春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「日本語教師検定試験問題にチャレンジ記述問題篇」

2012-05-30 00:00:01 | 日本語教育
2012/05/30
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>ステップバイステップ日本語教師養成講座(4)検定試験問題にチャレンジ記述問題篇

 日本語教育能力検定試験は、文法などの基礎知識が中心の問題1(90分)、CDによる聴解問題も含まれる問題2(30分)、記述問題が含まれる問題3(120分)があります。
 記述問題では、「言語にかかわる事象」や「教育実践の方法・内容」などに対する考えや主張が問われ、考えや主張が正しいかどうかではなく、自分の考えを論理的に説明できているか、確実な日本語表現力により、他者に確実に伝達できる能力を持っているか、という二面が評価されます。
<記述問題 例>
 さまざまなメディアで「ら抜き言葉」や「れ足す言葉」などの「日本語の乱れ」がしばしば話題になり,議論にもなっている。また,日本語学習者も生の日本語に接し,「日本語の乱れ」を見聞きしている状況にある。
 この、いわゆる「日本語の乱れ」について,あなた自身はどう考えるか。また,その考えを授業実践において具体的にどのように反映しようと考えるか。400字以内で述べなさい。

 この場合、「ら抜き可能形、食べれる 見れる、起きれる」などが「正しい日本語であるかどうか」の是非が問われているのではないのです。これらをどう捉え(言語観)どのように日本語教育に反映していくか(教育観)を論理的に記述できるかどうかが問われています。

 記述問題。授業方法、授業技術に関する問題です。答えを記述しみましょう。ワープロを40字に設定し、10行書けば400字。
例題1
「あなたは、短期留学生のクラスを受け持つことになりました。正確な日本語の習得を望む留学生が多いクラスの会話授業をまかされ場合、短期間で効果的にクラスを運営していくために、どのような授業方法が考えられるか、また、教師としてどのような指導をしていったらよいか、あなたの考えを400~500字程度で述べなさい。
<解答例>
 短期留学生対象の会話授業では、できるだけ多くの発話が各学生に可能となるよう、場面を選び、ロールプレイ、ディスカッションなどコミュニカティブな活動を中心にしたい。場面機能シラバスにより、学習者が日本で遭遇すると思われる場面とそこでの使用される表現を選ぶ。これらの表現を「文型としては習得済みである」として、ロールプレイでは始めにモデル会話で、表現の機能の確認と役割練習をする。次にシチュエーションやロールを変えて応用練習を行う。活動中は誤用があっても、発話の流れを切らないように暗示的な誤用の指摘・訂正に留める。学習者が会話内容、発話方法に意識を集中し、正確さを過度に意識しないようするためであるが、学習者が「正確さの向上」を必要としている場合、練習中の発話活動は止めずに行い、録音ビデオなど,記録したものを後から振り返る方法を採るようにする。後で聴き直したりビデオ録画スクリプト表示で振り返りを行い、学習者自らが誤用に気づき,訂正をするよう、導く。発音,イントネーションなどを含め,学習者自身が誤用を指摘、訂正できない項目は,最終的に教師が明示的に指摘,指導することも必要である。
(450字:この解答がベストとは思わないで下さい。もっといい解答を書ければ合格です)

 ありゃりゃ、日本語教師って、そんなめんどくさいもんだったの?と思われた方もいらっしゃることでしょう。
 職業としての日本語教師は、高度な専門職です。「日本語をまったく知らない人」に初歩から日本語を教えるためには、「外国語としての日本語」を知り、「第2言語(外国語)としての日本語を教える」ための教育技術が必要なのです。

 でも、日本語学習者の「会話のお相手ボランティア」としては、すべての日本語話者が「日本語での受け答え」ができますので、全ての人が「先生」です。
 「町の日本語教室のボランティア先生」からスタートし、日本語を教えるおもしろさに目覚め、本格的に日本語教師を目指すようになった人を、私もたくさん知っています。私が受け持った教授法クラスにも「定年退職後の仕事として日本語教師をめざす」という方が在籍なさったこともありました。勉強後、シニア海外協力隊に応募した人、中国の大学で無給の日本語教師としてボランティアをはじめ、数年後には正式に「大学講師」として採用された、という人もいました。

 いつも学生に言うことは、「人が好き、ことばが好き、新しいことを知ることが好き」このうちのどれかが好きなら、きっと日本語教師にむきます。
 私自身で言うと、前は人と話すことが苦手だったけれど、ことばで読むこと書くことが好きだし、異文化を知ることも大好き。苦手な部分は、舞台に立つように「教師役」を演じて教壇に立っているうちに、苦手じゃなくなっていきました。

 これまで出題してきた日本語教育能力の問題は、「専門職として日本語を教える教師」に要求される能力です。学生にこれらの問題にチャレンジさせているのは、「専門職として日本語を教えるのは、そんなに簡単なことじゃない」と自覚させるためで、授業での講義だけでは、とてもこれらの問題すべてに合格できるような力を養成するまでの時間はありません。

 私の授業では、日本語教育の概要を知ることと、日本語教育能力試験に挑戦してみよう、という意欲を持たせる、このふたつに絞っています。
 日本語を教えるのって、たいへんだけれど、おもしろそう。日本語教師って、世界中の人と出会えて、楽しそう、という気持ちを学生に持ってもらえば、授業は成功、と思っています。

 さて、今から日本語を勉強するのもなあ、という方々。ボランティア日本語教師に必要なのは、人が好き、異文化が好き、など、「好きこそものの上手なれ」という能力です。
 ボランティア活動としても、日本語を地域の外国人に教える仕事、とても重要です。みなさん、ぜひご参加を。

<おわり>
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする