ブラックではライトな自分が動き出す
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辺境の星までたどり着いた意味を見失って絶望しかけた時にホンダ・カーブは肩と肩が激しくぶつかる音を聞いた。サッカーだと?(あるいはここでは球蹴りとも呼ばれていた)それは紛れもなくフットボールの一形態だった。あるじゃないか! 出場機会を求めるカーブの前にデュエルの王が立ちふさがる。しかし、ようやく希望を目にしたカーブの前では子犬同然だった。
「エンドゥーを3回抜くとは!」
登録期限まであと3日の出来事だった。
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インクがかすれ文字が出なくなる。
(カチカチ♪)
やむなく私は次のカラーに移ることにする。
レッドでは恋愛感情に傾く
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魔女の呪いによって蛙にされた王女は刺さるような視線を感じていた。
好きなの?
思われても思わない。
種が違うの
生まれた時から私はハイブリッド
死のようにしつこい瞳
その思い 来世まで取っておけば
それなら少し考えなくもないわ
他に行くところはないの?
世界はぞっとするほど広い
だけどあなたには翼もない
ただまっすぐに伸びるばかり
せめて一緒に歌うことができればね
コーラスが始まった。
蛙は畦道を離れステージに飛び込んだ。
その音を聞いて蛇はシューシューと巻きながら家に帰って行った。
「また振られちゃったよ」
「本当に好きだったとでも?」
「だから泣いてるんじゃないか」
「お前は好きを隠れ蓑にしてただ居座っていただけではないか。泣いてるのはただの感傷だ。愛は微塵も存在せずお前はただ怠惰であっただけ……」
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声はかすれ反論することはできない。
(カチカチ♪)
レッドの時間は儚い。
次のカラーに移る他はないようだ。
グリーンで私は突然しりとりに傾倒する。
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ゆず七味
みそ団子
ごまトカゲ
げそわかめ
メカタマゴ
こども酒
毛玉坂
「私の負けだ」
私はあっさりと私自身に負けてしまう。
(本当はもっともっと遊べるのに)
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グリーンは始まりから既にかすれていた。
一行を折り返すことが奇跡だった。
(カチカチ♪)
次がなければ戻るしかない。
一巡したあとのブラックは少し息を吹き返している。
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スタジアム上空ではUFOと自衛隊機の激しい攻防が繰り広げられていた。まさかこんな田舎星までも追ってくるとは、カーブも予想していなかった。観衆は防弾傘を差しながら日本代表に静かな声援を送っていた。このまま行けば予選敗退が決まっている。
(監督、次のカードを切ってくれ)
カーブは目でベンチ前の監督にサインを送った。
(みんなあとのことは頼んだぞ。俺がいたらこの星が危ない)
カマーのコーナーキックが高速で入ってくる。ファー・サイドに構えたホンダ・カーブが高く飛んだ。他の選手よりも体1つ分抜けていた。ピンポイントで頭に合ってゴールが決まる。けれども、カーブは芝の上に落ちてこなかった。そのまま上昇して宇宙ドローンに飛び乗った。
ゴールーーーーーーーーーーーーー♪
それはホンダ・カーブが地球に残した置き土産。
ありがとう……
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(カチカチ♪ カチカチ♪)
すべてのカラーがフラットになりふりだしにもどる。
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「AIによる診断が出ました。
あなたの作品はまだ誰にも読まれていません。
この作品を読まなかった人は次の作品も読まないようです。
お子さまからお年寄りからコアなロックファンからミステリーマニアまで幅広い層に読まれないようです」
「私は未来の読者に向けて書いてます」
「異世界に行かぬは作家にあらず。もっと毛色の違う作品を書いてみましょう」
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更新のトップに君が躍り出る10秒間のファースト・ノベル