三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

舞台「近松心中物語」

2018年01月26日 | 映画・舞台・コンサート

 新国立劇場中劇場で堤真一、宮沢りえ主演のシスカンパニー公演「近松心中物語」を観た。
 https://www.chikamatsu-stage.com/

 女郎役の宮沢りえはオペラグラスで見るアップの表情がとてつもなく色っぽい。特に堤真一を奥の部屋に誘う場面では、仕種といい声といい、ゾクゾクさせるものがあった。かつて書店で買った「Santa Fe」を思い出す。
 堤真一は滑舌よく台詞をつなぎつつ、声のトーンや抑揚を自在に変化させていて、主役の喜怒哀楽と気分がわかりやすく伝わってくる。この人はテレビや映画でも独特の個性を発揮しているが、芝居でも堂々としていて、舞台映えのする俳優である。
 小池栄子がコメディタッチの弾けた演技で笑わせくれる。この人にコメディエンヌの才能があったとは驚きだ。一方で、幽霊なのに「おっぱい吸ってもいいのよ」という妙に艶かしい台詞も言ったりする。グラビアアイドルだった小池栄子にその台詞を言わせたことにも驚いた。
 演出はとても工夫されている上に凝っている。変幻自在の店のセットがとても面白い。回転すると様々な舞台に早変わりする。賑やかな街の群衆として大勢の役者が庶民を演じているのが、当時の風俗をさりげなく表現できている。端役の人たちも演技に手抜かりがない。
 先週の土曜日に観た蒼井優の「アンチゴーヌ」も深くて重いテーマで非常に見ごたえがあったが、こちらの舞台は分かりやすい人情もので、笑いあり悲しみありで心から楽しめる芝居であった。

 しかし新国立劇場の中劇場に来るたびに思うのだが、椅子の固さは何とかならないものだろうか。途中で必ずお尻が痛くなる。