「神父と頭蓋骨」というタイトルの北京原人発見とイエズス会神父の物語を読んでみました。
イエズス会神父テイヤール・ド・シャルダンは、科学に造詣の深い父と敬虔なキリスト教徒である母の家庭に育ち、双方の影響を受けながらイエズス会神父兼科学者となります。彼は宗教と科学の考え方を受け入れ、折り合いをつけるべく努力しますが、時代は彼の考え方を受け入れませんでした。科学者としてミッシングリンクの発見に努め、北京原人の発掘に業績を残した彼の波乱の人生を辿る内容です。
西洋の科学史における宗教と科学の対立というのは、とても根深いものと感じました。それは双方をよく理解する一人の人間の力だけでは、どうにもならないほど深く対立するものであって、現在もほとんど変わっていません。日本人は宗教は人生の節目に利用する儀式としての価値しか感じないので、宗教と科学は別物として扱うけれど、宗教が生活に密接に関係している欧米では、科学が宗教に与える影響は大変重要な問題のようです。
この本では、彼の人生や取り巻く環境、時代背景については多少知ることができましたが、肝心の北京原人や人類史への貢献については記述が少なくてやや物足りない感じでした。確かにシャルダン神父が大変素晴らしい人物であることは理解できるのですが、、、。
ちなみに教科書にも出てくるほど有名な北京原人ですが、実物の標本は日中戦争による混乱に巻き込まれ、行方不明なのだそうです。日本のどこかにあるという説も有力です。
もし発掘されて消えた北京原人を再発掘したら、発見の栄誉は誰のものになるのでしょうか。