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ぽかぽか春庭「東京近代美術館本館常設展と花見」

2014-04-10 00:00:01 | エッセイ、コラム
2014/04/10
ぽかぽか春庭@アート散歩>桜めぐりと花のアート(2)東京近代美術館本館常設展と花見

 東桔梗門から見た東京近代美術館


 今回、近代美術館の常設展でもっとも印象に残ったのは、長谷川利行の作品です。

 「カフェ・パウリスタ」長谷川利行(1891-1940)


 1911年にオープンした銀座のカフェ、パウリスタ(サンパウロっ子)。長谷川が1928(昭和3)に描いた絵です。この絵は第3回「1930年協会展」に出品されたことは記録に残っていましたが、その後行方不明となっていました。

 長谷川利行は、下町貧民街で一日中絵を描き、絵が売れるとたちまち飲んだくれて放浪。ついに1940年5月に路上で行き倒れとなり「行路病者」として東京市養育院に収容されました。治療を拒否して1940年10月胃癌で死去。病院は身寄りのない行き倒れ収容の慣例通り、持ち物のスケッチブックなどは焼却処分してしまいました。無頼の画家の49年の人生、なんとも壮絶です。

 長谷川は1931年に東京下谷区谷中初音町の下宿屋へ移転。貧乏画家や文士のたまり場となっていた下宿で、下宿代未納の末追い出されるとき、画家たちは売れない絵を「下宿代がわりに」と置いていきました。福井龍太郎の父は、長谷川の絵も3点、下宿代のかわりに受け取っていました。

 下宿屋のおやじとしては、しょうもない絵を受け取ったものの、物置に放り込んでおいて忘れてしまったのです。長谷川の絵が評価されるようになるのは、死後10年以上もたってからです。 
 2009年、下宿屋のむすこ福井龍太郎は絵に詳しい友人のすすめで、父が物置に残した絵を、テレビ番組「開運なんでも鑑定団」に出品。長谷川利行の真作で時価1800万円という鑑定を受けました。同年、近代美術館が買い取り、修復を加えて公開。

 そんな絵にまつわる「ものがたり」を知らないとしても、隣に並んでいるガスタンクを描いた「ガスタンク街道(1930年)」と、別コーナーの「新宿風景(1937)」の3点が同時に見られた今回の常設展、強烈な印象を受けました。

 足が疲れたらいつものように4階の「眺めのいい部屋」で一休み。桜のころは一段といい眺めです。


<つづく>
コメント (2)
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