キマグレ競馬・備忘録

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本「伊四〇〇型潜水艦 最後の航跡」

2020年10月12日 | Book
伊四〇〇は、太平洋戦争時の超大型潜水艦で戦争末期に戦況の打開を図るために、
パナマ運河攻撃を意図して建造された。この本は、伊四〇〇の建造から終戦後の顛末までを
追ったノンフィクションである。
潜水空母というのは、山本五十六が構想した画期的なアイデアであり、実現は不可能と
思われていた。実際、イギリスでも試されたことはあったらしいが、大部分は偵察目的で
あって、専用の攻撃機を開発して空母としての利用を目指したのは、この伊四〇〇シリーズが
最初で最後だったようだ。その後、このアイデアは現代の潜水艦に反映され、ミサイルによる
攻撃型潜水艦が登場する。
潜水空母はアイデアとしては素晴らしいが、実際の運用はかなり難しかったようだ。
潜水艦が浮上している間は、敵に発見される可能性が高くなり、飛行機の発進・回収に時間が
掛かるとそれだけリスクも大きくなる。積み込む飛行機はわずか3機程度の水上機のため、
リスクと期待される成果を比較するとそれほどメリットが無かったように思われる。
それでも当事者には不利な戦況を打開したいという想いがあったのだろう。しかし、資材の
枯渇、戦況の悪化で就役したのは二隻のみで、本来の目的を達することなく南方へ出撃した
ところで終戦を迎えてしまい、最後はハワイ沖で沈められてしまう。
伊四〇〇については、戦記もので読んだことがあり、戦争末期に就役したが全く戦果が
上げられなかったこと位は知っていた。この本では、構想・建造から運用、顛末までを
日米の当事者の視点で詳細に書かれていてとても面白かった。兵器はそれ自体がいかに
素晴らしいものであっても、運用が上手くいかないと成果が上げられない。
伊四〇〇はその一例と言えそうだ。

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