手についていたはずの職は時代と共にかすれ、気づいた時には何もなかった。職場は予告もなく消滅し、貯金はあっという間に底をついた。こうなることがわかっていれば、もう少し何とかならなかったか。後悔している場合ではない。困り果てた私の目にネットの広告が飛び込んできた。
「あなたにもできる! 簡単な仕事です」
もはや深く考える余裕はなかった。顔写真と電話番号を送信すると契約が終わり、翌日私は現場についた。
仕事内容は簡単なものだった。
指定された場所で待っていて届いた荷物を足で蹴って箱に入れるだけだ。私は言われた通りの業務を淡々とこなした。数時間やれば、それなりの額になる。なかなかいい時代ではないか。夕ご飯のことについて想像しながら、私は目の前に届いた荷物を蹴飛ばした。荷物は順調に箱の中に入る。
ピピー♪
笛が鳴って、現場のセンターから人が駆けてきた。同業者だろうか。
「お前、オフサイドやんけー!」
何か怒っているようだ。
「ずっとオフサイドなってるやんけー!」
「いや言われた通りにやってますけど」
「ここか? 現場確認したんか?」
「はい」
男は少し首をひねりながら戻って行った。
少し不安を覚えたが、私は仕事を続けることにした。
次の荷物は少しスピードが出ていた。私は必死に反応しつま先で触れて何とか箱の中に押し込んだ。その時、けたたましいサイレンの音が接近し現場のすぐ傍で止まった。胸から赤いカードを出しながら警官が駆けてきた。さっきの男も一緒にいる。
「ご協力感謝します!」
彼は同志ではなかったということか……。
「わかってるな?」
警官が私の顔を見て言った。
日本人ミッドフィルダーの活躍によって、私は逮捕されることになった。
「私はだまされたんだ!」
捕まった後で私は何度も訴えた。しかし、「だまされる方が悪い」と世間の人は冷たかった。
何がいったい悪かったのだろう……。
鉄格子の内側で、私は過去を悔いながら勉強中だ。
まだ、希望はどこかに残っていると信じたかった。
人生にはきっと延長戦もある!