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ぽかぽか春庭「俳句という名の舟に乗り」

2014-12-02 00:00:01 | エッセイ、コラム
20141202
ぽかぽか春庭知恵の輪日記>おい老い笈の小文(9)俳句という名の舟に乗り

ネット海の航海、俳句という名の船に乗り
at 2003 10/15 06:29 編集
 俳句を趣味とする人々、俳聖芭蕉の忌日(時雨忌)に、一句ものしただろうか。時雨忌は、陰暦10月12日だから、季語としては冬である。
 季語の中でも忌日を読み込んだ句は初心者にも作りやすい。忌日の主の生涯のイメージを作品中にもりこめるからである。歳時記から忌日によせて拾う。

時雨忌や暁波はがしはがし航く(角川源義) 老人は朝が早い、暁のネット海の航海

太宰忌の視線岐れて郷にいる(平畑静塔) 津島佑子の父、太宰の故郷は津軽

啄木忌いくたび職を替えてもや(安住敦) 私、春庭も転職13回。

釘買って出る百貨店西東忌(三橋敏雄) 自傷行為に使うため釘買う人もいるだろう

 我も手に釘打ちぬいてみる修司の忌(春庭)

 春庭腰折れ、イタタッ! イエスと寺山修司と西東三鬼をイメージしたんですが、何か?)

 高齢者の趣味の中で人気の高い「文芸」。中でもダントツ一番人気は「俳句」である。 短歌や詩を趣味とする人、自分史執筆を目指す人などの人数に比べると、俳句人口は格段に多い。

 日本語文芸の極みまで奥深く分け入ることもできるし、初心者が仲間と腰折れひねって遊ぶこともできる。歳時記一冊、ノートとえんぴつさえあれば、いつでもどこでも、一人でも仲間とでも遊ぶことのできる、究極の遊び道具。

 パソコンと俳句を連動させて遊びたい人向けに、「パソコン利用俳句自動作成ソフト」がある。次から次へ5,7,5,のことばが自動的に繰り出されてくるソフト。それを組み合わせて俳句ができあがり。小学校の国語科教材として利用している先生もいる。

 風野春樹作成の俳句ソフト『風流』が作り出した作品を紹介しよう。
http://member.nifty.ne.jp/windyfield/diary9807a.html#06 風野春樹「サイコドクターあばれ旅、読冊日記98年7月上旬より)

夏の葉がさざめき古都をなぐさめる
去年今年過ぎゆくキスとなりにけり
歯ブラシを恐ろしく見る新年会
葉桜や馬鹿を愛して法隆寺
眩しさや窓辺虚しく包む雪
薔薇の死や嘆く悲劇を傷つける
チューリップ散って短き罪ぞ咲く
卒業式恋しく逃げる抱きしめる
吹き飛ばす蝿の世界の娘の死
馬鹿も咲く頭明るき年賀状


 なまじっかの初心者より、よほどすぐれた句を生み出すのがパソコン宗匠であることがわかるだろう。
 このソフト『風流』は、MS-DOSで作成されたので、現在のパソコン環境では使えないというのが残念。最近のパソコンで簡単に遊べる『風流』のような俳句作成フリーソフトをご存知の方、メールでご一報を。(留学生の日本語教育クラスで遊んでみたい)

☆☆☆☆☆☆
春庭千日千冊 今日の一冊No.20
(て)寺山修治『句集 花粉航海』(キーワード抽出は春庭)

花粉>十五歳抱かれて花粉撒き散らす
   自らを清めたる手に花粉の罰

母 >蜂の巣の千の暗室母の情事
   母とわが髪からみあう秋の櫛
   出奔す母の白髪を地平とし


蝸牛>家負うて家に墜ち来ぬ蝸牛
   眼の上を這う蝸牛敗北


夏> 蟻走る患者の影を出てもなお
   わが夏帽どこまで転べども故郷
   そこに見え遠き世にある団扇かな

 そして、1983年5月に47歳の生を閉じた寺山の人生を象徴する、句集『花粉航海』冒頭の一句。
五月>目つむりてゐても吾を統ぶ五月の鷹

 『花粉航海』初版は1975年深夜叢書社刊だが、2000年に角川春樹事務所から文庫が出た。

 私が23歳のとき、母が死んだ。母亡きあと「母が残した俳句を句集にまとめて、三回忌法事に出版する」という目標がなかったら、私は母のあとを追っていただろう。
 散逸した母の句を、新聞雑誌の投稿俳句欄に入選した句などから拾って、一句一句寄せ集めていく作業を続けて、ようやく「たとえ55年の短い生涯であっても、母にとっては、母なりの充実した人生であったのだ」と思えるようになった。

 母の残した俳句のおかげで、母亡き後の人生を生きることができたのだ。
 来年はその母の享年になる。
~~~~~~~~

20141202
 姉の享年54歳も母の享年55歳も超えて、私はふたりが経験しなかった高齢者の人生を知ることになった。
 俳句や短歌を生きがいとして晩年をすごそうとしていた母になりかわって、たまに駄句ヘボ歌をひねってみることもありますが、どうにもこうにも、コンピュータ宗匠ほどの作はかないませぬ。
 ぐだぐだの駄句転がして長夜かな(春庭)
  
<つづく>
コメント (2)
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