったのか、どこへ行きたかったのか、どこへ帰ろうとしたのか、こんなよけいな詮索を起こさせるけっこうな存在感だった。
そしてその存在感こそがあの人の生きた証なのかも知れない。
果たしてあの人は…気になるのだ。

■ 秋深したましい探し歩く人          by  issei

 

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あの人はどこへ?

2005-11-02 23:42:19 | 思ひ出ぼろぼろ

「ちょっとお父さん」といきなり私より年上らしきおじさんが声をかけてきた。
「これいいんだよ」と言ってやおらポケットから取り出したのは、紐の付いたスーパーボールだった。
「ほらほら」と地面に打ち付けて弾んだボールを紐で引っ張って遊びだした。
あっけにとられていた私に向かって、なかば強引にヒモを手渡すと
「ホラこうこう」と手を振ってコーチするのである。気がついたら私もコーチに従って手を動かしていた。
しばし遊ばせられた後、いずこともなく去って行ったのだ。
後で娘に聞いて知ったのだが、地元ではけっこう有名なスーパーボールおじさんと呼ばれる変なおじさんだそうな。

またしばらく経ったある日、近くの緑地公園で池をボーッとながめていると
「お父さんお父さん」と例のスーパーボールおじさんである。
私は逃げようと思ったのだが、絶妙のタイミングでススッと近づいてくるのである。
今度はスーパーボールではなく、食パンを袋から取り出すと
「ホラこう…」とまたコーチするのであった。
たちまち池の鴨が寄って来てパンをつつき始めた。
私は貴重なボーッとする時間を奪われて、いい気分はしていなかったのだが、手が勝手におじさんの言うまま動いていたのである。
あーぁまたもやまんまと…と自分のふがいなさに腹が立った。

その後何度かおじさんに遭遇したり、見たりしたのがもう10年ぐらい前になるかな…。
以来一度も見ていないのである。
別に会いたいとは思わないのだが、時折思い出しては、
家族と「スーパーボールおじさん、どこ行ったのかな」などと話している。
“存在感”という一点では完敗の人だった。どうしてるのかな…。

■ 手を振りて冬夕焼けの中にいる          by  issei

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