神が宿るところ

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鹿嶋神社(茨城県八千代町野爪)

2021-03-13 23:52:04 | 神社
鹿嶋神社(かしまじんじゃ)。通称:みょうじんさま。(同名の神社と区別して)野爪鹿嶋神社。
場所:茨城県結城郡八千代町野爪430。国道125号線と茨城県道136号線(高崎坂東線)の「貝谷十字路」から県道を北へ約2km。県道に面して右側(東側)に当神社の駐車場がある(大きな看板が出ている。)。その近くに大きな鳥居と社号標があり、そこから境内入口まで参道を北東へ約160m。この参道は車道となっていて、自動車の通行も結構多いので、注意。
社伝によれば、大同元年(806年)、藤原鎌足の後裔・藤原音麿が常陸国一宮「鹿島神宮」から分霊を勧請して創建したという。ただし、大同元年というのは古社寺によくある創建年代であり、藤原音麿という人物も史書など他の記録に見えないようだ。一方、神社としての創建は奈良時代に遡るとの説もある。それは、「続日本紀」神護景雲2年(768年)の「毛野川」(現・鬼怒川)の河川改修工事の記事による(なお、これは記録に残る関東地方最古の河川工事であるという。)。当時、鬼怒川は当地の付近で大きく蛇行しており、下流で洪水が度々起こったらしい。そこで、記事によれば、天平寶字2年(758年)に問民苦使(もみくし。臨時に派遣された地方監察官)の藤原朝臣浄弁が鬼怒川に新しい水路を掘って洪水対策をすべきとの提言をして、認められた。然るに、下総国が言うことには、「7年経っても、いっこうに工事が行われない。常陸国に確認したところ、真っ直ぐな水路を掘削すると、まともに神社の敷地に突き当たり、また、人民の多くの家を破壊することになる。それで、太政官から中止命令が出た。しかし、このままでは毎年洪水が起きて、二千余の口分田が損なわれることになるだろう。」とのことだった。これを受けて、下総国結城郡小塩郷小嶋村から常陸国新治郡川曲郷受津村まで千丈余の水路が造られた。なお、(鬼怒川は下総・常陸の国境線になっていたが、)国境は旧来のままとした、というものである。現在の地図でも大字の境界を見れば河道跡がわかるが、現・茨城県結城市山王と八千代町大渡戸の間を西へ進み、八千代町久下田から南東へ、そして八千代町川尻で現在の鬼怒川に繋がるのだが、その手前でいったん北に流れる、つまり逆川になるため、ここから下流で洪水が起きやすかったようだ。そこで、地図をもう一度よく見ると、野爪は川尻のすぐ北側で、当神社は現・鬼怒川の右岸(西岸)、堤防から約220mの位置にある。こうしたことから、「続日本紀」の記事にある「神社」というのが当神社のことではないか、という説になる。残念ながら神社名が記されていないので断定はできないが、可能性はあるのではなかろうか。
さて、平将門について書かれた軍記物「将門記」に所謂「野本合戦」の記事があるが、「野本」という地名の遺称地がなく(「赤浜神社」2021年2月20日記事参照)、比定地には諸説ある。これについて、「野本」は「野爪」の誤りとする説も有力で、当神社も、承平5年(935年)の「野本合戦」のときに社殿焼失したと伝えている。その後、鎌倉時代から戦国時代にかけて当地を治めた結城氏は代々、当神社に対する崇敬が厚く、たびたび社殿を造営している。 江戸時代にも、徳川幕府から庇護され、社領などを寄進されている。また、常陸国真壁郡十六郷の総鎮守として、近隣の信仰を集めたとされる。現在の祭神は、武甕槌命。
蛇足:古代、常陸国新治郡川曲郷は、現・鬼怒川が大きく屈曲していた場所にあった。しかし、上記河川工事のため、鬼怒川の左岸(東岸)から右岸(西岸)に変わったが、国境は旧来のままだったので、鬼怒川右岸(西岸)なのに常陸国に属した。このため、後に「川西村」と称されることになった。常陸国からすれば「元々、常陸国の領地である」と考えるが、下総国側からすれば「下総国の領地になった」とも考えられる。この「川西村」に関する平将門(下総国側)と常陸国掾・源護(常陸国側)の争いが「平将門の乱」の一因ではないか、とする説もある。


茨城県神社庁のHPから(鹿嶋神社)


写真1:「鹿嶋神社」一の鳥居。


写真2:社号標と二の鳥居。


写真3:参道。参道から境内一帯にかけて「野爪緑地保存地域」に指定されている。


写真4:境内入口。新しくて大きな狛犬。


写真5:三の鳥居。扁額は「鹿嶋大明神」


写真6:「夫婦杉」。樹齢約700年という。


写真7:境内社「三日月神社」。祭神:月讀尊。


写真8;拝殿


写真9:本殿。現在の本殿は天明3年(1783年)の再建で、室町時代の永享年間(1429~40年)の様式を基本として造られているという。
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