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この句にはいくつかの特徴がある。
一つは「鑑真和尚像」という前書き付きの句であること。
どうしても付けねばならない必然性が必要ではあろうが、俳句に前書きを付けることは許されている。
一つは、ひらがなのみの句であること。視覚からの一種独特の雰囲気を醸すことができる。
面持や時雨るるを聞き在します
と比べれば一目瞭然であろう。「ゝ」が3つあるのも面白い。
もう一つは、敬語を用いていること。鑑真が今まさに生きているかのように表現している。
この鑑真和尚像は、唐招提寺の御影堂の国宝乾漆鑑真和上坐像と思われる。
作者松瀬青々は、大正・昭和初期に大阪で活躍し、関西の虚子と言われた。