2014/04/16
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>私の舟に載せる(1)ヤバイだいがえ揖譲する
新しいことばを知ることは仕事の上でも必要だし、何よりも楽しいこと。
辞書の中に新しいことばを取り入れる際、編集者たちは喧喧囂々侃々諤々だろうと思うのですが、わりあいすぐに新しい言葉を載せていく方針の辞書と、じっくり思案のところがあります。
新しい言葉を取り入れることが多い三省堂国語辞典(三国)は、第七版に4000語もの新語を搭載しました。(第7版の収録項目数は約8万2000)、中でもネット用語「W」=あざ笑うときに使われる」を載せたことは話題になりました。「W=〔俗〕インターネットで(あざ)笑うことをあらわす文字。(21世紀になって広まった使い方)」
私としては、次回改訂までに「W」が現代日本語として残っているのかどうか、気になります。~なう、ツイッター、つぶやく、なども搭載されました。
学生に「辞書に載るまでは、就職の面接などでつかったらアウトだよ」と言い聞かせてきた「やばい」の褒め言葉としての使い方。
学生は、「やばい」を若者用語褒め言葉として日常多用しています。就職面接で「御社の社風はやばいと思って志望しました」なんて言ったらだめだよ、と釘を指していたんです。しかし。
新しもん好き三国の第七版には、従来の語釈「やばい=あぶない、まずい、だめ」の他に、3の語釈として「すばらしい。夢中になりそうであぶない。「今度の新車はやばい」3は1980年代から例があり、21世紀になって広まった言い方。」とあります。
ついに辞書に載ったのです。就職試験で「御社の製品はいつもやばいです」と答える就活生を、面接官はどう受け止めるでしょうか。
流行によってすぐに変化するファッション用語や食品用語も、三国第七版はどしどし取り入れています。
私など、タイツ、スパッツ、レギンス、いつのまにやら変わって行くので、あれれと毎年思っており、未だに「ももひき」も使う。チョッキがベストに変わったと思ったら、今は「ジレ」ですと。マフラーと言わず「襟巻き」というとさすがに留学生にも通じないが。
語釈も時代につれて変わります。第六版では「おたく=特定の趣味にのめり込んでいる <内向的な> マニア」でしたが、第七版、「オタク=特定の趣味にのめりこんで、くわしい知識を持つ人。ヲタ」
「おお、オタがついに市民権を得た!」と、喜んでいるオタも多いことでしょう。
御用とお急ぎでない方々は、三国新語4000語をじっくりながめて、時代と自分の言語感覚を確認するのも「脳トレ」になるんじゃないかしら。「脳トレ」は脳トレーニングの略語ですが、昨今の新語は、ネットやゲーム界から生まれることが多いですね。
さて、ここから本題です。
最近知る新しい言葉はなんといっても外来語がおおくなったし、若者言葉や流行語、新語などがほとんどで、古いことばを知ることはあまり多くなくなりました。
古いことばは、どんどん使われなくなっていきます。
また、若者の誤解による新しい使われ方もあります。たとえば、代替案(だいたいあん)は、最近の若い世代のビジネス界では「だいがえあん」と呼ばれているそうです。昨年の人気ドラマ「半沢直樹」でも、会議の席上「だいがえあんを出せ」と言っていたというので、私もこのドラマ見ていたのに、気付かなかったってことは、「だいがえあん」という言葉に違和感をもたずに、さらっと「スルーした」んだろうなあと思います。
ネット界では「既出」を「ガイシュツ」と誤読されたと早くに知られていましたが、代替案が「だいがえあん」に誤読されていたのだとは知りませんでした。誤読による漢字読みの変化については、以前まとめて書きました。
消耗しょうこう→しょうもう 漏洩ろうせつ→ろうえい 稟議ひんぎ→りんぎ 捏造でつぞう→ねつぞう、など。
「春庭ことばの通い路」誤読から慣用読みへ
http://www2.ocn.ne.jp/~haruniwa/nipponia0502.htm
代替案も、この誤読から慣用読みへ、という漢字読み変顔真っ最中なのです。あらま、誤変換です「へんか変化」と書こうとして、変顔になってしまいました。変顔も新語です。
最近読んだ本の中から、私は日常生活で使っていないことばをいくつか見つけました。明治の人は使っていたのだろうとおもうことば。
クイズです。「揖譲」とは何か。ちなみに、岩波国語辞典には載っておらず、広辞苑には載っていました。
揖譲を日常茶飯事のことばとして使っている方、いらっしゃいましょうか。揖譲について、明日また。
<つづく>