20160305
ミンガラ春庭ミャンマーだより>ミャンマーいろいろ(4)ミャンマーのお宝in国立博物館その1
2月7日、市内随一の名所シュエダゴンパゴダの近くにある国立博物館に行ってきました。ネットの中の評判はいまひとつで、みな、「目玉の展示は、1階の『獅子の玉座』のみ。広さは十分なのに展示品は少ない」と、書いてあるので、どうしようかな、わざわざ見に行くことないかも知れない、と、思っていました。
でも、私は日本では博物館フリーク。「がっかり」な結果になってもいいと思って、日曜日、出かけました。
見物客はほとんど観光客で、地元民の見学姿はごく少ないのが残念なところです。
入館時間9:30-16:30 月曜日と国の祝日は休館。

(画像借り物)
国立博物館は、グランドフロア(日本の1階にあたる)から、4階(日本の5階にあたる)までの5階建て。1996年に完成した建物です。ミャンマー人は無料で見学できるけれど、日曜日といってもロンジーはいたミャンマー人の姿はごく少数で、見学者のほとんどは外国人。外国人は5000チャット500円という入場料金を聞いて、私は「ウッヒャア、タッカ~い」と日本語で言ってしまいました。するとチケット売り場の女性は「日本人ですか。私は日本に3ヶ月博物館の研修に行ったことがあるんですよ」と、話し始める。
チケット売り場で券販売の仕事をしている女性だと、学芸員なのかどうか、わかりませんでした。当地に「キュレーター・学芸員」という公職があるのかどうかもわかりませんので、この女性係員が何の研修を受けたのかは、よくわかりませんでしたが、研修中、京都の博物館も見た、とのこと。なので、私は「東京の国立博物館は、700円7000チャットするけれど、博物館が5つあって、700円で全部見ることができる」と、言いました。外国人はパスポート見せればタダという日もあります。
ミャンマー国立博物館、はたして値段に見合う展示物があるかどうか。
結論から言うと、東京国立博物館の常設展を700円で見ることができるのに比べたら、1000チャット100円くらいかな、と思いました。しかも、写真撮影厳禁。東博では、数点の委託展示品の他は、撮影自由です。
大阪の民族博物館、音楽大学に付設されている楽器博物館、東京の近代美術館、国立博物館本館を足して4で割り、それを10倍希釈したくらいの展示内容でした。
まず、グランドフロアの「獅子の玉座」へ。国立博物館随一の宝物です。
他のめぼしい宝物は、ほとんどが植民地時代にイギリスに接収されています。または安値で買い取られてしまい、今では大英博物館に展示されています。ちなみに、大英博物館は入場無料。そりゃそうだよね。植民地とかからどしどしさまざまな宝物を本国へ送り、大英博物館またの名をぬすっと博物館。イギリスは「正式の手続きを経て入手したモノなので、返還の義務なし」と言っていますが。
ミャンマーの宝物も、見たいなら大英博物館に行く方がよい。ミャンマー国立博物館に展示されているモノは、「めぼしいものをイギリスがかっさらっていった残り物」の感があります。
1階の目玉展示「獅子の玉座」は、どうしてミャンマーに残ったか。この玉座は、隣国インドへ運ばれていました。イギリスにとって、インドもビルマもひとくくりにアジアの植民地です。
第二次世界大戦のアジア戦線。イギリスと日本との激しい戦闘で、ビルマ国内に残されていた宝物の多くは焼失しました。たとえば、マンダレーの王宮。しかし、この獅子玉座はインドへ運ばれていたため、焼失をまぬがれたのです。ビルマ独立後、イギリスは、インドにあった玉座をビルマに返還しました。英国本国へ運んだものは、返還なし。
ビルマは日本軍の戦死率が高かった土地ですが、同時に一般ビルマ人が200万人も戦災死あるいは日本軍の労役酷使によって病死、という国なので、戦時中の話を思うと、もっとこの国に貢献しなければ申しわけないな、という気持ちになります。
博物館は1952年にオープンし、現在のビルが建てられたのは1996年。どっしり型のビルで、ソ連時代の建築の影響を受けた軍政時代の記念的建築、といった趣です。内部の展示は、だだっ広い館内をひとまわりで見て回るための人間工学や行動学無視の、とても歩きにくい展示配置でした。何度も行ったりきたりして、見て回りました。1万歩の歩数がかせげて、ダイエットには効果ありだけれど、すべての階をちゃんと見たので疲れた。
中は撮影禁止で、入館者はカメラもバッグも入り口のロッカーにしまうよう、言われます。私は、中で飲む水のペットボトルだけは持って入りたかったのですが、中に水はあるから、と、言われました。たしかに、館内にうちにあるのと同様の水20リットルいりのボトルが設置してあったのですが、町中で、20リットル水ボトルに水道水を入れているのを目撃して以来、自分で封をあけたボトル以外の水は信用しません。水道水を飲んでおなかをこわ:すことはないと思うのですが、当地の上水道浄化装置が信用できるレベルかどうかも、まだわかっていないので。
写真撮影はすべて禁止。せめてフラッシュ禁止にして撮影許可してくれればよいのに。そうでなければ、展示物絵はがきを売るか、配布パンフレットをもっと充実した内容にするか。入り口で簡単なパンフレットを配っていましたが(英文のみ)、展示解説は「そんなことは旅行案内書やらヤンゴンナビに書いてある」という程度のものです。というか、ガイドブック解説がこのパンフレットからとって載せているんですよね。
写真はとれませんでしたが、もらったパンフレットをオフィスのコピー機でPDFにして取り入れました。こんな手間取らせないで、写真許可してほしい。
まずは、目玉の「獅子の玉座」へ。 さて、黄金の獅子玉座。金ピカ椅子があるのかと思いましたが、玉座のうしろに立つ金屏風、というおもむきのものが展示されていました。
獅子の玉座の英文解説(春庭拙訳)
獅子王座ショールーム:
国立博物館の主な展示は、獅子玉座です。 獅子玉座は150年前に、「Yamanay木」で作られ、全体に金めっきされています。 8種類の異なる王座があり、ふたつずつ類似したセットになっています。 獅子玉座は、国王によって法の裁きを下す際に、王が座るために使われました。
この玉座はイギリスによって、コルカタ(カルカッタ)博物館展示されていました。1948年に独立の後ミャンマーに返還されました。 他の8つの玉座はすべて第二次世界大戦中に破壊されてしまったので、この展示は、無傷のままに残された唯一の王座です
(春庭つけたし。この玉座は、いわば、最高裁判所として王室が機能するときに王の権威の象徴としてつかわれたもの。Yamanay木とは、ミャンマーほか東南アジアに産するチーク材の一種。白チーク。学名Gmelina arborea。カルカッタツリーとも呼ばれる。
(英文解説原文)
Lion throne show room: The main exhibit of National Museum is the Lion Throne. The Lion Throne is over 150years old and made of Yamanay wood and gilded all over. There are 8 differerent kinds of thrones but in numbers there are 9 thrones became two of them are similar. The Lion Throne was used by the King to adjudicate on law cases. Taken to Kolkata for dispplay at the museum there it was returned to Myanmar after Independence in 1948. This is the only throne left intact as the other 8 were destroyed during World War Ⅱ.
そのほかの7つの玉座はそれぞれの使用目的があります。焼失してしまった玉座のミニチュアが、部屋の壁3方に展示されています。玉座を取り囲んで、8つの臣下の像や白い大きな傘、旗、長い柄のある王を仰ぐ扇などが展示されています。
グランドフロア(日本でいう1階)の目玉お宝、その2
ミャンマー文字。この独特の文字。ミャンマー人の誇りです。寺子屋での無料教室により、ほとんどのミャンマー人が文字を読める、というのも、この国のこれからの発展のために大いに役立つことだろうと思います。
ミャンマーアルファベット
BC2~AD9世紀のPyu時代のミャンマー文字銘文が刻まれている石の骨壺(vessel)。王族の骨壺は、石で作られ、文字が刻まれていました。
チーク材のまくら。バゴーの旧王宮Kanbawzathadi Palaceで16世紀に使われていたもの。木の表面に、ミャンマーアルファベットが彫られています。
<つづく>