三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「アイアム・ア・コメディアン」

2024年07月09日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「アイアム・ア・コメディアン」を観た。
映画『アイアム・ア・コメディアン』

映画『アイアム・ア・コメディアン』

過激なネタ、炎上、そしてテレビから消えた芸人、村本大輔。忘れ去られた芸人の真実に『東京クルド』の新鋭ドキュメンタリスト日向史有が迫った3年間の記録。

映画『アイアム・ア・コメディアン』

 開始から40分くらいのところで、投影機のトラブルで上映が中断した。ムラモトがアメリカに行く決意を相方に伝えた飲み会の場面が、急に暗転して音声だけになった。
 敵の多いムラモトだが、映画を中断させるほど悪質な嫌がらせを受けるほどではない。映画の上映トラブルに遭遇したのは、これが初めてである。ここ8年ほどは毎年200本くらいを映画館で観ているから、確率としては1600分の1だ。復旧作業をはじめて30分経ったところで、直らないから払い戻しか、優待券で対応するとのこと。

 半分弱を鑑賞した感想を言えば、ムラモトは弱者の味方、困っている人の味方である。だから権力者を茶化して笑い飛ばす。観点を変えて価値観をひっくり返すという、お笑い本来のネタをやっている。まさに王道である。ところが、ダウンタウンに代表される弱いものいじめのお笑いがテレビ番組を席巻するようになると、ムラモトは弾き出される。弾き出したのはテレビ局ではない。コンプライアンスがどうのと、権力者主導のパラダイムにまんまと乗せられた民衆だ。太平洋戦争を始めた当時の愚かな国民性は、少しも改善されていない。

 日本の有権者の多くは、自分で考えず、自分の意見を持たない人たちだ。だから小池百合子みたいな姑息な人間が都知事に3回も当選する。レンホウの失敗は、若者に重心を置いた政策を発言したことだ。実は他にもたくさんの政策を発信しているのだが、テレビのニュースは、若者重視の発言のシーンばかりを流す。レンホウは若者しか助けないと思ってしまった高齢者は多いと思う。アベシンゾーが民主党は印象操作ばかりすると非難していたが、もっとも印象操作をしているのはマスコミである。権力と癒着したマスコミは、弱いものいじめの元凶だ。マスコミがムラモトを追い出すのは必然である。

 それでもムラモトを応援する人々もいる。気骨のある劇場は、ムラモトを出演させる。独善の強権に確執を醸す人々はまだたくさんいるのだ。エゴが大手を振って罷り通る世の中が簡単に終わるとは思えないが、自分がいい暮らしをしたい人よりも、困っている人を助けたい人の数が多くなれば、この国は確実によくなるはずだ。頑張れ、ムラモト。

映画「リッチランド」

2024年07月09日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「リッチランド」を観た。
『リッチランド』公式ホームページ

『リッチランド』公式ホームページ

『リッチランド』公式ホームページ

 リッチランドとはなんとも皮肉な命名だが、町に住む人々は大きく二極に分かれている。原爆肯定派と否定派だ。
 肯定派は、いつまでも敗戦を受け入れようとしない日本の軍事政権を、圧倒的な力を見せつけることによって屈服させ、戦争を終結させたのが、この町で製造された原爆にほかならないという、何度も聞かされたおなじみの論理を振りかざす。
 否定派は、無差別大量虐殺の非人間性と、核実験で廃棄された放射性物質、いわゆる核のゴミを自分たちの住む土地が背負い続けていかねばならないことを指摘する。原発を抱える日本と共通の問題を抱えているわけだ。

 人類が原発を利用するのはまだまだ時期尚早だ。核のゴミの完全な廃棄処理方法を開発してからにすべきである。問題を子孫に先送りしたのは、日本もアメリカも同じだ。しかし核の利権もまた、日本もアメリカも同じである。ついでに言えばフランスも同じだ。中国は国家事業だから、少しニュアンスが異なるが、国家が推し進めている事業という点では同じだ。名前の出た4カ国が、原発数が多い国の上位にある。

 原子力爆弾の仮説を立てて、人を犠牲にしても実証実験をしたい科学者のエゴと、軍事的に世界をリードしたい政治家と軍人の思惑が一致した結果が、ヒロシマとナガサキだ。それにビキニ環礁で行なわれた水爆実験だ。これらは人類の愚かしさの頂点にある出来事だと思う。
 プーチン戦争、イスラエル戦争をはじめとする戦争や紛争で、毎日たくさんの人々が死んでいる。ヒステリックになった指導者が、核爆弾を使わないとも限らない。大量破壊兵器の廃絶は、叶わぬ夢に終わるのだろう。つまり廃絶よりも前に、人類が絶滅するのだ。その蓋然性は極めて高いと言わざるを得ない。