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ミンガラ春庭「サイカー通勤の路上」

2016-03-24 00:00:01 | エッセイ、コラム
20130324
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ヤンゴンの暑季(7)サイカー通勤の路上
  
 普段は、大学の西門から出入りしています。西門は通用門なので、夕方6時すぎると閉められてしまいます。

 
 タングー棟の玄関も6時すぎには閉まるので、要注意。鍵がない人がうかうか残業などしていると、気づかないうちに出入り口を閉じられてしまい、翌朝まで閉じ込められることになりますから。

 たいてい私が一番遅くまで仕事をしているので、事務室の鍵だけでなく、私にも玄関出入り口の鍵を持たせてくれたらいい、と思ったのですが、だめでした。どうやら鍵は管理者の権威の象徴らしく、学科長と副学科長とボスの3つの鍵しかない、というのです。合い鍵は500チャット50円で作れるのだから、玄関鍵も作っちゃえばよいのですが、まあ、6時すぎまで残業していてはいけない、ということなんですね。私はやり残したことは家に持ち帰って仕事することにしていました。

 朝、ピーラン(ピー通り)を渡って、西門から入ります。人類学科の校舎。日陰を選んで校舎の裏を通って、タングー棟へ。途中の椰子の木がとても背が高く、ずっとココナッツの実がついたままになっています。だれも収穫しないらしい。日本からの留学生は先生から「落ちてきて頭を打つと危険だから、あの椰子の木の下を通るときは気をつけること」という注意を受けたのだと。そんなことなら、危険なことになる前に実を始末してしまえばよいのに、と思うのは日本式。誰からも命じられていないことは、誰もしようとしない。



 大学内のマンゴーの木には、青い実がついているし、ジャックフルーツの木には、大きな実が幹に直接ついています。ジャックフルーツは熟れ時には少し早いようでしたが、外部の人が勝手に収穫しているのを見かけました。学内の果樹の管理体制もないので、早く取ったもん勝ちなのかもしれません。ジャックフルーツをかごいっぱいに積んでいる人に、「ひとついくらで売るのか」と質問してみました。(日本人留学生にきいてもらった)だって、大学の木から勝手に取った実なので、元手要らず。「熟れているかどうかで値がちがう」という答えでした。どうやら、よく熟れてからだと取り合いになるので、先走って収穫したらしい。籠いっぱいの実のなかで、運よく熟れているのがあれば、売って収入になる。熟れていなかったら取り損。

 英名ジャックフルーツ(ミャンマー名:ペインネーディ 和名パラミ果) 


 幹に直接実がぶら下がるところがユニーク


 自転車のカゴに大きなジャックフルーツ盛り込んで大急ぎで帰るところ。大きさと外見はドリアンによく似ています。


 西門近くに立つマンゴーの木にも実がついていました。






 帰りもバスで帰る、というときは、西門から出て、ピー通りを渡ってインセイン通りへ。横断歩道橋の脇でバスに乗ります。

 帰りのバスは、インセイン通りの歩道橋の前から。


 タンランでバスを降りたあと、行動は3とおり。
1.タンランのサイカーだまりで「MICTパーク」と言って、どれかひとつに乗って宿舎まで帰る。300チャット。30円。できるだけ小銭を持つようにしているけれど、バス車掌と違って500チャット札などを出すと、釣り銭がない。
2,道路を渡って、タンランの道脇の露店でカリフラワー、キャベツなどの野菜や、焼いた川魚を買ってから、サイカーで帰宅。
3,バス停からMICTパークの中を通って、コンビニでヨーグルトなどを買って帰るか、キングカフェでコーヒーを飲んで帰る。キングカフェは、私が帰宅するころには店じまいしてしまっているので、めったにおいしいコーヒーが飲めない。

 サイカー運転手たちは、私が前に立つと、「MICTパーク」と言わなくても「ほら、あの外人がきたよ」と言い合って、乗せる順番の人がサイカーを道路に出します。自転車で1キロこいで300チャットの賃金を受け取ります。もしかしたら、サイカー貸し元の親方が150チャットを取るのかも知れない。



 タクシー運転手は、たいていが自分で車を買った個人タクシーですが、車を何台も所有し、運転手を雇う人もいる。サイカーは、元締めの親方から借りているだけなのか、自前の自転車なのか、知りたく思うのですが、この質問、私にはミャンマー語で言えないし、片言の英語すらわからない運転手たちに聞くことができません。彼らにわかる英語は、「ワン、ツー、スリー」くらいまで。500チャット以上の距離を走ることはめったにないから、ファイブ以上は覚えなくてもよい。暇なときは、自分のサイカーにすわっていねむりをしている人が多い。ひとことでも英語を覚えて、より実入りのいい仕事に鞍替えしようなどとはツユとも思わない。今の暮らしに満足しているように見えます。

 このサイカーは、下町を回る観光サイカーです。半日で一人分5000チャット500円でした。客は息子です。


 通勤の道筋には、500チャット50円くらいで、朝食夕食を出す露店がたくさんあります。水道がない店なので、汚れて泥水のようになっているバケツの中で皿やコップを洗っています。人々は平気でその皿のごはんを食べているのですが、私はまだ露店のご飯は食べたことがありません。店舗があって、一応水道水でお皿を洗ってほしい。

 露店の生搾りジュースは飲みます。「パーセー」というと、ビニール袋にアボガド生搾りやパイナップル生絞りを入れ、甘いシロップをかけ、ときに練乳をかけてストローを刺してくれます。ビニール袋は使い捨てなので、いちおう新品は清潔と思います。

 でも、一度、とがったストローの先でビニール袋を突いてしまい、ジュースがだらだらこぼれてしまったことがありました。見ていた違う露店のおばさんが、ビニール袋をもう1枚くれました。ミャンマーの人たち、親切なことができるとうれしいのです。来世がよくなるから。私は、町の人々から数々の親切を受けましたが、今では、「アホな日本人が失敗したおかげで、あなたは親切なことができて、来世がまたひとつよくなったね」と、思うようになりました。

 人々は、貧乏でも幸福です。今日も親切なことをして、来世がよくなることができた。一日に1000チャット稼いで、100チャットをお寺に寄進できたから、来世がよくなった、よい一日だった、と思いながら眠れるのです。
 露店の茶屋では、ビールを飲みながら、コーヒーを飲みながら、おしゃべりに余念ない人々がいます。コミュニティがあり、仲間との語らいがあり、将来に不安がない。きっと今よりよい来世が待っているから。

 くったくのない顔でビールを飲みお茶を飲んでいる人々を見ていると、老後は1億円あっても十分ではない、と不安顔ですごしている日本の人々は、本当に幸福なのかなあと思えてきます。

 ミャンマー、大統領が決定しました。アウンサンスーチー女史の入閣がとりざたされていましたが、どうなるでしょうか。
 私は外相就任して、各国を歴訪し、ミャンマー経済協力をとりつける仕事をまずはやっていくべきだと思いました。経済を立て直してNLD内閣の実績を作ってから、今は軍人が握っている入管法を改革。現在は英国籍である女史のふたりの息子の国籍をミャンマー国籍に変えてから、大統領になる、というみちすじが一番まっとうなのではないかと感じていましたが、これも先行き不透明。
 アウンサンスーチー女史のポストは、外相、教育相、エネルギー電力相、とあとひとつなんだったっけかの兼任らしいです。教育関係者たち、どういうふうに教育が変わっていくのか、なりいき見守っています。

 30日に、新内閣の発足式があるそうです。4月は新年。きっと今年の新年水掛祭りは、これまで以上に新しい気分が盛り上がり、盛大なものとなることでしょう。
 3月の日中の気温連日41度のアツい国、ミャンマー。
 人々が今以上に、現世でも幸福なくらしを続けていけますように。

<おわり>
コメント (4)
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