日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

高村薫著「神の火」

2011-07-08 | 読書
昨日読み終えた文庫本
高村薫著「神の火」上下 新潮社文庫 平成6年刊
(平成3年刊行を全面改稿)



福島第二原発の事故を受けて増刷された上下刊
上巻の帯
「原子力。それは人類が神から盗んだ火。」
波打つ海面の向こうに浮き上がる光
最後の文字にはならない情景の絵

内容は普通には生きられない4人の男達の物語
明らかに日本人ではない容貌の青年
瞳が東洋人ではない元スパイの優秀な勤め人
身なりに一部の隙もない優雅な会社社長
バイタリティー溢れる肉体派の元スパイの幼なじみ

真面目な一直線の青年に引きつけられる幼なじみの二人
幼なじみと大阪でであってしまった今は真面目な勤め人が主人公
優秀な頭脳と行動で難しい書店に働いていたが
舞鶴の海運会社の社長の父の葬儀で縁ある人たちがつながり出し
断ち切った筈のスパイの過去が現在に引きづられ出す。

日々をキッチリ取りこぼすことなく勤め
係累を作らず(妻と離婚)破滅へと向かう主人公と他2人

向かう先は若狭湾の原子力発電所「音海」
隙をトコトン研究し、侵入し厳重なセキュリティーを突破
厳重な入り口を撃破
原子炉の蓋を明けることを目論みを実行する

結果、一人は自殺
一人は撃沈(多分)
主人公は射殺(多分)

結末を書いていいのか?だが
この本の意図は結果ではなく経過が主眼だと思う(高村さんごめんなさい)

原子力を取り巻くスパイ合戦(あったのだろう)
政治合戦や陰謀
秘密主義
全てを「ぷらとん」の名の下に括るが
詳細は分からないようになっている。

だが、高村薫の面目躍如は
原子炉敷地に覆われた秘密基地を詳細まで書き込むこと
見たことがなくとも見たような気分にさせられるし
あながち想像の産物ではない、と言い切れる文面と
確かな人物描写
アタマの中に人の男達が浮かび上がる。
それでも不思議は付いて回るが・・

世界中の頭脳を持ってしても、
コントロールしきれないとんでもない業火
「神の火」に人は手をつけてはいけなかった。
政治取引や利益誘導などに使ってはいけない
「神の火」より「業火」とい得る原子の火
(「業火」はパトリシア・コーンウエルの本の題名でもあるが)
人類は「原子の火」より「原始の火」の戻らなければいけない!

読んでいるうちは忘れていた言葉がよみがえってきた。

どうぞご愛読を!!
コメント (2)
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