「自嘲」と前書きの付いたこの句、かの有名な山頭火の句である。
なんと言っても、山頭火の人気はすごい。日本各地に句碑もあり、山頭
火の会などもある。ドラマにもなったりしている。
もしかして、人気の点では芭蕉を凌いでいるかもしれない。
さてこの句、「自分を客観視している」というよりも、「背後から誰
かに見られていることを意識している」感じがする。
例えばこれは、ある人達との別れのシーンだ。行脚を続ける山頭火
は、別れを告げて歩き出す。振り返ってみると彼らは、まだ立ったま
まこちらを見ている。再び頭を下げる。彼らも頭を下げる。なんとも
バツの悪い時間だ。
彼らに嘲られているのではないか、という思いが「自嘲」という前書きになったのではないかと、私は想像する。
それは、彼の被害妄想だったのかもしれないが、事実だった可能性も強いのだ。