20160301
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ミャンマーいろいろ(1)ミャンマーの花
35年前、9月のナイロビの町は、桜の花が一斉に咲くように、ジャカランダの薄紫の花におおわれ、どの通りも花のトンネルを作って見事でした。12年前に妹と旅行したタイでも、2月の町は黄色いタイの国花、ドーク・ラーチャプルック(ナンバンサイカチ)があふれていました。
このように、それぞれの国で、国を印象づける花に出会えるのはラッキーです。日本を旅するなら、ぜひ桜の季節に、と思います。
ミャンマーの町、雨期の8月9月、乾期の12月~3月を過ごしてきて、街中がひとつの花に彩られるということはありませんでした。ブーゲンビリアの赤い花はあちこちで見かけましたが、街中がブーゲンビリア満開一色という光景にはなりませんでした。
毎朝、バス停までの通り道、MICTパークの中に咲くブーゲンビリア。

私が3月にミャンマーを去ったあとのミャンマー新年4月には、国民が「ミャンマーの国花」と思っている「パダウ(パドウッ)」の花が盛りとなります。
ミャンマーの花パダウは、「インド紫檀」の花です。インド紫檀は高級家具や楽器の用材として貴重な木材ですが、花もたいへん美しい。ミャンマーでは新年を祝う4月の水掛祭りのころに咲くので、国民達は「国を代表する花」と思っています。国旗のように正式に決められたものではないのですが、各国の「国花」紹介などというときは、この花が国花として紹介されることが多い。
昨年、日本へ留学するミャンマーの女子大生といっしょに写真をとったとき、3人の女子学生揃って同じ黄色の民族衣装ロンジー(ブラウスと腰巻きスカート)を着てきたので「うちあわせて同じ色にしたの?」と、尋ねたら、3人とも「ロンジーの色は、ミャンマーの国の花の色にしようと思って着てきたら、3人とも同じ考えでした」と、語っていました。
この優秀な3人は、昨年9月からの日本留学で、たちまち日本語会話力もUPしたそうです。

インド紫檀パダウの花。4月に咲く花、まだ咲いていなかったので、借り物画像。


もうひとつ、「国民の花」として親しまれているのは「タジン」という花。こちらは、結婚式の花嫁が髪に飾る花としても、必需の花です。
純粋無垢な花という意味の「Thant Sin Pan」から「タジン」と呼ばれているのだとか。
学名は、ブルボフィルム・アウリコムム。タイ、ミャンマー、インドネシア(スマトラ島、ジャワ島)などの熱帯に棲息し、低地林に着生する寄生の蘭。
タジンの花、ひとつの花は直径1cmくらいで小さいですが、たくさん寄り集まってひとつの房になります。
アウンサンスーチー女史お気に入りの髪飾りのひとつ。

日本では、2015年に筑波実験植物園で開花したことがニュースになっていました。あまり一般では見ることのできない花のひとつなのでしょう。
タジンの花


ミャンマーは、英領から独立した国々のうち、英連邦には入らなかった国のひとつです。英連邦に属するケニア、インドなどが公用語のひとつとして英語を採用したのに対して、ミャンマーの公用語はミャンマー語(ビルマ語)のみ。英語は高級ホテルやレストランのほかでは、町中ではほとんど通じません。英領時代の建物は古びたまま下町に数多く残されていますし、高級住宅地では、いまでも見かけコロニアル式の一軒家が新築されていて、建築に関してはイギリス式が残されています。
イギリス人の風習が根付かなかったのだなあ、と思うことのひとつが、ガーデニングです。イギリス人の庭いじり好きは「国民性」となっています。しかし、当地では高級住宅地の庭をのぞいて見ても、ガーデニングが施されているところは、ほぼ皆無。むろん、高級住宅地に縁のない春庭なので、外から眺めただけではわからない、内庭、中庭などにガーデニングがあるのかもしれません。けれど、イギリス流であるならば、ガーデニングはむしろ通りを行く人の目を楽しませるためにも、人目につくようしつらえてあるはずなのです。
花屋は、どんな小さな通りにもあり、たくさんの花が売られています。フレーダン市場の花屋でバラの花束を受け取っている青年に「恋人にあげるの?」と、たずねたら、うれしそうに「はい」と、答えました。いくらと尋ねると、バラの花10本くらいの束で2500チャット250円でした。彼は恋人へのプレゼントの為に1食抜く覚悟なのかも。
しかし、通常、花屋は恋人へのプレゼントのためにあるのではなく、大部分が仏様へのお供えなのです。お店でも家庭でも仏壇があり、お花を欠かしませんし、お寺への供花としても、人々は次々に花を持って仏教寺院へもヒンズー寺院へも訪れます。
家庭の中で、テーブルの上とか棚の上とか、仏壇のお供えのほかに花を飾る習慣はあまりないように思います。私が見た数少ない「個人の家の内部」の印象だけで決めつけてはいけないのかもしれませんが、外から見てわかる「ガーデニング皆無」の状態から推測して、仏壇以外に花を飾る習慣が盛んとは思えません。ミャンマーの家庭で一番大切なのは、部屋の中がきれいになることではなく、仏様を大事にすることですから。
町のなかの並木などがあまり美しくない。どこにも並木管理の部署などはないと思えます。公園などでも芝生はきれいですが、花壇を見かけない。あんなにある花屋のお花は、すべて仏様のもとへ行っているとしか、思えません。町歩きにはちょっと寂しいお花状態ですが、ときどき見かける木の花たちを楽しみつつ、ヤンゴン歩きをつづけましょう。
毎朝、バス停まで10分ほど歩きますが、そのうち前半は、IT企業集合地MICTパークのなかです。この中は、いつも掃除をしているしゴミを通りにポイ捨てする人もいないし、歩いていて気持ちのよい場所です。花がたくさん植えられているのも楽しみのひとつ。以下、MICTパークの花も実もある光景。

さまざまな種類がある椰子の木。ココ椰子には大きなココナッツが実りますが、こんな赤い実がなる椰子の木も。



うしろに見える建物は、MICTパークメインビル。




独立広場のわきに立っていたナンバンサイカチの木。英名ゴールデンシャワー。
独立広場のわき、ミャンマー観光案内所の前に咲いていました。


<つづく>
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ミャンマーいろいろ(1)ミャンマーの花
35年前、9月のナイロビの町は、桜の花が一斉に咲くように、ジャカランダの薄紫の花におおわれ、どの通りも花のトンネルを作って見事でした。12年前に妹と旅行したタイでも、2月の町は黄色いタイの国花、ドーク・ラーチャプルック(ナンバンサイカチ)があふれていました。
このように、それぞれの国で、国を印象づける花に出会えるのはラッキーです。日本を旅するなら、ぜひ桜の季節に、と思います。
ミャンマーの町、雨期の8月9月、乾期の12月~3月を過ごしてきて、街中がひとつの花に彩られるということはありませんでした。ブーゲンビリアの赤い花はあちこちで見かけましたが、街中がブーゲンビリア満開一色という光景にはなりませんでした。
毎朝、バス停までの通り道、MICTパークの中に咲くブーゲンビリア。

私が3月にミャンマーを去ったあとのミャンマー新年4月には、国民が「ミャンマーの国花」と思っている「パダウ(パドウッ)」の花が盛りとなります。
ミャンマーの花パダウは、「インド紫檀」の花です。インド紫檀は高級家具や楽器の用材として貴重な木材ですが、花もたいへん美しい。ミャンマーでは新年を祝う4月の水掛祭りのころに咲くので、国民達は「国を代表する花」と思っています。国旗のように正式に決められたものではないのですが、各国の「国花」紹介などというときは、この花が国花として紹介されることが多い。
昨年、日本へ留学するミャンマーの女子大生といっしょに写真をとったとき、3人の女子学生揃って同じ黄色の民族衣装ロンジー(ブラウスと腰巻きスカート)を着てきたので「うちあわせて同じ色にしたの?」と、尋ねたら、3人とも「ロンジーの色は、ミャンマーの国の花の色にしようと思って着てきたら、3人とも同じ考えでした」と、語っていました。
この優秀な3人は、昨年9月からの日本留学で、たちまち日本語会話力もUPしたそうです。

インド紫檀パダウの花。4月に咲く花、まだ咲いていなかったので、借り物画像。


もうひとつ、「国民の花」として親しまれているのは「タジン」という花。こちらは、結婚式の花嫁が髪に飾る花としても、必需の花です。
純粋無垢な花という意味の「Thant Sin Pan」から「タジン」と呼ばれているのだとか。
学名は、ブルボフィルム・アウリコムム。タイ、ミャンマー、インドネシア(スマトラ島、ジャワ島)などの熱帯に棲息し、低地林に着生する寄生の蘭。
タジンの花、ひとつの花は直径1cmくらいで小さいですが、たくさん寄り集まってひとつの房になります。
アウンサンスーチー女史お気に入りの髪飾りのひとつ。

日本では、2015年に筑波実験植物園で開花したことがニュースになっていました。あまり一般では見ることのできない花のひとつなのでしょう。
タジンの花


ミャンマーは、英領から独立した国々のうち、英連邦には入らなかった国のひとつです。英連邦に属するケニア、インドなどが公用語のひとつとして英語を採用したのに対して、ミャンマーの公用語はミャンマー語(ビルマ語)のみ。英語は高級ホテルやレストランのほかでは、町中ではほとんど通じません。英領時代の建物は古びたまま下町に数多く残されていますし、高級住宅地では、いまでも見かけコロニアル式の一軒家が新築されていて、建築に関してはイギリス式が残されています。
イギリス人の風習が根付かなかったのだなあ、と思うことのひとつが、ガーデニングです。イギリス人の庭いじり好きは「国民性」となっています。しかし、当地では高級住宅地の庭をのぞいて見ても、ガーデニングが施されているところは、ほぼ皆無。むろん、高級住宅地に縁のない春庭なので、外から眺めただけではわからない、内庭、中庭などにガーデニングがあるのかもしれません。けれど、イギリス流であるならば、ガーデニングはむしろ通りを行く人の目を楽しませるためにも、人目につくようしつらえてあるはずなのです。
花屋は、どんな小さな通りにもあり、たくさんの花が売られています。フレーダン市場の花屋でバラの花束を受け取っている青年に「恋人にあげるの?」と、たずねたら、うれしそうに「はい」と、答えました。いくらと尋ねると、バラの花10本くらいの束で2500チャット250円でした。彼は恋人へのプレゼントの為に1食抜く覚悟なのかも。
しかし、通常、花屋は恋人へのプレゼントのためにあるのではなく、大部分が仏様へのお供えなのです。お店でも家庭でも仏壇があり、お花を欠かしませんし、お寺への供花としても、人々は次々に花を持って仏教寺院へもヒンズー寺院へも訪れます。
家庭の中で、テーブルの上とか棚の上とか、仏壇のお供えのほかに花を飾る習慣はあまりないように思います。私が見た数少ない「個人の家の内部」の印象だけで決めつけてはいけないのかもしれませんが、外から見てわかる「ガーデニング皆無」の状態から推測して、仏壇以外に花を飾る習慣が盛んとは思えません。ミャンマーの家庭で一番大切なのは、部屋の中がきれいになることではなく、仏様を大事にすることですから。
町のなかの並木などがあまり美しくない。どこにも並木管理の部署などはないと思えます。公園などでも芝生はきれいですが、花壇を見かけない。あんなにある花屋のお花は、すべて仏様のもとへ行っているとしか、思えません。町歩きにはちょっと寂しいお花状態ですが、ときどき見かける木の花たちを楽しみつつ、ヤンゴン歩きをつづけましょう。
毎朝、バス停まで10分ほど歩きますが、そのうち前半は、IT企業集合地MICTパークのなかです。この中は、いつも掃除をしているしゴミを通りにポイ捨てする人もいないし、歩いていて気持ちのよい場所です。花がたくさん植えられているのも楽しみのひとつ。以下、MICTパークの花も実もある光景。

さまざまな種類がある椰子の木。ココ椰子には大きなココナッツが実りますが、こんな赤い実がなる椰子の木も。



うしろに見える建物は、MICTパークメインビル。




独立広場のわきに立っていたナンバンサイカチの木。英名ゴールデンシャワー。
独立広場のわき、ミャンマー観光案内所の前に咲いていました。


<つづく>