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ミンガラ春庭「ヤンゴンでの授業」

2016-03-15 00:00:01 | エッセイ、コラム
20160315
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ニッポニアニッポン語教師日記in ヤンゴン(3)ヤンゴンでの授業

 ヤンゴン滞在は半年になりましたが、ついにミャンマー語はほんの数語だけですごした春庭。タクシーの道すじ指示など「次の角を左に曲がってください」と日本語や英語で言って手を左に向ければ、運転手は左に曲がってくれますし、バスに乗れば「ボージョーゼー、ゴートヮジンデー」と最初に言って、日本語で「ボージョーゼー(ボージョー市場)に着いたら教えてね」と、言っておけば、一番市場に近い停留所に近づくと「次で降りろ」と、車掌が教えてくれます。市場での値切りは、指での数字指示でOK。ミャンマーの指数字は、4までは日本と同じ。5は全部の指をくっつけてから離せば「5」です。

 授業では、直接法(ダイレクトメソッド)という「日本語だけで日本語を教える」という日本語教育方法ですが、日本の大学でのクラスと異なり、補助媒介語として英語が使えません。日本の大学では、主に大学院進学者や大学院研究生のクラスを担当してきたので、クラス全員が英語ができる、という条件がありました。「リピートしてください」「質問に答えてください」などのクラス指示や単語説明、文法説明は英語を補助媒介語として使える利点がありました。

 ヤンゴンのクラスで英語が通じるのは英語科や理系学部の一部の学生のみで、ビルマ文学科でビルマ文学専攻の学生には、英語はほとんど通じません。最初はとまどった「英語が使えない日本語教育」でしたが、単語の説明だけはミャンマー語単語帳を利用する、という方法でなんとか乗り切りました。私の文法解説は、直接法の「絵とジェスチャーで日本語文の意味を伝える」という方法です。

 「いっしょに」という語の意味を伝えるには、まず、ひとりで教室の端から端まで歩き、「歩きます。ひとりで歩きます」と言います。
 次に学生のひとりを立たせて腕を組み「○○さんといっしょに歩きます」と、ふたりで教室の端から端まで歩きます。「いっしょに歩きました」
 腕を組んだ学生にひとりで教室の反対側まで歩くよう指示して、学生が教室の反対側に行った後「○○さんは、ひとりで歩きました」と言う。もう一度腕を組んで歩き「いっしょに歩きます」と言う。2分で「いっしょに」の意味が伝わります。

 単語説明に時間をかけられないので、今回は折衷法という、媒介語を使う方法で授業をしました。パワーポイントスライドを作って、学生に単語の意味をわからせます。
 「~を 買います」「写真を 撮ります」などの動詞文を導入(インストール)する課では。

1)日本語ビルマ語対応の辞書ページを示して、単語のリピート練習。


2)絵カードで、単語の練習。教師の例文「ノートを買います」を繰り返し、次に指示棒でバナナの絵をさし学生に「バナナを買います」と言わせる。つぎつぎにえんぴつの絵やパンの絵をさし、「~を かいます」を言うように指示。


3)動詞の肯定否定、かいます/かいません、かいました/かいませんでした、を導入練習

4)教師の質問「あした、何を買いますか」「きのう、何を買いましたか」に、「○○を買います」「○○をかいました」の○○に既習の単語を入れて答えるよう指示。この基礎練習を「代入練習」といいます。

5)「買います」「食べます」「飲みます」などの基礎動詞の練習。

 このようにして、基礎の動詞文が言えるように練習を繰り返します。「食べます」の代入練習では、次の絵カードをプロジェクターでスクリーンに映します。


 授業では、絵カードをスクリーンに映して、学生に発話練習をさせていきました。授業教材が何も準備されていない状態での実践でしたから、毎晩、翌日に使う授業の課のパワーポイントスライドを作りながらの自転車操業でした。
 幸い、このパワーポイント利用の授業方法は、学生にも好評でした。ひとつの課の内容を理解させ、練習を繰り返すために、毎晩50枚~60枚のパワーポイントスライドを作り続けたのです。

 前述した「いっしょに」を教えて、「いっしょに~しませんか」というお誘いの文型導入には、次のようなスライドを作成しました。
  
1) 「いっしょに~しませんか」の練習


2)会話練習


3)会話の代入練習


 このようなスライド作成を経ての、教室での練習。学生には好評でしたし、成果もあがったと自負しています。
 でも、このような、ゼロから教材を作成する仕事、もうできないなあとも思います。昨年の8月9月、12月からの新学期がはじまって1月と2月半ばまで、毎日毎晩、ミャンマー語と格闘しながらのスライド作りでした。
 どこにも出かけず、ひたすら仕事仕事の毎日毎晩。よくも働いたなあと自分でもこのハードワークに耐えた体力に感謝しています。ほかの教師に同じことをしなさい、とも思いません。このハードワークは、日本語教師生活の最後の仕上げと思って自分に課したことですから、こんなに一日中仕事漬けの毎日を、他の教師にしてほしいとは思いません。

 これが、日本語教師としての最後のご奉仕かと思います。4月からは少しのんびり過ごすつもりです。
 2月中旬と3月上旬は、バガンに行くことができましたから、少しずつ旅行報告をしていきます。

<おわり>
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