アメリカと中共とは表では喧嘩していても裏では手を結ぶ。アメリカの経済界は今でも市場としての中共を重視しており、そこでは日本とライバル関係なのである。日本がロシアと平和条約を締結するために一歩前に出ることは、アメリカと中共への大変な牽制球になる。安倍首相は昨日、ウラジオストクを訪れ、プーチン大統領と会談した。12月15日に山口県の長門市で日露首脳会談が行われることが決まった▼ロシアと中共を分断し、アメリカに日本の重要性を確認させるためにも、日本の選択肢は多い方がよいのである。伊藤博文が対露友好を主張し、日露戦争に最後まで反対したことはよく知られている。先の戦争でも、日本は不可侵条約を締結していたソ連を通じて終戦工作を進めたのである。ネックになっている北方領土交渉が進展すれば、日本はシベリア開発などでバックアップし、日露の友好関係を築くことは日本にとっても得策なのである▼永井陽之助は『二十世紀の遺産』において、国際政治や外交についてマックス・ウェーバーの「邪悪なる手段(強制力)によって善をなすアート」との言葉を引用しながら、「そこでの可能な選択は、善いか悪いかでも、美しいか、醜いかでもなく、『結果』によって判定される」と書いた。日本は重大な局面に立たされている。アメリカの大統領選挙が混迷し、中共は北朝鮮による軍事的な挑発も日々エスカレートしてきている。その観点からするならば、日露の接近は当然の成り行きなのである。
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