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宇根の春祭り

2017-04-07 23:46:00 | 花火

▲八阪神社境内に上組(左)と下組(右)の笠鉾がそろい踏み

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 秩父という土地は小さな神社が多く、その神社には春や秋に祭礼がある土地である。ある意味私の田舎にも似ている。そして、その祭礼には煙火が欠かせない。
 秩父の春祭りといえば、山田の春祭りなんだろうが、あそこ、二本足族には交通手段が厳しくてね…。毎年行こうかと思いつつ、日曜の夜、1時間以上歩くのかぁと思って断念する。

 そんな中、宇根の春祭りのことを思い出す。
 ちょっと調べてみたら駅から15分ぐらいで行けることが分かり、急にそそられる。一方、花火はしょぼいという人からの情報も思い出してきた。

 たとえ花火はしょぼくとも、歩いて苦でないところで春の祭りが行われるのであれば、行ってみてもいいかなって2日前から急に思いだした。
 ということで日曜日の午後出発!掃除も洗濯も済ませてからまったりと出発である。
 当初は普通電車で行こうと思ったが、乗換駅で30分もの待ち合わせ時間があることが分かり、最短距離のみの特急に切り替える。


 そうして、着いた横瀬駅。駅を出て、線路を潜っていくと、遠くから太鼓と笛の音が聞こえてきた。おぉ、やってるやってる。
 時計を見ると17時を回っている。武甲山のふもとへ向かう巡行が始まったころだ。

 お囃子の音のする方へつま先を向け、すったかすったかと歩いていると、背の高い幟が見えてきた。


▲八阪神社の境内入り口に特大ののぼりが建つ。遠くからもよく見えて、初訪問の私にとって力強い目印だった


 駅に特段の案内が無かったから、ちょっと心細くなっていたんだけれど、これを見つけて歩む速度が早まらないわけはない。あっという間に到着した。
 小さな社にお参りし、花火の上がる方向を確認する(おじさんに聞いた方向はかなり違っていたけれどw)



▲祭りのポスター


 さらに、笠鉾が意外と遠くまで行っていないことを知り、その方向に歩き出す。



▲前々日に降った雪が武甲山に残る。麓は桜にはまだ早く、梅のシーズン

 武甲山方面に向かった笠鉾を追いかけていくと、当然武甲山も目に入ってくる。2日前に降った雪がまだ残り、セメント材料として日々削られていく武甲山。白い衣をまとい機械的に掘削されていくその姿は、ある種の要塞のようでカッコいい! 
 ふもとには梅が咲いている。

 秩父のいいところは、こういうところに何気ないカッコいい風景が潜んでいることである。晩秋にオススメな武甲山ショットポイントも、横瀬駅を起点とした場所だ。

 1本道をトコトコ歩いていると、突然華やかな笠鉾が目に入ってくる。



▲笠鉾は午前中は横瀬駅の方へ向かい、午後は武甲山のふもとへ向かう。ここで休憩をして、八阪神社へと戻る。手前が太陽を戴く上組の笠鉾、奥が月を戴く下組の笠鉾。

 保育園のちり紙で作る花の飾りのように、うっすらピンクの紙で作る花枝は、それだけで春の喜びにあふれている。ここまで笠鉾を引っ張ってきた祭り衆が、思い思いに休憩中で、その周囲にカメラマンが群がっている。群がっているとはいえ、決して祭りの邪魔にならない程度だし、それぐらいの人数である。
 高鳴る鼓動を平静を装った顔で押さえつつ、パシャパシャ撮る。楽しい、心躍る、これが春祭りか…。いいよ、すっごくいいよ! 大人も子供も混在として、この小さな祭りを楽しんでいる。こういうのが今もまだちゃんと残って引き継がれているということの美しさよ…。



▲笠鉾を華やかにする花飾りは、住民の手作りのものと聞く。


 思わず涙ぐみそうになりながら(元々感動には素直に涙もろい)、あちこち観察。まったりとした雰囲気がやさしく周囲を包み込んでいく。

 あぁ、ここまで来てよかった。
 心からそう思った。


 やがて、時が経ち、八阪神社に戻る頃合いとなる。
 ホーリャイと掛け声をかける子供たちが戻ってきて、笠鉾に乗り込む。大人たちは白のさらしで子供たちを笠鉾に固定する作業をする。それ、まんま秩父夜祭で見る作業でだよ。秩父の屋台文化ってこうやって身の回りの小さな祭りから始まっていくんだな…ってまた感動する。

 傘の上に大人が2名スルスルと上がり、四方に固定されていた縄がほどかれ、出発の刻限である。




▲武甲山に別れを告げ、八阪神社に向けて巡行。


 武甲山を背に、先ほど来た道を還る。
 すでに笠鉾の提灯には明かりがともっており、まだ明るさが残る中、ほのかな明かりを主張する。
 笛と太鼓の音に、先ほどは聞こえてこなかった、子どもたちの「ホーリャイ」という掛け声が合わさって、笠鉾がキュルキュルと車輪を軋ませながら進んでいく。

 行きと違って還りは下りが多いため、大人たちが地面と平行になりそうな角度をつけて、全身で笠鉾の速度を制御する。そんな一つ一つの動作が頼もしいし、愛おしい。



▲月を戴く下組の笠鉾に無理やりリアル月を絡める使命感。祭りとは、こういう訳の分からん高揚感が増すものである。


 特に派手でもない、にぎやかでもない、でもこれが地域に根付いてきた祭りなんだろうという安心感が心に染みてくる。笠鉾の邪魔にならないようにちょろちょろしつつ、さまざまな角度で祭りを眺める。

 途中、中休み箇所があり、そこで時間を過ごすうちにぐっと暗くなってくる。

 以後、笠鉾の提灯が妖艶な風情を湛え、この素朴な祭りに彩りを添える。たまらなく艶っぽい景観にやはり感動を禁じ得ない。



▲カメラ内蔵フラッシュだとこんなもんです


 そうこうしているうちに八阪神社が近づいてきて、いったんそこを離れて神社に先回りする。

 花火撮影のスタンバイである。
 境内兼公園の片隅に立つ三脚は10本未満。そこの隙間に自分の三脚を立てているうちに、先ほどの笠鉾が背後までやってきた。
 境内へのスロープが意外と急らしくそこで何度か気合を入れて上ってくる。続いて、もう一台の笠鉾もよっこらせって上がってくる。境内で向きを整え、二台並んだところで巡行は終了となる。


 そして花火の時間。
 


▲八阪神社に戻って、花火の奉納です(スターマイン一台)


▲あれ、この色は…


▲フィニッシュ!


 スターマイン1台きりの奉納であったが、ここに至るまでの満足度が高くて、本当に幸せな一日の締めくくりとなった。
 花火終了後、撤収して駅にとことこ向かってみれば、18分の電車に乗れそうな感じであった。が、この日は日曜日ということもあり、翌日に影響が出てはならんと、その後の特急列車で東征すし、南方向に短く乗り換えをいて、帰宅となる。