日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

玄侑宗久著「龍の棲む家」

2010-05-25 | 読書
初めて読む作家の1冊(文春文庫)
お寺の住職にして2001年の芥川賞の作家
テレビでも見かけるが太い眉に決して笑いそうもない(?)御仁
帯に「龍になった父は、どこにかえるのか。」
―飛翔する記憶と、無限の自由―




喫茶店を営んでいた男性、
恋人と別れ、認知症になった父と同居をするために実家に戻る。
元市役所の課長だった父
同じ敷地に住む長男は明るく面倒見のいい妻を亡くしている。
ひょんな事から父の面倒を一緒に見てくれる女性が現れる。

散歩の途中や家に居る時に不意に現れる「課長」
たちまち主人公は部下になり、元介護のプロの女性も部下にすえ
過去の時間にさかのぼり、市長に憤慨し、無くなった市民の葬儀の心配をする。

力まず、怒らず、観察しつつ時空を行き来する父に寄り添う。
湯船に便が浮かび、顔は見慣れない武将の能面になる。
心の不安や負い目が言葉の端々に現れ、対処法を学ぶ。

恵まれた環境の父親に寄り添う無職の息子
毎日がドラマティックで、先々もドラマを予感させる結末だが
介護保険に多少とも関わり、母親の介護の一端を担った者としても
「そうそう・ふむふむ」納得しながら読み進められる。

作者は何らかの形で親の介護に関わったみたいだ。
先の希望が見えない介護、今のこの人はどこを飛翔しているだろう・・
なんて思いながら付き合うと、
先の見えない介護にも想像力が膨らんで、少しはゆとりが生まれるかもしれない。
そんな事が思われる読後感でした。
コメント
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