事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「AX(アックス)」伊坂幸太郎著 角川書店

2017-09-15 | ミステリ

グラスホッパー」「マリアビートル」につづく、殺し屋シリーズ7年ぶりの第3弾。というか伊坂幸太郎の新作自体が久しぶり。執筆ペースが落ちてきたのかなあ……おおお、まもなく書き下ろし長篇刊行ですか。失礼しました。

このシリーズは、殺し屋たちと標的、そして殺し屋同士のからみを描くことで、不道徳な存在である殺し屋が、むしろ道徳的な存在に見えてくるあたりが味わい深い。職業倫理が世間のルールを超えている。

これまでの二作に登場した殺し屋が何人か登場する(蜜柑、檸檬、押し屋など)けれど、さほど相関はないのでこの小説から読んでも全然OK。

今回の主人公の通り名は「兜(カブト)」。臨機応変の殺人方法をとるあたり、ローレンス・ブロックの殺し屋ケラーっぽい。自分の商売に懐疑的になるあたりも(ならないのも困ったものなのだが)ケラーに近い。

しかし兜にはケラーには絶対にない特徴がある。ひたすらに、恐妻家なのだ。正確には、恐妻家に見えるの。妻の理不尽な要求に、諾々としたがい、息子から同情されている。

夜遅くに帰ってきて、妻に気づかれない最強の食べものは何か、というネタには苦笑。なんか、伊坂幸太郎の私生活までうかがえるような気も(そう思わせる計算は絶対にはたらいたはず)。既婚の男性にしみじみと

「だよねえ」

と思わせてくれる。ええそうですとも、わたくしも恐妻家でございますよ。

このパターンで笑わせながら突っ走るのかと思ったら、意外な方向に物語は進む。おいおい、最後まで読者が不思議に思うであろう“あること”にふれないで終わるのかと思わせて……最後に泣かせてエンディング。相変わらず、おみごとです。

オトナの読みものとして、このシリーズ以上のものはまず望めない。文庫も含めて爆発的に売れていることに納得。伊坂幸太郎は本当にいい。さあ来週は新作「ホワイトラビット」発売。お金を用意しておかなきゃ。

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ファウンダー その2

2017-09-14 | 洋画

その1はこちら

マクドナルド兄弟も実はフランチャイズ化を考え、すでに実行に移していた。だが、質の充実を優先する彼らは、自分たちの目の届く範囲にしか出店しなかった。しかしレイは西海岸から東海岸までの展開を画策する。

タイトルの「ファウンダー」とは創業者のこと。マクドナルドの真の創業者とはいったい誰なのか、この映画は観客に問う。

でも、おいしいハンバーガーを客に提供することを第一義に考えるマクドナルド兄弟を賞揚し、利益優先で拡大路線を選ぶレイをおとしめるだけの作品になっていないのがこの作品の妙味。もちろん、それだけだとマクドナルドからの訴訟に耐えられはしなかったろうが(笑)。

自宅を抵当に入れ、糟糠の妻(ローラ・ダーンひさしぶり)と別れ、それでもレイは突っ走り、兄弟と離反する。

「他にも同じような店はあった。でもマクドナルドという名にこだわったのは、まさしくマクドナルドという名前のためだ。Kroc’s(クロックの店)ではだめなんだ。McDonald's(マクダナァ)というおいしそうな響きがほしかったんだ」

と、確かに正解ではあるけれどもこれ以上ない侮蔑のことばを兄弟に放つレイ。マイケル・キートンはそんな傲岸で、しかし魅力的なユダヤ人を、ずり下がったズボンを上げながら(きっとレイ・クロック自身がそうしていたのだろう)みごとに演じている。バードマンといいホームカミングといい、この人は化けたなあ。

その後、日本にも進出したマクドナルドは、パートナーに藤田田(でん)というこれまた奇矯な人物を選択し、本国にまさる利益をあげていく。ユダヤ商法を看板にかかげて。

レイは“創造”はしなかったかもしれない。真の創業者がマクドナルド兄弟であることは確かだ。しかし、全世界の1%が毎日マクドナルドを食べているという現実を生み出したレイもまた、ファウンダーであることはゆるがない。二年もバイトしといてなんだけど、おれはモスバーガーのほうが好きだけどね。

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「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」The Founder (2016 KADOKAWA)

2017-09-13 | 洋画

もう30年以上も前の話。

マクドナルド千歳船橋店のバイトに採用されたわたしは、あれはどこだったかなあ、小田急線沿いのどこかで(ひょっとしたら西新宿だったかもしれない)、あるビデオだかフィルムを見せられた。マクドナルドの社史に始まる、プロモーション的なもの。

「むかしむかし、マクドナルド兄弟がはじめたハンバーガーショップは、某人物によって拡大をつづけ……」

その、某人物マクドナルド兄弟をめぐるお話が「ファウンダー」だ。

新しいものにすぐ飛びつき、しかし失敗も多い、バイタリティはあるが決して有能ではないセールスマン。それが主人公のレイ・クロック(マイケル・キートン)。

彼の開発したマルチミキサーを、発注ミスかと思えるほどオーダーするカリフォルニアの「マクドナルド」なるバーガーショップにレイは興味を持ち、遠路はるばる訪れる。

ディックとマックのマクドナルド兄弟がその店で行っていたことは、まさしく“革命”だった。

・クルーの動線を徹底的に研究し

・省力化するために新たに工夫された器具を使用し(だからレイにオーダーした)

・ウエイトレスに届けさせず、客みずからがカウンターでハンバーガーを受け取り

・皿を使わずに紙で包装して使い捨てにし

・ドライブイン形式は不良のたまり場になりがちだったので、店のイメージをファミリー向けに特化した

……その結果、オーダーしてから30秒で客がハンバーガーを受け取るシステムを完成していたのだ。わたしたちはハンバーガーを(ポパイに登場するウィンピーをのぞけば)マクドナルドで学習したので、そういうものだと思っていたけれども、当時としては画期的。

クロックは商売人としてひらめく。

「フランチャイズだっ!」

以下次号

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「三度目の殺人」(2017 東宝=GAGA)

2017-09-12 | 邦画

幻の光」「ワンダフルライフ」「誰も知らない」「歩いても 歩いても」「空気人形」「奇跡」「海よりもまだ深く」……是枝裕和作品の特徴は、過剰なまでの自然さにあった。ドキュメンタリー出身らしく、役者の演技がこれでもかというくらいナチュラルなのだ。だから子どもを撮らせたら天下一品。

そんな是枝が「そして父になる」につづいて福山雅治とタッグを組んだ。

彼は「そして~」における“血のつながらない子どもを愛せない情けないエリート”がそのまま弁護士をやっているかのように登場。彼が同期の友人(吉田剛太郎)から協力を求められた事件とは、三十年以上も前に殺人を犯して服役していた男が、出所して雇ってくれた社長を殴り殺したというもの。被告を演ずるのが役所広司。福山VS役所という構図。

福山雅治は、実はそう味の濃い役者ではないと思う。彼のデビュー作「ほんの5g」で共演したいしかわじゅんは、傑作エッセイ漫画「フロムK」のなかで、福山の顔がおぼえられずに目鼻も書かなかったくらいだ。逆に役所広司は、名優ではあるけれども常に彼らしい雰囲気をまとっている。接見室のアクリル板ごしに、役所と福山の顔が重なるあたりは怖い怖い。

ところが、この作品におけるふたりの演技は逆だ。

役所は意図的に色を落としたように演じて自己主張せず、供述も二転三転する。彼にひきずられて福山は次第に困惑し、怒り、(ちょっとネタバレだけど)ラストで役所広司が描いたかのような十字路に立ち、呆然とする。絶対悪としての殺人が、他の悪によって相対化されてしまう。いったい何が真実か。

こう書くとこむずかしい映画なのかと誤解されそう。しかしサスペンス映画として、法廷劇としてむやみに面白い。特に斉藤由貴の天然の邪悪さは近ごろの騒ぎとあいまっておみごと。

この映画においていちばん確かなのは「三度目の殺人」の犯人とは誰か、だ。劇場を出たら若い女性がボーイフレンドに「考えさせられたわ……」とつぶやいていた。この正直さに、ちょっとホッとする。

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極私的大河ドラマ史PART13 国盗り物語

2017-09-11 | 大河ドラマ

PART12「新・平家物語」はこちら

なぜか大河では視聴率がとれない司馬遼太郎原作もの。国民作家なのに。

残念ながら例外ではなかった「国盗り物語」は、表題作のほかに司馬の「功名が辻」(のちに仲間由紀恵主演でも制作されている)「尻啖え孫市」(雑賀孫市のお話)、「梟の城」(直木賞受賞作)などがミックスされている。司馬オールスターズ。特に、斎藤道三(平幹二朗)、織田信長(高橋英樹)、明智光秀(近藤正臣)のトリプル主演で話題を呼んだ。

「とぉとぉたぁらりとぉたらり♪」

これは、油売り出身の斎藤道三が油を売るときの口上。油を売る、の語源であるように、油は器に移すのが時間がかかるので歌って客を楽しませるわけ。四十年以上も前のドラマなのに、まだおぼえている。それ以上に忘れられないのが、このドラマに向けて寄せられた批判だ。

「これでは国盗り物語ではなく、女盗り物語ではないか」

という投書が(おそらく朝日新聞に)載ったのだ。確かに(笑)。

油を売りながら道三は女をたらしまくり(というか油屋の女主人をすでにたらしこんでいた)、次第に美濃の国でのし上がっていく。わたしにとってはけっこうな展開でした。こういう大河が好きになるくらい、色気づいていたわけね。

ということで男三人が主役だけれども、とにかく女優陣が豪華。道三にたらされた油屋の女主人は池内淳子、たらされ2号に三田佳子、3号(本妻だけど)が山本陽子。幸福な男だよ斎藤道三。

他に濃姫に松坂慶子、お市の方に松原智恵子、光秀の正妻に中野良子、寧々に太地喜和子と豪華絢爛。わたしが好きだったのは信長暗殺を狙う女忍者役の佐藤友美と、一向宗を率いた田島令子。そのころからクールビューティが好きだった。

PART14「勝海舟」につづく

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おんな城主直虎 第36回 井伊家最後の日

2017-09-10 | 大河ドラマ

第35回「蘇りし者たち」はこちら

前回の視聴率は11.3%。予想ほどではなかったけれど、わりに踏ん張ったのではないかと思う。なにしろ裏に、テレ東のあの「池の水をぜんぶ抜く」があったからだ。これは冗談でも何でもなくて、あの企画を考えついた人はテレビってものを知ってるなあと思う。ここ山形ではネットしていないので(笑)、まどわされることはなかったけれど、されてたら迷ったろう。

さて今回から栗原小巻さん登場。前にもふれたようにわたしはこの人にオフステージで会ったことがあって、その女優オーラに目がクラクラ。この人が姑だと、菜々緒も(そして家康も)つらい。にしても、大河に久しぶりの浅丘ルリ子と栗原小巻をそろえ、まるでむかしの日活大作「戦争と人間」みたい。

さて「井伊家最後の日」。一種の解散宣言。南渓和尚(小林薫)の助言を受けて、直虎は井伊家再興をあきらめる。自分の作品であった直虎を、だからこそ愛おしんだ南渓の無念……と思っていたのに虎松に彼は何を吹きこんだものやら。

武田、徳川、北条の均衡が崩れる直前。政治的駆け引きがどす黒い前半はとてもけっこうだったけれども、あまりにストレートな龍雲丸のプロポーズと大河キスPART2はちょっとなあ。まあ、このシーンのためにずっと頭巾をかぶっていた演出ということですか。

のちの直政を迎える松下家の当主が古舘寛治なのはうれしい。この人が出てくると、なんか画面が不穏な雰囲気に満たされるのよね。気になる映画にはいつも出ているイメージ。ファンです。

キャストには「回想」マークが多数。そうかもう9月。そろそろこの大河も店じまいに向かっているんだな。

視聴率は、11%維持かと。まさかテレ東も、毎週池をさらうわけじゃないだろし。

第37回「武田が来たりて火を放つ」につづく

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ワンダーウーマン その2

2017-09-10 | 洋画

その1はこちら

前線でヒロインはマントを脱ぎ捨て(スーパーマンの逆)、ワンダーウーマンとして人間の争いに介入することを選択する。これまで、たまりにたまった(彼女にとって、観客にとって)フラストレーションがここで一気に解消する。任侠映画ですか。

と同時に、決して不死身ではないことがオープニングのアマゾンでの戦いで思い知らされている観客は、ヒロインの危機を十分に感じながら戦闘に“参加”することになる。戦闘描写は「プライベート・ライアン」「フルメタル・ジャケット」並み。格闘も、スピードだけでなく重量感があるのがすばらしい。ガル・ガドットはめちゃめちゃに運動神経よさそうだし。

つづいて少人数で敵の秘密基地を攻略する展開。「ナバロンの要塞」「鷲は舞い降りた」パターン。しかもうまく作ってあるのでドキドキ。そう、これはかなり上等な戦争映画であり、スパイ映画でもあったのだ。

現代のルーブル美術館をオープニングとエンディングにすえ、バットマンは意外な形でしか登場しない。おなじみのエンドタイトル後のお遊びもなし。満足。観ている最中に地震が来たので迫力倍増だったし(T_T)

ただし、日本公開についてさまざまに語られていることへ、わたしも少し。

「ワンダーウーマン」日本版には乃木坂46のイメージソング「女は一人じゃ眠れない」がついているとか。この映画とは真逆のコンセプトであることに批判集中。あの秋元康にしては戦略を間違えたか。あるいはシャレがきつすぎたか。いずれにしても、この映画は字幕版で観なければならんとわたしは決心。

また、全米から3ヶ月近く遅れて公開なのは功罪相半ばする。評価が高いからじっくりと宣伝して、ということだったのかもしれない。マーベルの「ホームカミング」と時期をずらせて、だったのかも。

しかしそんなワーナーの思惑はすべて裏目。興行的に苦戦することになっている。まさか昔のようにアメコミものは日本では当たらない時代に戻るとは思えないけれど、「ローガン」やこの作品のように、大人が楽しめる作品には大人が楽しめる環境を用意してほしい。作品の質が高かっただけに、そこがちょっと残念。

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「ワンダーウーマン」Wonder Woman (2017 WB)

2017-09-09 | 洋画

とにかく、ほとんど何の事前情報もなしに観た。

もちろんDCコミックスの世界観のなかでのお話で、「ジャスティスの誕生」に登場した魅力的なワンダーウーマン(ガル・ガドット)が再登場するとか、やけに北米をはじめとした全世界で大ヒットしているとかいう事情はさすがに承知。

でも、おかげで大好きなロビン・ライトが女性だけの国アマゾンの将軍アンティオペ役でいきなり現れたのにびっくり。おまけに、「グラディエーター」で“姉”を演じたコニー・ニールセンとか、やけにでかくて美しい女優がたーくさん。眼福眼福。わたしの世代だと73年のお正月お色気B級映画「アマゾネス」(こちらはアンティオペが主役)が思い出されます。

もっとも、シャーリーズ・セロンの「モンスター」を監督したパティ・ジェンキンスのことだから、話はそう能天気じゃない。無垢なるワンダーウーマンと、英国スパイであるクリス・パインのディスカッションドラマにもなっている。

「ひとりの悪を倒しただけでは戦争は終わらないんだ。世界がひどい状況なのは、自分たちの責任でもある」

的なセリフはなかなか。まったくだよね。

うわあクリス・パインか。これも知らなかった。わたしは彼が苦手なんだ。

スタートレックでは直情径行にすぎて冷静なスポックに完全に食われ、リブートされたジャック・ライアンはポシャり……どうして大作に次から次へと起用されるんだろう。よほど優秀なエージェントがついているのかしら。でも今回に限っては、暗くなりがちなお話をにじみでる陽気さで救っている。イギリス人には絶対に見えないけど。

美しいアマゾンから第一次世界大戦時のロンドンにうつったワンダーウーマンのとまどいと開き直り(笑)は、コミカルに描いてあってそれなりに見せる。ドレスアップしたガル・ガドットはため息が出るほど美しいし。でも、こんなものなのか?と不遜にも思っていたの。もっと面白いんじゃないの、と。

前半のスローペースが、パティ・ジェンキンスの計算だと気づいたのはそのすぐあとでした。以下次号

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「蘇我の娘の古事記(ふることぶみ)」 周防柳著 角川春樹事務所

2017-09-08 | 本と雑誌

いったいこれは何だ?とびっくり。どういう文脈でこんな作品が飛び出て来たんだろう。とにかくすごい小説なの。

タイトルそのまんまの、古事記とは誰が書いたのかをめぐる物語。

稗田阿礼(ひえだのあれ)だろ?」

とクイズの解答者みたいな地点からはるかに離れて、蘇我入鹿の……言っていいのかな、いいんだよなタイトルになっているくらいだから……娘がなぜ、どのように古事記(ふることぶみ)をまとめたのか。むちゃくちゃに面白く描いてある。

大化の改新につながる乙巳(いっし)の変からスタート。中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿を誅殺。ここから、大王(おおきみ)を中心とした中央集権的体制が構築され、しかしその後の壬申の乱で……という歴史が縦糸。この、天皇制成立の過程に、ある盲目の女性がからみ、兄との禁断の恋が組み込まれる。

ここに、古事記のエピソードがからんでくるのだ。ヤマタノオロチとか、因幡の白ウサギとか。挿入される部分はページの色まで変えられている。

わたしは日本史をまともに学習したことがないので(マジで、未履修です)、この時代のことは山岸凉子の「日出処天子」でしか把握していない(笑)。教室の後ろに貼られていた歴史年表に載っていた事件の数々に、こんな背景があったのかとお勉強。

殺人によって始まった大化の改新が、なぜ年表であれほど大きく扱われていたのか。つまりは事実上の天皇制開始ってことと理解していいですか。

最大の謎は、これだけの作品を書き上げた周防柳という作家だ。これまでどのような活動をしてきた人なのだろう。なんか、彼女(女性なんですよね?)の存在もまたよくわからないでいる。そのことも含めて、むやみに面白い本でした。ぜひぜひ。

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「ボーダーライン」Sicario (2015 KADOKAWA)

2017-09-07 | 洋画

メッセージ」にぶっ飛び、秋の「ブレードランナー2049」が今から待ち遠しいドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品。

誘拐捜査のオーソリティであるFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)は容疑者宅を急襲する。そこには数知れぬ被害者の遺体が隠され、同時にある罠も仕掛けられていた……このオープニングの緊張感で、ケイトがこれからプロとして成長していく姿が描かれるんだろう、と誰だって予想する。ところがその予想は完全に覆される。

トランプが大統領選のさなかに壁をつくるとぶち上げたメキシコとの国境線。もちろんそんなものをつくる予算などどこにも存在しない。メキシコに負担させる?馬鹿言っちゃいけない。しかしそんな大嘘を信じたくなるほど絶望的な争いがこのボーダーライン上にはあるという現実。

ケイトは国防総省の顧問と称するマット(ジョシュ・ブローリン)にスカウトされ、麻薬カルテルの捜査に加わる。彼は常に軽口を絶やさず、会議にもサンダル履きでやってくる。どうも、CIAのくせ者らしい。彼らは本気で麻薬密売の根元を絶とうと考えているようだが、そこに得体の知れないコロンビア人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が登場し、次第に捜査はねじれていく。

ストーリーはものすごく入り組んでいて、しかしそれを感じさせないくらいに画面が弾んでいます。

メキシコの空港周辺の道路がやけに凸凹で(スピードを出させないためらしい)、そこをコンボイを組んで突っ走る車両の異様さを際立たせるなど、ヴィルヌーヴのセンスが爆発。「メッセージ」でも、巨大な宇宙船よりも、ヘリやジェット機の異様さを強調したセンスと共通している。この手腕がブレードランナーに活かされるとしたら……見逃せない!

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