新国立劇場の小劇場で蒼井優主演の芝居「アンチゴーヌ」を観た。蒼井優は声も通るし滑舌もいい。何より存在感たっぶりで舞台映えがする。
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今回の舞台はかなり変わっていて、劇場中央に十字架の形に舞台があって、空いた四角に客席がある。これほど舞台に近い芝居は初めてだ。
共演は生瀬勝久とその他の役者さんたち。みな大柄の人ばかりだ。劇中で何度も「小さなアンチゴーヌ」という台詞が出てくるので、それに合わせた配役とも言えるが、むしろ悪法にひとりで立ち向かう、弱々しくも秘めた強さを持つひとりの女性を際立たせるのが狙いだろう。
蒼井優はエネルギーとパワーに満ち満ちて、生身の人間が演じる迫力が凄まじい勢いで押し寄せてくる。映画ではこうはいかない。芝居の醍醐味である。
二十年の短い人生を生きたアンチゴーヌだが、立場にも世間にも悪法にも負けず、自分の感性に忠実に生き、そして死んでゆく。人生とは何か、幸福とは何なのか、テーマは幅広く、深い。それを二時間十分ノンストップの芝居で一気呵成に演じきる。
重々しいテーマの一方で、こんな風に生きた女性がいたのだという爽快な感動がある。蒼井優。名演であった。