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渦巻く吹雪自画像に秘しゴッホ 炎火
1853年生まれのフィンセント・ファン・ゴッホは、37歳で自殺するまでの10年間に、約40枚あまりの自画像を描いたという。
若い頃のかしこまった自画像。ゴーギャンと共同生活をしていたときに、耳を切り落とした後の包帯を巻いた自画像。死の前年の自画像などがある。
この句の自画像は、死の前年の自画像であろう。背景、服、顔までも渦巻く曲線で描かれている。
牧師の子に生まれ、10年間に2,000枚の絵を描いたが、生涯にたった1枚しか売れなかった、ゴッホの苦悩の象徴とも思われるその渦巻く曲線。
この句の作者は、その曲線を吹雪と見立て、更にその吹雪を秘しているという。見事な想像であり、季語も破調もそれを援護している。
さて、日本人として恥ずかしい余談であるが、
ゴッホの代表作「医師ガシェの肖像」は、21年前ある日本人が、124億円余で落札した。彼は生涯公開せず、「棺桶に入れて焼却してくれ」と豪語したそうだが、死後は銀行担保となり転売されたという。
この話を聞いたらどう思うか、ゴッホに聞いてみたいものだ。