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政治と宗教と金(そのー2)
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トランプがあっけなく大統領選で勝利した。
トランプ大統領
日本のテレビコメンテーターたちは一斉にトランプ氏とハリス氏を比較し、ハリスの敗因分析とトランプ勝因の分析に弁舌をふるっている。まだまだ新事実が現れるとは思うが、今日時点での感想を述べてみたい。
私はトランプが正義や環境や福祉などどうでもよく、お金の神様の論理で動いて勝ったのだと思っている。
テイラースウィフト イーロンマスク
ハリス氏への支持を表明したテイラー・スイフトのようなセレブな歌手よりも、共和党支持者に登録したものから抽選で毎日一人の当選者に100万ドル(1億5000万円)を贈るというイーロン・マスクの約束のほうが、集票には比較にならない絶大な効果があった。宝くじでも競馬でも競輪でも当たるためにはまず金を払って券を買わなければならない。しかし民主党から共和党に鞍替え登録するのに金を払う必要があるとは思えない。射幸心からというか、単純に金銭欲から100万ドルに目がくらんで、自分の政治的信念を曲げて共和党に鞍替えした人間が続出したとしても不思議ではない。激戦区の票が1パーセント動くだけでも選挙の勝敗が逆転しかねない場面もあっただろう。金以外のものには一切反応しなかった貧しい無数の無関心層の「死に票」が、イーロン・マスクがチラつかせた虚妄の大金=イエローミラージュ(黄金色の蜃気楼)=に魅了されて突然目を覚まし、雲霞の如く投票所に殺到したのがトランプを勝利に導いた最大の要因ではなかったかと私は思う。今回の選挙の投票率が以外に高かったことがそれを示唆していないだろうか。
マスクの金で大統領に返り咲いた独裁者トランプの「意思」は、今や合衆国の「法」となり、自分で自分の犯罪、すなわち、口止め料支払い(最高136年)、機密文書(最高450年)、選挙関連(最高55年)などで延べ禁錮700年の重罪に自らのお手盛りで恩赦を宣言するだろう。
マスクはマスクで自分の金でトランプを勝たせてやった見返りに、アメリカの国を動かす影の実権を必ず握るに違いない。トランプはただ、壇上でこぶしを握って軽くツイストを踊り、虚空を指さしながら気分よく木偶人形を演じていればそれでいいのだ。彼にはもともと教養も、信念も、哲学も、まして信仰もない。
キリスト教の最高の奥義は「神は父と子と聖霊の三位一体の神である」の一語に尽きる。他には八百万の神々がいる。ヤーベの神を拝むユダヤ教やアラーの神を礼拝するイスラム(回教)のような旧約のアブラハムの信仰に由来する一神教もあるが、キリスト教の「三位一体の神」だけが人類にご自分の内面的神秘を啓示された超自然宗教の神だ。
ところで、私はリーマンブラザーズで高給を食(は)んでいたころに悟ったことが一つある。それは、この地上にも侮りがたい「三位一体の神」が存在するということだ。その具体的姿はウオールストリート(金融)とペンタゴン(軍事)とホワイトハウス(政治)の強固な三位一体だ。そしてそれを回しているのはお金の神様(マンモン)だ。
ピーターピーターソン
当時、リーマンの中枢にいた会長のピーター・ピーターソン=学者然としたストイックな彼=は、ニクソン大統領のときの商務長官だった(後にソニーの社外重役にもなった)。その側にはドクター・シュレッシンジャーがいたが、彼はペンタゴンの国防長官だった。そしてピーターソンが日本に来るときには元ホワイトハウスのアジア・太平洋担当大統領補佐官を務めた男がぴったり付いていた。事ほど左様に地上の三位一体の中では、まるで血液のように一握りの男たちが地上の三位の神の間を絶えず循環しているのを目の当たりにした。その多くがユダヤ人だった。
ローマ皇帝のように、ナポレオンのように、ヒットラーのように、今やトランプがアメリカ帝国のトップの座に就いた。
日本の裏金議員が自民党の公認を得られず、無所属で立って当選すると、禊(みそぎ)が終わったと開き直って党員に復帰して大きな顔をするなどは、大統領選に勝ったとたんに禊はすんだとして自分の犯したすべての罪を自分で恩赦するのに比べれば可愛いものだ。
兵庫県の斎藤知事が不信任案を突き付けられて失職しても、懲りずにまた知事選に立候補して、もし17日の選挙で当選すれば、知事に返り咲いて禊は済んだと開き直るだろうけど、この世で最強の神であるお金の神(マンモン)の化身のようなイーロン・マスクの手を借りてアメリカの大統領に返り咲いたトランプの厚顔無恥さに比べれば幼稚園児のように可愛らしく見える。
それにしても、日本がアメリカから遠いためか、マスクの100万ドルプレゼントの衝撃ニュースの日から締め切りの11月5日までに、抽選で誰かに100万ドルが支払われたという話はまだ伝わってきていない。本当に100万ドルを手にした人が一人でもいたら、その強運の人は喜びのあまりはしゃいで触れ回っているニュースがどこからか聞こえてきてもよさそうなものだが、一体どうなっているのか?
それとも、アメリカは日本よりも物騒な国だから、受け取った人はうっかり漏らしたら、すぐに狙われて悪くすれば殺されるかもしれないと怯えて、襲われないように警戒して沈黙しているのだろうか。そして、ひょっとしたら、イーロン・マスクは、受け取った人がいてもどうせ誰も口外しないだろうと見越して、初めから15人の当選者に1500万ドル(22億5千万円)を払う気などまったく無く、結局誰にも一銭も払わずに知らぬ顔を決めこんでいるのではないだろうか。
もしそうなら、マスクは前代未聞の大噓つき、大詐欺師ではないか。それでいて、この見せ金の大嘘が選挙の勝敗を決定するほど絶大な効果を生んだのだ。人間がお金にどれだけ弱いかは、国際金融業の裏の裏まで見てきた私には嫌というほどよくわかる。わずかなお金のために少女が体を売る。まじめなサラリーマンが自社の企業秘密を売る。公務員が個人情報のリストを売る。政治家が法を犯して裏金を私物化する。ただの見せ金とは知らず、無数の人が目に$マークを浮かべてトランプの名を書くために投票時になだれ込んだのか。
お金の神(太古の昔から「マンモンの神」と呼ばれた)はこの世で最も力のある神で、全ての自然宗教の背後に潜んで人類を奴隷化している。それに対抗できる神、マンモンよりも強い神はキリスト教の「三位一体の神」だけであり、また、そうでなければならない。
しかし、地上の三位一体は全く侮り難い恐るべき神の化身だ。そもそも、人類誕生の最初の瞬間に人祖のアダムとエヴァをだまして天地万物の創造主である本物の三位一体の神に対する不従順を彼らの心に吹き込み、死を招き寄せ、失楽園の不幸に人類を陥れた蛇(悪魔)が背後に潜んでいるからだ。本物の三位一体の神と偽物の三位一体の神(蛇)との第一ラウンドは後者の側に軍配が上がった。しかし、第二ラウンドでは第二のアダム(キリスト)と第二のエバ(マリア)の本物の神への従順によって偽物が打ち破られた。しかし、偽物はそれで引き下がったわけではない。第三ラウンドはキリストの死と復活の勝利の直後からすべての人の魂を舞台にすでに始まっており、今まさに継続中だ。
アメリカの政治と経済と軍事の三位一体の中枢に食い込んだイーロンマスクは、今までの民間の錬金術では物足りず、ホワイトハウスの、つまり、この世の覇権国家の中枢に寄生して、民間とはけた違いの政商というビジネス(練金術)で私腹を肥やし、富の王国を築くだろう。政治と軍需産業と戦争ほど儲かるビジネスはないのだから。
ヒトラーが総統となったナチスの第三帝国の最大の犯罪、600万人のユダヤ人をガス室で殺し焼却したホロコースト、を効果的に止める力を持っていたのは、10億以上の信者を抱えた宗教大国の長、当時のローマ教皇ピオ12世だと言われているが、彼はその力を有効に発揮しなかったことで歴史に咎められている。その結果、ユダヤ人たちのホロコーストに対する恨みと鬱憤は今、見当違いにも矛先を変えて罪のないパレスチナ人に向けて吐き出されているように見受けられる。現在、ウクライナとガザの問題について最も期待される仲裁者は、トランプではなく、本物の三位一体の神の地上の代理人、バチカン市国の国家元首フランシスコ教皇その人ではないかと思うが、イスラエルの犯罪を前にして彼はピオ12世と同じ轍を踏もうとしているのだろうか。トランプの再選は第3次世界大戦の幕開けを告げることにならないことを祈るばかりだ。唯一の超自然宗教の地上の代理人である教皇フランシスコの動静が注目される。
「だれも二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなた方は神と富とに仕えることはできない。」(マタイ6:24)
人は本物の三位一体の神と偽物の三位一体の神の両方とうまくやっていくことはできない。だから私はウオールストリートからバチカンに寝返った。トランプの本当のライバルはハリスではなくフランシスコ教皇でなければならない。これから歴史があと何千年続くか、何億年続くか、或いはあっけなく次の世界大戦で人類が終末を迎えるかだれも知らないが、最後に勝つのは父と子と聖霊の三位一体の神であることだけは間違いない。
後楽園でミサをしたフランシスコ教皇
フランシスコ教皇は5日、歴代教皇の中で初めて私の母校ローマのグレゴリアーナ大学で講義をした。バチカンニュースは「教皇、ローマのグレゴリアン大学で講話」という記事を発表したが、それは下をクリックすると読める。
(おわり)