日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

荻原浩著「千年樹」

2010-04-14 | 読書
初めて読む作家荻原浩の事は何も知らないが
新聞の広告「千年樹」を見て書店に行った。
木で家を造る仕事人としては「樹」や「家」と付くと食指が動く。



帯に「巨樹をめぐる・・連作短編集」
「おろかで愛おしい人間たちが、時空を超えてくり返す営み」とあるが
巨大な楠の木の誕生秘話の「萌芽」では
地域から追われて飢死した親子3人の口からでた楠の実
そのまま芽吹いて大樹へとつらなるが
その根元で繰り広げられる物語。

親を知らない獣のような若者が穴蔵で死に
その遺骸を現代人が掘り起こして命拾いをし、
大樹となった楠に縄をかけて自死しようとしたり
樹の周りでは死の意識が漂う。

野中の木から、神社の大樹、町おこしのシンボリツリーと変遷し
それでも不運が付きまとい、8編目ではついに切り倒されてしまう。

最初の1編が最後まで続いていくが
初めて手に取り読み進むうちにつながりは消えて、またつながる。
短編でありながら、長編小説のような仕組みになっている。

8編が小さな幸せは見つけても大きな不幸が付きまとう暗いお話だ。
読み終えて最初の数行がこの物語の幹となったいたことに気づく。
最初に種明かしありでも楽しめる1冊です。
(悪しからず・・)集英社文庫
コメント
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