不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

高村薫著「レディー・ジョーカー」

2010-05-11 | 読書
今日は私の鼻と同じ湿ったお天気。
パソコンの前で図面書きだが、一向にはかどらない。

それはさておき、週末に読み終えた高村薫の名作「レディー・ジョーカー」の事
当人のテレビ映りと同じく、硬派で無駄の無い文体と進行



戦後の逆境をくぐり抜け、面白味はないけれどそれなりに安定した生活の「じいさん」
鬱屈とした日々「もういいや」腹をくくった刑事
在日で屈折した元銀行員「やってやろうじゃないか」の金持ち二代目
出口の無い日々を送っている無垢(?)な若者「どうにかしたい」
障碍の娘と弱い妻を抱えて「全部投げ出したい」トラック運転手たち・・の誘拐事件

ビール会社の被差別出身の若者が自殺した事を契機に物語は始まり
一流企業のトップ達の人生模様を織り込みながら
殺人ゼロ・逮捕者ゼロ(多分)被害者ゼロで誘拐事件が粛々と進み、終えんする。
(最後に取って付けたように企業トップが射殺さる。)

この間、スニーカーの合田刑事が大活躍する事も無く
まんまと身代金の20億円を手に入れたが、一人としてはしゃぐ事無く
普通の生活に戻って行く。

高村薫の刑事物というより、大企業トップの物語だ。
一昔前に中東で誘拐された商社のお偉いさん
無事解放されて会合に出た所がテレビに映されていたが
笑っているものの,真から嬉しそうでなく、同僚同士微妙な距離感が出ていたが
「まさにあれ」と思ってしまった。
刑事は裸になれても企業人は裸になる事がタブーなのか?

調査に時間を費やし,文庫化される際に時代背景など大幅修正をした高村薫の事だもの
当たらずとも遠からずなのだろう。

競馬場の風景や,新聞記者と刑事とのやり取り
知らない世界を垣間見られて、ドキドキの3冊でした。

終章で合田刑事が「会いたい・・クリスマスイブは開いているか」手紙にしたためる。
入れ込んで読んでいたが、ここで思わず大笑い。

合田刑事物は次が楽しみだが、晴子情歌の後「ミステリーは書かない」宣言
合田雄一郎は終わったのだろうか?
単行本と読み比べてみたくなったが
書き直しても書かない気持ちは変わらないのだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする