神が宿るところ

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駿河国府

2011-05-24 21:55:07 | 史跡・文化財
駿河国府の所在地は、まだ確定されていない。元々は旧・駿河郡にあったとされる(所在地は未確定だが、現在の静岡県沼津市大岡付近とされている。)が、天武天皇9年(680年)に伊豆国を分離した際、旧・安倍郡に移したという。「和名抄」には「国府在安倍郡上十八日下九日」とある。旧・安倍郡といっても広いが、現在の駿府城址(駿府公園)を中心とした地域内にあることでは、ほぼ異論がない。
有力なのは、従来から、「静岡浅間神社」(式内社「神部神社」と「浅間神社(富士新宮)」の合殿)正面参道となっている所謂「長谷通り」を南辺とする地域で、現在の静岡高校、あるいはその東側付近が想定されていた。想定の根拠としては、①総社(式内社「神部神社」)及び国分寺が近くにあること、②現在は「長谷」を「ハセ」と訓んでいるが、元は「チョウヤ」(=庁屋)だったのではないか(因みに、伊豆国一宮「三嶋大社」の近くにかつて「長谷町」という地名があって、こちらは「チョウヤ」と訓んでおり、国府所在地の有力候補となっている。)、③長谷通りの北側は、静岡平野の条里地割とは異なって、正方位の地割が存在する、等があげられる。しかし、静岡高校敷地等の発掘調査では、全くそれらしい出土物がない。また、国分寺の所在地も、「片山廃寺」発掘により、元から長谷通りにあったわけではないと思われるようになった。「長谷」という地名も、かつて存在した(新)長谷寺に由来し、元から「ハセ」と訓じたのではないか、ともいわれる。
静岡市街地は度重なる戦火で破壊されたうえ、現在は住宅も建て込んでいて、発掘調査はなかなか困難であるが、断片的なその成果から、最近では駿府城址の東南部を中心とする地域が有力になってきた。旧・青葉小学校付近からは古代には希少な青磁・白磁の破片が多数出土したとされる。
徳川家康が薩摩土手(2010年12月28日記事)を築くまでは、安倍川は静岡平野を多くの枝川となって、賤機山の南端の先から東に流れていたとされる。駿府城の南北の濠は、この川の水を利用したものではなかったか。一般に、国府は、海か川の近くに設置されることが多かったとされる。それは、水上交通を利用するためだという。古代の安倍川に、どの程度の水量があったか不明だが、川に挟まれた微高地上に駿河国府が築かれたのではなかろうか(因みに、静岡市街地では、「静岡浅間神社」から駿府城址西辺にかけての地域が最も標高が高い(7m)という。)。
駿府城が築かれる前には、駿河守護職を世襲した駿河今川家第4代の今川範政が「府中城」を築いた。しかし、これは「城」というより行政のための「館」で、一般に「今川館」と称されている。要塞としての「城」は、「賤機山城」が想定されている。合戦になれば、「今川館」から「賤機山城」に移ったわけである。「今川館」の所在地も未確定だが、すぐに賤機山に移れる場所が候補地で、静岡市駿河区屋形町が「今川館」に由来する町名ともいわれている。あるいは、駿府城址の西側ともされる(静岡地方裁判所付近から中世の高級什器が出土している。)。
ところで、国府の敷地の広さは、一般に、方8町(=約873m四方)といわれていた。しかし、各地の調査が進むにつれて、地形的な制約を受けており、必ずしも方8町とは限らないことがわかってきた。駿河国府の所在地を「長谷通り」付近とする説では、方5町(=約545m四方)が想定されていたが、現在の駿府城址は約700m四方くらいである。徳川家康が隠居所として駿府城を普請したとき、北・東・南方向にかなり拡張した、とされている。
以上のようなことを考えると、安倍川の流路の制約等もあって、駿河国府は現・駿府城址の東側を中心として方5~6町程度、その後、国府が衰退すると、その西側に、国府敷地の一部を侵奪する形で「今川館」が築かれたのではなかろうか。それとも、駿河国府も方8町くらいあったと考えるなら、現・駿府城址がすっぽり入るくらいの敷地が国府域としてあり、それが、権力移動によってそっくり「今川館」となり、更に「駿府城」になったと考えるしかないのだろうか。


写真1:向かって右・国府址、左国分僧寺址の石碑。場所:静岡市葵区長谷町。「しずてつストア長谷通り店」の西、約50m。「駿河国分寺」を称する寺は現存するが、国府址らしき痕跡は何もない。


写真2:駿府城址の東南に復元された東御門と巽櫓。背後に見えるのは静岡県庁。


写真3:2009年8月11日に発生した静岡沖地震で崩落した駿府城址(大手御門付近)の石垣の復旧工事。外濠の水は農業用水として利用されているため、「農業予算」で復旧工事が行われていた。
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