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仕切り直し の 「福島異聞」そのー3
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明けましておめでとうございます。本年もよろしく!
前回は割愛したが、「伝聞ではなく、自分の生の体験を書くのも悪くはない」、
そう思ってアップしかけたのが以下の短い記事でした。
割合に最近のこと、寸暇を惜しんで汚染地帯にレンタカーを駆ってきた。そして、除染作業員などが長期滞在していると思われるあちらこちのプレハブ簡易宿舎の一つに泊まってみた。私が70年代に山谷や釜ヶ崎で泊まっていたドヤ街の畳一帖ほどの蚤がいそうな安い部屋とは大違い。糊のきいたシーツのベッドにユニットバス付で素泊まり6千円。貧しい神父の一泊代としては高額な宿だが、作業員は月18万円の宿泊費を払う余裕があるということだ。
夜は居酒屋が大繁盛。一人黙って冷酒をちびりとやりながら、それとなく場の空気を観察した。大声で話し合っている。広い店の中はひどく騒がしい。板さんと注文を取りに来る男は日本人だが、給仕やカウンターの中で働く手伝いの若い女性たちは全員東南アジア系だった。空間線量が常態的に高いこの地域で働く日本女性はいないということか?直感的にベトナム人ではないと思った。かといって、フィリッピン人でもないようだ。タイか、ビルマか?
客が外から連れてきたのか、はじめから店に居たのかは知らないが、あちこちに交じって座って一緒に飲み食いしている若い女性たちも、皆例外なく東南アジア系だった。除染作業員や原発の廃炉作業員は、ここでは本名や身元が不詳でも、働きさえすればまとまった金を手にできる日本では他に例のない特異な地帯ではないか。被曝を恐れない-或いは被曝について無知な-ワケアリの男たちが、無法の天国で稼いでいる。
この店では客はみんな日本人だった。では、日本人でない男はいないのか? 除染作業員、廃炉作業員の中に外国人が目立つようになって久しいという話も聞いていた(これはまさに伝聞として)が、彼らは何処にいる?
思い返せば、私が山谷で日雇い労働者をしていた頃 ―それは30年以上も前のことになるが― ひょんなことで私の仮住いに一人のイラン人の青年が居付いたことがあった。政治亡命者で、国に帰れば殺される。日本にも多分不法滞在だろうが私は意に介さなかった。困っている異邦人を助けるのは人道的な義務だ。居たいだけ居てくれればいいさ。不法滞在者をかくまうのは犯罪ではないかと目くじらを立てる人がいるかもしれないが、それはユダヤ人を命がけでかくまったドイツ人がナチス政権下では犯罪人扱いされたのと同じ意味でだろう。命からがら日本に逃れてきた寄る辺のない異邦人を庇護するのは、神を信じる者の務めではないかと思う。
イラン人は色白で、ハンサムだ。昼まで寝ていて午後になるとフイと出かけていく。身なりは山谷には似つかわしくないほど、清潔でダンディーに決めている。流暢な英語と、下手ながら丁寧な日本語を話す。何をしているのかと聞いたら、ー銀座ではなくー上野公園あたりで、婚期を逸した女性がターゲットなのだそうだ。結婚願望が強く、愛にかわいて焦っている彼女に言葉をかけて、あわよくば結婚に漕ぎつけて日本に住みたい、と。そのために死ぬほどの空腹に耐えても、身なりには金をかける。彼のやっていることは悪いことといえるだろうか。
ある日、予告なしに私のもとからフッと消えた。念願のお相手をついに見つけたのだろうか?
話を戻そう。聞き違いでなければ、廃炉作業員にはけっこうトルコ系が多いらしいということだった。イラン人と違い、トルコ人は浅黒く、一目でヨーロッパ人と区別がつく。彼らには私のもとに居たイラン人のような芸当は出来ない。どうせ一時的な闇の出稼ぎだろう。もしかしたら海をまたいで呼び寄せ手配師が介在しているのかもしれない。福島の仕事が彼らの目的と肌の色に合っている。危険な高放射能に身を晒す命知らずの作業員がいないと廃炉作業は進まない。彼らが無知なら好都合だ。需要と供給が絶妙にバランスしていると言うべきか。
彼らに被ばく限度が守られているだろうか。彼らが身に着ける線量計の目盛りは細工されていないだろうか。疑い始めたらキリがないが、それは余計なお世話か?「直ちに健康被害が出る量ではない」と言うかもしれないが、時間差を置いて高い確率で深刻な被ばく症状が現れる、と言っているのと同じように聞こえる。もっとも、その頃には彼らは日本にはいないだろう。金を握ってさっさと帰ってくれれば、あとは野となれ山となれ。後腐れが無くて都合のいい使い捨てだ。そんな環境に色んな国籍の作業員がいるらしい。
わたしが冷酒を飲んだ店の客はみんな日本人の男性だった。客にまじっている東南アジア人の女性たちは、彼らのパラサイトだろう。
では、外国人の廃炉作業員たちは何処に群れ、溜まっているのだろう。そんな飯屋、居酒屋が別にあるのかどうか確かめそこなった。もしあったとして、そこに寄生する日本人女性がいるとも思えないが・・・。
原発汚染地帯、廃炉作業の現場周辺が無法のレイプ街道であることには必然性がある。そして、潜在的加害者としては日本人も例外ではない。 現に「寝屋川事件」の犯人山田浩二もこんなところにいたのだろう。
(まだ つづく)