「現代俳人の自選50句」というような本があった。私の句会の会員に、「この中から、好きな句を10句選んで下さい」とプリントを渡した。
高得点だったのが、この句。俳句をやっている人なら、ほとんど知っていると思う。
この句、単なる風である木枯を擬人化して、作者の孤独感を表現している。しかし、次のような解釈も成り立つ。
私(作者)が海(浜辺)に出たら木枯が吹いていた。私には帰るところがない。
「出て」と「なし」の主語が「木枯」でもあり、「私」にもなり得る、という曖昧さが、この句の良さだ。俳句の短詩という特質をうまく利用した典型と言える。
山口誓子は、昭和の戦前・戦後に活躍した。朝日俳壇の選者を永年務めた。
特に、「物A」と「物B」を詠み込み、読者に喜怒哀楽を感じさせるという、二物衝撃の方法を提唱したことで有名。