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ミンガラ春庭「ジャドソンチャーチ」

2016-03-29 00:00:01 | エッセイ、コラム


20160329
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ヤンゴン大学キャンパスツアー(3)ジャドソン・チャーチ

 ミャンマー人の80%~90%は仏教徒です。キリスト教徒が4〜5%、イスラム教徒が4%います。
 国立博物館の記事中、ミャンマーの民族地図をUPしました。ミャンマーは大きく8つの部族があり、それぞれの州の多数民族となっています。シャン州の多数部族はシャン族です。ビルマ族は仏教徒が多数を占めており、少数民族の州では、キリスト教徒の多い州があります。北部のカチン族では30%がキリスト教徒。チン族は90%がキリスト教徒。カイン族の調査はありませんが、エーヤーワディー管区のキリスト教徒は26%、となっています。

 キリスト教宣教は、今から200年前に始まりました。アメリカのバプテスト派の宣教師ジャドソン師夫妻がカチン族に伝道したことが最初です。これは、ビルマがイギリスの植民地になる以前の出来事です。ジャドソン牧師は、12年間に1200人以上、すなわち3日に一人はキリスト教徒を獲得するという、アジア派遣の宣教師としては。有数の成果をあげました。

バプティスト派の伝道史によると、強盗殺人犯が回心し、洗礼を受けたたのが信者獲得第1号。12年間で1270人が洗礼を受けました。
ジャドソン牧師は、聖書をビルマ語に翻訳するなど顕著な功績をあげて40年間活動した後、帰国。アメリカのバプテストの宣教師があとを引き継ぎました。1890年にはアルファベット識字率が0%であったが、その後100年以内にキリスト教徒の識字率100%になった、との記録があります。もっとも、ビルマ仏教徒のビルマ文字識字率は、無料寺子屋普及のおかげで、キリスト教徒がアルファベットを覚える以前から識字率が高く、読み書きできる仏教徒がほとんどでした。

 他のアジアアフリカ諸国の伝道が、教育とセットで宣教され、教育を受けたい人々をキリスト教徒にしていったという事情と異なり、ビルマ族への宣教が成功しなかったのは、この「識字率の高さ」ゆえであったろう、と、私は思っています。明治期以来の布教にもかかわらず、日本でも仏教徒は90%を維持し、キリスト教徒は人口の1%を超えることがなかったのも、ひらがなカタカナの識字率が江戸時代から世界一であったことが理由だろうと、私は思っています。教育を受けるためにアルファベットを覚え、聖書を読む必要がなかった。

 このジャドソン牧師を記念して建てられたのが、ジャドソン教会です。ヤンゴン大学敷地の西北に、1932年に建てられました。


 ビルマ王国がイギリス軍との英緬戦争に敗れて、ビルマがイギリス植民地になると、キリスト教化の様相が変わります。イギリスは、少数民族をキリスト教に改宗させ、ビルマ族の仏教徒に対抗させようとしました。キリスト教徒となったチン族、カチン族などはイギリス軍に編入され、ビルマ族対策に利用されました。民族間の軋轢が強い理由のひとつが、イギリスの植民地政策に根っこがあること、植民地政策の罪深さを思わずにいられません。

 日本軍もビルマでは第2次世界大戦中に相当ひどいことをしたのは事実ですが、ビルマ民族分裂をきたすようなイギリス植民地政策のほうが、罪は根深い気がします。まあ、これは目くそ鼻くそのたとえどおりの比較になってしまいますが。」

 ジャドソンチャーチは、洗礼式の準備中でした。


 仏教僧のなかには、アウンサンスーチー女史が仏教徒以外の人々を優遇するようなら、支持を取り消す、と息巻く高僧もいるとかで、宗教政策、民族宥和政策はこれからも問題が山積みだと思います。ことにキリスト教徒が多い少数民族に対しては、今は軍の力で独立派などを押さえつけているわけですから、今後も軍の協力なしには少数民族対策ができないでしょう。
 どのようにしたら、130もの民族がそれぞれの文化と言語と宗教をもつ国内をまとめていけるのか、見守りつつ、この国の融和的な発展を願っています。



<つづく>
コメント (2)
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