ようやく朝日新聞も今の憲法が押し付けられたことを認めた。去る22日付の「加藤典洋さんを悼む」の「天声人語」の書き出しは、占領下の日本を取材した米国記者が書いた『ニッポン日記』からの引用であった。連合国総司令部が付け焼刃でつくった憲法草案を日本側の閣僚に渡した。嫌なら再度の原爆投下をありうることを遠回しに述べたという逸話である。白州次郎も自らの著書で触れており、日本にとっては、忘れることができない屈辱的なシーンである▼加藤という思想家は、戦後民主主義に諸手を挙げて賛同したのではなく、アメリカの影を見たのだった。日本人の手になる戦争の総括にこだわったのも、そこから抜け出す手立てを模索したからである。だからこそ、事実を事実として直視したのだ。「天声人語」はそうではない。いくら押し付けられた憲法であっても、それを神聖化する側の立場なのである▼主権が回復していない占領下で、他国が憲法の草案を示し、武力でもって脅すというのは、国際法の観点からも許されることではない。憲法というのは日本という国家の伝統や歴史を無視してはあり得ない。また、刻々と変化する国際情勢に見合ったものでなくてはならない。護憲にこだわり続ける朝日新聞は、そんなことはどうでもいいのである。改憲の流れを阻止するのが社是であり、特定アジアの代弁者なのである。
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