:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ シンポジウム「2050年未来の提言と行動」-その1

2008-05-05 19:06:33 | ★ 日記 ・ 小話

          

   長考一番、「悪の起源」という私の重い神学的テーマに関するブログの更新が遅れている間に、日々のアクセス数が急激に減っていくのが手に取るように見えてきます。いつまでものんびり考えているわけにはいきません。とは言え、拙速に走って誤りを犯すわけにもいきません。そこで、その間に起こった出来事を報告しながら今しばらく繋いでいくことにしました。


10月31日、丸の内の日本工業倶楽部で「ima」主催のシンポジウムがありました(9月14日のブログ「シンポジウムへの招待」参照)。「ima」とは、「国際経営者協会」という団体のことで、国際的に成功している日本の企業の取締役、会長や社長を主体にした、超エリート集団です。
ところが、なぜか、その中にたった一人、無位無官、経営者でもお金持ちでもない田舎司祭が、パネリストとして招かれました。ここに、参加したときの感想を幾つか記しておきたいと思います。

今日は先ず、未来について語ることの意味について考えます。
「未来について語る」ことを日本語では「ヨゲン」と言いますが、「ヨゲン」には二つの言葉を充てることが出来ます。天気予報の「予」の字を充てた「予言」と、預金通帳の「預」の字を充てた「預言」です。私以外の3人のパネリストは、一人目は「ima」の会長自身、二人目は日本人顔負けの流暢な日本語を操るアメリカ人経営者、会長兼CEOで日本ベンチャーキャピタル協会理事(他)です。三人目は一見きれいなお嬢さん風のセレブな起業家(ちなみに彼女のブログの毎日のアクセスは平均15万件とか)、は何れも現代日本の典型的な「予言者」たちです。その中に混じって、孤軍奮闘の「預言者」が私、信州信濃の山出し神父、という図式になりました。
「予言者」とは、科学的、社会的、経済的に緻密な現状分析と、一定の近過去から現在までのトレンドの解析に立って、近未来のあり得べき状態を予測し、それに対して有効に対処しようというもので、いわば、水平的思考であると言えましょう。それに対して、
「預言者」は、上からの、つまり神からの言葉を「預かり」、それを世に伝える使命を託されたと自称する者で、垂直的な思考の人間です。
しかし、「預言者」には、さらに「偽預言者」と「真の預言者」の2種類があります。
「偽預言者」は、実は、人間の思い、時には悪魔の言葉に基づいて、無責任にも心地よいことばを耳元にささやきかけながら人の心に取り入り、そのあげくに人間を欺く者たちのことです。
それに対し、「真の預言者」は、世の現状を憂い、このままではいけない、回心をしなければまずいことになる、と警告し、回心を促して方向を正させ、何とか良い未来へ人を導こうとするものです。耳痛い彼の言葉に耐えられない者は、彼の抹殺を図り、散々な目に遭わせます。

今回のプログラムは、第一部、「激変する世界と日本の針路」という題で島田晴雄氏(千葉商科大学学長、富士通総研経済研究所理事長、と言うよりも、小泉元首相の知恵袋として知られる)の基調講演を受けて、第二部として、問題の予言者たちと預言者のパネルディスカッションとなりました。

予言者が提起した最初のテーマは、2050年には到来する「超長寿社会」でした。それによると、過去60年間で日本人の寿命は30年延びて、現在男は78歳、女は85歳になったが、2050年には平均100歳(最長寿140歳)になると予想しています。人生を二毛作にも、三毛作にも豊かに生き継ぎ、生き甲斐をもって余生を楽しみ、願うらくは「ピンピンコロリン」とあっけなく逝ければ一番幸せ、というものです。
しかし、預言者に言わせれば、それはあくまで能力にもチャンスにも恵まれ、地位と富を手に入れた一握りのエリート、セレブにとっての話です。資本主義的唯物論に基づくアメリカ帝国主義の一極世界支配が続くとすれば、一握りの成功者がますます肥え太っていく陰で、この格差社会の延長線上には、より多くの貧しい人たち、疎外された人たちの、困窮と悲嘆と出口のない絶望がいや増していくことをも意味しています。このままでいいのか、と預言者は問いかけます。
彼は学生のころ、尊敬していたヘルマン・ホイヴェルス師(上智大二代目学長)に、どのような社会体制が一番幸せな社会かと問うたことがあります。今思うと、実に青臭い未熟な質問でした。すると、「聖なる王様に治められる民は幸せだ」、という答えが返ってきました。専制独裁政治でもなく、金が全ての唯物主義的資本主義でもなく、唯物論的共産主義でもなく、神を畏れる聖なる王様が愛と慈しみをもって民を治める国がいい、というわけです。しかし、そんな理想郷が現実にあり得るとはとても思えません。一党独裁の共産主義社会の実験が、ソ連とその衛星国で失敗したのは当然であり、幸いでした。しかし、歯止めのない支配欲、所有欲がむき出しの今の世界情勢の延長線上には、戦争と破壊とテロと報復の悪循環しか見えて来ず、そこに展望も希望がないことも、これまた確かなことです。
2050年にはマルクスの説いた理論は、ITや様々な技術の進歩に支えられて、より公正な社会の実現に資するものとして、再び脚光を浴びているに違いないと思われます。

パネルディスカッションのテーマは、ナノテクノロジーやボーダレスハイパーモビリティー社会、ますます進む社会のグローバル化、地球温暖化とCO2削減問題、人口爆発と食料・エネルギー危機、生命科学、ロボット工学、宇宙開発など多岐に亘りました。次回以降、それらの幾つかのトピックスについても、預言者のコメントを試みたいと思います。お楽しみに。(つづく)

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