2013/09/26
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽんご教師日誌>留学生の日本文化体験教室(1)日本家庭細見
21日土曜日、前期に教えた留学生を招いて「日本の一般家庭を見る」という文化体験コースを企画しました。
前期のクラスの女子学生、台湾の学生は夏休み中は実家に帰省。ミクロネシアの女性はハワイに滞在中。
西アフリカ・モーリタニアと北アフリカチュニジアの女性は、イスラム教徒なので、食習慣の違いなどから、なかなか日本旅館に泊まったりできません。ホームステイで自分だけ別仕立ての食事になるのも気兼ねです。長野で行われたサマーキャンプに参加したと言っていました。キャンプの自炊ならムスリム(イスラム教徒)の食事が自分たちで作れます。
これから7年後に向けて、きっとムスリム向けの食事サービスもずいぶん進展するのではないかと思います。厳しい宗派では、ハラルミート(イスラムコーランの教えを唱えてから決まった作法により肉になったもの)を食べる、というほかにいろいろな制限があります。スープが豚骨だしなのを知らずにベジタリアン向けかと思って「野菜ラーメン」を頼んで、豚のスープなので食べられなかった、というようなこともあります。
同じイスラム教と言っても、アフリカモーリタニアの女性は、教室にも必ずスカーフをかぶってきましたが、チュニジア女性にはそのようなしばりはなし。宗派によっていろいろです。
これまで、中国で教えた学生な何度か招いたことがありましたが、国立大学の国費留学生を招くのは初めてのことです。国費留学生のためには、ホームビジットやホームステイなど、大学側のプログラムが充実していて、日本人の家庭を見る機会も多いからです。でも、今期の学生、イスラム教ということと、病気がちで病院通いが忙しかったということもあって、ホームステイにでかけたのはタジキスタンのひとりだけというので、「日本の年金暮らしの老人が住む普通の暮らしを見る」という機会を作ることにしたのです。
レッスン1からレッスン5までの日本文化体験教程を事前に知らせておきましたので、玄関チャイムを鳴らすところから「How to enter a Japanese house 」の学習です。玄関で靴を脱ぎ、内側に向けて揃えるところから。玄関でスリッパに履き替える家が多いけれど、足が冷たくなければ、履かなくてもいいと教えたのですが、これって正しいマナーかしら。
居間で、姑にご挨拶。4月に日本に着いて、あいうえおの「あ」を読み書きするところから学習をはじめた西アフリカの女性。漢字の読み書きもこなして、修了式には、他のクラスの先生方も「ゼロスタートの初級クラス学生でよくぞこんな立派なスピーチをしたものだ」と、感心されるほど上達しました。「今日は、お招きありがとうございます」という口上もそつなくこなし、お花、キャンプに出かけた先の土地のゆべし菓子折りなどを姑にプレゼント。
しばしお茶を飲みながら、姑と日本語で歓談。姑は、東京に出てきてから60年になるけれど、ずっと舅と米沢弁で話して暮らしてきたから、留学生にはちょっと伝わりにくく、ときどき私が通訳。留学生には、「彼女をユキ子さんと呼んでください」と伝えてあります。私は姑を呼ぶとき、「家族内の一番小さい人から見た親族名称で呼びかける」という日本家庭の習慣に従って「おばあちゃん」と呼びますが、この日本家庭の親族呼称ルールをよく知らない外国人が聞いたら、私の祖母かと誤解します。
おばあちゃんがいただいた花を仏壇に備えたので、祖先を祀る日本の習慣などについてレクチャー。お彼岸の話などをしながら、おみやげにもらったお菓子の箱をあけ、舅が好きだったゆべしを仏壇に供えました。学生のお茶にも供し、日本の習慣では、おみやげにもらったお菓子を客に出すとき、「お持たせですみません」と断ること、目上の客の場合、おもたせのお茶菓子を出したら失礼に当たることを説明しました。すると、モーリタニアの習慣でも、客の持ってきたおみやげは、その場では出さない、同じ習慣だというので、私のほうも勉強になりました。欧米ではおみやげをその場で開けなかったら失礼になるというところが多いので、やはり世界にはいろいろな文化習慣があるなあと思いました。
次に緑茶を急須で入れる方法について実演し、学生におかわりを注いでもらうことに。以前に日本の家庭に行ったことのある学生が、「ホームステイ先でお茶を入れたとき、最初の茶碗には濃すぎるお茶を注ぎ、順に注いでいって、最後の茶碗は薄くなってしまって、困った。でも、ホストマザーは何も言わなかったので、そのまま飲んでもらったけれど、今日、急須からひとつの茶碗に一度に入れるのでなくて、お茶碗を並べて少しずつ均等に注ぐのだとわかりました」と、喜んでいました。
ホストファミリーは、「お茶が薄い」とか文句を言ったら悪いと思って言わなかったのでしょう。留学生を歓迎してくれる心遣いですが、お茶の入れ方も、学生にとっては勉強です。近頃は日本人学生でもペットボトルのお茶かティーバックの紅茶くらいしか飲まないので、お茶の入れ方ひとつでも習う必要があります。年寄りの集会などがあっても最近はもっぱらペットボトルを配るだけです。
お茶のあと、姑はおにぎりを食べて、デイケアセンターの体操教室に出かけていきました。お昼ご飯を留学生と作るという文化体験、姑がいると何かと気を使わせてしまうので、姑が体操教室に出かける日を選んだのです。
ゆべしは問題なかったのですが、あっとあせったのが、こちらで用意したフルーツケーキ。一口食べてみて、あ、失敗した。このフルーツケーキのレーズン、ラム酒か何かにつけてあるかも、と心配になりました。ストップ、と言って、菓子箱に書かれている材料記載をもう一度点検。材料に洋酒とか酒精とかあったら大問題。お菓子の中にアルコール分が含まれているだけでもNo!の宗派があるからです。材料一覧にはアルコール類が書いてなかったので、一応OKにしましたが、あぶないところでした。
娘は「もし、日本人が海外でおせんべみたいな唐揚げを食べて、おいしいと思っても、あとでそれがゴキブリのから揚げだったと知ったら、すごく嫌な気分になるでしょう。母はなんでも食べる人だから平気でも、弟なら吐き出してしまう。だから、母も、ちょっとでもお酒とか豚肉系のものが含まれていないか、表示にようく注意して買い物するように」と、言われてきて、目をこらしてちらし寿司のモトなんぞにお酒がつかわれていないかどうか、見て買ったのです。
お酒を飲まなくても、豚肉を食べなくても、材料に含まれている場合があるので、要注意です。
ランチをいっしょに手作りすることにして、ちらし寿司を選んだのも、魚と卵などのちらしなら、心配ないから。
さて、お料理がはじまりました。
<つづく>
ぽかぽか春庭ニッポニアにっぽんご教師日誌>留学生の日本文化体験教室(1)日本家庭細見
21日土曜日、前期に教えた留学生を招いて「日本の一般家庭を見る」という文化体験コースを企画しました。
前期のクラスの女子学生、台湾の学生は夏休み中は実家に帰省。ミクロネシアの女性はハワイに滞在中。
西アフリカ・モーリタニアと北アフリカチュニジアの女性は、イスラム教徒なので、食習慣の違いなどから、なかなか日本旅館に泊まったりできません。ホームステイで自分だけ別仕立ての食事になるのも気兼ねです。長野で行われたサマーキャンプに参加したと言っていました。キャンプの自炊ならムスリム(イスラム教徒)の食事が自分たちで作れます。
これから7年後に向けて、きっとムスリム向けの食事サービスもずいぶん進展するのではないかと思います。厳しい宗派では、ハラルミート(イスラムコーランの教えを唱えてから決まった作法により肉になったもの)を食べる、というほかにいろいろな制限があります。スープが豚骨だしなのを知らずにベジタリアン向けかと思って「野菜ラーメン」を頼んで、豚のスープなので食べられなかった、というようなこともあります。
同じイスラム教と言っても、アフリカモーリタニアの女性は、教室にも必ずスカーフをかぶってきましたが、チュニジア女性にはそのようなしばりはなし。宗派によっていろいろです。
これまで、中国で教えた学生な何度か招いたことがありましたが、国立大学の国費留学生を招くのは初めてのことです。国費留学生のためには、ホームビジットやホームステイなど、大学側のプログラムが充実していて、日本人の家庭を見る機会も多いからです。でも、今期の学生、イスラム教ということと、病気がちで病院通いが忙しかったということもあって、ホームステイにでかけたのはタジキスタンのひとりだけというので、「日本の年金暮らしの老人が住む普通の暮らしを見る」という機会を作ることにしたのです。
レッスン1からレッスン5までの日本文化体験教程を事前に知らせておきましたので、玄関チャイムを鳴らすところから「How to enter a Japanese house 」の学習です。玄関で靴を脱ぎ、内側に向けて揃えるところから。玄関でスリッパに履き替える家が多いけれど、足が冷たくなければ、履かなくてもいいと教えたのですが、これって正しいマナーかしら。
居間で、姑にご挨拶。4月に日本に着いて、あいうえおの「あ」を読み書きするところから学習をはじめた西アフリカの女性。漢字の読み書きもこなして、修了式には、他のクラスの先生方も「ゼロスタートの初級クラス学生でよくぞこんな立派なスピーチをしたものだ」と、感心されるほど上達しました。「今日は、お招きありがとうございます」という口上もそつなくこなし、お花、キャンプに出かけた先の土地のゆべし菓子折りなどを姑にプレゼント。
しばしお茶を飲みながら、姑と日本語で歓談。姑は、東京に出てきてから60年になるけれど、ずっと舅と米沢弁で話して暮らしてきたから、留学生にはちょっと伝わりにくく、ときどき私が通訳。留学生には、「彼女をユキ子さんと呼んでください」と伝えてあります。私は姑を呼ぶとき、「家族内の一番小さい人から見た親族名称で呼びかける」という日本家庭の習慣に従って「おばあちゃん」と呼びますが、この日本家庭の親族呼称ルールをよく知らない外国人が聞いたら、私の祖母かと誤解します。
おばあちゃんがいただいた花を仏壇に備えたので、祖先を祀る日本の習慣などについてレクチャー。お彼岸の話などをしながら、おみやげにもらったお菓子の箱をあけ、舅が好きだったゆべしを仏壇に供えました。学生のお茶にも供し、日本の習慣では、おみやげにもらったお菓子を客に出すとき、「お持たせですみません」と断ること、目上の客の場合、おもたせのお茶菓子を出したら失礼に当たることを説明しました。すると、モーリタニアの習慣でも、客の持ってきたおみやげは、その場では出さない、同じ習慣だというので、私のほうも勉強になりました。欧米ではおみやげをその場で開けなかったら失礼になるというところが多いので、やはり世界にはいろいろな文化習慣があるなあと思いました。
次に緑茶を急須で入れる方法について実演し、学生におかわりを注いでもらうことに。以前に日本の家庭に行ったことのある学生が、「ホームステイ先でお茶を入れたとき、最初の茶碗には濃すぎるお茶を注ぎ、順に注いでいって、最後の茶碗は薄くなってしまって、困った。でも、ホストマザーは何も言わなかったので、そのまま飲んでもらったけれど、今日、急須からひとつの茶碗に一度に入れるのでなくて、お茶碗を並べて少しずつ均等に注ぐのだとわかりました」と、喜んでいました。
ホストファミリーは、「お茶が薄い」とか文句を言ったら悪いと思って言わなかったのでしょう。留学生を歓迎してくれる心遣いですが、お茶の入れ方も、学生にとっては勉強です。近頃は日本人学生でもペットボトルのお茶かティーバックの紅茶くらいしか飲まないので、お茶の入れ方ひとつでも習う必要があります。年寄りの集会などがあっても最近はもっぱらペットボトルを配るだけです。
お茶のあと、姑はおにぎりを食べて、デイケアセンターの体操教室に出かけていきました。お昼ご飯を留学生と作るという文化体験、姑がいると何かと気を使わせてしまうので、姑が体操教室に出かける日を選んだのです。
ゆべしは問題なかったのですが、あっとあせったのが、こちらで用意したフルーツケーキ。一口食べてみて、あ、失敗した。このフルーツケーキのレーズン、ラム酒か何かにつけてあるかも、と心配になりました。ストップ、と言って、菓子箱に書かれている材料記載をもう一度点検。材料に洋酒とか酒精とかあったら大問題。お菓子の中にアルコール分が含まれているだけでもNo!の宗派があるからです。材料一覧にはアルコール類が書いてなかったので、一応OKにしましたが、あぶないところでした。
娘は「もし、日本人が海外でおせんべみたいな唐揚げを食べて、おいしいと思っても、あとでそれがゴキブリのから揚げだったと知ったら、すごく嫌な気分になるでしょう。母はなんでも食べる人だから平気でも、弟なら吐き出してしまう。だから、母も、ちょっとでもお酒とか豚肉系のものが含まれていないか、表示にようく注意して買い物するように」と、言われてきて、目をこらしてちらし寿司のモトなんぞにお酒がつかわれていないかどうか、見て買ったのです。
お酒を飲まなくても、豚肉を食べなくても、材料に含まれている場合があるので、要注意です。
ランチをいっしょに手作りすることにして、ちらし寿司を選んだのも、魚と卵などのちらしなら、心配ないから。
さて、お料理がはじまりました。
<つづく>